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「企業のリツイート企画は、とりあえず鍵アカで参加」知ったかぶりの若者向け施策が失敗に終わる根本原因

プレジデントオンライン / 2023年4月15日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Victollio

若者向けの販促施策をするときの注意点は何か。SHIBUYA109のマーケター・長田麻衣氏は「むやみに若者向けの施策を打っても、タイムライン上のノイズと判断されて終わるだけ。Z世代は各SNSのアルゴリズムも含めた特性を理解していて、自分の意思とタイミングで使い分けている」という――。

※本稿は、長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■トレンドを知るきっかけは当然SNS

ここまで、コミュニケーションを目的としたSNSの使い方と、彼らの価値観について説明してきました。SNSを利用する一番のモチベーションはコミュニケーションですが、情報収集の場としても活用されていることも忘れてはいけません。まずは、Z世代流の情報収集の観点からSNSとの付き合い方事情をお伝えします。

【生の声】新しい商品やトレンドは、大体SNSで知る。

2021年に私たちがZ世代男女400人を対象に実施した調査では、「新しいブランドや商品を知るきっかけ」のトップ3はTV番組・CMを押さえてSNSが席巻し、女性においては7割がInstagramと回答するなど、SNSの影響力の高さがうかがえる結果となりました。

彼らはSNSを通じて新しい商品やサービスを知るだけでなく、その商品が本当に必要なものかを検討するための二次的な情報(口コミなど)も収集しています。その存在なしには彼らの消費行動について語れないほど、SNSは重要な情報源なのです。

■周りの目を意識する習慣がついている

Z世代は情報収集において、中立的な立場であることを意識しています。

彼らは自分の考えは持ちつつも、ニュートラルであり、バランスが取れている状態を目指します。そして彼らは特定の意見に偏ることなく、多様な意見の存在を知ることに重きを置いています。

そのため一つの情報について、SNSも含めた複数メディアを駆使して、他者の意見を基に多角的な視点から情報を吟味しています。

【生の声】インフルエンサーや一般の人がどんな評価をしているかを必ずチェックする。

このコメントの背景には、彼らがSNSで多様な価値観や考え方に触れていることが当たり前の日常があります。

そして、常にSNSでゆるく繋がる環境で育ったことにより、周りの目に対する意識が高いことも関係しています。

■SNSは目的に応じて「使い分け」

彼らは消費だけでなく、政治に関しても、社会の変化や多様な価値観に目を向けられる視野の広さと、情報接触におけるバランス感覚を求めています。

【生の声】Twitterはニュースとか時事問題、インスタは友達の近況とか、カフェの情報を見る。

SNSで情報収集をすることが当たり前であるZ世代ですが、「検索」に至るまでには、やや時間がかかるようです。実際にインタビューでも、「何か知りたいときにInstagramで一番よく見るのはおすすめ欄のタブだけど、ワードを入れて調べることはほとんどせず、検索窓の下に出てくる関連画像・動画を永遠に見て、気になるものを見つけていくことの方が多い」という声が聞かれており、この回答は年々増えている傾向にあります。

「おすすめ欄は自分の興味のあるものが出てくるようになっているので、そこを見れば自分が知りたい情報は大体得られる」と話すZ世代は多く、感覚的にSNSのアルゴリズムを理解している様子です。

【生の声】自分のおすすめ欄に好きなトレンドが集まってくるように、インスタパトロールして好きな投稿に「いいね!」してる。そうするとおすすめ欄に出てくる内容が変わるから。

つまり、検索をしてむやみに情報の波をかき分け、本当に欲しい情報を探し当てることに時間をかけるよりも、自分の欲しい情報の輪郭をおすすめ欄の中である程度作った上で検索をしていくという、効率的な情報収集の姿勢です。

公園の芝生の上に座って食事をしているグループ
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eli_asenova

■インスタは「自分の好き」が集まる場所

これは情報過多である現代において、情報の波を乗りこなすために必要なスキルともいえます。そしてZ世代は、各SNSの特性を理解し、求める情報に合わせてプラットフォームを使い分けています。端的には以下の4つのケースに分類されます。

1【Instagram】自分の“好き”が集まっている場所
【生の声】この商品はどんな人が使っているモノなのかを確認する。

女性の7割にとって、新ブランド・商品の認知のきっかけとなっているInstagramは、自分の好きなモノやコトが詰まっているSNSだと認識されています。

主にストーリーズ・フィード投稿・おすすめ欄で受動的に情報に触れることがスタンダードとなっていて、自分の好きな世界観に合うモノやコトが集まる環境であることが利点です。

そして、さらに知りたい情報がある場合にハッシュタグ検索を活用し、能動的な情報収集に切り替えます。インタビューでも「ハッシュタグが付いている投稿件数だけじゃなく、投稿されている写真のテイストから、自分と同じ世界感が好きな人たちからどのくらい人気があるアイテムなのかを確認する」と言う声も聞かれており、商品購入後に自分が使用する場合、「周りからどう見られるか」というイメージを客観的に構築する場にもなっています。

集まってスマホを使用する人たち
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

■自分の世界が広がるTikTok

2【TikTok】新しい“好き”が見つかる
【生の声】Instagramは自分の好きなモノが集まるようになっているけど、TikTokは「キミ、こういうのも好きじゃない?」って、少し違う角度からおススメしてくれる。

Instagramは、アルゴリズムによって自分の好みに最適化されているため、ど真ん中で好きなモノは見つかるのですが、少しずらした視点から「こんなものも好きなのでは?」という提案をしてくれるのはTikTokが適していると認識されています。そのため、新しい好きなモノを探しに行く場所として適しているようです。

またTikTokでは、能動的に検索をするというよりも、おすすめ欄をひたすら見ていくことで新しい情報に触れているのも特徴です。

■YouTubeで情報を深く吟味する

3【YouTube】自分の“好き”を深める。そしてプロセスを知る
【生の声】インフルエンサーの解説動画の中で紹介されている商品の使い方を見ることで、本当に必要かどうかを吟味する場になっている。

YouTubeは「欲しい!」と思ったものの詳細情報を動画で知りたいときに活用されています。「コスメの発色などは別のSNSでも確認できるけど、YouTubeではそのコスメを使ってどのようなメイクができるのか、もセットで知れる」という声も聞かれており、長尺の動画であることから、よりリアルな情報を得られると捉えられているため、商品に対する検討度はInstagramやTikTokよりも深いケースが多く見られます。

Instagramと同様、購入後に自分が使用するイメージを膨らませることに繋がっていますが、YouTubeは手入れの方法や着回し・クリーニング方法など、実務的な解説が多いことから、主観的な利用イメージを構築するために活用されています。

YouTubeはプロセスを確認する場所でもあります。道順や、旅行先での観光スポットの回り方など移動に関する視覚的な情報を得る場所にもなっています。

■詳しい口コミはTwitterで知る

4【Twitter】テキストで詳しく知る
【生の声】Twitterはニュースとか、世の中で何が今注目されているのかを確認する場所。

Twitterは時事問題や世間の一般的なトレンドを知る場として活用されていますが、商品に関してより詳細な口コミや解説を確認できることが特徴です。

Z世代は、主にタイムラインかトレンドの欄を確認しており、タイムラインには自分がフォローしている人を中心に、興味のある情報が集約されています。

スマホでSNSを利用する女性
写真=iStock.com/grinvalds
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/grinvalds

またトレンド欄については「トレンド欄に季節のイベントやキャンペーンが入っていると、意識して購入するきっかけになることがある」という声もあり、世代問わず注目している世の中の動向に合わせた消費行動のきっかけにもなっているようです。

このように、彼らは各SNSのアルゴリズムも含めた特性も理解しており、情報の質や深度を自分の意思とタイミングで調節しています。

またSNSでの情報収集において、投稿そのものだけでなく、コメント欄も確認するようにしているのも、Z世代の特徴です。

これは「同じ商品を購入した人や、購入を考えている人が、どう評価しているのか」が、彼らの意思決定には重要な情報であることが関連しています。

■SNSキャンペーンへの冷ややかな目

このように、Z世代は生活の中心にあるSNSを活用するにあたって、様々な工夫をしています。

企業サイドとしては、SNS上でZ世代と接点を持つ際には、彼らにとってSNSがどういう場所なのかに常に目を向ける必要があります。特に、コミュニケーションの場であることを忘れてしまいがちですが、企業のSNSキャンペーンなどのアプローチの仕方によっては、SNSのタイムライン上のノイズになると判断され、友達とのコミュニケーションが行われていない鍵アカなどで処理されてしまうこともあります。

【生の声】企業のリツイートキャンペーンは、周りにこんなのリツイートしてるんだ、って思われたくないから、とりあえず鍵アカで参加している。

実際にこんな手厳しい声も聞かれており、企業が彼らにリツイートしてもらうことで、周りの人への拡散を期待したつもりでも、意図しない形で(しかも企業は気づけないまま)施策が終わってしまう危険性もあります。

接点を持ったZ世代のその先に存在するものは、彼らが大事にしているコミュニティでのコミュニケーションであることを、企業側が意識し、尊重することは、最新の情報をSNSで発信するよりも重要なポイントになるかもしれません。

■Z世代の情報感度にも男女差は見られる

男女の境目がない時代ではありますが、私たちの定量の調査の結果やインタビューでは、商品認知から購入に至るまでの購買行動には、男女で違いが見られています。

男女で最も異なるポイントは、SNSを使った情報検索の身近さです。特にInstagramの活用については大きな差が見られており、女性の方が男性よりも様々な目的で活用していますが、特に情報収集目的での利用頻度に関しては約2倍の差が見られています。

【生の声】女性「SNSで商品紹介の投稿を見ても、本当に良いのか、他の投稿を確認しに行く」
【生の声】男性「いつも参考にしているインフルエンサーが時計のプロモーション案件の動画を投稿しているのを見て購入した」

インタビューでも、女性はInstagramをコミュニケーションから情報収集まで、幅広い用途で活用しているのに対し、男性からは「Instagramは友達の様子をチェックするだけで、検索はあまりしない」という声が多く聞かれており、コミュニケーションを目的とした用途に重きを置いている傾向が見られています。

性別を問わず「失敗したくない」という消費価値観を持っているZ世代ですが、SNSでの情報収集においては、男性はやや受動的、女性はやや能動的な実態が見られており、情報源の検討時間も女性の方が長い傾向にあります。

■調べつくす女性

長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)
長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)

インタビューでも、「SNSで商品紹介の投稿を見ても、本当に良いのか、他の投稿を確認しに行く」という女性に対し、男性からは「動画配信サービスは広告が飛ばせないので見てしまう。広告は気になれば最後まで見ることもあるし、どんな商品か検索することもある」という声が聞かれており、「良い」と訴求されたものに対して素直というか、疑念を持つことが少ない様子が見られました。

実際に、男性はテレビCMでの商品との出会いや、検索エンジンでの検索行動が多く、従来の広告訴求が届きやすい消費行動が明らかになっています。

また、広告やPR投稿からの購入経験についても、女性は32.5%なのに対し男性は49.5%と差が出ており、Z世代男性の約2人に1人は経験があるという結果も出ており、女性よりも広告・PRの影響を受けやすいともいえます。

価値観や消費実態がジェンダーレスになってきている今の時代に、なぜ情報収集においてこれだけの男女差が生まれているのでしょうか。

■情報収集スキルの差は「検索ワードの具体性」

それは、男女の情報検索スキルの差に起因しています。私たちはこれまでの調査で、情報収集の際に使用するワードをヒアリングしていますが、女性は「#消えそうな色コーデ」「#塩系インテリア」など、かなり具体性があり、商品名ではない造語が多く挙げられている一方、男性は「男性ファッション」や「男子美容」など、抽象的で漠然としたワードで検索をしているケースがほとんどで、男女で情報検索に使用されるワードの具体性が異なる実態が見られています。

【生の声】女性「#消えそうな色コーデ」/男性「#高校生ファッション」で調べる。

また男性に関しては抽象的なワードを複数連ねて検索しているケースが多く見られているため、Twitterや検索エンジンに使いやすさを感じていることが考えられます。

それに対してInstagramは、一つのワードでしか検索できないというプラットフォームの建て付け上、検索ワードが具体的であるほど検索結果の精度が上がります。そのため、具体的な検索ワードを知っている女性は情報収集が快適にできていますが、定義が広すぎるワードを検索に使用している男性にとっては、求めていない情報もたくさん含まれてしまうため、SNSが効率的かつ快適な情報収集の場になっていないのです。

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長田 麻衣(おさだ・まい)
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長
総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。繊研新聞連載「シブヤ109ラボ所長の#これ知ってないとやばみ」、宣伝会議等でのセミナー登壇、TBS「ひるおび」コメンテーター、その他メディア寄稿多数。

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(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長 長田 麻衣)

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