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なぜか急にチャンスに恵まれ始める…古今東西、成功者が漏れなく活用している「注目バイアス」の驚きのしくみ

プレジデントオンライン / 2023年3月16日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MoustacheGirl

成功者は何を習慣にしているか。脳科学者の西剛志さんは「得たいものを明確にすると『注目バイアス』の機能が働き、それに関する情報がどんどん入ってくる。古今東西うまくいっている人はこのしくみを活用している」という――。

※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■気になりはじめると急に頻繁に目にするようになる理由

「5大バイアス」の1つ目にとり上げるのは「注目バイアス(Attentional bias)」です(※1)

でも、その具体的な解説に入る前に、1つ別の話をしたいと思います。

あなたは生まれたばかりの赤ちゃんとじっくり向き合ったことがありますか? わたしは自分の息子と対面するまで、その経験がありませんでした。そして、文献などで読んで知識はあったものの、実際に目で見て驚いたことがあります。

それは「追視」です(※2)。追視とは、目の前に見えたモノを追いかける視線の動き。じつは生後すぐの赤ちゃんも、わたしたちが目の前で指や手を動かすと、ゆっくりとですが追視をします。

その後、1カ月、2カ月と月日を追うごとに少しずつスピードアップしていき、3カ月前後になると、かなり速い追視ができるようになります。

生まれたそのときから動いているモノに注目する本能があるのは、その能力が生命の維持に直結するからです。

この生存に不可欠な脳の機能と連動するように発達したのが、「注目バイアス」。つまり、この認知バイアスは子どもから大人へ成長していく間に身につく後天的なものではなく、脳そのものの機能、性質と深く結びついたものなのです。

「注目バイアス」は、一度気にしはじめると、急にその対象を頻繁(ひんぱん)に目にするようになるという認知バイアスです。

たとえば、目の前に鼻毛が出ている人がいたら、その人の鼻毛ばかりをどうしても見てしまうことはないでしょうか?

または、欲しいバッグがあったとき、そのバッグをもった人を頻繁に目にするようになったりもしませんか? 注目することで、無意識のうちに関連するものを追視するようになるのです。

「注目バイアス」は「バーダー・マインホフ効果(Baader-Meinhof effect)」、「頻度幻想(Frequency illusion)」と呼ばれることもあります。

■うまくいく人は「注目バイアス」のしくみを知っている

そして、仕事で成果を上げている人、スポーツで結果を出している人、恋愛がうまくいく人、人間関係の悩みが少ない人など、どんな分野でもうまくいく人は総じて、この「注目バイアス」の働きをうまく利用しています。

成功した人はよく「成功したいなら、まず得たいものを明確にすること」と言いますが、脳科学的にこれは真実です。

なぜなら、得たいものを明確にした瞬間に「注目バイアス」の機能が働き、得たいものに関連する情報がどんどん入ってくるからです。

たとえば、目を閉じて「この部屋に赤系の色は何個あるか数えてください」と言われたら、何個あると答えるでしょうか? 準備ができたら、まず目を閉じて、そして目を開けてみてください。

すると、思っていた以上に赤系の色があることに気づいたかもしれません。このとき、赤系の色が目に飛び込んでくるような感覚を覚えることがありますが、これが「注目バイアス」です。つまり、得たい情報があると脳はどんどんとり込もうとするのです。

たとえば将来、「海外で仕事をしたい」という希望があるのなら、それを意識してみます。

すると、意識したことを脳は勝手に探そうとするため、道を歩いていても、動画を観ていても、日々の仕事をしていても、人と話していても、無意識のうちに「海外で働くこと」に関連した情報が集まるようになります。

古今東西うまくいっている人の多くが、「チャンスはつかむものだ」と言いますが、自分の得たいものを明確にする習慣を大切にするのは、経験として「注目バイアス」のしくみを知っているからかもしれません。

■点は全部でいくつ? 「注目バイアス」を体感するテスト

ただし、どんな認知バイアスの働きにもデメリットがあります。

「注目バイアス」の場合、注意を向ける先を間違えると、本来、見るべきものが見えなくなってしまいます。

ここで1つテストをしてみましょう。図表1を見てください。

『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より
『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より

この図のなかには、濃いグレーの点がいくつあるでしょうか?

正解は12個ですが、グレーの点を数えているとき、不思議な体験をされた方もいるかもしれません。1つの点を数えようとすると、ほかの点が消えてしまうのです。

これが「注目バイアス」のもう1つの効果。脳は1つのことを見ようとすると、それにまつわる情報を集めてはくれますが、それ以外のものは見えなくなってしまうのです。

この現象は、うまくいかない分野でよく見られます。

たとえば、恋愛で相手の容姿や経済力ばかりを重視してしまう人は、それ以外の性格的な情報が目に入らなくなる傾向にあります。すると、結婚してから、相手が短気で完璧主義、家族のことを大切にしないといったことに気づいて、離婚というケースもたびたび聞きます。

つまり、容姿や経済力などよい点ばかりに注目してしまい、悪い点がほぼスルーされて見えなくなってしまうのです。

しかも、このようなよい点ばかりを見ている人にいくら「別れたほうがよい」とアドバイスしても、悪い点そのものを理解できないため、まったく意見を聞いてくれません。

同じ風景を見ていても、同じ相手と向き合っていても、あなたが見ている世界とわたしが見ている世界、道行く人が見ている世界はまったく異なります。なぜなら、1人ひとりが注目するものによって、「注目バイアス」の働き方が違うから。

わたしたちは目で同じものを見ているようで、じつはこの世界を脳で見て、別の人生を歩んでいるのです。

「注目バイアス」は、本書でとり上げている「アイソレーション効果」、「確証バイアス」、「ネガティビティバイアス」、「楽観主義バイアス」、「自己参照効果」など複数の認知バイアスを生み出しています。それだけ影響力の強い認知バイアスだということです。

■一度壊れた人間関係はなぜ修復するのが難しいのか?

もう1つ、具体例をとり上げてみましょう。

最悪の出来事が起きたり、激しく衝突したり、口論したり、わたしたちはマイナスな体験をするとその出来事が記憶に長く残ります。そして、頭ではわかっているけど、その人との関係がぎこちなくなってしまいます。なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

これを理解するために、次の写真を見てください。

『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より
『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より

この写真を見ると何が目に入ってきますか? もしかすると、色の濃いトマトばかりが目に入ってくることに気づくかもしれません。

これにも「注目バイアス」が働いているのです。目立ったものが目に入ってくる現象を、別名、「アイソレーション効果」といいます(ドイツの精神科医で小児科医のフォン・レストルフが発見したことから、フォン・レストルフ効果とも(※3))。

この注目バイアス(アイソレーション効果)が働くと、次にその相手を見かけたとき、どんなにいいことを言われても、悪いふるまいや行動ばかりが目に入ってきます。たとえば、話している相手の目が気になると、瞳ばかり見てしまいます。

また、はじめて出会ったときに失礼なことを言われたら、相手のマイナスな言葉に脳は注目します。そのあとに、どんなによいことを言われたとしても、脳は相手のマイナスな点を探そうとするのです。

その結果、ちょっとした軽い冗談でもそれが嫌なことに聞こえてしまうことがあります。

すると「ほらまた言っている、イヤだな」と思いますよね。

だからAさんは失礼な人に違いないと思うわけです。そして、それが「確証バイアス」(Confrimation bias)(自分がすでにもっている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向性のこと)となって、「Aさん=嫌な人」という構図ができてしまいます。

そして、一度この「Aさん=嫌な人」という確証バイアスができてしまうと、脳は相手の嫌な点しか見ようとしないため、それが確信となってAさんのイメージが固定化されてしまいます。

■相手と自分の思っている言葉の意味は異なる

こうした認知バイアスの働きに気づき、よい人間関係に改善していきたい場合には、少しだけ勇気がいりますが、相手に自分の気もちを正直にちょっとだけ伝えてみることをおすすめします。

第一印象がよくなかった相手に「前回、○○を言われたんだけど、これはどういう意味だったのかな?」と聞いてみます。すると、意外と本人は「失礼な」ことを言ったつもりではなかったかもしれません。

相手の生まれ育った地域では、会話の間にツッコミを入れて盛り上げるのがコミュニケーションとして当たり前だったということもあります。

メールで傷つく言葉を書いてきた相手に、「前回のこの文章は、どういう意味で言っていたのかな?」と聞いてみます。すると、自分が思っていたこととまったく違って驚くことがあります。

たとえば、「あなたは変な人だ」と言われたとき、悪い意味ではなく「変わっている=めずらしくて貴重な人、一般にはいない才能をもった人」という意味で使っているかもしれません。

■「言われたことの真意」を確認してみる

言葉というのは、不思議なもので、同じ言葉でも意味が人によってまったく違います。

たとえば、「成功が大事だよね」と言っても、「仕事で地位や名誉を実現することが成功」と思っている人、「マイホームをもつことが成功」と思っている人、「家庭をもつことが成功」と思っている人、「いい大学に行くことが成功」と思っている人がいます。

西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)
西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)

成功といっても、たくさんの成功の形があります。自分が思っている成功と、相手が思っている成功は、まったく違うということもありえるわけです(わたしはこれを人それぞれの「言葉の地図(マップ)」と呼んでいます)。

このように「相手の真意(言葉の地図/マップ)」を確認することで、相手の本当の考え方や気もちが理解できて、ネガティブだった印象が変わることがあります。

すると、「確証バイアス」でつくり上げられたその人のイメージが崩れて、相手の印象が変わってしまうのです。

あなたにも「あのとき以来、ギクシャクしているけど、できれば関係を修復したい」と思っている相手がいるなら、久しぶりに話をしてみてください。少し勇気は必要ですが、相手にその言葉の真意を確認してみましょう。

※1 注目バイアス Pool, E,. et al,“Attentional bias for positive emotional stimuli: A meta-analytic investigation” Psychol. Bull. 2016, Vol.142(1), p.79106
※2 子どもの追視 Fantz, RL.,“Pattern Vision in Newborn Infants”, Science, 1963, Vol.140(3564), p.296-7/ Morton, J.& Johnson, MH.,“CONSPEC and CONLERN: a two-process theory of infant face recognition”, Psychol. Rev. 1991, Vol.98(2), p.164-81.
※3 フォン・レストルフ効果 Restorff , Hedwig,“Über die Wirkung von Bereichsbildungen im Spurenfeld”[The effects of field formation in the trace field]. Psychologische Forschung [Psychological Research](in German), 1933, Vol.18(1), p.299-342

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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、知的財産研究所を経て、特許庁入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など脳科学分野で最先端の仕事を手がける。2008年に企業や個人のパフォーマンスアップを支援する会社を設立。著作に『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)などがある。

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(脳科学者 西 剛志)

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