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「どのアイドルが優勝するか」感覚派の的中率は41%、理性派は21%…直感力を鍛えるたった1つの方法

プレジデントオンライン / 2023年3月21日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

直感力を鍛えるにはどうすればいいか。脳科学者の西剛志さんは「直感には『本当の直感』と『自分を騙す誤った直感』の2種類がある。本当の直感を手に入れるには、必ず一度はやってみることだ」という――。

※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■なぜ、理性だけで考えると判断を誤ってしまうのか

あなたは、理論派と感覚派だったら、どちらのほうでしょうか?

わたしは理論派! 絶対に感覚派! もしくは自分は両方! など、いろいろなパターンがあるかもしれません。理論と感覚はどちらが優れているのか?

古くはソクラテスの時代から議論されてきた人類の永遠のテーマの1つですが、21世紀に入って、コロンビア大学で面白い研究が行なわれました。

アメリカンアイドルという米国で人気のオーディション番組があるのですが、視聴者を理性で考えるグループと、感覚で決めるグループに分け、誰が最後に優勝するか予想してもらうという実験です(※1)

その結果、理性で考える人(感覚を信じない人)の的中率は21パーセントだったのに対し、感覚を信じる人はなんと的中率が41パーセントにもなったのです。

これは「感覚的なお告げ効果(Emotional oracle effect)」と名づけられました。わたしはこれを「直感バイアス」と呼んでいます。

たとえば、この「直感バイアス」は将棋の世界でも見られます。将棋で次の一手を打つとき、通常は論理的に相手の出てくる戦法を考えるのが一般的です。

しかし、将棋のプロ棋士のなかでも名人と呼ばれる人たちほど、考えるよりも最初にこれだと思える一手がまず直感で出てくるそうです。

またサッカーの世界でもスーパープレイのような通常ありえないシュートを打つ瞬間がありますが、このとき、頭で考えてプレイしていたら間に合いません。まず頭で考えるより先に体が動いていたという人がほとんどです。

優れた経営者ほど、論理だけでなくときとして直感を信じる傾向が強いのですが、ほかの研究でも、理性だけで考えると、判断を誤ってしまうことが報告されています。

■名人と呼ばれる人たちも昔は頭で考えていた

わたしたちは論理ではなく、感覚でものごとを選択するとき、脳内では「大脳基底核」という部位が発火していることがわかってきています(※2)

大脳基底核は、原始脳のなかの奥深くに位置する、もともと運動の記憶を保存している部分です。

たとえば、わたしたちがまだ小さい子どものころは、ボールを投げてもうまくキャッチできません。しかし、何度もボールを投げているうちに、だいたいこの辺に落ちるのかなということを学習していきます。

男の子はリビングルームで母親と父親から賞賛を受けました
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

じつは大脳基底核は、そのような運動の記憶を保存する場所として考えられています。

そして、この大脳基底核は、直感をつくり出している場所でもあることが近年わかってきています。

先ほど、将棋の名人ほど次の一手が感覚で出てくると述べましたが、そのときに大脳基底核が発火します。

一方で、アマチュアの棋士の大脳基底核は活性化していなかったそうです(プロ棋士28名とアマチュア棋士34名の脳の状態をfMRIでスキャンした結果、プロ棋士ほど大脳基底核が発火していました)。

ここで面白いのは、名人と呼ばれる人たちも昔は頭で考えていたということです。しかし、対局を通していろいろな戦法を経験するうちに、なぜか最初にこれだという一手が出てくるようになったと言います。

大脳基底核には、これまで本人が経験してきたこと、蓄積してきた知識が保存されていて、その膨大な情報のなかから最適な答えを見つけるという機能が、じつはそなわっているからです。

そのため、理論的に思考するよりも早く最適な手を見つけ出し、対局の流れを読みとることができるのです。

■「根拠のない自信」の根底にあるのは、過去の経験や知識

こうした「直感バイアス」は、一流選手や将棋の名人でなくとも、日常的に体感しています。

たとえば、はじめて会った人で、話す言葉はいいことを言っているのに、「この人は、なんか怪しい」と思ったことはないでしょうか。実際にあとになって人に話を聞いてみると、ウソを平気でつく人で評判が悪い人だったという体験もあるかもしれません。

これは、脳が、過去に出会った人たちの情報を覚えていて、データベースから「こういう特徴をもっている人はウソをついたり、だます人が多い」という正しい情報を検索してくれるためです。

ですから、たくさんの人と会った経験のない子どもは人を正しく判断することができません。

「あの人は、仲よくなれそう」と感じるときも、それはわたしたち1人ひとりの経験の蓄積から下された認知。「直感バイアス」と言えるものです。

ただし、ここで注意すべきことがあります。それが「直感バイアス」を尊重しすぎて、あまりにも自分の感覚を100パーセント信じてしまうと、逆に誤った判断をしてしまうことがあることです。

なぜなら、直感には大きく2種類あって、本当の直感と、自分をだましてしまう誤った直感があるからです。

たとえば、以前Aさんに誘われたパーティがビジネスの勧誘目的で嫌な思いをしたとします。そして、今回はBさんにパーティに誘われました。

すると、Aさんの経験があるので、今回もだまされるんじゃないかと感じてしまいます。結果パーティに行かないという選択をします。

でも、ここでよく考えていただきたいのは、AさんとBさんはまったく違う人だということです。

Aさんがパーティに誘ってきたらもちろん行かないほうがいいですが、Bさんが誘ってきたパーティなら、何か大きなビジネスや新しい出会いのチャンスがあったかもしれません。

■必ず一度はやってみて、経験を蓄積していく

ここで大切なのは、この2つの直感を区別する必要があることです。どうすれば、この2つを区別できるのでしょうか。そのために、うまくいく人たちがよくやっている習慣があります。

それが「必ず一度はやってみる」という習慣です。

西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)
西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)

たとえば、Bさんから誘われたとき一瞬「めんどくさいな」と感じても、とりあえず一度は行ってみます。すると、2種類の結果が待っています。それは、本当に行かないほうがよかったという結果。そして、意外と行ってよかったと思える結果です。

あなたにも最初は面倒だと思って行ったけど、行ってみたら意外と楽しかったという経験はないでしょうか? それと同じように、行ってみなければわかりません。そして行かないほうがよければ、二度と行かなければいいのです。

こういった経験を通して、いつしかこの2種類の直感を見分けることができるようになっていきます。

そういった意味では、本書の1時限目で述べた「内観幻想」(自分の感覚が正しいと思ってしまう認知バイアス)は、まさに本当の直感ではなく、過去の自分の考え方や体験に基づいた誤った直感(幻想)だと言ってもいいでしょう。

※1 感覚的なお告げ効果 Michel Tuan Pham, et.al.“The Emotional Oracle Effect”, Journal of Consumer Research, 2012, Vol.39(3), p.461-477
※2 感覚で判断するとき大脳基底核が発火 Xiaohong Wan, et.al.,“The Neural Basis of Intuitive Best Next-Move Generation in Board Game Experts”, Science, 2011, Vol. 331(6015), p. 341-346

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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、知的財産研究所を経て、特許庁入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など脳科学分野で最先端の仕事を手がける。2008年に企業や個人のパフォーマンスアップを支援する会社を設立。著作に『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)などがある。

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(脳科学者 西 剛志)

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