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「パーパス」「ビジョン」を設定しても意味がない…想定を超える成果を生むために必要な"たった1つのこと"

プレジデントオンライン / 2023年3月25日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ビジネスで目覚ましい成果を収めるにはどうすればいいか。ハイパフォーマンスコーチの岸昌史さんは「チームに『パーパス』『ビジョン』を掲げるだけでは意味がない。チームの目標達成に対して、個の自律性を持った行動をリンクさせる『仕組み』が必要だ」という――。

※本稿は、岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■強い「自己重要感」が、働く人の熱量を高める

チームの熱狂の根本にある要素は、本書の第1章で「人が輝く四つの条件」として挙げた「共通目的」「自己重要感」「自律性」「関係性」です。

「共通目的」は、みんなが同じ方向を向いて進むためのものです。第1章では個人の「ビーイング」「ビジョン」「バリューズ」を考えました。

本稿では熱狂するチームをつくるために、チームとしての「パーパス」「ビジョン」「バリューズ」の3つに分けて考えていきます。

単純に同じ目的を持てばいいというわけではなく、魂が揺れるほどの強い意義を感じられる目的が必要です。

そのためには、「なぜ自分たちのチームが存在するのか?」といった「why?」を定義する「パーパス」と、「チームとしてどのような未来を実現したいのか」を示す「ビジョン」に、メンバーが強く共感することが必要です。

メンバーがこの2つを自分事化することで、チームへの所属意識が高まります。

ただし、それだけでは実際の行動には繋がりません。日常の行動基準となる「バリューズ」に落とし込みます。

そうして目標に向かって進んでいく中で、自分がチームの役に立っている、チームが会社や社会の役に立っているという実感を得られます。そして、その過程で生まれる強い「自己重要感」が、働く人の熱量を高めます。

加えて、チームがうまくいくときも悪いときも、自分で考えて動く「自律性」が必要です。このためには「戦略と目標」、メンバーがどう動くかといった「役割」がメンバーにとって納得できるものでなければいけません。

そして、個の自律性を持った行動と、チーム全体の目標達成に必要な行動をリンクさせるためには、チームのルールとなる「仕組み」の整備が必要です。

これらの要素を決める前段階として、「関係性」を高めていきます。また、各要素をみんなで話し合って決めていくこと自体が、関係性を高めることにも繋がります。

■熱狂の航海のためには何が必要か

本稿で決めるそれぞれの要素がどのような機能を持つのか、チームのみんなで航海に出ることをイメージするとわかりやすいと思います。

ヨットとヨット、ドローンからの眺め
写真=iStock.com/mbbirdy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mbbirdy

●パーパスは目的

パーパスは航海の目的です。「何のために、旅に出るんだろう?」ということを、チームで共有するためのものです。チームの存在意義とも言えるでしょう。

●ビジョンは目的地

ビジョンは航海の目的地です。最終的に得たい成果、実現したい未来をチームで共有するためのものです。

ただ「前人未踏の島に行きたい」というのではなく、「半径2キロくらいの大きさの島で、パパイヤやマンゴーが育っている。魚釣りをできる岸辺があって、森の中には鹿やイノシシもいて食べ物に困ることがない。島の中央にある山の頂上には、たくさんの財宝がある」といったように、ビジュアルとしてイメージを持てることが大事です。「絶対にここに行きたい」と明確にイメージできることが、試練を乗り越える原動力になります。

●バリューズは方位磁石

バリューズは方位磁石。「こういう行動を取っていれば目的地に近づいていく」という日々の行動判断の基準です。

目的地に向かって正しく進んでいるかどうかをチェックし、試練に直面して航路から逸れそうなときに、向かうべき方向を指し示してくれます。

●戦略と目標は地図と航路

航海の目的地は、遥か彼方にあります。船には限られた量の食糧や水、燃料しか積むことはできません。目的地に向けて真っ直ぐ進めばいいわけではなく、補給や休憩のための中継地が必要です。

それを踏まえて、目的地に向けた最短の、かつ自分たちの強みが最も生きる航路を地図上に描いてく。これが「戦略」です。

そして、その中継地1つひとつが「目標」です。「1カ月でA島まで行こう」「そこで食料を補給して、次のB島にたどり着こう」と決めていきます。バラバラに動くのではなく全体最適な行動のためには、戦略と目標が乗組員全員に共有されていることが必須です。

●役割

目的も決まって、目的地も見えて、方位磁石や航路を描いた地図もある。しかし、誰が舵を切るのか、誰が方位磁石や航路をチェックするのか、あるいは誰が料理をするのかが明確でなければ、それぞれが適切な動きを取ることができません。海を進むための「役割」が必要です。

●仕組み

船に新たな人を追加する、燃料や食料を調達するなどといった際に、誰が、どこまで意思決定できるのかの「仕組み」が明確でなければ、スピード感を持った主体的な判断ができません。

また、各クルーが得た情報や船全体の現状理解の情報がタイムリーに共有し合い、必要に応じて船全体の戦略や目標が軌道修正できる仕組みがあることも、自律的な働き方を支える上で重要な要素となります。

■想定を超える成果を生み出すために

金儲けのためにビジョンは要らない。ビジョンがなくても儲かる企業は間違いなくつくれる。説得力のあるビジョンがなくても、大金持ちになった人はたくさんいる。
だがあなたが金儲けだけが目的ではない、時代を超えて存続する偉大な企業をつくりたいなら、ビジョンが必要だ。
ジム・コリンズ、ビル・ラジアー著『ビジョナリー・カンパニーZERO』

リーダーや経営者がメンバーの動きを全て監視して、トップダウンで細かく指示を出せば、統制の取れた組織をつくり上げることもできるのかもしれません。ただし、それでは主体性は生まれません。主体性が生まれなければ熱狂が生まれず、想定を超える成果を生み出すこともできません。

一方で、メンバーに権限と自由を与えて思うままに行動してもらう方法もあります。しかしこれもチームの勢いが続かない懸念があります。

お互いの優先度や価値観のぶつかり合いもあり、その衝突の解消に都度リーダーのリソースを奪われてしまいます。そうしてだんだんとチーム全体の熱が冷めていきます。

リーダーの熱狂によって巻き込んだ人を、さらに熱狂させる。そうしてチームの力はどんどん大きくなっていきます。そのための最も大きなポイントは、メンバーがビジョンやパーパスを自分事化できるかどうかです。

■自分で決めなければコミットできない

初めはリーダーの掲げたビジョンに共感してメンバーが集まります。チームのパーパスも、大枠としてリーダーのビジョンから派生することになります。ただし、リーダーのビジョンがそのままチームのパーパスやビジョンになるわけではありません。

経済や将来を予測するビジネスの方向性を見るためのビジョン
写真=iStock.com/Yellow Man
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yellow Man

自分たちの目線を入れてメンバー全員で考えていくことで、目指す未来の認識が揃います。

岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
岸昌史『熱狂のデザイン 楽しく結果を出すチームのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)

そこから「リーダーと自分」という関係ではなく、チームにメンバーがひも付いていく。「チームの共通目的の達成のために、自分はどんな役割をすればいいのか」と考えることで初めて、効果的な行動を取れるようになります。

この過程を、全てチーム全員で決めていくことが必須です。

人間は、誰かが決めたことでは頑張り切れません。「数ある選択肢の中から自分はここで働くと決めた」「自分でこの目標を選んだ」という自己決定感がなければ、本当の意味での熱量は生まれません。

みんなで考えるということは、一見遠回りのようでもありますが、それぞれが主体的に動く上で大事なアプローチです。

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岸 昌史(きし・まさふみ)
ハイパフォーマンスコーチ、Axia Strategic Partners代表取締役
関西学院大学商学部、北京大学Executive MBA、桑沢デザイン研究所戦略経営デザインコース卒。学生時代はアメリカンフットボール部に所属し、日本代表や日本一を経験。2005年三井物産へ入社し、インドネシアへ単身駐在。新会社4社の立ち上げをリード。2016年ボストン コンサルティング グループに移り、入社2年目に年間MVPを受賞。その後TABILABO(現:NEW STANDARD)へ転職し、事業統括責任者として経営全般に関与。2019年「人の持つ可能性を爆発させ、未来の憧れとなる人や組織を生み出す」ことを目的に、経営コンサルティングとコーチングサービスを提供するAxia Strategic Partnersを起業。

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(ハイパフォーマンスコーチ、Axia Strategic Partners代表取締役 岸 昌史)

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