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「私のメアドをファクスしておきました」という電話がくる…そんな地方の中小企業で大活躍するという道

プレジデントオンライン / 2023年6月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masterzphotois

これからの働き方はどのように変化していくのだろうか。みらいワークス社長の岡本祥治氏は「今後は優秀な人材であればあるほど、自らのスキルや時間を複数の会社や仕事に振り分ける働き方を選ぶ人が増えていく。本人が取るに足らないと思うスキルでも、例えば地方の中小企業では重宝がられるということがある」という――。

※本稿は、岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■転職したくても、できない理由

「転職したい」と思いつつ、しかし「転職できない」事情を背負っている人もいるでしょう。

「今ある“安定”を手放せない」
「転職で成功するのは、一部のバリキャリだけだろう」
「家族(配偶者)に反対される」
「転職したくても、日々の業務で忙しくて、転職活動をできない」
「この年齢では、どこも採ってくれないだろう」

など、いろいろな思いもあるはずです。分かります。

天からの声で、「この転職は人生最大の成功ですよ」とお墨付きをもらえない以上、あらゆる選択は、リスクを伴います。本当に今ある安定を手放した先に、幸せが待っているのか。この本に書いてあることを、本当に信じていいのか? そんな疑念もあるでしょう。

しかしだからこそ、恐る恐るでも最初の一歩を踏み出してほしいのです。

■ポータブルスキルで生き抜くフリーランス

では実際に、ポータブルスキルを使って生き抜いている人たちは、どのような判断で、彼らなりの道を選んだのかを見てみましょう。

フリーランス人材に、「どうしてフリーランスを選んだのですか」と聞いてみると、「自分で仕事を選べるから」というのが理由の上位に挙がります。組織や会社にいれば、給料をもらっている手前、与えられた仕事を「これはいやです」と断ることはできません。別の見方をすれば、少々いやでも、与えられた仕事さえ頑張れば、毎月同じお給料をもらえて、昇給もしていく仕組みだということですね。

しかし、フリーランスになれば、「仕事を選ぶ」ことができるようになります。安定したポジションや、毎月決まった給料が得られる権利を失う代わりに、「自分の意に染まぬ仕事はやらない」という選択をすることができる。いくら依頼主が大企業でも、提示された報酬が高くても、その企業の方針に違和感を覚えたり、社会的に共感できない仕事だったりすれば、「この仕事は受けない」と断ることができるのです。

逆に言えば、フリーランス人材はプロジェクトに社会的意義があったり、共感を覚えたりすれば、仕事を引き受けます。知名度が多少なかろうが、報酬が多少低かろうが、それこそが彼らの「ライフワーク」であり、自らの「ポータブルスキル」を更新できるチャンスだと分かっているからです。

■「時間」×「スキル」×「興味」で飛躍的に成長できる

企業から離れ、フリーランス人材として渡り合うことのメリットは、「自分のやりたい仕事をやれる」以外にもあります。多くのフリーランス人材に取材してみると、その答えが見えてきます。

メリットとしてさらに彼らが挙げるのは「時間を効率的に使える」「より多く稼げる」こと、そして「自分の成長が感じられる」ことです。

これは私自身もフリーランスとして働いてきたからこその実感なのですが、「複数の企業・プロジェクトに参画するほうが、著しく成長する」のです。

様々な環境で働く経験をすると、仕事の実力は、足し算よりむしろ掛け算的に向上していきます。A社で培った「知識」「スキル」に、B社のプロジェクトを通じて得た「視野」が掛け合わされ、C社で「新たな課題」に直面する。これらを生身で経験し、かつ繰り返していくことで、企業に対して「できること」「提供できること」は飛躍的に伸びていきます。

空港のビジネスマン
写真=iStock.com/anyaberkut
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

■「環境を変えて働いた経験」の醍醐味

その感覚を一度でも味わった人は、その醍醐味、成長の嬉しさ、仕事のやりがいが癖になっていきます。転職や副業を経験した人は、たった1回で満足するということがありません。どんなに長い時間働いていても、わずか1社の経験だけでは、働き方や価値観が広がらないことを知っているからです。

今後は優秀な人材であればあるほど、自らのスキルや時間をポートフォリオ的に振り分ける働き方を選ぶ人が増えていくことでしょう。例えば、平日は本業に従事しながら週末は自宅で副業をしたり、週の3日はA社の仕事をこなして残りの2日はB社とC社の仕事を請け負ったり。あるいはA社でプロジェクトを成功させたのち、今度はB社のプロジェクトに参画していくといったように、自らの持てる「時間」「スキル」「興味」を掛け合わせて仕事を進めていく人が増えていくはずです。

1社だけにとらわれていては、自分のポータブルスキルを磨くチャンスは限られてしまいます。企業に「欲しい人材」として確保される側に回るためには、意識的に自分の「ポータブルスキル」を磨いていく努力が欠かせないのです。

■地方・中小企業は、あなたのスキルを求めている

私自身地方の中小企業や地銀、自治体に赴くと、今でも驚くような場面に直面することがあります。

例えば、地方のとある企業で名刺交換した時のことです。来る人来る人の名刺に、みんな同じメールアドレスが書かれているということがありました。部署で1つのメアド、下手をしたら会社で1つのメアドしかないのです。これで一体どうやって仕事をしているんだろうと首をかしげました。

ある地方企業から、当社へファクスが届いたこともありました。しかもその直後、当の担当者から電話もいただき、「私のメールアドレスをファクスしておいたので、ご確認ください」とおっしゃるのです。メールアドレスをファクス??? 私の頭の中にはいくつもの「?」マークが浮かび上がりました。

でも、よくよく考えてみれば、それも不思議ではないかもしれません。例えば70代の創業者が、同年代の部下数人と会社を運営しているといった場合、必ずしもITを駆使しなくても、電話とファクスで事足りるという状況は、十分ありえます(生産性の高い低いは別として)。

■日常の業務スキルが「特殊スキル」に変わる

でももし、こういう会社に東京の企業で働く人が、副業なり転職なりで参加したらどうなるでしょうか。日頃からグーグルやセールスフォースを使いこなし、クラウドシステムも使い倒している人です。日常の業務スキルが、ところ変われば重宝される特殊スキルとなることが十分お分かりになると思います。

地方企業の中には、この25年間ほど、ITやデジタル技術を一切活用してこなかった……というところも少なくありません。しかし、それは裏を返せば、「25年間分の伸びしろ」があるということです。たった1人でも、ITに詳しい人物が加われば、成長が爆発的に加速する可能性が大いにあります。都市部の企業で働く人が地方に行くと、その企業だけではなく、その街・その地域でもっともデジタルに詳しい人になるということもザラなのです。

バッグを背負った男性
写真=iStock.com/miodrag ignjatovic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miodrag ignjatovic

もし、本書を読んでいるあなたが、「自分のスキルなど取るに足らない」などと思っているのなら、どうかそんな思い込みは捨ててください。あなたが特に「すごい」と思っていなくても、そのスキルや能力、経験を活かせる場所が、必ずどこかにあるはずなのです。

■優秀な個人の争奪戦が始まる

人々が企業を選ぶ基準も、変化してきています。今の20代と話していると、自分が学生だった頃とは、意識も感覚も価値観も全く違ってきていることに、正直驚かされます。

彼らの多くは「働くのはお金のためではない」と言います。もちろんお金があればあったに越したことはないけれど、それ以上に「社会的に意義のあることをやりたい」「自分の仕事が日本の未来を創っていると実感したい」と堂々と口にするのです。

学校教育でも、環境問題やSDGsがメインテーマとして扱われる時代です。私たち世代が「やらなければ」という義務感から取り組みがちなSDGsも、若い人々は前のめりで関わっていきたいと目を輝かせています。

そんな若い世代が、企業を選ぶ際に大切にしているのは、社が掲げる「ミッション」「ビジョン」「パーパス」です。「我々のやっている仕事は社会に対して、どういう意味を持っているのか」「この会社に属することで、社会をどう変えていけるのか」こうしたビジョンを明確にし、そこに共感してもらう努力が、企業の側にも求められていくのです。

ワークアウトの前に彼女の靴ひもを結ぶ女性のクロップドショット
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs

■「企業名」「給与」では、会社を選ばない

経済成長華やかなりし頃は、「企業名」や「給与」で学生は就職先を選んできました。銀行の、商社の、証券会社の、誰もが知っている企業名。そこに就職すれば、おのずと給与も高くなり、福利厚生も手厚く、生涯にわたり大切に雇用してくれる……。そんな思いから、高偏差値の優秀な学生は集まりましたし、企業側もそんな彼らを上位から順に採用していけば良かったのです。

しかし、そうした社会的「勝ち組」シナリオは、もはや若者のモチベーションにはならなくなってきています。今までは「どんな人材を選ぶか」「いかにして社員を囲い込むか」という発想で社員と向き合っていた企業も、これからは、「いかにして人材に選ばれる存在になるか」を考え抜く必要があります。「高い報酬さえ払えば、若者は喜んで来るだろう」という単純な見通しは、通用しなくなっていくということです。

新型コロナウイルスの感染拡大を通じ、人々は「働き方は1つではない」ことも知りました。「100%の出社」や「リモートワーク不可」を強制すれば、それだけで就職や転職先として選ばれなくなっていくでしょう。

マクロ的視点で見ても、労働人口は今後も減少し続けます。男性も女性も外国人もひっくるめて、日本中で人材の争奪戦が始まっていきます。「この環境でこそ、働きたい!」と思ってもらえない企業は、その争奪戦にすら参加できないのです。

■突き抜けたら「フリーランス」と呼ばれなくなる

これまで自由な働き方について語ってきましたが、その過程で気づいたことがあります。

岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)
岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)

それは、フリーランスは突出すれば「フリーランス」とは呼ばれなくなるという現象です。

もし今、これを読むあなたが会社勤めをされており、「○○会社の△△さん」と呼ばれているとしたら、その「○○会社」という看板を下ろし、「△△さんに仕事を任せたい」と指名で仕事を依頼されるのが次の目指すべきステップです。

そして、さらにその道を歩んだ先にあるのは、ただの「△△さん」と呼ばれる状態です。もはやフリーランスだろうが、業務委託だろうが、正規雇用者であろうが関係ない。あなたはあなた自身の看板で、仕事を請け負い、人生を歩んでいけるのです。

■自分の名前で食べていける

極端な事例かもしれませんが、堀江貴文さんのことを、誰も「フリーランス」と呼びませんよね。ただの「堀江さん」、もしくは「ホリエモン」というのが、あの方の肩書、呼称、呼び名、存在すべてを表しています。同様に、経理・財務・ITエンジニア・コンサルタント・営業企画・ブランディング戦略家など、多種多様なビジネスパーソンたちが、今後は会社の名刺ではなく、自らの名刺で、自らのビジネスライフをデザインしていく時代がやってくるでしょう。

稼げるようになるまでは、「フリーランスの○○さん」。でも、そこを突き抜けていくと、いわばスーパー・フリーランス状態で、生涯、自分の名前、自分の名刺だけで食べていけるのです。

この域に達した人で“やらされ仕事”をしている人はまずいません。「ライフワーク」を得て、毎日がワクワク・ハラハラ・ヒリヒリした「生きる喜び」に満ちている。自分だけの人生を、誰のせいにするでもなく、自分の足で生きているのです。

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岡本 祥治(おかもと・ながはる)
みらいワークス代表取締役社長
1976年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)株式会社に入社。金融、通信業界などのプロジェクトに参画した後、ベンチャー企業の経営企画部門へ転職。海外・日本47都道府県などの旅を通じて「日本を元気にしたい」という想いを強め、2007年に起業、2012年に株式会社みらいワークスを設立。働き方改革やフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年に東証マザーズへの上場を果たす。現在は、独立プロフェッショナルのためのビジネスマッチングサービス『フリーコンサルタント.jp』、転職支援サービス『プロフェッショナルキャリア』、都市部人材と地方企業をマッチングする副業プラットフォーム『Skill Shift』、地方創生に関する転職マッチング・プラットフォーム『Glocal Mission Jobs』などを運営するほか、45歳以降のセカンドキャリア構築を支援する『HRソリューション』、企業・自治体のオープンイノベーションを支援する『イノベーション・サポート』といったソリューションを展開するなど、事業を通じて「『人生100年時代』を生き抜く為の社会インフラ創造」「東京一極集中の是正」「人材流動性の向上」といった社会課題の解決に取り組む。

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(みらいワークス代表取締役社長 岡本 祥治)

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