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説明は「ソラ・アメ・カサ」の順番が最強…マッキンゼー出身者が「業務の改善策」を必ず最後に伝えるワケ

プレジデントオンライン / 2023年3月27日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

相手に何かを頼むときはどうすればいいのか。コンカー社長の三村真宗さんは「いきなりこちらの要望を話しても受け手は戸惑うだけで伝わらない。手間はかかるが『ソラ・アメ・カサ』の順番で話すのがいい」という――。(第1回)

※本稿は、三村真宗『みんなのフィードバック大全』(光文社)の一部を再編集したものです。

■耳の痛い話でも相手に通じる“ある方法”

相手に改善要求をすることは誰しも気が重いものです。「逆切れされないか」「気を悪くさせないか」などと思ってしまいがちです。

相手にとって耳の痛いことは、言わずにすむならそうしたいと多くの人が考え、問題があるのに抱え込んで我慢している状況が職場のあちこちで頻繁に起こっているのではないでしょうか。

しかし多くの問題は自然解消しないもの。その間に当人を取り巻く状況が悪化するかもしれませんし、周囲への迷惑も見過ごせないものに深刻化しかねません。そこで、あるところで覚悟を決めてやらなければならないのが、「改善要求(重め)のギャップフィードバック」です。

フィードバックしようとしている内容が重ければ重いほど、対話の進め方に慎重になるべきです。この難しいギャップフィードバックをどのように進めていくか、理解するのに有効なのが図表1の「ソラ・アメ・カサ」のフレームワークです。

【図表1】ギャップフィードバックの「ソラ・アメ・カサ」
出所=『みんなのフィードバック大全』

■マッキンゼーがやっている思考術

「ソラ・アメ・カサ」はマッキンゼーに在籍していた当時に習った思考のフレームワークで、非常に汎用(はんよう)性が高いため、マッキンゼーを卒業した後も資料作りやプレゼンテーションに応用して使っています。

社員向けの研修を準備している中でギャップフィードバックの進め方をフレームワーク化しようと考えたときに、「ソラ・アメ・カサ」のフレームワークがばっちりと当てはまることに気がつきました。

ギャップフィードバックでの活用方法を説明する前に、「ソラ・アメ・カサ」とは何を意味しているのかを説明しておきましょう。

赤色の傘
写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov

■事実→課題→打ち手で考える

「ソラ」

ソラは「事実や事象」です。空を見上げると、雨雲が多い。これが事実であり、事象です。誰が見ても「空には雨雲が多い」というのは、ゆるぎない事実と言えます。

「アメ」

アメは「課題や問題」です。「空に雨雲が多い」という事実(ソラ)から推察して、「雨が降るかもしれない」というふうに課題(アメ)を特定します。

「カサ」

カサは「改善案や打ち手」です。「雨が降るかもしれない」という問題があるので、雨に濡れないように「傘を持って出かける」という打ち手(カサ)に繫がるのです。

シンプルなやり方のように思われるかもしれませんが、このフレームワークは問題解決において非常に効き目があります。

コンサルティングの現場では、ゆるぎない「事実=ソラ」を集め、その事実を顧客と共有します。そして事実から導き出される「課題=アメ」を合意し、そのうえでそうした課題を解決するための「打ち手=カサ」を提案するのです。

■「解決策」よりも大事なこと

余談ながら、世の中には、課題が特定されていないのに打ち手(カサ)を「ソリューション」と称して提案したがるコンサルタントや企業が少なからず存在します。

「ソリューション」を売りたい気持ちが前のめりになりすぎて、本来そのソリューションで解決すべき問題を顧客としっかり合意するプロセスが不十分なのです。

顧客の課題に十分に向き合わず、「この製品を採用すれば○○ができるようになります」とか「このソリューションを導入すれば○○が改革できます」などと勧め、自社のソリューションを売り込もうとするビジネスがまかり通っています。

しかし、提案される側にしてみれば、自分が何に困っているのかをよく理解していない人から、課題特定の欠落した「カサ思考」の提案をされても腹落ち感がありません。

「空に雨雲が多い」ということは、「雨が降りそう」なので困る。そういう問題があるからこそ、「傘を持っていく」という打ち手が意味を持つのであって、雨雲が多くなく、雨も降りそうにないのに、「傘を持っていきましょう」と押しつけがましく言われても、たいていの人は腑に落ちないでしょう。

■不審な提案もなぜか納得する

「ソラ・アメ・カサ」は、本書のテーマであるフィードバックを抜きにしても、ビジネスパーソンにとっては大変に有益なフレームワークなので、理解を深めるためにさらに追加でたとえ話をしましょう。

あなたが体調が優れず医者に行ったとします。医者が十分な検査もせずに「この100万円の治療法を受けてください。そうすれば、あなたは健康になります」と言われても、不審に思ってしまうでしょう。これが「カサ思考」です。

では「【アメ】あなたは○○の病に罹かっており、余命わずかです。だから、【カサ】高額ですが100万円の治療法を受けてください」と言われたらどうでしょう。

医師と患者
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

「アメ=余命わずかの病」が明示されているので「カサ思考」よりははるかにましです。しかし「本当にその病なのか」と疑問に思うはずです。

ではさらに、「【ソラ】血液検査の結果、○○の値が基準値をはるかに超えていました。加えて、精密検査でCTを撮ったところ○○の結果が出ました。【アメ】これは○○の病に罹かっているということです。残念ながら余命わずかです。だから、【カサ】高額ですが100万円の治療法を受けてください」と言われたらどうでしょう。

検査結果という事実、すなわち「ソラ」が示されています。そして、そのデータから余命わずかな病であるという「アメ」が特定されました。

そのうえで提示された100万円の治療法という「カサ」には強い納得感があります。

このようにフィードバックに限らず、営業提案やプレゼンテーションをする際には、自社が持っているソリューションや製品をアピールしたい気持ちをぐっと抑えて、「ソラ・アメ・カサ」の順序で説明するようにしてみてください。

手間はかかりますが、相手の納得感は飛躍的に高まるはずです。

■フィードバックにおける「ソラ・アメ・カサ」の使い方

ここからはギャップフィードバックにおける「ソラ・アメ・カサ」の応用を見ていきましょう(図表2)。

【図表2】ギャップフィードバックにおける「ソラ・アメ・カサ」の基本的な考え方
出所=『みんなのフィードバック大全』

ギャップフィードバックをする際、つまり相手に問題があると思った時、多くの場合、「こうすればよいのになぁ」というアイデア、つまり「カサ=改善案」は伝え手の中にすでにあるはずです。

しかし伝え手と受け手の間でソラやアメについての合意ができていないのに、伝え手がいきなり「こう直すべきだ」と結論づけても、受け手は戸惑うばかりです。

実際、カサ思考のギャップフィードバックをやってしまった結果、失敗に終わるケースはよく見られます。受け手にしてみれば、そもそも課題認識がなかったり、指摘された課題も事実に基づかないものであれば、フィードバックをされても納得感が得られないのです。

改善要求(重め)のフィードバックは言い訳や反論などが予想され、難しいものです。だからこそ、以下のように3つのステップを丁寧に踏んでいく必要があるのです。

■実効性のある打ち手を生み出す方法

ステップ1:ソラ

ギャップフィードバックにおける「ソラ」のステップでは、目に見える形で表面化しており、すでに周囲に何らかの悪い影響を及ぼしている事象を対話しながら合意します。こうした事象を総称して「表層課題」といいます(「ソラ」のステップでアメっぽい「課題」という言葉が混じるのが少しわかりづらい部分なので注意してください)。

たとえば「資料にミスが多い」「仕事の納期が遅れがち」「営業成績が未達」「部下に退職者が多い」など、これらは表面化している問題であり、表層課題と言えます。また表層課題の論拠となる事実やデータ、その結果として生じている悪い影響もこのステップで共有しておきます。以下はソラのステップで共有すべき表層課題、事実やデータ、悪い影響の例となります。

●「仕事の納期が遅れがち」→表層課題
●「今月は3回、納期が遅れた」→表層課題の論拠となる事実やデータ
●「そのため関連部門で残業が生じた」→結果として生じている悪い影響

■実効性のある打ち手に至るステップ

ステップ2:アメ

ギャップフィードバックにおける「アメ」のステップでは、表層課題を起こしてしまっている根本的な原因が何なのかを特定します。

これを表層課題の奥底に眠っているという点で「深層課題」といいます。表層課題を確実に解消するには、深層課題まで掘り下げる必要があります。

たとえば「資料にミスが多い」という表層課題の背後には、「適切なトレーニングを受けていない」「提出前に確認する習慣が欠落している」「上司が適切なレビューをしていない」などさまざまな深層課題が隠れています。

ステップ3:カサ
三村真宗『みんなのフィードバック大全』(光文社)
三村真宗『みんなのフィードバック大全』(光文社)

ギャップフィードバックにおける「カサ」のステップでは、アメのステップで特定された深層課題を解決するにはどのような打ち手を取るべきか議論します。

「ソラ・アメ」のステップを踏むことで、表層的な課題ではなく、根本的な原因にアプローチできるようになるので、抜本的な解決が期待できます。「資料のミスが多い」という表層課題に対して、課題の裏返し的に「資料のミスを減らそう」という打ち手では不十分です。

「アメ」のステップで「提出前に確認する習慣が欠落している」といった深層課題を特定するからこそ、実効性のある打ち手にたどり着くことができるのです。

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三村 真宗(みむら・まさむね)
コンカー社長
1969年、東京生まれ。1993年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。同年、SAPジャパン株式会社に入社。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベタープレイス・ジャパン株式会社を経て2011年10月から現職。著書に『新・顧客創造』(ダイヤモンド社 2004年)、『最高の働きがいの創り方』(技術評論社 2018年)がある。寄稿など多数。

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(コンカー社長 三村 真宗)

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