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小5なのに…算数「リンゴやミカンの文章問題は解けるが、ナシとイチゴに替わったら解けない」理由

プレジデントオンライン / 2023年3月11日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Garsya

わが子を理系の科目に強くするにはどうしたらいいのか。プロ家庭教師「名門指導会」代表の西村則康さんは「理系に強くなるために必要な論理的思考力には、数の理解と言葉の理解が必要です。『リンゴ3個とミカン2個を足す』という文章題なら解けても、『足す』が『合わせると』『全部で』といった表現に変わるととたんにわからなくなる小学生は意外と多い」という――。

※本稿は、西村則康・辻義夫『理系が得意になる子の育て方』(ウェッジ)の一部を再編集したものです。

■言葉の理解が広がれば数の苦手意識は小さくなる

子どもが数について理解を深められるのは、ご家庭での遊び方や学び方の習慣が基盤にあってこそです。しかし、就学以降の算数に対応できる力を確かなものにしていくために欠かせないものがあります。

理系に強くなるために必要な論理的思考力には、「数の理解」と「言葉の理解」が必要です。算数で最初につまずくことが多いのは文章問題ですが、数の理解でつまずいているというよりも、実は言葉の理解でつまずいているケースが少なくないのです。

ある5年生の子は、リンゴやミカンの文章問題は解けましたが、それがナシとイチゴに替わったら解けませんでした。

なぜそうなってしまうのか。「リンゴ3個とミカン2個を足す」と書かれていたら問題なく解けます。しかし「足す」が「合わせると」「全部で」といった表現に変わるととたんにわからなくなるのです。

4年生くらいでこういう子は意外に多いのですが、5年生でこの状態というのは珍しいケースでした。それに、リンゴもミカンもナシもイチゴもすべて果物で、同じように「個」で数えるものが混乱してしまうのは非常にレアケースといえます。

数える単位はとても重要で、「何個」から「何羽」に変わったら「羽」が個数を示す単位とわからず、解けなくなる子はもっとたくさんいます。 

■引くと書いてないけど「引き算」だとわかる感覚

2年生くらいの子の親御さんから、「計算が得意だったのに、計算塾へ行き始めてから算数の成績が伸び悩んでいます」という相談を受けることがあるのですが、そういう子を注意して見ていると、算数が伸びないのは計算塾へ通ったことが原因ではないことがはっきりとわかります。

引き算でも似たような例がいくつもあり、「小鳥が10羽います。3羽逃げました。何羽残っていますか?」と問題文にあるとき、「逃げる……って?」となるのです。

これが「10-3」と書いてあれば計算できますが、「逃げる」=「引く」が結びつかないのです。

なかには、「何羽残っていますか?」という文章の最後だけを見て、「います」と堂々と答える子は低学年ではけっこうな数がいます。

教科書や問題集をよく見ていただくとわかるのですが、文章問題は「増えると」「減ると」、「足りないのは」「残りは」など、さまざまな表現がなされています。

1年生の算数の学習で重要なのは、「足すって書いてないけど、これは足し算だよね」「引き算しろってことだよね」と、子ども自身が自分の感覚でわかるようになることです。

ですから、お子さんが文章問題でうんうんうなっている様子を見て、「これは、10-3ってことでしょう?」などと肝心なところを先走ってしまうと、考えるヒントになるどころか学びのチャンスをふいにしてしまっていることを、知っておいていただきたいと思います。

小さいうちから実物と名詞を対応させるノウハウとして、「小鳥が10羽いて、3羽逃げちゃったってことは、3羽どこかにいなくなっちゃったんだね」「数が減ったのかな?」「じゃあ引き算だよね」というふうに、「逃げる」=「引く」が結びつくような会話をしてみるといいでしょう。

このように、言葉を使って考えることを習慣づけるにも、親御さんからの問いかけがやはり大切なのです。

そして、語彙(ごい)を増やす工夫をしていきましょう。実践ポイントは三つです。

一つ目は、小さいうちから実物と名詞を対応させることです。「9月になってナシの季節だね」など、買い物や散歩で見かけた物の名前を意識して会話に登場させます。

二つ目は、数を数えるときにいちいち単位をつけることです。「ゾウが2頭」「トンボは匹でもいいけど頭もあり」「イスが4脚」など、物の数え方に違いがあることを伝えていきます。

三つ目は、子どもにはわからないだろうと決めつけずに、いろいろな話を聞かせてあげることです。

わざと難しい言葉を使った後に、「それって○○って意味だけどね」とさりげなく「通訳」します。一つのものごとを示すのに、いろんな言い方があることがわかってきます。

「言葉の理解」を高める機会は、日常のなかにたくさんあります。

【図表】語彙を増やす3つのポイント
出典=『理系が得意になる子の育て方』

■リンゴを丸に置き換えるイメージ思考の大切さ

前項目で、リンゴがナシに替わると文章問題が解けない5年生の子の例を挙げました。このようなとき、私たちが子どもたちにどう教えているのかをここで紹介したいと思います。

何をするのかというと、まずリンゴやナシの絵を描くのです。このとき、「先生、絵が下手なんだよね」とか「今日はあまり時間がないから」とかなんとか言って、「これ、丸だけどリンゴの意味ね。ピュッと枝を1本生やしておくね」と、リンゴに見えないリンゴのような丸を適当に描きます。

小さな子どもたちの頭の中では、リンゴは丸くて赤くてピカピカしています。幼児用のドリル、小学校の教科書、小学生向けの問題集など、どれもリンゴといえばそのような姿です。

子どもが頭でイメージしているその固定観念から、なんとかして離れてもらう作業を行うのです。少々難しい言い方をすると、「具体」から「抽象」へ、概念を移行させるのです。

例に挙げた5年生の場合は、これを何十回かやったところで、リンゴもミカンもナシもイチゴもみんな、丸みたいな形になっても数え方は同じと、頭の中でつながったようでした。

リンゴやナシの絵ではなくただの丸でも受け入れられるようになり、抽象化に対応できるようになっていくと、リンゴ5個は数字の「5」に、ナシ3個は数字の「3」として頭の中で認識されます。すると、「足し算をすればいいんだな」とシンプルに考えられるようになります。

しかし、リンゴがリンゴのまま、ナシがナシのままで頭の中に存在していると、何をどうすればこの問題が解けるのかわからず、こんがらがってしまうのです。

■ドリル学習にひと手間かける

親御さんが小学生の頃、こんな先生がいませんでしたか。「この問題では子どもが3人出てくるね。はい、これ子どもね」と言って、黒板に雑に丸を3つ描く。すると生徒のなかに「子どもに見えないよ〜!」「先生、ヘタクソ〜」と文句を言う子がいたものです。

先生はおそらくわざと、「それ子どもに見えないよ〜」という経験をさせて、抽象的に理解する力を伸ばそうと考えていたのでしょう。これは、ご家庭でも真似できるテクニックです。

西村則康・辻義夫『理系が得意になる子の育て方』(ウェッジ)
西村則康・辻義夫『理系が得意になる子の育て方』(ウェッジ)

年齢の早い段階で抽象的なものの見方や捉え方ができるようになれば、算数という科目の理解はぐんぐん進みます。理系への道も開かれやすくなります。それで親御さんはたくさん問題を解かせることをよしとしてしまうのですが、まだ時間がたっぷりある幼少期こそ、たくさん解かせることよりも、一つひとつの学習に手をかけてあげてほしいと思います。

ドリルをたくさん与えるだけか、そのドリルでどんなことを学ばせたいのか・どこが大事なのかを認識したうえで与えるかで、お子さんの学びは大きく変わってきます。

その点でいえば、各問題に「ねらい」と「指導のポイント」が解説されている『小学校で伸びる子ドリル』(受験研究社)は、おすすめできる教材です。親御さんが解説に目を通したうえで使うと、効果が倍増することは言うまでもありません。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康、中学受験塾SS-1副代表 辻 義夫)

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