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「給料アップで転職成功」のはずが1000万円→800万円に…見落とすと後悔する採用内定通知書の重要項目

プレジデントオンライン / 2023年3月19日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

転職ではなにに気を付けるべきか。ヘッドハンターとして25年以上活動する佐藤文男さんは「年収や職位などで厚待遇を謳う企業には注意が必要だ。必ず採用内定通知書を読み込んで、試用期間後に待遇を見直されるリスクがないかをチェックしたほうがいい」という――。

■ITコンサルや金融業界の「厚待遇」には要警戒

年収1000万円以上といった「厚待遇企業」は、どのようなジャンルに多いのでしょうか。

私の約25年にわたる人材紹介の実務経験から振り返ってみると、「厚待遇企業」が特に目立つのは、日本市場での拡大を狙う外資系企業や、上場を目標としているベンチャー企業です。優秀な人材を獲得するべく、「厚待遇」を前面に押し出す傾向があります。

一方、業界や職種といった視点からの分類から考察してみると、例えば戦略コンサルタントやITコンサルタントのようなコンサルティング業界や、エンジニア職に代表されるIT業界、そしてM&A、ファンドマネージャー、アナリストといった専門的な職種に代表される金融業界も、「厚待遇」を謳う傾向にあります。

■年収は「現在よりも1割アップ」が理想的

このような「厚待遇企業」を転職先として見ていく際、まず目を向けたいのは「年収」です。

例えば、あなたが転職を希望している企業から内定(オファー)をいただいたとしましょう。この際にオファーの条件を記載した採用内定通知書が企業から提示されて正式な内定となりますが、まず大切な点は待遇の内容を明確に確認することです。

年収に関しては、面接を通じてある程度事前の想定範囲内に収まっていれば支障はありませんが、現在の年収より何割もアップする期待感を持たせる内容であれば、必ずしも喜ばしい状況ではないことを認識しましょう。転職後の年収はアップしたとしても、現在よりも1割程度のアップが理想だと謙虚に受け止める姿勢が大切です。

サッカーや野球といったプロスポーツの世界も、試合で活躍して成果を出してから翌年の報酬が上がっていくわけです。ビジネスパーソンの世界においても、本当に年収をアップさせたいのであれば、転職後に成果を出してから年収をアップさせようという流れが至極当然であると言えます。

■高額のボーナスは見せかけの数字の可能性がある

現在の年収よりもかなり高めの年収が提示された際には、次の点からカラクリがないかどうか検証してみましょう。

まずは、ボーナスの割合が月ごとの年収より高い場合は、おそらく昨年度の実績から算出されているとは思いますが、企業の業績によってはボーナスがゼロになる可能性もあります。

加えて、ボーナスは成果が賞与査定期間内に出せていなければ、1円もボーナスが出ないケースもありえます。いくら想定年収が高いと言っても、ボーナス以外の固定給だけを考えた場合に現在の年収よりも下がる可能性が出てくるので、単なる見せかけの数字に振り回されないようにしましょう。

次に、最初に提示された固定給だけでも現在の年収よりも高く提示された場合によくあるカラクリは、“試用期間”の適用になります。つまり、転職を考えている企業の採用内定通知書の中に試用期間(通常は3カ月ないしは6カ月)後に、「年収を見直す可能性がある」といった項目がないかどうかを確認しましょう。

よくあるケースですが、転職時は急激に年収が上がったと喜んでいても、試用期間内に期待以上の実績が出せないと、試用期間後に現在の年収よりも下がってしまうことがあるわけです。

従業員と面接する管理職の男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■給料アップのはずが、1000万円→800万円に

40代前半のAさんは、転職する際の採用内定通知書の内容をよく確認せずに、単に固定給が上がると喜んでいました。しかし、試用期間後に期待された営業実績が出ていないとの理由から、固定給が約1000万円から約800万円へと、約2割も下げられてしまいました。

Aさんは反論しましたが、転職先の企業側から「年収が下げられる可能性があることは採用内定通知書に記載されている」旨を指摘されて一蹴。結果的に固定給は下がり、ボーナスも期待できず、転職初年度の年収は前職よりもむしろ下回る見通しとなりました。

このような失敗をしないためにも、転職を決断する前には採用内定通知書を詳細に確認し、疑問や質問があれば、転職前にエージェントや企業側の人事部に遠慮せずに確認するようにしましょう。

企業側の立場としては、現在の年収よりも高い金額を提示する背景には、転職後に期待以上の実績を出して即戦力としての貢献をしてもらう意図が明確にあると考えるべきです。

逆の立場から考えればわかりやすいわけですが、企業も転職後の単なる期待感のみで何割も年収をアップさせることは基本的にはあり得ないのです。

■現状の年収より下がる転職のほうが安心できる

ここまで見ていくと、現在の年収よりも下がる転職のほうが、転職後を考えると結果的に安心できる場合も多いわけです。実際、大企業からベンチャー企業に転職する場合は、通常は現在の年収よりも下がることが一般的です。

30代後半のBさんの場合は、日本を代表する上場企業から、まだ立ち上がったばかりのベンチャー企業に転職しましたが、転職する際には約800万円から約670万円と、現在の年収からおよそ3割ダウンとなってしいましました。その後数年で実績を出し、ベンチャー企業を急成長させて執行役員にまで昇格して、最終的に転職から数年後にいれば受け取るはずだった年収の5割増しとなる、約1500万円を受け取るレベルに至りました。

Bさんのように大企業を飛び出してベンチャー企業に転職する場合には、目先の年収が下がっても将来のリターンとしての年収に期待があります。Bさんは正に背水の陣とも言うべきチャレンジ精神でベンチャー企業に果敢にも転職し、仕事に邁進して最終的に年収アップを勝ち取ったわけです。

仮に目先の年収が下がったとしても、将来のリターンとしての年収アップを考えて転職にチャレンジすることも、25年以上ヘッドハンターをしてきた経験からもある意味理にかなった転職だと思っています。

■転職で「ようやく部下を持てる」と期待していたが…

年収の次に注意を払うべき点がポジション(職位)になります。特に、現在勤務している企業でのポジションから昇格する場合は、喜ぶよりもまずは企業が求めている期待度を真摯に見極める必要があります。

例えば20代後半のCさんは、今まで部下を持ってマネジメントした経験がないのに、転職先からはマネージャーのポジションを提示されました。いよいよ部下を持てるものと期待していたところ、実際は部下なしのマネージャーのポジションだったことが判明したわけです。しかも、Cさんのケースでは、採用内定通知書には部下がいるかどうかが明記されていなかったようでした。

転職先のポジションがマネージャー以上の管理職である場合、求められる役割や責任の範囲だけでなく、マネジメントをする部下にはどのような人がいるのかを事前に把握しておくことが重要です。即戦力としてマネジメントに取り組むことを任せてくれる企業の期待度を自分なりに分析しておきましょう。

■企業が望む即戦力になれず、厚待遇が消滅

試用期間の内容によっては、転職前に期待していた厚待遇があっという間に消滅する可能性もあることは注意が必要です。

先ほど、試用期間後に年収が変動する可能性が採用内定通知書に記載されているかを確認する大切さを指摘しましたが、試用期間によってポジションも変動することがある点を理解しましょう。

新しい転職先で年収もアップし、マネージャーとして管理職として迎えられた30代前半のDさんですが、なんと3カ月の試用期間後に年収がダウンしただけでなく、ポジションも平社員に降格させられる憂き目に合いました。

転職先の説明としては即戦力としての期待に応えられなかったというのが理由でしたが、やはり試用期間後に年収やポジションを見直すという条項が採用内定通知書に記載されていることをDさんは把握していませんでした。結果的に、Dさんは1年以内に転職先の企業を離れることとなってしまいました。

年収アップやポジションアップに代表される厚待遇には、必ず転職先の高い期待度があります。ですから、転職する際は必ず採用内定通知書を確認し、「試用期間後に“厚待遇”の変動がある」旨の記載がないかを把握するようにしましょう。

あらゆる可能性を覚悟した上で、それでも思い切って転職する腹が括れているか、自分自身に問いかけることが大切です。

オフィスでストレスを感じたビジネスマン。
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

■ストックオプションが単なる紙切れになるケースも

最後に、そのほかの「厚待遇企業」に見られる落とし穴とポイントを検証していきたいと思います。

①ストックオプション

転職先からストックオプションを付与するという提示があった場合は、勤務期間によって結果的にストックオプションの行使ができずに単なる紙切れに終わってしまう可能性があります。ストックオプションの付与が提示されたされた場合には、その行使条件を確認しておきましょう。

②在宅勤務(テレワーク)の許容度

コロナが沈静化していく中で、今後も在宅勤務(リモートワーク)を認めてくれるのかどうか、その許容度を確認しておきましょう。特に、在宅勤務をワークライフバランスの観点から重要視される方にとっては外せないポイントになります。

■残業代の算出方法は必ず確認すべき

③有給休暇の取得状況

転職後に初めて有給休暇の取得が難しい企業カルチャーに気がついても手遅れになりかねません。転職後の1年間で有給休暇が何日取得可能かどうか、社会保険をはじめとする転職先の福利厚生を詳細に確認しておきましょう。

④裁量労働なのか通常残業なのか

転職先での仕事が、実労働時間に応じた残業代が発生しない裁量労働なのか、通常に残業代が付与されるのかどうかも転職する際の大切なポイントです。もっとも、厚待遇での転職の場合には裁量労働であるケースが多いと想定されます。

⑤仕事内容がキャリアアップになるかどうか

最後に、たとえ厚待遇の条件を提示されたとしても、転職先での仕事内容が自分にとって本当にキャリアアップになるのかどうか、じっくりと考えることが大切です。

悩んだ末に、自分にとってキャリアアップになると覚悟を決めた上で転職した場合、万が一転職先でうまくいかない出来事に遭遇したとしても、必ず乗り越えていける原動力になるはずです。

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佐藤 文男(さとう・ふみお)
佐藤人材・サーチ社長、山梨学院大学客員教授
1960年東京生まれ。1984年に一橋大学法学部卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現・シティグループ証券株式会社)、株式会社ブリヂストン等、多様な業種において人事業務、営業・マーケティングを中心にキャリアを積み、1997年より人材紹介(スカウト)ビジネスの世界に入る。2003年に佐藤人材・サーチを設立。2013年4月よりシンガポールに拠点を移し、海外での人材紹介ビジネスの研鑽を積む。帰国後、2015年4月より佐藤人材・サーチを再起動する。著書に『働き方が変わった今、「独立」か「転職」か迷ったときに読む本』(クロスメディア・パブリッシング)、『自助の時代 生涯現役に向けたキャリア戦略』(労務行政)など多数。公式サイト https://www.sato-jinzai.com/

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(佐藤人材・サーチ社長、山梨学院大学客員教授 佐藤 文男)

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