3位は生田斗真、2位は北山宏光、1位は…ジャニーズ事務所「演技力ランキング」ベスト5【2022下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2023年3月27日 18時15分
※内容は掲載当時のものです。
■ジャニーズ事務所嫌いの私がランキングをつけたワケ
ジャニーズ事務所が嫌いだ。エンターテインメント界のドル箱を抱える一企業としての矜持は感心するが、ドラマの主演ゴリ押しには納得がいかない。
特に今年の4月期は1クールでジャニーズ主演作が10本近くあった。正直、異様だ。忖度(そんたく)するテレビ局が悪い。
ファンにとっては至福だろうけれど、ドラマ好きの客をばっさり斬り捨てたのが今のテレビ局である。ドラマも映画も韓国エンタメ界に完敗しているのは、質の高い演技や内容を求めず、いわゆる数の暴力に屈しているから。ジャニーズと秋元康に牛耳られ、作品が内輪受けに終わり、世界で通用しないガラパゴス化が進んでいる。有能な監督も脚本家も、配信や海外資本にとられちゃってさ。
悪口と愚痴で始まったけれど、今回のお題は逆張り。「あえてジャニーズのベスト5はどうでしょう? 吉田さんがジャニーズをほめるのは、意外性と信憑性が混在していて面白そうです」と編集S氏。
確かに、十把一絡げでジャニーズの悪口を書いてるが、適材適所の良作もあるし、ひとりひとりの才能は高く評価したい。個人的に演技力を評価しているジャニーズタレントベスト5を書いてみた。
■コメディ、アクション、時代劇に適応
5位 アクションをストイックに極めて、小兵の闘い方を体現 岡田准一
「木更津キャッツアイ」(2002年・TBS系)、「タイガー&ドラゴン」(2005年・TBS系)でコメディ筋肉を発揮。岡田が演じた、ぶっさんと竜二の「情けない息子っぷり」はキャラクターとしての存在感十分。20年たっても色あせていない。そのままコメディ筋肉を磨きあげると思いきや、「SP 警視庁警備部警護課第四係」(2007年・フジ系)では驚きの進化を遂げた。危機察知能力と記憶力が異常に高く、俊敏な動きと戦闘能力を備えたSPという役どころ。特殊能力という設定だが、ファンタジー要素が鼻につかない。それくらい岡田の動きの鮮やかさに目を見張った。テロリストの陰に大義名分という強烈な展開も興味深かった。
その後は映画、特に右寄りの作品、さらには時代劇のほうへ舵を切った。ドラマではNHK大河「軍師官兵衛」(2014年)で時の権力に翻弄(ほんろう)される黒田官兵衛を熱演したのち、「白い巨塔」(2019年・テレ朝系)で大御所への階段を上り始めちゃったからなぁ。コメディ筋肉の封印を残念に思っていたが、映画「ザ・ファブル」ではアクションのキレに加えて、軽快さも復活。軽薄な岡田もたまには見たい。
■華はなく、寡作の人だけど良い存在感
4位 脇では地味に堅実に支え、主役でもドヤ感なく甘さ控えめ 中丸雄一(KAT-TUN)
初めて見たのはおそらく「ラストマネー」(2011年・NHK)。保険会社の新入社員役で、華のない感じがいいなと思った。華がないって、実は役者にとっては誉め言葉。華がありすぎたり、自分に華があると思っていると、演じる幅が狭まるからな。「何をやっても同じ」と言われることもない。
脇役でよかったのは、「主に泣いてます」(2012年・フジ系)、「ファースト・クラス」(2014年・フジ系)、「わたし、定時で帰ります。」(2019年・TBS)。それぞれのヒロイン(菜々緒・沢尻エリカ・吉高由里子)をさりげなく支える役だが、実にいい仕事をしていた。存在感が薄いともいえるのだが、女性を際立たせる縁の下の力持ちになっている証拠。舞台装置としての自覚があると思わせる。
主役としては、コメディが抜群に合う。今でも思い出すのが「変身インタビュアーの憂鬱」(2013年・TBS系)だ。ぼっさぼさの長髪に荒れた肌、腫れぼったい一重の斜視で、誰がどう見てもむさくるしい推理作家・白川次郎は筆が進まない時に、好青年・青沼霧生に変身して取材するという設定。大リーグボール矯正ギプスのようなベルトで猫背を正し、アイプチで二重に、コンタクトをしてズラをかぶるという変身シーンが噴き出すほどおかしかった。これを淡々と演じた中丸。存在感の薄さをいかした適役だった。
そもそもは寡作の人。久々の主演「マッサージ探偵ジョー」(2017年・テレ東系)ではコミュ障のマッサージ師役。
![写真=テレビ東京「マッサージ探偵ジョー」オフィシャルページより](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/1200wm/img_dae578ced553fa0f04ad7fc94f71f312333563.jpg)
指圧とマッサージで犯人を特定、事件を解決したりするが、決め台詞や決めポーズがある割に画面に映らなかったりもする。主役なのに! コミカルに暴走する共演陣を悪目立ちさせるほどの低体温。
気配を消せるジャニーズとして、注目していこうと心に決めたひとりである。
■適応力の高さは事務所随一
3位 「絵に描いたような馬鹿」も「繊細なインテリ」も 生田斗真
「うぬぼれ刑事」(2010年・TBS系)で演じた俳優・本城サダメの役は、顔も服装もうるさい、絵に描いたような馬鹿だった。頭のネジを1本とる演技は難しいはずだが、なんなら馬鹿すぎて可愛げも生み出していた。
「俺の話は長い」(2019年・日テレ系)では「ああ言えばこう言う」の典型的な怠け者の長男を、「書けないッ⁉~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(2021年・テレ朝系)ではテレビドラマ制作業界の悪習に翻弄される脚本家役を好演。決して二枚目路線ではないが、愛されキャラとしての立ち位置は確立。
ただし、映画ではかなり幅の広い役柄に挑戦。「脳男」では感情を持たず痛みを知らない殺人兵器のような青年役、「秘密」では超インテリだが暗い影と深い後悔を持つ室長役、「彼らが本気で編むときは、」では温かみのあるトランスジェンダーの介護士を演じて話題になった。「生田斗真と言えば?」と聞かれたら何を挙げるか迷うほど、作品によって印象が変わる。事務所の権力に関係なく、才能と適応力が選ばれている気もする。
■ジャニーズ×犯罪の相性の良さ
2位 追い込まれて四面楚歌、罪悪感の向こう側を演じる 北山宏光(Kis-My-Ft2)
少し前までは「気のいいあんちゃん」というイメージが先行していた。おそらく「家族狩り」(2014年・TBS系)で演じた青年役に心を救われたからだ。天童荒太原作、家族の呪縛と一家皆殺し事件が絡んだ重くて陰惨な作品だったが、北山が演じたのは男気と家族愛を信じて疑わないマイルドヤンキー。家族に絶望している人物たちの中で、唯一素直に家族礼賛できちゃう役どころ。その明るさは対比として目立ったし、役割を十分に果たしていた。
ただ、近年では秘密と嘘と罪を背負って追い込まれる役が続いている。共感しがたい、性格に難ありの男。加害者である一方、被害者でもあるという難役だ。これが思いのほか良かった。
まず「ミリオンジョー」(2019年・テレ東系)では漫画雑誌の編集者・呉井役。思慮が浅く、心もないが嫉妬や射幸心は強い。大人気のドル箱作品「ミリオンジョー」を描く真加田恒夫(三浦誠己)の担当だったが、彼の急死を隠蔽(いんぺい)して偽装する。金に困ったアシスタント(萩原聖人)と共謀して連載を続けるが、次第に追い詰められていく。罪悪感が薄く、自らを正当化していく姿に鳥肌が立ったが、悪事が露呈しかける緊張感、手に汗握る展開が毎週楽しみだった。
もう1作は「ただ離婚してないだけ」(2021年・テレ東系)。浮気相手の若い女性(萩原みのり)をぞんざいに捨てたため、家に押しいられた挙げ句、逆に殺してしまう。小学校教員で身重の妻(中村ゆり)と共に遺体を埋めて隠すが、姉の失踪を疑う弟や刑事、ヤクザまでもが絡んでくる。夫婦は追い詰められながらも、狂気の蛮行に手を染めていく。相当エグい展開だが、北山と中村の演技は真に迫っていた。
■人相の悪さでは右に出る者がいない森田剛
さて、1位の前に、別枠レジェンド級を紹介しておきたい。演技力は高いが「元ジャニーズ」のふたりである。
類まれなるコメディセンスとスタイルの良さ、惜しまれながらも退所した長瀬智也は言うまでもなく別格。「白線流し」(1996年・フジ系)の胸キュン青春格差恋愛物語から「俺の家の話」(2021年・TBS系)の爆笑&号泣の家族物語まで、数多くの名作に出演。ケチな私に主演作DVD-BOXを最も多く買わせたジャニーズタレントだ。
もうひとりは、人相の悪さでは右に出る者がいない森田剛。「ランチの女王」(2002年・フジ系)でヒロイン・竹内結子の元彼として登場した時は、マジで身震いした。
キラキラした清くて善い人ばかり演じるジャニーズタレントの中で、独自路線を築いた人だ。暴力性と攻撃性の中にどこか幼さと不遇の哀愁を感じさせる。
特に、映画「ヒメアノ~ル」の怪演は一生忘れられない(悪夢のように覚えているし、ラストシーンのあどけなさにうっかり泣けたし)。退所後に出演した短編映画「DEATH DAYS」は洒落てて素敵だったし、セリフが絶妙に面白い会話劇で、森田の魅力も存分に引き出されていた。シン・森田剛にはこれからも期待している。
■ジャニーズ嫌いの私が最も期待している人物
で、栄えある、いや栄えでもなんでもないか、個人的に期待値が高いのは……。
1位 小心者のあさはかさ、嫉妬や後悔をパーツで魅せる 重岡大毅(ジャニーズWEST)
人のよさそうな笑顔、歯の数の多さ、自然体だがどこかアニメ声。「こんな子が近所におったら町中が明るなるなぁ、ほな今日からあんたは100Wや!」といい加減な関西弁が脳内でこだまする。
「宇宙を駆けるよだか」(2018年・Netflix)や「これは経費で落ちません!」(2019年・NHK)、「死役所」(2019年・テレ東系)で重岡を見た時の私の脳内である。裏表なく、屈託なく、弱き人に優しく、非を認めたら即謝って反省もする。なんていい子なんだ! と。
しかし、善人だけを演じて1位にするはずもない。
「知らなくていいコト。」(2020年・日テレ系)で演じた役が抜群によかった。「嫉妬」という字は女偏ではなく男偏にすべきと思わせるくらい、みっともなくて人間臭い役だった。
さらに、現在放送中の「雪女と蟹を食う」(テレ東系、金曜深夜0時12分~)でも、痴漢冤罪(えんざい)で自暴自棄になった男を演じている。人は絶望すると無になり、その後でなぜか性欲や食欲が増大するという過程を見事に体現。
![写真=テレビ東京「雪女と蟹を食う」オフィシャルページより](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1200wm/img_73a9cc339579a2d174cdb60658098f42183245.jpg)
悪人になりきれない弱さ、死を覚悟したはずが揺らぐ心を生々しく演じている。最も期待しているジャニーズタレントである。
以上、俯瞰(ふかん)してみると、ジャニーズと「深夜枠・コメディ・悪事or犯罪」の相性の良さを感じた。その幼さやあどけなさは生臭い人間ドラマでぜひいかしてほしい。
こんな提灯持ち原稿は二度と書く機会がないと思うが、5年後・10年後は芸能界の勢力図も変わっているだろう。今回挙げた5人の暗躍を祈る。あ、活躍か。
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ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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(ライター 吉田 潮)
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