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エロワードを聞くと吐き気がする…下ネタが苦手な21歳女性が男性向け「オナホ」の起業で大成功したワケ

プレジデントオンライン / 2023年3月24日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miniseries

知見のない領域のビジネスで成果を出すにはどうすればいいか。起業家の神山理子さんは「もともと下ネタは苦手だったが、師匠からの助言で男性向けグッズ『オナホ』領域のリサーチをし、起業することを決めた。クリエイティブで競われている市場にコンセプト力で参入できることに勝機を感じた」という――。

※本稿は、神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■「エロワードを聞くだけで吐き気がする」からスタート

こんにちは、神山理子(リコピン)です。

25歳です。

18歳から楽曲制作の仕事を始めて、20歳でシンガポールの会社にてWebマーケティングの修行をして、音楽メディアを業界No.1までグロースして事業売却、21歳でオナホD2Cの会社を創業して、販売初日にAmazon売れ筋ランキング4位を獲得、22歳で4つのD2Cブランドを創業、24歳で売却をしました。

もともと下ネタが苦手な女子大生だった私が、なぜオナホD2Cを立ち上げたのか。コンセプト勝ちで売れるコンテンツやモノをつくるための思考や経験を紹介していきます。

さて、話は20歳のときに遡ります。

当時私は、音楽SEOメディアを売却したことで、直近にやるべき目の前の仕事が何もなくなりました。

「さてとこれからは何をしたらいいかな」と考えていたら、師匠との飲みの場で「新規事業やったらええやん!」と言われて、新規事業を立ち上げることになりました。

そして事業のネタ探しを始めました。

2週間ほど、片っ端からあれこれと市場調査をしてみたものの、「これだ!」と叫べるようなものは見つけられませんでした。

それまで音楽領域に特化していたせいで、他の市場についての知見があまりにも乏しすぎたのです。

日頃からのリサーチを怠っている人間が、突然「新規領域で事業を立ち上げよう!」とリサーチをしたところで、付け焼き刃でしかありませんでした。

考えてみると、周囲の事業立ち上げが上手い先輩は、本人の趣味や興味の範囲が幅広かったり、とある領域に特化した友人をたくさん持っていたりして、日頃から自分の生活範囲よりも広く市場への理解があります。

これを痛感してからは、「自分とは違う生活圏で暮らす人」「とある領域に突き抜けた人」には積極的に会うようにしています。

それでもなんとか見つけ出した市場での事業案として「“めちゃくちゃキツいけど稼げるブラックバイトの求人メディア”でも立ち上げようかな」と、今考えるとかなり邪な思いを馳せていたところ、師匠から「オナホ作れば?」と超絶軽いノリで言われました。

当時の私は、エロがめちゃくちゃ苦手でした。

エロワードを聞くだけで吐き気がするし、AVを見ると動悸(どうき)がするくらい、エロに耐性がありませんでした。

しかし、背に腹は代えられません。

新規事業、作りたい。

言われるがまま、オナホ領域へのリサーチが始まりました。

そして気づきました。

オナホ領域は、調べれば調べるほどいろんな意味でアツい市場だったのです。

■クリエイティブで勝負が決まる領域を選ぶ

オナホ領域を選んだ理由の1つは、「クリエイティブで勝負が決まりやすい領域なのに、コンセプト力で参入できる余地があったから」です。

つまり、その市場で売れている商品の強みが、「実用性がある」などの明確に言語化できるものではなく、「デザインがかっこいい」「なんとなく好き」などのクリエイティブに起因しているものということです。

文字が飛び出る本を持つ手
写真=iStock.com/efks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/efks

消費者の五感で「なんとなくいいな」と漠然と売れる市場に、明確な「買う理由」を持つコンセプト力のある商品を投下することで、勝率が上がります。

まずはAmazonで「オナホ」を検索しました。

すると、二次元の女の子のアニメパッケージがずらりと並ぶ。

中には「明らかに中国の業者が売っているな」という、無理矢理日本語訳したかのような、よくわからない中華製商品も売っていました。

これを買うのはめちゃくちゃ勇気がいるでしょ。

でもそんなよくわからない中華製商品が人気ランキング上位。

その時点で、まだ誰も参入していない領域の予感がしました。

神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)
神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

明確に商品の特徴を謳っているものはほとんどありません。

とにかくいろんなテイストのアニメイラストの女の子が陳列されています。

その様子は、まさに風俗店のパネル写真のよう。

カオスな検索結果です。

「違いがわからない。みんなは、この中で何を基準に選んで購入しているの?」

ドラッグストアで販売される化粧品のテスターとは違って、「オナホを試してから買う」なんてことはできません(あったら面白い。「オナホ穴兄弟」が店頭で爆誕しますね)。

そこで「オナホを使っている」という男友達に片っ端から電話をしてみることにしました。

「オナホ、どこで買ってるの?」
「Amazonで適当に買ってる」
「検索したら、似たようなものがいっぱい出てこない? どうやって選んでるの?」
「パケ買い。好みのイラストのパッケージを選んで、なんとなく買うよ」

「パッケージで買うこと」、通称パケ買い。

オナホは、実用性ではなく、クリエイティブで勝負が決まる市場だったのです。

■オナホとYOASOBIの共通点

確かにオナホの商品数はかなり多く、「ロリ系」「お姉さん系」「熟女系」「巨乳系」「貧乳系」「清楚(せいそ)系」「ギャル系」「メイド系」「AV女優イメージ」「人気アニメキャライメージ」など、多様なパッケージがラインナップとして存在しています。

ただ、パッケージごとに細分化はされているものの、オナホ自体の商品特徴は明確には分かれていません。

「クリエイティブ力」という言語化しにくい芸術性で顧客へのアプローチを競う市場に、「コンセプト力」という明確なベネフィットと特徴を持つ商品で参入すれば、勝利できる予感がしました。

従来とは全く違う武器で戦えば、勝率は上がります(そういえば、私が幼児だったとき、戦いごっこが流行ったことがあります。みんなが新聞紙を筒状に丸めた剣で戦っている中、弓矢を模した飛び道具を作って挑んだら圧勝したのを思い出しました)。

クリエイティブで競われていた市場にコンセプト力で参入した事例として、大ヒットしたYOASOBIも挙げられるでしょう。

それまでの音楽市場は、まさに音楽性という「クリエイティブ力」の戦いでした。

「人々の五感にどうやって呼びかけるか」という評価指標がわかりにくい芸術性で争われる市場に対して、「小説を題材にした楽曲」という明確なコンセプトで参入したことが、YOASOBIが大きな注目を集めることに成功した要因の1つだと思っています(もちろん曲自体も間違いなく素敵です。オナホと一緒にしてしまってごめんなさい。大ファンです)。

■「買い方がよくわからない」2000億円以上のマーケット

その他にも、スマホケースの「iFace」も挙げられます。

それまでのスマホケース市場は「なんとなくデザインで選ぶ」というのが実態でしたが、iFaceは「握りやすく、衝撃に強い」という機能性を訴求したコンセプトで、大ブレイクしました。

私が高校生のときは、クラスメイトのほとんどがiFaceを使っていました。

クリエイティブで勝負が決まる市場は、「なんとなく買い」をされていることが多いです。

購入顧客に対して「どうしてこれを買ったの?」と聞いても、顧客自身すら明確な回答ができません。

そんな「買い方がよくわからない」オナホを含むアダルトグッズ市場ですが、市場規模は2019年時点で2000億円以上ありました。

みんな、買い方がわからないながらも、オナホを欲して、手探りでオナホを購入し続けているのです。

購入理由が曖昧な顧客に対して、購入理由が明確になるような「コンセプト力の高い商品」を用意することで、新規参入商品でも優位性が高くなり、勝率が上がるのです。

■「少し冒険」でき「欲求が深い」領域を選ぶ

また、新規参入でも勝率をさらに高めるためには、「買う側がちょっと冒険したくなる市場」を選ぶのも重要です。

大型家電などの絶対に失敗したくない大きな買い物、頻繁に買い替えるわけではない買い物は、みんな冒険を恐れて安パイを取りがちです。

その結果、どんなに目を引くコンセプトを用意したところで、未知の新規ブランドよりも、実績のある安心な老舗ブランドが選ばれる可能性が高いのです。

「失敗してもいいから、面白そうなこの新商品を試してみよう」と顧客が少し冒険したくなるような商品ジャンルは、コンセプト力の高い新規商品との相性が良いでしょう。

さらに、「欲求が深い市場」であればなお良いです。

欲求が深ければ深いほど、顧客がその欲求を満たすために使える金額が上がり、市場規模が大きくなるからです。

市場規模が大きければ大きいほど、事業が成功したときの売上見込みが上がるため、事業としての期待値が大きくなります。

■「欲求が深い」とはどういうことか

人間の三大欲求といえば「食欲」「睡眠欲」「性欲」ですが、現代ではそれら以上に「承認欲求」の欲求レベルの高まりを感じます。

「モテたい」「他者から“成功している”と思われ、尊敬されたい」「バカにしてきた人を見返したい」などの欲求は、広告でもよく見る訴求なだけあって、現代人を魅了する言葉なのです。

また最近では、「他者から承認されたい」という欲求から派生して「自分で自分を承認したい」という欲求も生まれてきています。

今流行っている言葉に置き換えるとすれば、「自己肯定感」でしょうか。

「他者からの肯定に依存するより、自分で自分のご機嫌を取れるほうが、自立していて良い」という認識は、間違いなく昔よりも強くなっているでしょう。

書店に行くと、「自己肯定感を高める本コーナー」ができていたり、「人気本コーナー」でも自己肯定感を題材とした本が大量に平積みされていたりします(本屋は、その時期のトレンドがめちゃくちゃ反映される場所で面白いです)。

「他者から承認されたい」は男性に多い傾向、「自分で自分を承認したい」は女性に多い傾向があります。

「男性はモテるためにおしゃれをして、女性は自己満足のためにおしゃれをする」と巷で言われやすいのも、これが原因かもしれません。

つまり、「食欲」「睡眠欲」「性欲」に加えて、「他者承認欲求」「自己承認欲求(自己肯定感)」は、現代人に向けての訴求として、かなり深い欲求であり、市場規模や客単価が上がりやすい傾向にあります。

■高ランクのクレカは「ドヤ顔」の価値も

例えば、クレジットカードの色を変えるために、高額な年会費を払う人がいます。

もちろんランクの高いクレジットカードだと、コンシェルジュがついたり、ラウンジが使えるなどの特典はあります。

クレジットカードでの支払い
写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ridofranz

しかし実は「支払いの際に、一目で高ランクだとわかるクレジットカードを出すことでドヤ顔ができる」という価値があります。

本来は、現金を出さずに前借りで支払いをする目的のクレジットカードですが、支払いという実用価値の他に、承認欲求を満たすための価値も存在しているといえます。

オナホは、パケ買いされるクリエイティブで戦われている市場であり、みんながちょっと冒険したくなる市場であり、性欲に根付いた欲求の深い市場。

つまり、「突き抜けたコンセプト」があれば、新規参入の私でも十分勝算のある事業なのです。

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神山 理子(かみやま・りこ)
起業家
愛称はリコピン。1997年生まれ。明治大学商学部卒。20歳の時にインターン先で音楽メディアの運営責任者となり、業界No.1までグロースして売却。その後シンガポールにて新規事業を立ち上げ、同事業の法人化を経て、オナホD2Cの会社を創業。自ら開発したオナホをAmazonランキング4位にまで育てるも過労のため退任。休暇3日目に新しい事業アイデアが閃き、休みもそこそこに自身2社目となる(株)ひだねを立ち上げる。創業1年で同社を売却し、次の事業に向けて準備中。消費者のインサイトを掘って、コンセプトをつくることが得意。たまにマグロ漁船員。1児の母でもある。

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(起業家 神山 理子)

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