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脳トレをやるならカラオケに行くほうがいい…脳が縮んでいるのに認知症にならない人の意外な共通点

プレジデントオンライン / 2023年3月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

認知症にならないようにするにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「認知症を防ぐことはできないが、進行を少しでも遅らせることはできる。認知機能の低下を防ぐには「数独」「100マス計算」などの脳トレより、カラオケにいくほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリ手引き』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■脳の萎縮は40代から少しずつ始まっている

人はなぜ認知症になるのでしょうか。答えは、シンプルです。年をとるからです。

年をとると髪が薄くなったり白髪になったり、肌にはシワやシミも増えます。同じように、脳も縮み、傷んできます。実際、多くのご遺体を解剖してわかったことですが、85歳以上のすべての人の脳に、アルツハイマー型の認知症の変性がありました。

症状は表れるけれど、あくまで老化現象のひとつであって、病気ではありません。歳を重ねていけば、誰でも認知症になるのです。

みなさんが認知症を怖いと思うのは、ある日突然、「自分や家族のことがわからなくなってしまう」と誤解しているためではないでしょうか。

でも、ちょっと考えてみてください。「朝起きたら、自分の髪の毛が全部なくなっていた」などということは、起こりません。だんだんと抜けて、薄くなっていくものです。

認知症も同じです。とてもゆっくりと進行していきます。じつは、脳の萎縮は40代のころから少しずつ始まっていますが、みなさんが気づいていないだけです。

そのまま20~40年かけて、徐々に認知症が進んでいくわけです。

■認知症を治す薬はない

認知症は、早期の発見が大事だとされています。しかし、今はまだ認知症を治す薬はありません。認知症の症状を抑えたり、進行をゆるやかにしたりする薬はありますが、「少しは効果がある」というレベルのものです。

私は、認知症が心配になっても、すぐ病院には行かないほうがいいと思っています。今の世のなかでは、認知症だと診断されると、すぐに判断能力を疑われてしまいます。もし働いていれば役職から外されたり、仕事を任されなくなったりと、働く機会を失ってしまうかもしれません。

周囲の人も、とたんに態度を変えたりするでしょう。だったら、急いで医者に診てもらう必要はないと思います。大事なことは、認知症と診断されることではありません。認知症の進行を、少しでも遅らせることです。

では、どうすればいいのか。認知症の進行を遅らせる最良の方法は、頭を使い、体も使い続けることです。

■茨城県の認知症患者から学んだ「認知症を遅らせる」ヒント

その根拠となる例をお話ししましょう。私は、東京・杉並区の浴風会病院に勤務しながら、月に2回ほど、茨城県鹿嶋市でも認知症の患者さんを診ていたことがあります。そのとき気づいたのは、鹿嶋市の患者さんのほうが認知症の進行が遅いということでした。

どうして、鹿嶋市の患者さんは、認知症の進行が遅いのか。杉並区の患者さんの行動と大きな違いを見つけたのです。

杉並区は都心にありますから、患者さんが認知症と診断されると、ご家族が「車の往来が多いから、外に出ると危ない」「ご近所に迷惑がかかるといけないから」と、家に閉じ込めてしまう傾向がありました。

ところが、鹿嶋市の患者さんたちは、認知症と診断されても、変わらぬ生活を続けていました。

都心の歩道通りを歩くシニア観光客
写真=iStock.com/krblokhin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/krblokhin

自由に外出して、戻る家がわからなくなっても、近所の人が家まで連れてきてくれます。ご自身は体が動くので、農業や漁業の仕事も続けられている。認知症になっても、体が覚えていれば仕事はできるわけです。

働いていれば、頭も体も使うことになります。生活も今までどおりで、なんの制約もいりません。これが認知症の進行を遅らせる理由だと私は考えています。

■脳が縮んでも発症しない人の共通点

もうひとつ、例をご紹介しましょう。

日本では2004年、『100歳の美しい脳 アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち』(デヴィッド・スノウドン著、藤井留美訳、DHC)として紹介されたアメリカの研究報告です。

医師のスノウドン博士は、修道女678人を対象に老化を多角的に調査しました。75歳以上のシスターを対象に、定期的に身体能力と精神能力の詳しい検査を行い、死亡時には解剖して脳の状態を記録しました。

その結果は、意外なものでした。脳が萎縮し、アルツハイマー型認知症と診断されてもおかしくない状態なのに、亡くなるまでまったく症状が出なかった人が8%いたのです。

その8%の人には、ある共通点がありました。そのなかの一人、シスター・メアリーの生活を検証しています。

■規則正しい生活、人とのかかわり

シスター・メアリーは、中学校を卒業して修道院へ入り、84歳まで数学の教師を務めた後は、精力的にボランティア活動をし、101歳で亡くなりました。

死後、解剖した結果、彼女の脳は7割(870グラム)まで萎縮していました(成人女性の脳の重さは1100~1400グラム)。しかし、亡くなるまで彼女の認知機能は正常でした。報告書では、毎日、規則正しい生活を送りながら、奉仕活動などを通じて人とのかかわりをもち続けていたことが、発症しなかった理由だとしています。

認知症は老化現象ですから、脳が萎縮していくことは避けられません。しかし、脳が萎縮することと、認知症になるということは、必ずしもイコールでないということです。

脳は未開拓の臓器です。まだ解明されていないことが多い。じつは10%程度しか使われていないと唱える人もいます。とりわけ前頭葉の使用は、ごくわずかです。全体が縮んだとしても、使う余地はふんだんに残されているのです。

認知症になっても進行はゆっくりです。頭も体も使う生活を続けていけば、いつかは症状が出るにしても、先延ばしできる。鹿嶋市のおトシヨリたちや、シスター・メアリーが教えてくれているのです。

■おしゃべりが認知症の進行を緩める

どうやって頭と体を使うのか、もう少し話を続けましょう。働くことやボランティアがいいのは、人と話す機会が増えるからです。とくにおしゃべりは、相手によって話題がどんどん変わりますから、頭をよく働かせることになる。前頭葉が刺激されるわけです。

さらに、声を出すのもいいようです。趣味の詩吟を続けている認知症の患者さんを何人か診てきましたが、あまり進行が目立たない。そう考えると、カラオケも効果があるように思います。声を出すことで全身を使います。それに、なによりも楽しい。カラオケ好きな人なら毎日歌いたくなるでしょう。

シスター・メアリーも、毎日、規則正しい生活を送っていました。定期的に楽しいことをして、習慣にできれば、ずっと続けられます。続けることで効果が出てくるのです。

もうひとつ、料理をすることも効果があります。

料理をしてみるとわかりますが、いろいろな作業を併行して進めなければいけません。食材を切りながらみそ汁の鍋を火にかけ、炒め物の準備をすると同時に、冷凍食品を電子レンジで解凍するなど、頭と体をめまぐるしく働かせることになります。

献立も、毎日同じでは飽きてきます。違うものを食べたくなりますから、自然に工夫するようになります。料理をするためには、食材を買いに行くでしょう。店内を歩き、品物を選ぶだけで、頭と体を使います。日々の生活のなかで、自然に認知機能を高めることができるのです。

■「脳トレ」をやるならカラオケに行こう

反対に、ほとんど無意味なものがあります。

脳機能を落とさないためにと「数独」「100マス計算」など、「脳トレ(脳力トレーニング)」本を開いているおトシヨリを見かけますが、認知機能の低下予防には、あまり効果はありません。

和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリの手引き』(毎日新聞出版)
和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリ手引き』(毎日新聞出版)

たしかに、毎日「数独」や「100マス計算」を繰り返しやれば、練習した課題のテストの点数は上がっていきます。しかし、同じ人に、別の認知機能テストをさせてみると、まったく点数が上がらないのです。腕の筋肉を鍛えても脚の筋肉がつかないのと同じことです。

実際に、欧米の調査研究で、「脳トレ」をいくらやっても、ほかの認知機能にはまったく波及しないことが、実証されています。与えられた課題のトレーニングになるだけで、脳の認知機能はなにも変わらなかったということです。

「脳トレ」をするよりも、カラオケで歌ったり料理をしたりと、日常生活で行うことを楽しく続けるほうが、よほど効果があるということです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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