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「写真の加工で、同世代かどうか大体分かる」Z世代の"ビジュアル読解スキル"を侮れないワケ

プレジデントオンライン / 2023年4月8日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

SNSネイティブの世代に特有の価値観とはどんなものか。SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏は「彼らには、顔も年齢も知らないけれど、SNSで繋がっている友達がいて、リアルで一緒に買い物に来ることもあります。リスクを嗅ぎ分け、互いの価値観を読み取るスキルが備わっています」という――。

※本稿は、長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■Z世代にはリアル・デジタルの境はない

ここからは、デジタル環境によって培われたZ世代の価値観についてお話しします。

Z世代が生まれたときから存在するデジタル環境、特にSNSの存在は、Z世代の価値観に非常に大きな影響を及ぼしています。SNSが当たり前に存在することで生じた彼ら特有の価値観は、3つの観点から論じることができます。それは、「コミュニティ」「コミュニケーション」、そして「自分らしさ」です。

またデジタル環境(オンライン)が、より身近であることから、オフライン――日常生活の位置づけも変化しています。

【生の声】お店で買うか、通販で買うかはそれほど意識していない。

ビジネスの世界では、デジタル(オンライン)とリアル(オフライン)の世界を融合、または繋げていこうとする動きがありますが、Z世代からすると、あまりピンときません。なぜなら、彼らはそもそもデジタルとリアルを別々の存在と捉えておらず、意図的に融合させる必要などないからです。生まれたときから進化したデジタル環境が整っている彼らにとって、オンもオフも、その両方ともが“リアル”なのです。

■SNSで知り合った友達とSHIBUYA109へ

消費行動やコミュニケーションにおいても、シームレスに行き来しています。

【生の声】AちゃんとはSNSで知り合いました。
【生の声】顔も年齢も知らないけれど、SNSで繋がっている友達がいます。

ところで、皆さんは、これまでどのように友達を作りましたか? おそらくは、学校や習い事、職場など、オフラインでの接点がきっかけで交友関係が生まれたケースがほとんどなのではないでしょうか。そしてSNSを利用する主な目的は、有名人などを除くと、オフラインで接点がある友人・知人のフォローであり、SNSでも繋がることで、既に交友関係のある人の近況を知り、コミュニケーションを取る場としているのではないでしょうか。

先ほどの生の声は、私たちがSHIBUYA109渋谷店の館内で毎月実施している来館者ヒアリングの際によく出てくるフレーズです。複数人で来館している若者たちに声をかける際には、必ず彼らの関係性を聞くようにしています。

「学校の友達」「バイト先の同僚」など、様々な組み合わせが見られます。中には「SNSで知り合った友達同士」と答えるグループもあります。

毎月約50組ほどに声をかけますが、そのうちおよそ10組はSNS経由で知り合ったグループです。特別に異質ではなく珍しい組み合わせでもありません。

このように、Z世代にとっての友達作りの場は、オフラインだけでなく、オンライン(SNS)にも拡大しています。

■「#○○好きさんとつながりたい」が意味するもの

彼らはSNS上で共通の趣味やマインドを持つ人を見つけ出し、友達になります。友達作りには主にハッシュタグが活用されています。

例えば「#◯◯好きさんと繋がりたい」という定番のハッシュタグがありますが、この他にも「#わーーーージャニヲタさんと繋がるお時間がやってまいりました。いっぱい繋がりましょ」や「#世界一hiレベルな女と繋がりたい」「#片目界隈(かいわい)」といった、人と繋がることを目的とした、多くのキーワードが生まれています。

これらは全て、同じモノ・コトが好きな者同士でしか知りえない合言葉であることも特徴です。こうして繋がったSNSの友達とは、SNS上でのやり取りのみに留まっていることもあります。しかし、先ほどのSHIBUYA109館内に遊びに来ている子たちのように、オフラインで会って遊ぶこともあるのです。

公園の芝生の上に座って食事をしているグループ
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eli_asenova

■SNSで他校までカンタンに広がる交友関係

また、彼らのSNS友達は住んでいる場所も様々です。他の都道府県に住んでいたり、海外に住んでいたり……等々、居住地や国境を越えて繋がり、関係を築いているケースも見受けられます。SNSによって彼らのコミュニティの可能性がどんどん広がっているのです。

【生の声】学校の友達と共通の趣味はないけど仲良し。趣味の話はSNSの友達としてる。

コミュニティがオンラインにも拡大したことで、オフラインのコミュニティにも変化が生じています。

皆さんの学生時代を思い出してみてください。おそらく学生の頃は、部活やクラスなどの学校のコミュニティが絶対であり、そこでのキャラクターや立ち位置が自分の全てだったでしょう。そして、仲良しグループは趣味や好きなアイドルが一緒など、何かしら共通点があり、その話題を軸に日常の話題が盛り上がっていたのではないでしょうか。

■学校の友達と共通の趣味がなくても「別にいい」

Z世代はというと、学校で日々一緒にいる友達は必ずしも共通の趣味があるわけではありません。例えば、こんな具合です。

【生の声】5人グループで仲が良いけど、K-POPが好きだったり、バンドが好きだったり、ジャニーズが好きだったり、趣味はバラバラ。なので、趣味の話よりも、SNSで気になるカフェの話とか、「最近よく見る動画配信者誰?」みたいな話で盛り上がることが多い。

このように、自分の好きなことよりも、共通項になるSNSトレンドが話題の中心にあるのです。

彼らは学校の友達と、好きなモノ・コトが一緒であることを、それほど重視していないのです。

たとえ学校などリアルのコミュニティに居場所が見つけられなかったとしても、SNSに居場所となるコミュニティを見つけることもできます。ある種の逃げ場や心の拠り所になるコミュニティを作る場を、リアルに限定する必要はないのです。

Z世代にとって、リアルの世界とデジタルの世界の間に垣根はなく、対等でフラットに位置づけられているからこそなせるワザなのです。

空を見上げるフードを被った青い髪の女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

■SNSのリスクを見極めるスキル

このように、彼らはリアル・デジタルに境界線を作らず、両方で複数のコミュニティに属しています。

【生の声】一緒にオシャレなカフェを巡る相手が欲しくてインスタで探した。趣味が近いかどうかは、過去の投稿を参考にしてる。

「SNSでの出会い」と聞くと、危険なイメージを持ち、少し心配になる方もおられるかもしれません。もちろんその気持ちはすごく分かりますし、やはりリスクはゼロではありません。SNSでの出会いをきっかけに悲惨な事件が起きているのも事実です。

しかし、そのようなリスクはZ世代も認識しています。彼らも、何も考えずむやみやたらにSNSで友達を作っているわけではありません。むしろSNSに投稿されているその人にまつわる多くの情報を基に、本当にリスクはないかを慎重に確認した上で交友関係を築いています。

■画像加工の仕方で年代がわかる

例えば、Instagramで「#○○好きさんと繋がりたい」のハッシュタグで検索するとします。するとそこにはたくさんの画像や動画が表示され、その中から共通点がありそうな人を探していくのですが、膨大な数の投稿を全て見ていくわけにもいきません。

Z世代は、まず画像写真の撮り方や加工テイストに目を向けます。そして写真の撮り方や画像加工の仕方で、好きな世界観が似ているかを判断します。さらには相手の年代が自分に近いかも見極めるのです。

感覚的に目星をつけたら、そのアカウントのホーム画面にアクセスし、過去の投稿をチェックしながら、相手についての情報を集めていきます。「友達になりたい!」と思えたらフォローをして、交友関係のスタートラインに立ちます。その後はDMで何度か会話のラリーをすることで、相手のデモグラフィック情報や人間性への理解を深め、交友関係を構築していくのです。

インタビューでは、「やり取りの中で、いきなり“タメ語”(友達口調のラフな言葉づかい)で話しかけてきたら、常識がないなと思って距離を取った」というシビアな声もあるように、人をふるいにかけている実態も浮かび上がってきます。SNS上での友達は、リアルの友達のような無条件な関係ではなく、お互いの目的が明確なことが多いのもポイントです。

ヘッドホンで音楽を聴いている女性
写真=iStock.com/JIE GAO
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JIE GAO

■「ビジュアルコミュニケーション」ネイティブの世代

ここで注目すべきは、Z世代の写真や動画から読み取る情報と、その量の多さです。写真や動画を介したコミュニケーションを「ビジュアルコミュニケーション」と呼びますが、SNSネイティブであるZ世代は、このスキルに非常に長けています。そして、SNSで友達を作る際にもこのスキルを発揮しています。

【生の声】写真の加工の仕方で、大体同世代かどうか分かる。

これまでも多くの若者から、SNSで自分と気が合いそうな人を見つけ、過去の投稿をチェックすることで仲良くなれそうかどうかを判断するという話を耳にしました。また、オフラインで友達と初めて会った場合でも、SNSでのビジュアルコミュニケーションを重視しています。

ここでまた皆さんにお聞きしますが、初めて会った方とさらに仲良くなりたい、と思った際に最初に交換するものは何ですか? 電話番号やLINEなどのような連絡ツールだったり、Facebookを思いつく方もいるかもしれません。

Z世代はというと、初対面の友達と最初に交換するのはInstagramのアカウントであることが一般的です。なぜかというと、Instagramは写真や動画を中心にした自己紹介ツールとしても活用されており、これまで投稿している写真や動画からお互いの人となりを知ることができるからです。

■投稿から「その人らしさ」を感じ取る

そのため、彼らは自身のアカウントに投稿する画像や動画にも非常にこだわりを見せています。特に投稿の雰囲気に統一感を持たせることを戦略的に行っています。「こういう雰囲気が好き」と周りに伝えることが目的になっているのです。ビジュアルコミュニケーションスキルに長けているということは、視覚的な情報から雰囲気やニュアンスを感じ取る力が高いということです。

彼らはテキストで多くを語らずとも、ビジュアルの世界で共感できる感受性を持っています。そしてSNSの写真や動画の投稿から「その人らしさ」を感じ取り、仲良くなれるポイントを見つけているのです。

【生の声】ザラザラした質感のフィルターがかかってて、暗めの写真になってて、エモい。

Z世代のこの写真や動画の「ニュアンス」を感じ取り解読するスキルこそが、ビジュアルコミュニケーションの軸になっています。

例えば、よく若者言葉として使われる「エモい」という言葉ですが、これは「エモーショナル」を意味しています。具体的には、ノスタルジック感や趣のあるさま、あるいは感傷的な状況など、感情が動かされるような場面を表現するときに使われます。

■「エモい」は言語化しづらいもの

しかし、Z世代に「エモいってどういう意味?」と聞いても、このように形式化された回答は返ってきません。むしろ、「ザラザラした質感のフィルターがかかってる感じ」とか「西日でちょっとぼやけてる感じの写真」といった実感的な言い方で返答します。やはりビジュアルを起点としたニュアンスを表現しようとしているため、雰囲気や情緒的なワードが目立ちます。

そして、彼らにエモいと思う写真見せて! とお願いすると、どの人も大体同じような雰囲気の写真を見せてくれます。Z世代の間には、「エモい画像・動画」に対する視覚的な共通認識があることが分かります。彼らにとって、そのときの感情を画像や動画を介して共有することは当たり前であるからこそ、画像や動画からニュアンスを感じ取ることは容易なことなのです。

それだけでなく、それを実現するために必要な構成要素を無意識に読み取り、写真のフィルターやエフェクトを活用して再現できるのが、ビジュアルコミュニケーション・ネイティブであるZ世代なのです。

■なぜ「映える投稿」にこだわるのか?

もう少し、彼らの表現のこだわりについてお話しします。ビジュアルコミュニケーションでは視覚的な情報が最も重視されますが、最も分かりやすいのは「映え」なのではないでしょうか。

【生の声】遊びに行ったらカメラロールが同じ写真で埋め尽くされる。
長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)
長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)

「インスタ映え」という言葉が流行語大賞に選ばれたのは2017年ですが、Z世代は「映えること」を当時から変わらず非常に重視しており、SNSには「映える」写真や動画を投稿することが、彼らの暗黙のルールになっています。

彼らは「映え」を求めて、カフェや旅行など様々な体験に積極的に出向き、そこで必ず写真や動画を撮影します。

撮影をすることを見越して、事前に友達と当日のファッションスタイルについて相談し、“おそろコーデ”(お揃いのコーディネート)や“リンクコーデ”(友達とコーデの一部をリンクさせる)をして出かけることも当たり前です。そして撮影枚数も2枚や3枚ではありません。スマートフォンのカメラロールがほぼ同じような写真で埋め尽くされるくらい撮影し、その中からSNSに投稿できるベストショットを選び抜いています。

■「有名になりたい」わけではない

なぜZ世代にとって「映える」ことが、ここまで重要なのでしょうか? 彼らにその理由を聞いてみても、「インフルエンサーになりたいから」とか「SNSのフォロワーを増やしたいから」といった“有名になって承認欲求を満たしたい”的な声はほとんど聞かれません。

こうした「映え」へのこだわりには、実は彼らのコミュニケーションに対するモチベーションの高さが関係しています。多くのZ世代は「映え」ている写真や動画をSNSに投稿することで、SNSで繋がる友達から、「ここに遊びに行ったんだ!」「かわいい!」などの反応を期待しています。この反応をきっかけに、新たなコミュニケーションが生じ、同じテイストの「映え」が好きな友達と繋がっていくキッカケが生まれることに高い価値を感じているのです。

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長田 麻衣(おさだ・まい)
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長
総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。繊研新聞連載「シブヤ109ラボ所長の#これ知ってないとやばみ」、宣伝会議等でのセミナー登壇、TBS「ひるおび」コメンテーター、その他メディア寄稿多数。

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(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長 長田 麻衣)

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