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「お子さんは発達障害の可能性があります」学校からそう告げられたとき親が気をつけるべき"4つの鉄則"

プレジデントオンライン / 2023年3月15日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

学校の教師などから「お子さんは発達障害の可能性があります」と言われたらどうすればいいか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授は「まずは先生の言葉を冷静に受け止めることだ。そのうえで、慌てて医療機関に行くのではなく、子どもの生活リズムをチェックしてほしい」という――。

※本稿は、成田奈緒子『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

■まずは冷静になって先生の話を聞く

個人面談などの場で、「お子さんは発達障害の可能性があります」と学校や園の先生に言われたときに、どう対処したらいいでしょうか。

私は、医療機関や子育て科学アクシスで発達障害などの方を診る他に、地域の園や学校で理事やアドバイザー的な仕事もしています。そのため、教育現場に関する相談を先生方や教育に携わる方から受けることがあるのです。また、大学では特別支援教育を志す学生を教えていることもあり、学校教育に関する知識も少なからずあります。

こういったところから、学校や園の先生とのつき合い方について、私がよいと思う対応法をお伝えしたいと思います。

1.冷静に受け止める

園の先生、学校の先生から「あなたのお子さんは発達障害の可能性があります」と言われたら、親御さんがビックリしたり、不安になったりするのは当然かもしれません。でも、いくら不安になったとはいえ、先生の言葉を即座に否定したり、言い返したりするのはやめましょう。

このようなときは、とにかく冷静に、最後まで先生の話を聞くことをおすすめします。また、先生から指摘を受けることで、パニックになる親御さんも多いのですが、パニックになることはありません。「先生から怒られちゃったじゃない、あなたのせいよ」と、子どもを叱ったり、子どもを変えようといろいろなルールを押しつけたり、問いただしたりする必要もありません。

■子どもが家庭と集団生活の行動を分けていることも

とにかく、まずはゆったりと構えて最後まで先生の話を聞いてみてください。園や学校の先生は、あなたの知らない子どもの姿を毎日見ています。個人面談は「学校と家庭、それぞれにおける子どもの情報を共有する大切な場」。限られた時間の中で、教師の立場から「気になっていること」を伝えてくれているのです。

人によっては言い方がきつい先生もいるかもしれません。ただ、その言い回しに左右されるのはもったいない。先生たちは決してその子を罵倒したり、否定したりしたいわけではありません。子どもの問題を一緒に考え、子どもによくなってほしいから勇気をもって伝えているのです。それらを踏まえて、敬意をもって先生の言葉を受け止められるといいですね。

子どもは小さいながらも家と集団生活の場で行動を分けています。園や学校では、家の中の子どもとは違う行動をしていることも多々あるのです。

教室で粘土で遊んでいる子どもたち
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

たとえば、私の診ているお子さんで、おうちでは大変聞き分けのよい「いわゆるいい子」である小学校2年生の男の子がいました。お母さんは学校での様子を毎日その子から聞いていて、「ぼくはみんなと仲良くしている。クラスに暴れん坊がいるけれど、ぼくがその子を止めているんだ」と言われていたので、安心していたのです。しかし、突然先生から学校に呼ばれて、お子さんは発達障害かもしれませんと言われました。お母さんは驚いてにわかには信じがたい気持ちになったそうです。

■先生からの情報は受け止めるべき貴重な証言

先生から様子を聞くと、「授業や団体行動のときに、ちょっとしたことで怒りが抑えられず、お友だちとけんかになります。体格がよいのでクラスで暴れるとみんな怖がってしまいます」など、クラスメートとうまくコミュニケーションがとれず、みんなに怖がられていることがわかったのです。その子はお母さんが大好きで、お母さんには自分の様子を他の子がしていたかのように報告していたようです。

こんな事例もあります。この場合、学校での子どもの行動は、先生から教えてもらえなければ、親は一生知りえないものでした。このような「親がまったく知らない子どもの情報」を教えてくれる貴重な人が、学校や園の先生なのです。こう考えると、先生が子どもについて話してくれたとき、たとえその内容が多少ネガティブなものだったとしても「うちの子のことを気にかけてくれてありがとうございます」と、受け止められるのではないでしょうか。

まわりと比べてお子さんの成長が遅く、そのせいで周囲からさまざまなことを言われている親御さんは、自分の子育てに不安を持つことが少なくありません。そのこと自体は仕方がないことだと思うのですが、問題なのはその不安の裏返しで、攻撃的な態度をとってしまうことです。

■親の不安や攻撃性はそのまま子どもに伝わってしまう

子どものことを思って「よかれと思って伝えた」先生の発言を「子どもが否定された!」と、攻撃的に受け止めてしまうと、親御さんも先生も苦しくなります。そしてそれは何より子どもにとってよくないのです。

親の不安や攻撃性は、近くにいる子どもに伝わります。つまり、親が不安を感じ攻撃的になると、子どももそれを倣(なら)うように不安で攻撃的になるのです。これでは、子どもの行動は改善しませんし、先生との関係も悪くなる一方でしょう。

先生だって人間。完ぺきなわけではありません。だからこそ、互いを思いやるコミュニケーションが欠かせないのです。先生から子どもについて何か指摘をされたとき、言い返したくなってもとりあえず飲み込み、「いつもいろいろ教えてくださってありがとうございます、ご迷惑をおかけしてごめんなさい」と、言ってみましょう。かたちだけでも言葉にしてみることで、その後の会話がスムーズになると思います。

相手の言葉を否定せずに受け止め、そこからボールを投げ返すように言葉を返す。これはコミュニケーションの基本です。気持ちを受け止めて感謝の言葉を伝えたその上で、自分の言いたいことを主張してみると、先生もこちらの話を聞く下地ができているので、スムーズに話し合いができるでしょう。

学校の先生との関係が悪くなれば、貴重な子どもの情報をもらえなくなり、子どもの学校での様子を聞けなくなります。「発達障害ではないでしょうか?」と言われ、とても驚いたとしても、まずは受け止めることが大切なのです。

■病院に行く前に生活リズムをチェックしたほうがいい

2.生活リズムを整える

先生から言われたことをまずは受け止めるのが大切というお話をしましたが、もし「発達障害だと思うので、すぐに病院に行ってください」と言われたら、その言葉通りすぐに病院に行くのは時期尚早です。病院に行く前に、生活リズムは整っているかチェックしましょう。

しっかり眠れているか、食べられているか、生活を振り返ってみてください。もしも、生活リズムが乱れていたり、睡眠が十分とれていないのであれば、それを見直すことから始めます。くり返しになりますが、まず、朝早く起きることから始めましょう。

ベッドで眠っている子ども
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

小学校中高学年にもなると、ずっとゲームやスマホをやっていて、なかなか寝てくれないという話もよく聞きます。こんなときでも話し合いを抜きに、ゲームやスマホを取り上げるのは禁物。やる時間、いつやるかなどゲーム・スマホで遊ぶときのルールを話し合い、自分で決めてもらいましょう。私はこのように話しています。

「Dくん、忘れ物が多いって聞いたけど、忘れたくて忘れているわけではないよね。実はね、忘れ物をしないためには、たくさん寝るといいんだって。早く寝るためにはもう少しだけ早くゲームを終われるといいよね。ゲーム、何時くらいまでに終わらせるか決めない?」

こうした会話をきっかけに子ども自身に考えてもらい、就寝時刻を決めるのです。先生からの指摘をよいきっかけにして、生活を見直してみましょう。私のこれまでの経験上、親から「決めつけられた」ことではなく、話し合った末、子どもが自分で決めたルールのほうが守れる可能性が高いです。

■勉強よりも生活リズムを優先したほうがいい

3.勉強を頑張らせすぎない

親御さんが学校の先生からよく言われる言葉に「勉強を頑張らせてください」というものがあります。こういう先生は多くて、「家庭学習は親の役目」「家でもっと勉強させるようにしてください」などと言われることも少なくありません。このように言われた親御さんは、「私が頑張らないといけない」と思い、お子さんの横に張り付いて勉強させてしまう方が多いのですが、それはたいへん間違った方向です。

多くの場合、勉強は親御さんの家事が終わった後、夜の9時過ぎから深夜にかけて行うことが多いので、子どもの大事な睡眠時間が削られて、脳が育たず、発達障害もどきの状態に発展していくこともあります。そういった問題が現れるきっかけが、先生から言われた言葉というのは、残念ながらよくある話です。

親御さんは、先生に何を言われてもまずは生活改善を目的にして、あとは泰然と構えていましょう。学校での行動に問題があるのなら、勉強で得意なものをつくってあげようと、無理に勉強に力を入れてしまう親御さんも見受けられますが、生活がおろそかになることは絶対にNGです。

■学校の環境改善が必要な場合は敬意が重要

4.生活リズムの改善でうまくいかないときは、病院へ

上記の流れで、子どもの生活リズムを整えつつ、子どもの様子を観察します。

生活リズムを改善しても、発達障害もどきの症候が収まらない場合、学校の環境改善も必要であれば先生に相談をしましょう。話し合いは先生も親御さんもどちらにもストレスがかからないようにできるといいですね。「こうしてください」と一方的に話すのではなく、こちらの要望は伝えた上で、学校ができること、できないことを教えてもらい、最善の策を講じられれば一番だと思います。

勉強中、机の上に顔を伏せる子ども
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ここで大事なのは、自分の主張を相手に呑み込ませるテクニックではなく、敬意です。相手への敬意をもって、傾聴を心がけた会話をすることできっとよい結果が出るはず。先生も親も子どもの幸せを祈るという目的では同志だからです。学校の環境を変えてもらっても症候が収まらない場合は、医療機関を受診することになります。

その場合、できるだけ発達障害に詳しい医師のところへ行きましょう。

■不登校になったことを深刻に受け止めないほうがいい

ここからは、先ほどとは趣旨を変え、子どもが「登校渋り」「不登校」になった場合についてお話ししましょう。朝、お子さんが「学校に行きたくない」と言ったらどうしますか? 親御さんはショックを受けると思います。そして、「なんで学校に行かないの?」と聞いたり、「学校は行くものでしょう」と強く言いたくなるでしょう。

子どもに学校に行ってほしい、その気持ちは痛いほどよくわかりますが、学校に行かないということは、お子さんには家庭での生活しかなくなるということです。これは「いい生活改善のチャンス」。ぜひ、そう捉えていただけたら幸いです。「学校へ行きたくない」と言い出すのは、経験上、小学校4年生くらいが多いように思います。もしそのくらいの時期にこういったことを言いだしたら、ここからの私の話を思い出してください。

まずは、親が学校に行かないということをあまり深刻に受け止めないことです。子どもにも「へー、行きたくないんだ」と、そのまま告げるくらいの受け止め方がベスト。行き渋りの始まりに「学校には行かなくちゃ」「勉強が遅れてしまうよ」など、正論を言っても子どもは黙り込むだけです。そして会話がなくなり、不登校が長期化するケースも少なくありません。

「そうか、行きたくないんだね」と、お子さんの言葉を肯定的に受け止めると、子どもは驚きます。叱られると思っていたからです。

ランドセルを背負った子どもを抱き締める母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■不登校に意思表示は信頼の証拠

子どもだって、学校に行かなくてはいけないことはわかっています。行きたくないという気持ちを親に言えるというのは、親子の信頼関係が育っている証拠です。

自分の言った言葉を肯定されると、「だってさ、昨日帰りに○○くんとけんかしちゃったんだ」などと「行きたくない理由」を言ってくれることもあります。こうなったらしめたもの。お子さんの話をうなずきながら傾聴します。何割かの子どもはそれだけで、「でもなぁ、学校行かないと勉強遅れちゃうし、やっぱり行くわ」と、勝手に学校に向かってくれます。

たとえ、そういうやりとりの後に、「今日は学校に行かない」という結論になっても、黙って受け止めましょう。子どもが決めたことを親が受け止めると、不登校は一日で終わることが多いものです。一番よくないのが、学校に行かないことで子どもの人格を否定してしまうこと。学校に行かない=その子自身が悪いということではありません。

■簡単なことでいいから役割を与えたほうがいい

小学校中高学年以上のお子さんが学校に行かないと決めたら、「ママやパパは仕事が忙しい。あなたは家にいるわけだから代わりに、家のことをやってね」と約束させます。たとえば、食後の食器を洗うこと、洗濯機を回して洗濯物を干すこと、洗濯物を取り込んでたたむことなど、家にいるからできることを子どもの役割にしましょう。

行うことはなんでもよいのですが、生活をまわす上で外せない作業をしてもらいます。お母さんが帰ってくるまでにご飯をつくるための準備をやってもらうのもよいでしょう。お米をといで、4時に炊飯ボタンを押してもらえれば助かりますよね。

それらを提案し、「やってくれる?」と交渉します。また、お昼ご飯は自分で用意させてください。「給食費、330円もったいないよね」と言い、昼は自分でコストをかけずに食事を用意することを義務としてやってもらいましょう。冷凍食品をチンする、カップスープにお湯を注いで、朝の残りのご飯をおにぎりにして昼食にするなど、そのお子さんができる簡単なものでいいのです。

■昼夜逆転になる前に役割を与えるべき

成田奈緒子『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書インテリジェンス)
成田奈緒子『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書インテリジェンス)

子どもに家のことをやらせるのは、学校に行かない「罰」では決してありません。目的は子どもに役割を与えることです。不登校や行き渋りになっている子は何かしら自信をなくしています。そこで、役割を与えてそれをこなしてもらい「ありがとう、助かった」と親から伝えることで、子どもの自信をつけるのです。

家の中で何もしないでいたら自己評価は低くなりますが、家事をしてありがとうと感謝されれば、自己肯定感が上がります。こうして家庭の中で人格が認められて、自信がつけばいつかは必ず学校に行くようになります。「こんな自分なら学校に行っても大丈夫だ」と思えるようになるからです。

よく不登校で昼夜逆転してしまった、朝からゲーム漬けになってしまったという話を聞きますが、これらは一番避けたいケースです。昼夜逆転してしまった後から「おうちの仕事をやってね」「おひるごはんは自分でつくってね」と約束することは難しいので、行かないと決めた最初の段階で、この約束をすることが肝心です。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
1963年、仙台市生まれ。米国セントルイスワシントン大学医学部、獨協医科大学、筑波大学基礎医学系を経て2005年より文教大学教育学部特別支援教育専修准教授、2009年より現職。2014年より子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。主な著書に『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(山中伸弥氏と共著、講談社+α新書)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)、『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(共著、産業編集センター)、『高学歴親という病』(講談社+α新書)、『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書インテリジェンス)など。

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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子)

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