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よかれと思って作った資料の8割がスルーされていた…500人調査でわかった無駄が多いチームの残念な特徴

プレジデントオンライン / 2023年3月21日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tdub303

生産性の高いチームは何をしているか。ビジネスパーソン17万人を調査し、AI分析をしたクロスリバー代表の越川慎司さんは「調査で『コミュニケーションがうまくいっている』と答えた組織の68%はメールではなくチャットを使い、社内会議に使う時間が24%少ないことがわかった」という――。

※本稿は、越川慎司『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(大和書房)の一部を再編集したものです。

■できるチームは、会議をする時間が24%少ない

弊社クロスリバーでは「コミュニケーションがうまく取れているチーム」と「そうでないチーム」の違いを明らかにすべく、クライアント企業の22社、68組織497名を対象に調査しました。

匿名のアンケートで「うちのチームはコミュニケーションがうまく取れている」と回答する人が6割以上いた組織をチームAと区分けしました。

一方、「うちのチームはコミュニケーションがうまく取れていない」と回答する人が6割以上いた組織をチームBとしました。

コミュニケーションがうまく取れているチームAと、コミュニケーションがうまく取れていないチームBを比較したところ、図表1のような結果となりました。

【図表】「コミュニケーションがとれているチーム」は生産性が高い
出典=『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』

チームAはチームBよりも組織内での気遣いが少なく、社内会議に費やす時間は24%も低かったのです。

チームBは「会議のための会議のための会議のための打ち合わせ」を繰り返し、職場の会議室は常に予約でいっぱいでした。

チームAは、社内会議を徹底的に減らし、生み出された時間をメンバーの「教育の時間」に割り当てていました。

別の調査で20代30代のビジネスパーソンは、58%が「残業削減は反対」と回答しており、その理由の1つが「学習時間の確保」でした。

つまり、業務時間中に学習をしたがっていたのです。

チームAは、会議の削減で生み出された時間を研修時間に充てている影響もあり、結果的に離職率が低くなったことは納得できます。

■「忖度資料」は、8割がスルーされている

コミュニケーションがうまく取れていないチームBは、資料作成時間がチームAより25%も多いことがわかりました。

上司に対する過剰な気遣いで作成ページが増え、「今このような形で作成しているのですがイメージ合っていますか?」と気軽に話しかけられないので、結果的に「差し戻し」になることが頻発していました。

チームBでは、「必要だろう」、「重要そうな」、「気にいってくれるだろう」といった上司への気遣いで作られたページが全体の24%もありました。これを「忖度(そんたく)ページ」と名付けました。

衝撃的だったのは、この忖度ページのうち約8割が上司にめくられてもいなかったのです。

つまり、上司が必要としない資料を勝手に部下たちが作成し、それが残業につながっていたのです。

チームAは、「今ちょっといいですか?」という声掛けが多く、資料作成途中に上司とイメージを合わせていました。

完成イメージを上司に確認しておくことで、差し戻しが少なく作成時間が短くなっていました。

このようにコミュニケーションがうまく取れていなければ不必要な妄想が広がり、過剰な気遣いも増えます。

途中で確認することができないため、不要なページを作成する時間が長くなり、また、差し戻しによって上司と部下の双方の時間を奪うことがわかりました。

このチームAとチームBの双方が、2020年4月から半ば強制的にリモートワークへ突入しました。

一回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月の直後にアンケートを取ったところ、チームAのメンバーは「リモートワークがうまくいっています」と回答する人が89%。

一方チームBは、たった8%。つまり92%のメンバーが「うまくいっていない」と認識していたのです。

「リモートワークだとコミュニケーションが取れない」という管理職の愚痴をよく聞きます。

しかし、調査の通り、出社しているときにコミュニケーションがうまく取れていないチームは、リモートワークでもうまくいかないというだけです。コミュニケーションの不全を勤務形態のせいにするのは、やめてもらいたいものです。

■1ページが「385文字以上の資料」は、伝わらない

頑張ってPowerPoint(パワポ)資料を作ったのだけど、なかなか上手くできないとか、ついつい作成時間が長くなってしまうとお困りの方が多いかと思います。

クライアント企業の労働時間をダイエットすべく、働く時間の14%が費やされている(図表2)「資料作成」について調査しました。

826社に協力してもらい、各社で使っているパワポ資料をランダムで約5万ファイル集めました。

【図表】社員はどのように時間を奪われるのか?
出典=『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』

資料を画像に変換したり画像から文字を抽出したりする自動化ツールを使って分析したところ、1ページに記載された文字の平均は385文字でした。

用途や提出先が様々ですので、385文字が一概に多いとは言えません。

しかし、資料を作成することが目的の資料や、「伝わる」ことではなく「伝える」ことが目的の資料が存在していたのは事実です。

385文字は情報量が多過ぎて「わかりにくい資料」と相手に判定されやすいことが分かりました。

自分で伝えたいことが多過ぎると、文字数が増えてしまいます。すべてを伝えたいと思い、情報の網羅性を高めると情報量が増え、結果的に伝わらないのです。

相手が「10秒間でパッとわかる資料」を欲しているのに、長時間かけて385文字の資料を作成しているのです。

こうした「伝える」と「伝わる」のギャップが無駄な長時間労働を生んでしまうのです。

■パワポ職人が評価されないワケ

最もパワポの普及率が高い国の1つである日本では、ビジネスパーソンの約9割がパワポを使っていると言われています。

その影響もあり、過去5年間でパワポ資料の作成講座を開催し続けて受講者は2万人を超えました。

受講者は様々な機能を習得しようとしています。私は、前職のマイクロソフトでパワポの担当役員をしていたこともあり、作成してきた豪華な資料を自慢してくる強者もいます。

そのようなパワポ職人に、「その資料でどれくらいのビジネスを生み出したのですか?」と聞くと、はっきりした回答が返ってこないケースがあるのです。

五感の中で、人の記憶や心に最も影響を与えるのは視覚です。

その視覚に効果的に訴えることができるパワポが強力なツールであることは間違いありません。

しかし、資料作成の目的は「相手を思い通りに動かすこと」です。

提案したら決めてもらわないといけないですし、情報を共有したら、それをどういう時にどのように使うべきか定義されていないと活用されずに終わりです。

作成後に思い通りの結果になったのかを確認しないと、そのパワポが「すごい」かどうかの判断がつきません。

どうやって資料を完成させるかを考える前に、なぜこの作業をやっているのかを“腹落ち”することが大切です。

作業をしていること自体が目的となってしまうと、本来の目的が達成できません。豪華なパワポ資料を夜遅くまで作って、作業充実感を得てはいけないのです。

多くの機能を使い、時間をかけてパワポ資料を作っても成果につながっていなければ自己満足です。

成果を出さずに資料作成に大量の時間を費やしている社員は社内・社外で評価されません。

■1日のメール平均受信数は38.5通

皆さんは、一日に何通のメールを処理しますか?

メールのチェック、返信に追われていませんか?

2.8万人に調査したところ、1日の平均受信数は38.5通でした。

23社の情報システム部門にヒアリングしたところ、社員一人当たりの年間受信数は前年比で8.3%増えていることが分かりました。

大量のメールに埋もれてしまうと重要な情報を見落としたり、必要な情報を探す時間がかかったりするなど、働き手の生産性は落ちてしまいます。

古い統計ですが、総務省の調査(平成27年版情報通信白書)では、10年間でメールの流通量は4倍に跳ね上がっているそうです。

メールの量が増えれば、当然それを扱う時間が増えますので、長時間労働の抑制とは全く逆方向の動きです。

2.8万人の調査では、メール作業中に添付ファイルを探す時間が週に61分もかかっていることが分かりました。

年々増え続ける受信メールの中で、目当ての添付ファイルを探していたのです。それも、社内メールの添付ファイルです。複数メンバーが編集するのでファイル名がどんどん書き換わっていきます。

最初に「企画書v1」だったものが、「企画書v2」になり、「企画書 最終1」とか「企画書 最終1-2」と……。

結局、どれが最新版であるのか分からなくなり、更新履歴が見えないので1つずつファイルを開いて修正箇所を確認することに時間が奪われていました。

■「できるチーム」は、メールではなくチャットを使う

さらに調査を進めると、恐ろしいことに「メールを見ていますか?」というメールが各社に0.5%ほど存在していたのです。メールを見ていない人に「メールを見ていますか?」とメールを送っても意味がありません。

実際は、「後回しにしないで早く処理してよ」という催促のメールでしょう。

メール送信者が一方的に「伝えたい」文章を送ったものの、受信者に「伝わらなかった」ので返信されなかったのです。

新型コロナウイルスの影響で80%近くの企業がリモートワークを実施しました。今までどおり仕事ができずストレスが溜まります。

「あいつ、俺のメールを軽視しているのではないか!」と目くじらを立てて怒る人も多いでしょう。

メールの作業によって社内の人間関係が悪化したり、返信の待ち時間などによって業務効率を落としたり、多くのビジネスパーソンがストレスを抱えています。2万人の調査で89%のビジネスパーソンがメールのやり取りでストレスを感じたことがあると答えています。

越川慎司『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(大和書房)
越川慎司『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(大和書房)

なお、「コミュニケーションがうまくいっている」と答える組織の68%は、社内のコミュニケーションツールとしてメールではなくビジネスチャットを使っていました。

チャットであれば、相手の状況(プレゼンス)が分かり、その上で気軽に「今ちょっといい?」と話しかけることができます。

相手がオンライン(連絡可能)であれば5秒以内に返事が来る確率が70%以上です。

「ビジネスチャットにして情報伝達が完結するリードタイムはメールの半分以下になった」と小売業の経営者が発言していました。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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