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看護師・薬剤師の医師業務参入に医師会は猛反発…橋下徹「"今の地位"にこだわる日本のヤバさ」

プレジデントオンライン / 2023年3月28日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

日本が前進するには何が必要か。元大阪市長の橋下徹さんは「今の地位にこだわる傾向は多くの産業にあるが、明治維新から実に150年続く権力機構・行政機構はもう機能しない。既得権益層と戦い、打ち勝ち、改革するのが政治家の役割だ」という――。

※本稿は、橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■日本の「前進」を妨げてきたもの

長年政権を担ってきた与党自民党が、どうしても乗り越えられなかったことがあります。次の3つです。

1 今の地位へのこだわり
2 既得権益
3 国民からの批判に対する恐れ

自民党はこれらに縛られて、閉塞(へいそく)感を打ち破って日本を前進させる大きな政治決定ができずに今に至ります。

長期間にわたって現在の体制を築いてきた政権与党・自民党には、体制変更に匹敵するような政治決定に挑むことはできないでしょう。現在の体制を守ることが自民党の役割でもあるので、体制変更に対するすさまじい反対の声を押し切ることは難しいからです。

であれば、野党の役割は、現在の体制に守られている既得権益層と激しい政治闘争を繰り広げてでも、現体制の改革に挑むことです。

そして、野党に刺激を受けた与党自民党が、野党に転落しないために重い腰を上げざるを得ない政治状況をつくることが理想です。

では、与野党が切磋琢磨(せっさたくま)しながら、挑んでいかなければならない政治課題とはどういうものなのか。本稿では「今の地位へのこだわり」について、どう取り組んでいくべきかについて考えていきましょう。

■政治の前進を阻む人たち

「政治不信」などと言われて久しい日本ですが、世の中には政治家にしかできない仕事がたくさんあります。

政治には既得権益層との付き合いがつきものです。しかし、口だけで持論を述べるだけではなく、自分が理想とする政策を「実行」していくためには、ときには既得権益層と戦わなくてはいけない局面もあります。

既存の規制や法律に守られてきた層や、その層をバックにもつ議員たちの猛反発にさらされ、悪くすれば政治家生命を絶たれる恐れすらある。

これは、いわゆる「識者」たちがメディアでよく主張する「さらなる話し合いを」などという生ぬるいことでは済まされない、厳しい政治闘争です。

そこをかいくぐりながら、必要とあらば相手を倒す構えで実行力を発揮していく。選挙を勝ち抜いた猛者同士、嫉妬・敵意・足の引っ張り合いが渦巻くなかで激しい政治闘争を繰り広げながら、政策を推し進め、改革を実行するというのは、まさに政治家にしかできない仕事なのです。

また、現在の役所の体制・権力機構・行政機構を抜本的につくり変えるというのも、政治家にしかできない仕事です。

体制を抜本的につくり変えるというのは、権力や金をあるところから別のところに移譲することなどを通じて、霞が関の省庁、都道府県庁、市町村役場という仕組みそのものを変えるということです。

当然、ここでも現行の体制・仕組みが変わることで不利益を被る既得権益層との戦いが必ず起こります。

それぞれ別の色の服を着て、対立するグループ
写真=iStock.com/sesame
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sesame

■現行の体制を抜本的に改革するのは野党政治家の役目

僕が政治家時代に掲げてきた大阪都構想は、まさにこの、体制の抜本的改革に挑戦したものでした。ひとことでいえば、大阪府庁、大阪市役所という権力機構・行政機構を大胆につくり変えるという大構想。

当然、予想されたことですが、それが実現したら自分たちの不利益になると案じた人たち、つまり大阪市議会議員、大阪市職員、職員OB、各種業界団体、各種地域団体などなど、ありとあらゆる既得権益層の猛反発に遭いました。

結局、2015年に行われた大阪都構想の是非を問う住民投票は、1%という僅差で否決されました。

この1%の差を、どう見たらいいでしょうか。否決は否決ですから、大阪都構想は実現しませんでした。

ただ、同時に僕が強く思うのは、明治維新から実に150年ほども続いてきた権力機構・行政機構は、すでに現代日本の政治行政の基盤として機能しなくなっているということです。

時代が変われば、あるべき権力、行政、つまり国のかたちも変わって当然で、やはり古い体制は新しい時代に合わせて変えていかなくてはいけません。

既得権益層と戦い、打ち勝ち、改革していく。これもまた、政治家にしか果たせない役割なのです。与党政治家は基本的に現行の体制を維持し、既得権益層の保護に努めることに力を注ぎます。

そうであれば、現行の体制を抜本的に改革するのは野党政治家にしか果たせない役割、といっていいでしょう。

現在の僕のようなコメンテーターや、有識者などといった、口だけ人間には決してできない仕事なのです。

■「専門領域の聖域化」を打破する 

弁護士もそうですが、国家資格をもついわゆる士業は自分の領域を守りたがる傾向が強いものです。弁護士の隣接士業に司法書士という職業があります。

彼ら彼女らの法律家としての実務的能力は、たとえば消費者金融業者との債務整理の解決などには十分対応できます。

にもかかわらず、日弁連などは、これら債務整理は弁護士の業務領域だと主張して譲らず、司法書士の参入に強硬に反対しました。

弁護士の日本人男性
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

もめにもめて結局、司法書士は元金140万円以下の少額の債務整理に限って担うことができる、というところで決着しましたが、本当にそれでよかったのでしょうか。司法書士をもっとフル活用すれば、日本の司法サービスは充実するはずです。

また新型コロナ禍では、感染拡大期において医療従事者の業務が逼迫(ひっぱく)したことで、ある種の医療崩壊状態にまで進んでしまいました。感染を抑えてそれを防ぐために、社会経済活動を止める方策が繰り返され、日本の経済が著しくダメージを受けました。

橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)
橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)

そこで、医師の業務を看護師、薬剤師で分担し合うタスクシェアが議論されましたが、日本医師会が強く反対。

先に述べた弁護士の債務整理業務と同じく、医師のほんの少しの業務を看護師に担わせ、看護師のほんの少しの業務を薬剤師に担わせることで決着しましたが、これでは医療従事者の業務逼迫を抜本的に改善するまでには至りません。

このように「今の地位」にこだわる傾向はいろいろな産業にあります。たとえば、農業、漁業など付加価値の高い一次産業を大規模な産業に転換できれば、それは日本の強みになるはずです。

個人の第一次産業従事者が、産業化によって会社組織の一員になることについて、農協や漁協などの抵抗感が強いのかもしれませんが、しかし、日本が前進していくためには避けて通れない改革課題だと僕は思っています。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著書に『最強の思考法 フェアに考えればあらゆる問題は解決する』(朝日新書)がある。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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