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なぜ人は「自分だけは大丈夫」と考えたがるのか…自分に悪いことが起こる確率を過小評価してしまう深い理由

プレジデントオンライン / 2023年3月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BartekSzewczyk

知人が事故や病気など不幸な出来事にあったと聞いたときに「周りには起こるかもしれないけれど、自分は大丈夫」と思ったことはありませんか。人が自分に不運な出来事が起こる確率を過小評価することを「楽観性バイアス」と言います。こうした「自分だけは大丈夫」「なんとかなるだろう」といった思い込みは、ときにリスク評価を誤る恐れもあるので注意が必要です――。

※本稿は、『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■自分に都合よく解釈してしまう認知バイアス

日常生活の中では、誰もが無意識のうちに直感や経験、先入観、願望などに囚われています。その結果、合理的でない選択や判断を下していたりします。

心理学ではこれを「認知バイアス」と言い、こうした思い込みや思考の偏りに誰もが縛られているのです。

認知バイアスは日常生活のあらゆる場面に潜んでいて、科学的に実証されているものは200種類以上あるとも言われています。

記憶や選択、信念、因果、真偽などに関連する場合に認知バイアスは生じやすいのですが、非合理的な判断をしてしまった結果、「あのとき、他の方法を選べばよかった」「なぜ判断を間違えてしまったのか」と後悔することもあります。

認知バイアスで陥りがちな失敗の一つに、リスク評価を誤るというものがあります。物事のリスクを客観的ではなく、自分に都合よく解釈して、リスクを小さく見積もってしまうわけです。

本稿では、リスク評価を間違えてしまう3つの認知バイアスを紹介します。

■自分に不運な出来事が起こる確率を過小評価

同年代の知人が大きな事故に遭ったと聞けば、「大変だな」と思う人は多いでしょうが、「自分も大事故に遭うかも」と考える人は少ないのではないでしょうか?

人は、自分に不運な出来事(犯罪、病気、災害)が起こる確率を過小評価し、幸運な出来事が起こる確率は過大評価します。つまり人は、不幸な話を聞いても、「周りには起こるかもしれないけれど、自分は大丈夫」と捉える傾向があります。このように、ものごとを楽観的に解釈することを「楽観性バイアス」と言います。

楽観性バイアスは、独立や起業、開発など、新しいことを始めるときには必要だと言われています。そうしたときにリスクを細かく考えていると、いつまでも前に進めません。

いざ決断するときには、「なんとかなるさ」というこのバイアスがうまく作用することが重要だと考えられます。

楽観性バイアスは、性別や国籍を問わず人間に本質的に備わっており、多くの人に見られるとされています。過度の楽観は疾患を見逃すなどの危険性があり注意が必要ですが、その一方、ポジティブな結果を期待することで、ストレスや不安が軽減したり、健康的な生活や行動が促進されたりします。実際に楽観性バイアスの欠如は、うつ病などの心身の疾患とも関係することが指摘されています。

「楽観性バイアス」は、心理学者シェリー・テイラーが提唱する「ポジティブ・イリュージョン」の1つです。イリュージョンとは「幻想」のことです。彼女は、このバイアスがあることで、人が社会に適応することができ、心身の健康維持や促進に大きく貢献していると主張しました。ポジティブ・イリュージョンにはほかに、自分は平均よりも優れていると考える「平均以上効果」や、外界の現象をコントロールできると考える「コントロールの錯覚」といった認知バイアスなどもあります。

■極端な不安やストレスから自分を守るため

こうした楽観的なバイアスは、実際に何か起きた際にも生じることがわかっています。

たとえば、もし会社で突然、警報装置が鳴ったら、あなたはどんな行動をとりますか? たいていの人は、「誤作動かな?」「訓練だろう」と考え、すぐには避難しないのではないでしょうか。

人は、めったに起こらない事態に直面すると、それまでの経験からとっさに「ありえない」と思い、それを正常の範囲内のことだとする傾向があります。これを「正常性バイアス」と言います。

私たちは、さまざまな変化や新しい出来事など、急に予期せぬ事態に陥っても、「たいしたことない」「これくらいなら大丈夫」と思うことで、極端な不安やストレスから自分を守っているのです。

『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』よりイラスト
イラスト=ナカオテッペイ
出典=『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』 - イラスト=ナカオテッペイ

■非常事態でも「たいしたことない」と思うワケ

災害時などに正常性バイアスが働くと、本来であれば非常事態と判断すべきことを、「たいしたことない」と誤認する恐れがあります。

実際に過去に起きた災害では、パニックによって逃げ遅れたケースよりも、正常性バイアスが作用して逃げ遅れたケースのほうが多いことが指摘されています。

非常時には、冷静な思考や判断が難しく、正常性バイアスに陥るリスクがあることを忘れないようにしましょう。

誰もが「ありえない」「起こるわけがない」と思われていた災害などが突然発生すると、人々に与える衝撃が増すと言われています。

これは「ブラック・スワン理論」と呼ばれています。

スワン(白鳥)はみな白色だと思われていた時代に、黒いスワンが発見されたことから、希少な現象の比喩として「ブラック・スワン」と呼ばれるようになったようです。元ヘッジファンドで認識論の研究者ナシーム・ニコラス・タレブ氏が著書の中で提唱した理論です。

この現象は自然災害のほか、予測が難しい金融業界で、金融危機を指すときなどにも使われています。

■リスクが下がるとリスクの高い行動をとる

こうした間違ったリスク評価は、その後の行動にも影響を与えることがあります。

たとえば、道を広げたりガードレールをつけたりと、事故を防ぐために道路が整備されれば、当然、事故も減ると思うでしょう。

しかし実際には、道路を整備しても思ったほど交通事故が減らないケースがしばしば見られます。それは、ドライバーが以前よりもスピードを出すなど、より危険な運転をするようになるからです。

人は身の周りのリスクが低下したと感じると、その分だけ、リスクの高い行動をとることがあります。これを「リスク補償」と言います。安全性が高まったはずなのに、事故が減らないことの背景には、このような理由があります。

タバコを低タールのものに変えると、以前より喫煙本数が増えるのも、このリスク補償の一例と言えます。

■「安全かも」と思うときこそ危ない

「リスク補償」は、慣れや訓練によって自らの手でリスクをコントロールできる力が身についた、と思う場合にも生じます。

たとえば、運転免許を取ったばかりの頃は安全運転を心がけていても、運転に慣れてくると、制限速度以上のスピードを出したり、無理な追い越しをしたりするようになります。

池田まさみ他監修『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)
池田まさみ他監修『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)

リスクがあるとわかっていながらもリスクを追求することを、「リスクテイキング」と言い、個人差があることが知られています。リスクテイキングしやすい人と、しにくい人がいるということです。

また、「若気のいたり」という言葉があるように、一般に若い人は中高年よりも、リスクテイキングの傾向が強いようです。

(プレジデント社書籍編集部)

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