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人気は「総合商社とコンサル」だけではない…早慶MARCH7校の「就職活動、校風、就職先ランキング」

プレジデントオンライン / 2023年3月31日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

「早慶MARCH」と呼ばれる難関私立大学の出身者はどのような企業に就職するのか。教育ジャーナリストの小林哲夫さんの著書『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)から、最新の就職先ランキングと卒業生の声を紹介する――。(第3回)

※本稿は、小林哲夫『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■早慶MARCHの出身者はどのような進路を歩むのか

早慶MARCH卒業生の進路は多彩だ。

時代の最先端をいく外資系、大昔からの財閥系、ベンチャー企業、老舗の中小企業、キャリア官僚になるべき中央官庁。地域に根を張る都道府県庁や市役所、法曹、警察、自衛官、消防官、医療福祉の専門職、教員などだ。こういう分野にも早慶MARCH出身者がいるのか、と感動を覚えることもある。

本稿では早慶MARCH出身者が在学中、将来についてどのように考え、どんなことに取り組んだか、就職活動をどのように行ったか、早慶MARCHの教育と校風がいまの仕事にどう活かされているかをまとめてみた。大学案内、大学ウェブサイトの就職活動記、卒業生の活躍を中心に、早慶MARCHが社会の入り口をどう叩いたかをみてみよう。

大学の就職実績を就職率である程度、知ることはできる。「ある程度」というのは、就職者に対する分母の定義がどうしても曖昧になってしまうからだ。多くは就職希望者においているが、この「希望」は1人ひとりさまざまな事情を抱えているので、一律で測るのはむずかしい。だが、多くの大学は就職希望者をもとにして就職率を出している。

早慶MARCHについて見ていこう。

■年間で8000人が就職する早稲田大学

早稲田大キャリアセンターは21年9月、22年3月の学部卒業者、修士修了者の進路状況について、こう記している。

「卒業・修了者1万1897人、進路報告者1万1580人、就職8078人、進学2111人、資格試験等準備410人、その他981人であり、就職希望者に占める就職者の割合(就職率)は93.7%(前年度93.0%)となりました」(同センターウェブサイト)

慶應義塾大は日本私立学校振興・共済事業団による定義に基づく算出方法で2020年度の就職率を公表した。数式は分子=就職者、分母=卒業者-大学院研究科等進学者-外国の学校等入学者。就職者の定義は「進学者のうち就職している者」(進学就職者)を含む。進学者の定義は「進学者のうち就職している者」(進学就職者)を除く。

これによると、おもな学部の就職率は文学部87.0%、経済学部89.5%、法学部法律学科86.4%、法学部政治学科88.9%、商学部88.7%、総合政策学部86.9%、環境情報学部84.9%となっている。

明治大は就職者5530人、卒業生7028人と発表している。就職率は78.68%となる。業種別内訳は情報通信業1392人、製造業780人、卸売・小売業589人、金融・保険業562人となっている。青山学院大の就職率は学校基本調査に基づくもので79.8%だった。早慶MARCHのなかで唯一男女別が出ており、男子73.8%、女子85.1%となっている。

■早稲田大の就職先1位はNTTデータ

立教大は進学者と合わせて83.1%で男子79.1%、女子86.8%だった。もっとも高いのは理学部88.6%、観光学部86.6%である。

中央大は学部別に出ており、法学部の就職者73.4%、進学者16.7%、経済学部は84.6%と2.8%、商学部は86.3%と2.1%だった。法政大は「就職希望者決定率」を出している。その数字は95.7%となっている。「就職希望者決定率は、就職希望者から『一時的な仕事に就いた者』と『進路未定者』を除いて算出しております」とのこと。

早慶MARCH7校それぞれの思惑を感じ取ることができ、興味深い。大学が公表している就職先を掲載した(図表1、2)。

【図表1】早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、青山学院大学の就職先ランキング
出所=『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』
【図表2】立教大学、中央大学、法政大学の就職先ランキング
出所=『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』

大学のグローバルが進むなか、学生もグローバル志向が高まっている。早慶MARCHには世界中を飛びまわって仕事をしたい、世界各地で暮らす人たちの役に立ちたい、と夢と希望を募らせる学生がいる、そのために彼らが選んだのは商社だった。早慶MARCH出身者を紹介しよう。

■グローバル志向が高まっている早慶MARCH出身者

三井物産で働く明治大、中央大の出身者である。明治大国際日本学部出身(21年卒)の男性・Tさんは、世界を舞台に新しい事業を創りたい、という思いを抱いて入社した。すぐにデジタル総合戦略部というDX(デジタルトランスフォーメーション)案件の推進を行う部署に配属になり、アフリカとインドネシアでの新規事業に携わっている。

「在学中は、物々交換を頼りにヨーロッパを旅する世界大会に参加したり、1年間休学してスタートアップで働いたり、自分で事業をしたりと、学部・学内にとどまらず過ごしていました。皆さんの意志を尊重し、全力で応援してくれる教員や職員、ともに切磋琢磨(せっさたくま)できる仲間が集う最高の環境で、comfort zoneを飛び出し、自分の道を切り拓いていってください」(「明治大国際日本学部2023」)

中央大文学部出身(21年卒)の男性・Nさんは、総合商社で働くからにはエネルギー事業など世界標準のビジネスに携わりたいと考えている。

「今は次世代づくりの基盤となる新卒採用の仕事にやりがいを見出しています。ここで培った知見や能力は、いずれ事業部門に行った時もきっと糧になるはずです。今いる場所で最善を尽くしながら、新たな可能性を追い求める。そのことを私は中央大学で実践しました。4年間アイスホッケーに情熱を注ぎつつ、留学に教員免許の取得、検定の挑戦、そして納得のいく就職活動を成し遂げたことなどにより世界がさらに広がりました」(「中央大学案内2023」)(Connect Web)

■慶應で学んだ英語を生かして商社で活躍

「実践と知識の両輪を回し学びに没頭した日々が現在の基盤を作った」

住友商事に就職したのは、立教大経営学部出身(18年卒)の男性Sさんだ。入社後はオフィスビルの開発などを手掛け、土地の購入から開発、リーシング、売却まで、大手ディベロッパーの一連の仕事をひとつの部署で担う。

「求められるのは、多様な人々の間に入って、それぞれの利害を調整する能力。立教経営で培ったリーダーシップが、プレゼンスを発揮するうえでいきています。大学時代は組織行動論の石川ゼミに入り、さまざまなケーススタディを経験しました。実践と知識の両輪を回しながら学びに没頭したあの日々が、現在の基盤を成しています。立教経営の学生は、大学のリソースを活用して主体的かつ前向きに学ぼうとする人が多い印象ですね」(「立教大経営学部案内2023」)

伊藤忠商事で働く慶應義塾大学文学部出身の女性・Yさんは、主にアジアの国々を対象とした化学品の輸出入を担当する。出身高校のウェブサイトで活躍するOGとして近況を知らせている。後輩からすれば励みになり、商社に入るには慶應義塾大が近道なのかなと受け止めるとしたら、慶應にとってこれほどありがたい広報はない。

「私は輸出入の際の仲介役となって、日程調整や船の管理をしています。もちろん英語でのやりとりです。高校時代に毎日取り組んだ英語の音読や読解力を活かし、大学で実践的に英語を発信していったおかげでなんとか業務ができています。また、大学時代に多くの先輩や社会人の方と関わってきたことが、さまざまな場面で役立っています」(朋優学院高校ウェブサイト)
慶應義塾大学
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

■いまだに金融機関の人気は高い

いつの時代でも銀行、生損保の人気は高い。それだけ信頼されているからだろうか。三井住友銀行、みずほ銀行、日本銀行、アフリカ開発銀行に就職した早慶MARCHの学生を紹介しよう。

中央大経済学部出身(19年卒)の男性・Oさんはみずほ銀行で働く。学生時代は充実した生活を送りたいと思って、2つのゼミに所属していた。

1つは学部の伊藤伸介ゼミで、グループでテーマを決めて、それに関連したデータを収集・整理し、発表していく。ここで円滑なチームワークに必要なコミュニケーション能力やプレゼンテーション技術、スケジュール管理など、社会人に必要な基本スキルを身につけることができた。もう1つのゼミは「スポーツ・健康科学プログラム」だった。

「ここでは、海外研修や経済学部以外の学部生との交流などを通じて、他分野の専門知識や能力を吸収するいい機会が得られました。また、自分とは異なる意見を受け入れ、さまざまな物事を多角的に捉える想像力の大切さを学びました。コミュニケーション能力は取引先との交渉に、他分野の専門知識や能力は新たな提案の創出に役立っています。今後は、法人営業担当者として多くの企業の発展に貢献していきたいです」(中央大ウェブサイト)
中央大学多摩キャンパス東門
中央大学多摩キャンパス東門(写真=vil/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons)

■経済の安定を支えたいと考え日本銀行に就職

法政大経営学部出身(14年卒)の女性・Sさんは、日本銀行に勤務している。

人が安心して暮らすためには、経済の安定が不可欠。経済の安定を根底から支えたいと考え日本銀行を選んだ。現在、外国との経済取引を整理して記録する統計の作成業務に従事している。統計の元データとなる取引について、報告内容の正当性を確認する際など、一筋縄でいかない場合も少なくない。そんなとき、学生時代に身につけたスキルが役立っている。

「自らが集計・公表に携わった統計が、経済の安定を支える基盤として経済分析や政策判断に影響を与えていることに、強いやりがいを感じています。上司から『いつも端的でわかりやすい説明で助かる』と、うれしい言葉をいただくことがあるのですが、これも大学で養われた力だと思います。たとえば、ゼミでよく行っていた『輪読』など、内容を正確にまとめて自らの意見を端的に伝える力が身につきました」(「法政大経営学部案内2023」)

■コロナ禍に苦しむ会社を見て銀行に魅力を感じた

小林哲夫『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)
小林哲夫『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)

中央大国際情報学部出身の女性・Sさん(22年卒)は三井住友銀行に就職した。

学生時代はゼミでAIに関する世界動向、行動経済学、地方創生など多岐にわたる分野を学んだ。特に印象に残っているのは、社会情報学会に参加し、「スマートシティ、地方創生」をテーマに取り組んだことだ。現地の自治体職員の方々からヒアリング調査をしたり、海外の事例を学んだりすることもできた。学会発表に向けてメンバー間でコミュニケーションを図りながら最後までやり抜くことができ、非常に貴重な経験となったという。

アルバイトは接客販売が中心だった。大学入学までは初対面の人と接するのが苦手だったが、さまざまな年代の人と接する機会が増えたことで苦手意識がなくなった。銀行を選んだ理由についてこう話す。

「父が営んでいる会社が新型コロナウイルスにより影響を受けたことがきっかけで、厳しい経営状況に置かれている会社を支えることができる銀行の仕事に興味を持ちました。また、自分自身の提案によって活路を見出すことができたり、膝を突き合せて話をする中でお客様の思いにお応えできたりする点に、より一層魅力を感じました。中でも三井住友銀行は、従業員の方々の仕事に対する熱量、そして学生に対して熱く向き合ってくださる姿勢を強く感じ、最終的にエントリーを決めました」(中央大国際情報学部ウェブサイト)

■「さまざまなリスクに対応する」ことの魅力を感じ損保業界へ

早稲田大学社会科学部出身(17年卒)の男性・Hさんは損害保険ジャパンに就職した。

「より多くの人を支えられるような仕事に就きたい」という思いを抱き、自然と惹かれたのが損害保険業界だった。

「『さまざまなリスクに対応する』という点で、まさに多くの人の支えになれると感じましたし、世の中から事故や災害などのリスクがゼロになることはないので、ビジネスとしての持続性も高いように思ったのです。ちなみに、数ある損害保険会社のなかから損害保険ジャパンを選んだのは、事業領域が広く、社員が魅力的だったからです」(「早稲田大大学案内2023」)

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小林 哲夫(こばやし・てつお)
教育ジャーナリスト
1960年生まれ。神奈川県出身。95年から『大学ランキング』編集を担当。著書に『東大合格高校盛衰史』(光文社新書)、『高校紛争 1969―1970』(中公新書)、『中学・高校・大学 最新学校マップ』(河出書房新社)、『学校制服とは何か』(朝日新書)、『神童は大人になってどうなったのか』(太田出版)、『女子学生はどう闘ってきたのか』(サイゾー)、『「旧制第一中学」の面目 全国47高校を秘蔵データで読む』(NHK出版新書)、『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)などがある。

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(教育ジャーナリスト 小林 哲夫)

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