「東京マラソンで炎上した立ちションよりタチが悪い」多くのランナーがやらかした迷惑NG行為
プレジデントオンライン / 2023年3月25日 11時15分
■東京マラソンで立ちション事件以外にもあった迷惑行為
東京マラソン2023では新宿・大ガード下の“立ちション”が炎上した。例年、コース途中に設置されたトイレまで我慢できない男性ランナーたちがこの高架下で立ちションするのは恒例シーンだが、今年はその画像がSNSなどで話題になったからだ。
トイレの数は限られており、間に合わない場合は仕方ない部分がある。実は1秒を争うトップ選手のなかには、走りながら済ませてしまうこともある。
とはいえ道路や公園など公共の場で、たんやつばを吐く、あるいは大小便を排泄する行為は軽犯罪法第1条27号にあたる。検挙・起訴されるケースはほとんどないが、ほめられた行為ではない。東京マラソンは沿道の応援も多いため、新宿・大ガード下は沿道の“目隠し”となる唯一ともいる場所だ。レース中の立ちションを肯定するわけではないが、外から丸見えの場所での放尿よりはよかったといえるかもしれない。
東京マラソンでは、「本大会で用意した場所以外での更衣およびトイレ以外で用を足すこと」「大会主催者が認めていない個人の名前、特定の地域・団体などをPRするものや広告宣伝等を目的とした服装」「競技審判員の指示に従わず、競技進行を妨げること」などが禁止されている。
立ちションはもちろんダメだが、なかにはお店や商品などをPRするようなTシャツで出場しているランナーもいる。これもNGだ。
立ちションやPR以上にマラソン大会ではアウトといえる行為がある。それはイヤホンを装着して走ることだ。基本的にルール違反であり、立ちション以上に、周囲に迷惑をかけている可能性が高い。イヤホンで音楽などを聴いていると、周囲の音がシャットダウンされる。競技審判員の指示が聞こえず、競技進行を妨げてしまうことがある。
■原則、携帯電話の所持は禁止されている
国内で行われている東京マラソンを含むほとんどの大会は、「日本陸上競技連盟競技規則に準じる」と記載されており、市民ランナーも規則に従う必要がある。
そのなかには市民ランナーにとって意外なものもある。代表例が、「腕時計型通信機器、ビデオ装置、カセットレコーダー、ラジオ、CD、トランシーバーや携帯電話などの再生・通信機能のついた機器を競技エリア内で使用することは助力となる。最終点呼を受けた後は、使用しないこと」だろう(※一方で非常時に備えて、スマートフォンの携帯を呼びかけている大会もある)。
![イヤホンで走るランナーの正面図](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/1200wm/img_5a467d3433cc1dafa47644abcdbcf9bc3714065.jpg)
原則、携帯電話などの持ち込みはNGなのだ。使用すると、助力とみなされ、警告や失格の対象になる可能性がある。
また日本陸上競技連盟競技規則ではイヤホンに関する記載もあり、下記の文章になる。
「エリートランナーやその他のカテゴリーで出場する競技者が完全閉鎖されたコースで走っているときにはヘッドまたはイヤホンを使用することを許可するにしても、交通規制が解除された後は、低速のランナーに対しては使用を禁止する」
イヤホンの装着は禁止ではないが、先述した通り、携帯電話や音楽プレイヤーの所持・使用は禁止されており、レース中にイヤホンを使うシーンは見当たらない。にもかかわらず、実際はイヤホンランナーがとても多い。
■イヤホンで自分の世界に入るなんてもったいない
「ランナー世論調査2016」(アールビーズ調べ)によると、「レースでの走行時に音楽を聴きますか?」という質問に約30%が「毎回聴く」、約8%が「時々聴く」と回答。相当数の“イヤホンランナー”が存在していると想像できる。
安全面や周囲のランナーに迷惑をかけないためにも、イヤホンランナーは十分な配慮が必要になるだろう。
東京都生活文化スポーツ局の調査によると、イヤホンを使って70デシベル程度で音楽を聴くと、周囲の音に対する聴覚感度は30デシベル以上も低下する。挿入型など遮音性の高いイヤホンでは最大65デシベルも低下したという。ランニング時は着地音などもあるため、音楽のボリュームは大きくなりがち。遮音性の高いイヤホンの場合、かなり大きな音でも聞こえないことがあるだろう。
しかも1万人を超えるような大規模レースでは大半が混雑している。イヤホンを装着していると、後ろから迫ってくるランナーに気づきにくく、知らないうちに他のランナーに迷惑をかけていることがある。
![海のそばを走る道で楽しんでいる日本人男性。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/1200wm/img_f72cb7eedea9664f98bd296ba4dc5aca4022716.jpg)
筆者が、ブラインドランナー(視覚障害者ランナー)の伴走をしていたときはイヤホンランナーが非常に迷惑だと感じた。ブラインドランナーやガイドランナーは横並びで走るため、ひとりで走るときの約3倍の幅が必要になる。前の選手を追い抜くときは声をかけることもあるが、その声が届かない場合は、ペースを緩めて、通れる幅になるまで待たないといけない。
そもそもイヤホンを装着することで、外部の音を遮断してしまうのはもったいない。給水スタッフや沿道の観衆の声援が聞こえないからだ。応援から元気をもらうこともあるし、声をからして応援してくれる人たちの気持ちを考えたら、イヤホンをしないほうがいいだろう。
また大会によってはゴール付近で音楽を流すことや、ゼッケンナンバーをアナウンスすることもある。そういう大会の一体感もぜひ楽しんでいただきたい。
■イヤホン使用者は周囲に迷惑をかけている
イヤホンは音楽を聴くだけでなく、ナレーターや声優が本を朗読してくれるサービスなどもありユーザーが右肩上がりに増えている。そうした影響もあり、筆者の感覚では普段のランニングでは半数近くがイヤホンを装着している印象だ。公園内でも道幅が狭い場所ではイヤホンランナーを抜くのに苦労することがある。正直、とても迷惑している。
現在、自転車を運転中のイヤホン使用は多くの都道府県条例で禁止されている。個人差はあるが、ランニング時は自転車に近い速度になる場合もある。それぐらい“危険”な存在だと認識している人は少ないだろう。曲がり角などで激突するケースがあれば、イヤホン装着のランナーの過失になる可能性が高いのではないか。
ランナーだけの問題ではない。イヤホンはいたるところで迷惑をかけている。ふたりが十分に通れる階段などでも中央部分をゆっくり歩いて、背後の気配に気づかない人や、混雑した電車内でも詰めてくれない人はたいていイヤホンをしている。イヤホンをしながら同時にスマホを操作している人は最悪だ。聴覚だけでなく、視覚も限定されており、周囲に不快な思いをさせている可能性がある。
またイヤホンをしていたために、踏み切りの警報音が聞こえず、電車にはねられるという痛ましい事故も度々報道されている。
どこでも好きな音楽を聴くことができるのは素敵なことだが、他人に迷惑をかけてはいけないし、自身の身を守るためにも、屋外でのイヤホン使用は考え直すべきだろう。耳をふさがない骨伝導イヤホンなら、音楽を聴きながら外の音も聞くことができる。ランナーだけでなく、屋外でイヤホンを使うすべての方のマナーアップに期待したい。
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スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)
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