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100褒められても1つの批判で落ち込む…そんな人ほど知っておきたい「楽観性」を高めるたった2文字の口癖

プレジデントオンライン / 2023年3月20日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

ちょっとしたことで落ち込みがちな人が楽観的になれる方法はないか。脳科学者の西剛志さんは「ものごとがある程度コントロールできる状況にいるとき、『楽観主義バイアス』は強まる。『当選するかも』『できるかも』と思い込むことだ」という――。

※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■100の「いいね」をもらっても1つの批判でなぜ落ち込むのか

「いつも大事なところで失敗する」
「最初からダメなパターンを想像してしまう」
「ネガティブなコメントがつくと、どんなに『いいね』が多くても落ち込む」

あなたのまわりにもマイナス発言が多めのネガティブな人はいませんか?

近くで見ていると、「別に失敗していないのに」「まあまあうまくいっているのに」「フォロワーがたくさんいてうらやましいくらいなのに」という印象なのに、本人はつねに後ろ向き。

SNSで100の「いいね」をもらっても、1つの批判コメントがあるだけで、「やっぱり自分はダメなんだ」と落ち込んでしまいます。こうしたネガティブさんの心理に働きかけているのは、「ネガティビティバイアス(Negativity bias)」です(※1)

図表1を見てください。

『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より
『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』より

この図を見て、どの部分が気になるでしょうか?

多くの人は右の円の欠けている部分が気になってしまいます。もし欠けた部分が気になる場合は、「ネガティビティバイアス」が働いている証拠です。

このバイアスは、本書の1時限目で述べた「注目バイアス」のなかでもマイナスなものにフォーカスする脳のクセです。

わたしたち人類は、太古の昔から自然災害や敵対する部族の襲撃、危険な動物との遭遇、疫病やケガなど、たくさんの脅威にさらされて生きてきました。

マイナスなことに注目してそれを乗り越えなければ、生き延びることができませんでした。だからこそ、わたしたちはこのようなマイナスなものにもフォーカスする力を獲得してきたと言われています(※2)

■よいニュースよりも悪いニュースのほうが拡散されやすい

また、明るいニュースよりも暗いニュースのほうが印象に残ったり、よい話よりも悪い話のほうが広まりやすいということがありますが、これらはすべて「ネガティビティバイアス」のしわざです(※3)

たとえば、2020年にコロナウイルスが日本に広がったとき、突然、「東京が封鎖される」というメッセージが知り合いから届きました。

信頼している人だったので、わたしも思わずソースを確認せずに、すぐに大切な人だけに伝えてしまいましたが、これがたとえば「東京にコロナウイルスを撲滅するための新しいシステムが導入された」というニュースだったら、人に伝えるでしょうか?

これはSNSも同じで、よいニュースよりも悪いニュースのほうが拡散されやすいということがわかっています。そして、それが本書の2時限目に紹介した「要約効果」によって、悪い部分が人を介してより増幅されるため、怒りや負の感情が広まっていくのです。

そういった意味で、SNSの情報は注意して冷静に見ることが大切です。また、「ネガティビティバイアス」が強い人ほど、政治の世界では保守派になりやすいことも報告されています(※4)

そして、この「ネガティビティバイアス」をもとに「作話」までしてしまうのが、「悲観主義バイアス(Pessimism bias)」です(※5)

この認知バイアスは、自分の未来の可能性を過小評価して、過去のマイナスな出来事を過剰評価(大きく)する妄想を、脳のなかにつくり出します。

■本来は「やってみたら、よくなるかもしれない」

たとえば、失敗する可能性を過大評価して、新しいことにチャレンジしない。宝くじを「買ってもどうせ当たらない。お金がもったいない」と思って買わない。

明らかにブラックな環境の職場にいて毎日つらいのに「転職しても、どうせ変わらないだろう」とあきらめてしまう……これらは「悲観主義バイアス」が強い人の傾向です。

本来は「やってみないとわからない」「やってみたら、よくなるかもしれない」のに、悲観的に将来や未来を想像してしまいます。

また「過去にこういうダメなことがあったし、いまもうまくいっていないし、この先もきっと変わらないだろう」と、過去のマイナスな情報を大きくとらえて、そのままマイナスを未来にも投影することで、自分の行動にブレーキをかけてしまうのも、「悲観主義バイアス」が強い人たちの特徴です。

ちなみに、西洋人(ヨーロッパ系アメリカ人)は日本人と比べて、「悲観主義バイアス」が少なく、自分に起こるポジティブな出来事を期待する傾向が強いことも報告されています(※6)

西洋では、まわりを気にせず個人を大切にする個人主義が文化としてありますが、それは「悲観主義バイアス」が少ないためだとも言われています。認知バイアスは文化すらつくるのです。

また、「悲観主義バイアス」は女性に多いことも報告されています(※5)

■結婚しても自分だけは離婚しないだろうと思ってしまう

わたしたちは往々にしてマイナスなことにフォーカスしてしまうことがありますが、そんなときどうすればいいのでしょうか?

そのヒントの1つが「悲観主義バイアス」の対極にある「楽観主義バイアス(Optimism bias)」にあります(※7)

世の中にはものごとを楽観的に見る人がいますが、じつはどんな人にもこの「楽観主義バイアス」が少なからずそなわっていることがわかっています。

たとえば、わたしたちは平均寿命よりも長生きしたいと思いますが、ほとんどの人が実際以上に長生きできるだろうと思うようです。

また、結婚しても自分だけは離婚しないだろうと思ったり、投資でも自分は大丈夫だろうと思ってしまう傾向があることが報告されています。

議論の後に腕を組んでソファに座っている認識できない成熟したカップルのクロップドショット
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

つまり、わたしたちには悲観的になる分野もあれば、楽観的に考えてしまう分野もあります。自分に関係ないどうでもよいことについては、プラスに楽観的にものごとを見ていることもあるようです。

ということは、わたしたちはもともと潜在的にプラスに見られる能力をもっていることを意味しています。

■「かも」で「楽観主義バイアス」を味方につける

それでは、楽観的に考えられるようになるにはどうすればいいのでしょうか?

じつはそのために役立つ素晴らしい法則がわかってきました。

それは「わたしたちはものごとがある程度コントロールできる状況にいるときに、楽観主義バイアスが強まる」ということです(※8)

たとえば、車に乗ったときに、いきなり知らない人が運転席に乗ってきて運転されたら、どんな気もちになるでしょうか? かなり怖いと思います。もしかしたら、事故に遭うかもしれません。

でも、自分で運転席に座って運転できたらどうでしょうか。自分で運転できる安心感から、事故は起きないだろうと思います。つまり、自分でコントロールできる状態にすることが、「楽観主義バイアス」を強めるのです。

また、実際にコントロールできない環境でも、コントロールできると思い込むことで「楽観主義バイアス」を高められることもわかっています(※9)

このとき、楽観主義の人がよく使っている言葉が「かも」という言葉です。「成功するかも」「当選するかも」「できるかも」「選ばれるかも」など、実際にコントロールできなくても、思い込むことでこの「楽観主義バイアス」を高めることができます。

■うまくいく理由をひと言で表現してみる

「ネガティビティバイアス」や「悲観主義バイアス」の働きをやわらげたいとき、もう1つ役立つ対処法があります。

それは、うまくいく理由を抽象的な表現で書いてみることです。

具体的にどんなふうに書くといいかについて解説する前に、オハイオ州立大学の研究で行なわれた興味深い実験を紹介したいと思います。

この実験では、学生にスピーチをしてもらい、全員を「素晴らしい!」とほめました。そして、その後、2つのグループに分けて、以下の課題を出しました。

①どのようにプレゼンを組み立てたのか詳細を説明してもらう
②「わたしは、スピーチをうまくやりとげた。なぜなら( )だからだ」という文章の空欄に入る言葉を埋めてもらう

そして、それぞれのグループでもう一度スピーチを行なってもらい、どのくらい自信をもって臨のぞめたかを調べました。

西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)
西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)

その結果、なんと②のグループのほうがより自信をもって臨めたうえ、スピーチもうまくなったのです。一見すると、作業プロセスを詳細に考えた①のグループのほうが、自信をもてそうです。しかし、実際は②の学生たちのスピーチの質のほうが向上しました。

わたしたちは、プラスになりたいとき、詳細を考えるよりも、あいまいに考えたほうが、自分の能力をプラスにとらえやすく、意識が楽観的になりやすくなるようです。

これを専門用語で「直接的抽象化(Directed abstraction)」と言います。つまり、うまくいく理由をあいまいに考えたほうが楽観的になりやすくなることを意味しています(※10)

この方法は日常生活にも応用できます。

たとえば、「100の『いいね』がもらえたのは、『○○だからできました』」と考えて書き出してみる。あるいは、「仕事がうまくいったのは、自分が『○○』だから」と書いてみる。

このようにあいまいに考えて書き出してみると、不思議とあなたのもっている能力のポジティブな面に注意が向きやすくなります。

また、こうした書く習慣を身につけていくうちに、思考のクセも改善される効果が期待できます。書くというアウトプットは、脳にそれだけ負荷をかけることになるため、続けることで思考を変化させることにつながったりもするからです。

※1 ネガティビティバイアス P. Rozin & E.B. Royzman,“Negativity bias, negativity dominance, and contagion”, Personality and Social Psychology Review, 2001, Vol.5, p.296-320
※2 マイナス(リスクなど)にフォーカスすることの大切さ J. T. Cacioppo,& G.G. Berntson,“The affect system: Architecture and operating characteristics”, Current directions in psychological science, 1999, Vol.8, p.133-137/A.Vaich, et.al.,“Not all emotions are created equal: the negativity bias in social-emotional development”, Psychological bulletin, 2008, Vol. 134, p.383
※3 明るいニュースより暗いニュースが印象に残り広がりやすい S. Stuart, et.al.,“Cross-national evidence of a negativity bias in psychophysiological reaction to news”, Proceedings of the National Academy of Sciences, 2019, Vol.166, p.18888-18892/K. Bebbington, et.al.,“The sky is falling: evidence of a negativity bias in the social transmission of information”, Evolution and Human Behavior, 2017, Vol. 38, p.92-101
※4 ネガティビティバイアスが高いと政治で保守派になりやすい J. R. Hibbing, et.al.,“Differences in negativity bias underlie variations in political ideology”, Behavioral and brain sciences, 2014, Vol. 37, p.297-307
※5 悲観主義バイアス(女性に多い傾向)Mansour, S.B. et.al.“Is There a ‘Pessimistic’ Bias in Individual Beliefs? Evidence from a Simple Survey”, Theor. Decis., 2006, Vol. 61, p.345-362
※6 西洋人は日本人と比べて悲観主義バイアスが少ない Chang, EC. Et.al.,“Cultural variations in optimistic and pessimistic bias: Do Easterners really expect the worst and Westerners really expect the best when predicting future life events?” Journal of Personality and Social Psychology, 2001, Vol.81(3), p.476
※7 楽観主義バイアス Sharot T. et.al.“Neural mechanisms mediating optimism bias”, Nature, 2007, Vol.450(7166), p.102-5
※8 コントロールできる状況は楽観主義バイアスを高める G. Menon, et.al.“Biases in social comparisons: Optimism or pessimism?”, Organizational Behavior and Human Decision Processes, 2009, Vol.108, p.39-52
※9 コントロールできると思うだけでも楽観主義バイアスが強くなる A. Bracha & D.J. Brown,“Affective decision making: A theory of optimism bias”, Games and Economic Behavior, 2012, Vol.75, p.6780
※10 直接的抽象化 Zunick,PV.Et.al.“Directed abstraction: Encouraging broad, personal generalizations following a success experience”, Journal of Personality and Social Psychology, 2015, Vol.109(1), p.1-19

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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、知的財産研究所を経て、特許庁入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など脳科学分野で最先端の仕事を手がける。2008年に企業や個人のパフォーマンスアップを支援する会社を設立。著作に『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)などがある。

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(脳科学者 西 剛志)

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