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「アホになるから勉強するな」子ども3人を一流大学に合格させた母親の脳のしくみを活用した驚きの「声かけ」

プレジデントオンライン / 2023年3月18日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

子どもの自主性を育む親は何をしているか。脳科学者の西剛志さんは「私のクライアントの女性は、強制されたことに反発したくなる『心理的リアクタンス』を子育てに生かしている。『アホになるから勉強するな』と口癖のように言い、子ども3人を一流大学に現役合格させた」という――。

※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■なぜ、強制されるとやりたくなくなるのか

関連するバイアス――「心理的リアクタンス」

わたしは教育系の講座や研修もよく行なっています。そこで、こんな簡単な実験をすることがあります。お子さんたちの前に箱を置いて、「この箱を絶対に開けないでね」とお願いして、その場を離れるのです。

すると、子どもたちはほぼ100パーセントの確率で箱を開け、中身を確認します。

これは「何が入っているんだろう?」という好奇心にプラスして、「心理的リアクタンス(Psychological Reactance)」という認知バイアスが働くからです(※1)

「リアクタンス」とは、強制されたことに反発したくなる状態のこと。この実験の場合、子どもたちは「この箱を絶対に開けないでね」という禁止の強制に反発し、お願いとは逆のアクションを起こすのです。

この反応は子どもたちに限ったことではありません。

わたしたちの脳は1つのことに縛られ、思考が制限されるのを嫌います。ですから、「○○禁止!」「○○しなさい!」などの強制や命令には、その内容が正しい、正しくないとは関係なく、無意識のうちに反発を覚えるのです。

『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より
『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より

■「アホになるから勉強するな」で3人の子どもは一流大学へ

たとえば、わたしのクライアントに「心理的リアクタンス」をよく知り、子育てに生かした女性がいます。彼女の3人のお子さんは全員、一流大学に現役合格。

そう聞くと、お母さんも高学歴で、小さなころから子どもたちの勉強を見て、教えているような教育熱心な母親像をイメージするかもしれません。

しかし、クライアントの女性は高学歴ではありませんでしたし、口癖のように子どもたちに言っていた言葉が「勉強ばっかりしたら、アホになるから勉強するな」でした。

そもそも彼女は「勉強しなさい」と言ったことがないのです。しかし、お子さんたちは、学校から帰ってくると自主的に机に向かうことが多かったそうです。それは何かを学び、新しいことを知るのが楽しいからでした。

お母さんから「アホになるから勉強するな」と言われるたび、「心理的リアクタンス」が働き、ますます机に向かっていたのでしょう。じつはその気もち、わたしもよくわかります。

というのも、わたしも親から一度も「勉強をしなさい」と言われたことがなかったからです。わたしは親から、人に迷惑をかけること以外は好きなことを制限なくさせてもらえる環境で過ごしました。

砂山をつくって遊んだり、鬼ごっこをしたり、山や川に大好きな生きものをとりにいったり、マンガのストーリーを勝手に自分で想像して描いたり、星を見たり、とにかく、ずっと好きなことで遊んでいる子でした(でも人に迷惑をかけたときは、怖いほど怒られました)。

宿題くらいはやりますが、家で勉強することはほとんどなく、遊んでばかりでした。みんなと一緒でも、1人でもずっと遊ぶことができました。

■「勉強が嫌い」な人たちの育ち方

いま思うと興味をもったことを通して、いろいろなものごとのしくみを学んでいたのかもしれません。学校の勉強も、遊びの延長線のような感じでした。

理科の時間は自然と触れ合えますし、算数はパズルのようでしたし、国語は物語を読めてうれしかったです。社会もテレビの教育番組を見ているような感覚でした。

ですから、子どものころから「勉強が嫌い」という人がいると、素直に「不思議だな」と思っていました。

そこで、「子どものころ勉強が嫌いだった」という人に話を聞くと、だいたいが両親から「勉強しなさい」「宿題したの?」と言われ続けて育ったというケースがほとんどだったのです。

強制されるとやりたくなくなる……。まさに「心理的リアクタンス」の働きでした。

音楽家の家庭で、厳しいピアノ教育を受けた長女は音楽が嫌いになってしまった一方、何も教育を受けなかった次女のほうが、天才的に音楽を演奏するようになったという話も聞いたことがあります。

■メールやSNSに「心理的リアクタンス」は活用できる

たとえば、あなたが友人からこんなメールをもらったと想像してみてください。

A:新しいサービスをはじめました。お得な特典もあります。
B:新しいサービスをはじめました。お得な特典もあります。いますぐ登録してください!

AとBは内容的には同じですが、じつはBのほうがメールの返信率が下がることが、以前わたしが行なった調査でもわかっています。

新しいサービスをはじめたとき、受けてほしいという気もちが強いあまりに、つい「登録してください!」と言いたくなってしまいますが、このような表現は「心理的リアクタンス」が働くため、逆に登録したいと思えなくなってしまいます。

メールやSNSなどでも、人に紹介する場合はぜひ気をつけてください。

ソーシャルメディアのアプリケーション
写真=iStock.com/P. Kijsanayothin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/P. Kijsanayothin

■自己決定することで、ドーパミンが分泌される

わたしも以前何度も体験しましたが、社会人になると「心理的リアクタンス」の働きに悩む場面に遭遇します。強制されて、やりたくないけど、仕事だからやらなくちゃいけない……。そんなシチュエーションです。

西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)
西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)

こうした場面では、2つの選択肢をつくってどちらかを選ぶ形にすることで、状況を改善することができます。

たとえば、上司から急に残業をお願いされたとします。お願いの形にはなっているとはいえ、こちらに拒否権のない状況です。当然、「心理的リアクタンス」が働き、やる気は急降下します。

そこで、残業をしてみるという前提に立って、自分にこんな質問をしてみます。

「最低限の必要な範囲の仕事を片づける」
「上司を驚かせるくらいの作業スピードで一気に片づける」
「2つのどちらを選びたい?」

不思議なもので、どちらかを選ぶと(どちらを選んだとしても)仕事へのやる気がアップします。なぜなら、わたしたちは自己決定することで、ドーパミンが分泌されるからです。その結果、選択した行動へのやる気を高めてくれます。

つまり、「心理的リアクタンス」対策としては、自分で選択肢をつくって選ぶこと。これからとり組むことに自分なりの目的を見いだすことが役立ちます。

これは裏返すと、あなたが部下や子どもに何かを強制しなければならないときにも使えます。

単なる「○○してください!」「○○しなさい!」ではなく、そのあとに2つのなかから選択してもらいます。すると「心理的リアクタンス」の働きをやわらげることができるようになります。

※1 心理的リアクタンス Brehm, J.W.“A theory of psychological reactance”, 1966, Oxford, England: Academic Press./ Rosenberg, BD.& Siegel JT.“A 50-year review of psychological reactance theory: Do not read this article”, Motivation Science, 2018, Vol.4, p.281-300

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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、知的財産研究所を経て、特許庁入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など脳科学分野で最先端の仕事を手がける。2008年に企業や個人のパフォーマンスアップを支援する会社を設立。著作に『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)などがある。

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(脳科学者 西 剛志)

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