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スキルも知識も経験もあるのに、社外で通用しない…1社に長く務めたシニア層の致命的な"弱点"

プレジデントオンライン / 2023年5月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

1社に長く勤め続けることは、果たして良いことなのか。みらいワークスの岡本社長は「シニア層などでキャリアチェンジに失敗する人は、『俺って結構仕事できる』と慢心していて、外の世界の価値観を知らずに生きてきた人が多い」という――。

※本稿は、岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■外部からのフィードバックを得られているか?

本稿では、新しい働き方を皆さんに示していきます。人生100年時代に、会社組織だけにとらわれずに自由に働いていけるための「ポータブルスキル」の見出し方・身に付け方を、一緒に見ていきましょう。

まず、「ポータブルスキル」の習得には、外部からのフィードバックを得られる環境をつくることが大切です。

日々の仕事に対して、上司や同僚から「今回の○○は良かったよ」「この点は、今後も少し改善が必要だね」「今度はこれにチャレンジしてみたら?」というフィードバックが得られているのならばいいですが、大抵の場合、周囲も忙しくて、なかなか他人のことまでケアはできないもの。そういう場合は、今いる会社から少しでいいので、外に踏み出してみることをお勧めします。

■社外からの評価は、よりダイレクト

今いる環境から外に出ることのメリットは「フィードバック」が可視化されることです。依頼された任務をこなし、その出来がどうだったのか。その評価は社内の人よりも社外の人からの表現のほうがダイレクトです。「すごい良かったです!」「次回もお願いします!」と感謝されるのか、それとも「ありがとうございました」だけで次はないのか。

会社外の仕事の「フィードバック」は、時にドライすぎるくらい明確です。その評価が良ければ、その路線でますます頑張ればいいし、悪ければ「何が悪かったのか」を見つめなおすところから、軌道修正を図ればいい。このサイクルが、「自分のポータブルスキルは一体何か」という疑問に対する答えになっていくのです。

■「オレはできる」と勘違いしたまま働いていないか?

ここからは、皆さんが今の環境から、もっともいい形で、外の世界に踏み出すためのマップを示していきたいと思います。

皆さんの中には、様々なステージの人がいると思います。ダメ出しされないから「俺はできる」と勘違いしたまま働いている人。今の会社で十分な経験とスキルを身に付けているのに、適切な「フィードバック」を得られないがために、その価値に気づいていない人。社外での活動をしたいと思っているものの、何から始めればいいのか分からない人。そもそもフリーランスなんて、一生無縁だと感じている人……。いずれの段階でも、ここからの話にはどうぞ耳を傾けてほしいのです。

今、社会はどのような変化の渦中にいるのか、これからの社会で生き残れる個人とは、どういうスキルとマインドを持つ人なのか。どうかそうした情報をもとに、ご自分のキャリアと照らし合わせて考えてみてください。

■互いに仕事ぶりを評価しあう環境

私は若い頃から、自分がした仕事に対して、周囲から「フィードバック」をもらうのが好きでした。

最初に勤めたアクセンチュアという会社がまた、そうした文化を持つ会社でした。プロジェクトが終わったタイミングで、一緒に業務を行ってきたプロジェクト・メンバーたちに時間を取ってもらい、自分の仕事ぶりがどうだったか評価してもらうのです。

オフィスで若いビジネスパーソン。
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

褒められること以上に、ダメ出しされることも多かったのですが、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥です。言われた時は「なにくそ!」と内心思っても、後から冷静に考えれば、指摘は大抵当たっていたものです。

ただ、他の会社の話を聞くと、そういう環境ばかりではないようです。特に最近は上司が部下に、あまり強くものを言えないという事情も耳にします。「あまり強く言うと、新人が辞めてしまう」「すぐにパワハラだと訴えられる」と。たしかに相手に過度な心理的ストレスを与えてしまうのはNGですが、シンプルに「あなたの今の仕事のやり方はダメですよ」と指摘できないのも、どうなのでしょうね。上司は不満を持ちつつ心にためていくことになるし、なにより本人の成長につながらない気もします。

■フィードバックは絶好の成長機会

その点、フリーランスはシンプルです。請け負った仕事の出来が悪かったら、次の契約更新がされないだけですから。あるいは「半年」の契約だったはずが、途中で打ち切られることもあります。もちろん基本的には文書で契約を結んでいるので、理由なくして一方的に企業から契約を反故にされることはありません。でも残念なことに、フリーランス側が企業の求めるパフォーマンスを発揮できないこともありますよね。そうした場合、企業からはきちんと理由を告げられます。「○○のパフォーマンスが出ていないから」と。

こうしたフィードバックは、絶好の成長機会です。もちろんダメ出しなんて、誰だってされたくはありません。でも、自分の仕事が良かったのか悪かったのか、分からないまま、なんとなく何年も“仕事”をし続けるよりも、よほど成長スピードは速くなると、私は確信しています。

■良い評価は、口コミで広がっていく

私自身もフィードバックの重要性を感じたエピソードがあります。サラリーマン時代に共に働いていた人と、フリーランスになってから10年ぶりにプロジェクトで一緒になりました。プロジェクトの終わりにフィードバックをお願いすると「岡本は前はもっと尖っていた。クライアントにぶち込んでいた(笑)」と言われました。この言葉が自らの学びと励みになりましたし、「トーク・ストレート」を実施してくれたことに、今でも感謝しています。

また、良い評価は、いわゆる口コミでも広がっていくものです。フリーランスとして仕事をしていれば、次第に「○○さんからご紹介いただいたのですが」と、別口の仕事も舞い込んできます。

一緒に喫茶店で冷やしながら携帯電話を見ている2人の若いガールフレンドのクロップドショット
写真=iStock.com/Moyo Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Moyo Studio

逆にもし、何年もフリーランスを続けながら、常に新規顧客ばかりで、リピーターになってもらえない、口コミももらえないとなれば……、それこそが良からぬ「フィードバック」です。自分の仕事ぶりが、依頼主たちの求める水準に達していない証拠かもしれません。

■会社の「越境教育」は千載一遇のチャンス

とはいえ、「失敗を経験しろ」といっても、わざわざ挫折を味わいたい人などいません。出世街道に乗り始めた管理職に今さら「失敗」をさせる企業もないでしょう。ならば、できるだけ若いうちに、日頃の業務とは異なる環境・立場に身を置いて、強制的に「経験」を積むしかありません。それを可能にするのが、社外出向などの「越境教育」です。

「越境教育」の良いところは、「失敗や挫折」を経験できること、そして「多様な価値観・視点」が生まれることです。

どの会社でも、その組織なりの常識・非常識があります。社内で共通の価値観や仕事のやり方もあるでしょう。でも、それらは一歩その組織を離れれば、まったく通用しなくなります。上下関係が厳密な組織もあれば、フラットな企業もあります。仕事のやり方も千差万別です。「自分たちとは違う文化がある」ことを知ることこそ、多様性を知る第一歩。目からうろこの体験を、ぜひ若いうちに味わってほしいのです。

■自分は本当に、社外で通用するのか?

「思った以上に、自分は外では通用しない」と痛感するだけでも、外に出る価値は十分にあります。「俺って結構仕事できる」と慢心していた人が、実は「その組織のシステムの恩恵にあずかっているだけ」だったり、「単に会社の名刺で仕事ができていただけ」だったりすることってありますよね。

オフィスでストレスを感じるビジネスウーマンのシルエット。
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

「これまでうまくいっていたのは、個人の能力ではなく、単純に企業の看板あってのことだった」と気づくのは、結構きついものがあります。でも、その事実を知れただけでも儲けもの。

最近は、NTT東日本が社内研修制度として、自分の好きな会社に1年間研修に行くというユニークな取り組みを始めています(みらいワークスも2022年から、1名来てもらっています)。1、2年期間を決めて、地方自治体に出向する仕組みを取り入れる民間企業もあります。あるいは、同じ社内でも期間限定で、まったく異なる部署に“出向”する、“副業”をできるなどの仕組みを取り入れる企業もあります。こうした試みがどんどん広まればいいと思っています。

■自分の常識は、外の世界では非常識

それでは、支店を移り変わりながら経験を積むような場合はどうでしょうか。実はこの場合は会社としての常識はそのままに、ただ土地や人間関係を移るだけですから、真の「越境教育」とはなりません。

もちろんリテールをやっていた人がホールセールに行くとか、業務部でオペレーションの効率化に携わるなど、まったく異なる業務に本格的に挑戦するならば話は別です。ただ、社内調整的に「足りないところに人を移動させる」くらいのローテーションや、場所を移動するレベルの転勤を何年も経験するくらいなら、いっそ外の世界を体験するほうが、よほど「ポータブルスキル」に結びつくはずです。

特にシニア層で、新しい職場に馴染めないケースには、「自分の常識は、外の世界では非常識」を知らずに生きてきた人が多いのです。スキルもある、知識もある、経験もある。だけど外の世界の価値観を知らない。異なる世代の感覚に無頓着。自分とは異なる思考法や、仕事の進め方が世の中にあることを知らない(あるいは気づいても無視していいと思ってしまっている)……など。自分のこれまでの経験に固執する人は、まず会社の外では生きていけません。

■「井の中の蛙」だと気づくのは早い方がいい

昨今では、欧米式の「ジョブ・ディスクリプション」(職務記述書)を導入する企業も増えてきています。雇用者と被雇用者が、仕事の範囲や内容、必要とするスキルを確認したうえで仕事に入る形が一般化するならば、「ポータブルスキル」を明確にすることはますます必要になっていくでしょう。若いうちに、自分が井の中の蛙であること、所属する企業名が外れれば世間の人の反応が目に見えてぞんざいになること、他には他のやり方や優先順位があることなどを経験できた人は、その後確実に成長していきます。自分のスキルとして書き込める経験を増やすためにも、まずは副業や社外留学、出向やプロボノ(専門のスキルや知識を使った無償の社会貢献)などの、「越境教育」に積極的に手を挙げていってください。

■フリーランスの真の報酬は「次の仕事」

フリーランスにとって、一番嬉しいことは何だと思いますか。「自由な時間を得られる」「好きな仕事に挑戦できる」「お金を自由に稼げること」「いやな仕事をしなくて済む」「煩わしい人間関係にも悩まずに済む」……、ちょっと考えるだけでいろいろ思い浮かびますが、特に嬉しいのは「ぜひ次もお願いします!」と感謝される瞬間です。

「自分の仕事が評価された」と感じる瞬間、私は「あぁ、これぞ生きている感覚だ」と背中がゾクゾクします。仕事でワクワクできる、ドキドキ興奮できる。時にはそれがハラハラした焦りや、ヒリヒリした危機感に変わることもありますが、そういう危機を乗り越えて、仕事をやり遂げた瞬間にこそ、「仕事をした!」という実感に浸れるのです。

そんなフリーランスにとって最高の報酬は、実はお金ではありません。「次の仕事」なのです。

■心をワクワク躍らせる仕事をしよう

岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)
岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)

企業勤めは、毎月決まった給与やボーナス、充実した福利厚生などを受けることができる反面、自分の仕事が正当に評価されているのか、この給料は自分の仕事に見合っているのかを、実感しにくいというジレンマも抱きがちです。実際に、企業勤め人の多くがこう言います。「自分がこの仕事をやる意味は、果たしてあるのだろうか」「自分は企業にとって必要な存在なのだろうか。代替可能な存在ではないのか」「自分のやった仕事が、見えにくい。誰のためになっているのだろうか」

人生の一時期、そんな悩みに陥るだけならいざ知らず、長い人生そんなもやもやとした感情にとらわれ続けるのはもったいない。人生100年の大半を占める「仕事」です。どうか心をワクワク躍らせ、「さあ次の仕事にとりかかろう!」と毎朝思えるような「ライフワーク」を、皆さんが見つけていってくださることが私の願いです。

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岡本 祥治(おかもと・ながはる)
みらいワークス代表取締役社長
1976年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)株式会社に入社。金融、通信業界などのプロジェクトに参画した後、ベンチャー企業の経営企画部門へ転職。海外・日本47都道府県などの旅を通じて「日本を元気にしたい」という想いを強め、2007年に起業、2012年に株式会社みらいワークスを設立。働き方改革やフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年に東証マザーズへの上場を果たす。現在は、独立プロフェッショナルのためのビジネスマッチングサービス『フリーコンサルタント.jp』、転職支援サービス『プロフェッショナルキャリア』、都市部人材と地方企業をマッチングする副業プラットフォーム『Skill Shift』、地方創生に関する転職マッチング・プラットフォーム『Glocal Mission Jobs』などを運営するほか、45歳以降のセカンドキャリア構築を支援する『HRソリューション』、企業・自治体のオープンイノベーションを支援する『イノベーション・サポート』といったソリューションを展開するなど、事業を通じて「『人生100年時代』を生き抜く為の社会インフラ創造」「東京一極集中の是正」「人材流動性の向上」といった社会課題の解決に取り組む。

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(みらいワークス代表取締役社長 岡本 祥治)

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