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17歳で藩主になり倒産状態の藩を復活させた…ケネディ元大統領が「日本一」と評した男の「人を動かす」人間力

プレジデントオンライン / 2023年3月24日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tanita Chunsiripongpann

多くの人から信頼される人は何をしているか。ハイパフォーマンスコーチの岸昌史さんは「一見相反する表情を持てるかだ。ケネディ元大統領が日本で最も尊敬した米沢藩の名君である上杉鷹山は『得』と『徳』『情理』を体現し、倒産状態だった藩の改革を成功させた」という――。

※本稿は、岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■熱狂する一人の“バカ”が偉大なリーダーに変わる瞬間

偉大なリーダーたちは、リーダーになろうとしてリーダーになったわけではありません。

リーダーシップとは、自分自身をリードすることから始まり、そこから人をリードし、社会をリードする旅です。

ある人が「見えないもの」、つまり現在、現実には存在せず、多くの人が「夢」や「理想」と呼ぶようなものを見る。そこに向けて、まず自分自身をリードします。

しかし、新しい挑戦をする人は、往々にして周囲に理解されません。世の中から見れば、最初は「一人で踊っているバカ」でしかないわけです。

熱狂する一人の“バカ”が偉大なリーダーに変わるきっかけをつくるのは、ファーストフォロワーです。

ファーストフォロワーの役目は、熱狂する一人が始めたことに、「かっこいいね」「面白いね」と言ってあげることかもしれないし、仲間としてチームに加わることかもしれません。あるいは、お金を出すことかもしれない。

それを入り口に、熱狂する一人が見ている景色に共感して人が集まります。集まった人は熱狂する一人が見ているものに自分自身の夢や思いを重ね、チームメンバーに変わります。

こうして初めて、リーダーはリーダーになる。「リーダーは仲間を奮い立たせるより先に、仲間に奮い立たされなければならない」といったこともいわれます。メンバーが一人のバカをリーダーに変えるのです。

■たくさんの力を巻き込んでいくために

このように、メンバーは、リーダーのビジョンに共感することから熱狂の輪に加わっていくことになります。リーダーのビジョンではなく、自分のビジョンに向かっていくべきではないのか、と思われるかもしれません。

しかし私は、誰もがビジョンを持たなければいけないわけではないと思います。楽しい未来を思い描いて周囲に伝えることが上手な人もいますが、そうではない人もいます。

誰かのビジョンに共感するのであれば、飛び込んでみる。それが自分のビジョンを見つけるきっかけにもなります。

リーダーが一人でできることは限られています。ビジョンを実現させるのは、それを思い描いた本人ではなく、後に続く人たちです。

周囲の人を巻き込んでいくためには、リーダー自身が熱狂して描くビジョンが必要です。リーダーは、頭の中の真っ白なキャンバスに自分の未来を大きく描きます。

そして、その実現に必要な人物を洗い出して、その登場人物がどんなことに興味・関心を持っているかを理解する。

その上で、「この人はどんなコミュニケーションを取れば絵の中の登場人物として活躍してくれるのか」を考えながら巻き込んでいきます。

ランダムスプラインのクローズアッププレクサス、コンピュータが生成しました。技術的背景の 3D レンダリング
写真=iStock.com/noLimit46
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/noLimit46

■「得」と「徳」を与えられる存在に

自分のビジョンをベースに「信頼」と「共感」で人を集める。しかし、理想だけで人は動きません。より直接的な行動の理由や、チームの動きが結果に結び付くという納得感が必要です。ここでは、それら両面にアプローチするための方法を考えます。

一つ目は、「得」と「徳」について。

まずは「得」です。一生懸命働いて見返りがないのでは、メンバーは付いてきません。金銭的な部分や自己成長など、「この人と一緒にいればたくさんのことを得られる」と思ってもらうことが、チームの団結には不可欠です。

一方で、「徳」も大切です。個人的な私利私欲や短期的な利益のためであれば、人の心は動きません。あるいは、チームのメンバーが損得だけで競争し合うことにもなりかねません。

誰もが自分の人生という限られた時間を、意義を感じられることに使いたいと感じています。「この人を応援することが、世の中のためになる」と感じられる人に、人は集まります。

また、当然、人として正しくない行いはしない、困っている人を助けるといった姿勢を見せることも大事です。

ここで言う「徳」とは、「崇高な人になれ」「私欲を持つな」ということではありません。「チームをまとめるために合理的であれ」ということです。

「得」が全てと考える人と「徳」を大事にする人の差は、捉える時間軸の違いです。自分一人でいくら頑張っても、できることは限られています。短期的な「得」だけで集まった人は、「徳」がなければいずれ離れていってしまいます。

それに、幸せになるためには、人との繋がりや人への貢献が必要です。タバコやお酒より、「孤独」が体に悪いともいわれています。いくらお金を稼いでも、一人では幸せを感じることができません。

未来を見据え、社会という大きな視点で自分の幸せを捉えた中での「得」。それを「徳」と呼ぶのだろうと思います。

人として正しく生きることが、多く得られることになり、結局は幸せに生きるということに繋がるのでしょう。

■「情理」と「合理」で働き掛ける

ジョン・F・ケネディ元大統領は、日本で最も尊敬する人物として、米沢藩の名君である上杉鷹山を挙げました。鷹山は人々に「情理」と「合理」で働き掛けることで、改革を成功させた人物です。

ケネディ大統領の切手
写真=iStock.com/PictureLake
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PictureLake

江戸時代、米沢藩は倒産状態にありました。貧しさや凶作・飢饉のために13万人強だった人口が10万人弱にまで減少。

絶望した領民が次々に藩を逃げ出す状況で、鷹山は17歳で藩主となります。藩政改革の目的を「領民を富ませるため」と決め、その改革の根底に「愛と信頼」を据えます。

藩主となり初めて米沢藩を訪れた際、役人の嫌がらせもあり、宿泊場所が見つかりませんでした。鷹山は家臣たちの寝る場所もないとわかると、寒い冬の日でも自ら進んで野宿をします。

宿の手配をできなかった部下を責めることはなく、仲間たちのために酒を調達すると、自ら全員にお酌をしながら労を労ねぎらいます。

変化を嫌う古参の武士たちに何度も改革の邪魔をされ、苦しい経験をしますが、鷹山の愛と信頼をもとにした行動が、少しずつ人々の心の変化を生み出します。

ただ、このように「情理」だけで訴えていても、単なる夢想家でしかありません。「本当にそれが実現できるのか」という「合理」の部分を、ロジカルな道筋で説明できなければいけません。

■自らの生活費を前藩主の7分の1に切り詰めた理由

江戸時代の幕府や他藩の改革のほとんどが失敗に終わったのは、倹約令の強化によってコスト削減を図る一方で、収益増加のために増税し、領民の生活だけを苦しめたことが原因でした。

鷹山のアプローチは、課題の背景にある真因の徹底的な理解と、その解決のための打ち手をゼロベースで考える徹底された合理的思考です。

藩の歳出を抑えるため、自らの生活費を前藩主の7分の1に切り詰め、藩を挙げての大倹約に取り組みます。そして、米作に向かない米沢藩の土地の特性を理解し、米以外の農産物を育成します。

また、他藩へ原料として安く販売していたものを自藩で製品化し、付加価値を上げて販売することで、藩の収入を増やします。足りない技術は他藩から技術者を呼び寄せて補い、足りない労働力は農民以外の人出を募るなど、打ち手を次々と実行します。

改革が功を奏し、東北を中心に何百万人もの餓死者が出たといわれる天明の大飢饉でも、米沢藩の餓死者ゼロで乗り切ります。72歳で亡くなる頃には、藩の借金をほとんど返し、農村の復興を果たしました。

■成果が出なければ人は付いてこない

岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)

ビジネスの現場でも、リーダーはメンバーを思いやり、メンバーそれぞれの望みや苦労に理解を示し、愛情をもって接することが大切です。ただし、これだけでは良い人で終わってしまい、成果が出なければ人は付いてきてくれません。

リーダーは情理に働き掛けるだけではなく、目的達成のための合理的な道筋をしっかりと周りに伝える必要もあります。合理と情理の両方があってこそ、メンバーはリーダーを信頼します。

いかにみんなをワクワクさせながら、人を巻き込んでいくのか。そのためには、「得」と「徳」、「情理」と「合理」といった、一見相反する両方の表情で働き掛けることが必要なのです。

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岸 昌史(きし・まさふみ)
ハイパフォーマンスコーチ、Axia Strategic Partners代表取締役
関西学院大学商学部、北京大学Executive MBA、桑沢デザイン研究所戦略経営デザインコース卒。学生時代はアメリカンフットボール部に所属し、日本代表や日本一を経験。2005年三井物産へ入社し、インドネシアへ単身駐在。新会社4社の立ち上げをリード。2016年ボストン コンサルティング グループに移り、入社2年目に年間MVPを受賞。その後TABILABO(現:NEW STANDARD)へ転職し、事業統括責任者として経営全般に関与。2019年「人の持つ可能性を爆発させ、未来の憧れとなる人や組織を生み出す」ことを目的に、経営コンサルティングとコーチングサービスを提供するAxia Strategic Partnersを起業。

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(ハイパフォーマンスコーチ、Axia Strategic Partners代表取締役 岸 昌史)

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