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「うちは金持ち」と認識させるのは避けるべき…「うちはお金がない」と思っていた人ほど将来トクをする理由

プレジデントオンライン / 2023年4月4日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simon2579

子供に適切な金銭感覚を身に着けさせるには、どうすればいいか。個人投資家の穂高唯希さんは「子供が『うちの家庭は裕福だ』という認識を持つのは良いことではない。むしろ『うちはお金がない』と思っているほうが、お金に関してよく考えるようになる」という――。

※本稿は、穂高唯希『#シンFIRE論』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■気付かないうちに染み付いた固定観念が可能性を狭める

固定観念はやっかいです。

一度自分の中に根を張ると、気づかぬうちに成長し、太い幹となり、「こうあるべきだ」といった原理主義的な考えに至ることもあります。

情報が多い現代では、どんな情報がどんな方向から来ても、スポンジのように柔らかく受け止め、必要なものは吸収し、不要なものは跳ね返す柔軟性が必要です。

私がFIREを目指す過程でも「可能性を狭める固定観念には絶対に注意しよう」と感じたことが多々ありました。

以下によく耳にする固定観念の例を挙げてみます。

・株式投資=ギャンブル?

新入社員の頃、「株式投資をしている」と同期や社内の人に言うと、「え、あれってギャンブルじゃないの? 大丈夫?」といった反応が多くありました。

いまでこそ資産運用は一般的になりつつありますが、数年前まで「株式投資=ギャンブル」という等式が成り立っていました。そう感じるのは無理もないと思います。成功体験が希少だからです。日経平均株価はバブル期をピークとして低迷し続けていました。身近に株式投資で成功した人がいないと、「株式投資=資産運用の有効な手段」と感じづらくなります。

もし私自身が「株はギャンブル」という固定観念を持っていたら、FIRE達成もおぼつかなかったかもしれません。

■「老後はお金と時間はあるが、体力がない」と言われて信じる人は危険

・お金・時間・体力すべては手に入らない?

大学生の頃、こんなことを耳にしました。

「大学生は、時間と体力はあるが、お金はない。
社会人は、お金と体力はあるが、時間はない。
老後は、お金と時間はあるが、体力がない。」

なるほどたしかに、一理あると思いました。と同時に、「じゃあ社会人のときにお金・体力・時間のすべてを手に入れてみよう」と思いました。

私は無理や不可能と言われているものは、「ほな自分が不可能でないことを証明したろやないか」と考える性分です。

経済的自由を得て自由な人生を描く、というFIRE達成は、すべてを手に入れることにもなります。

「老後はお金と時間はあるが、体力がない」というのも、はたしてどうでしょうか。そのような不安を覚える暇があれば、日頃から食事・運動・睡眠に配慮し、筋トレをするなどして努力を重ねれば、平均を上回る体力であり続ける可能性は高まります。

登山家の三浦雄一郎さんは、80歳で3度目のエベレスト登頂に成功しています。

■「高収入でないとFIREはできない」は本当か

・FIREに必要な資産は○○円? FIRE後は展望が必要? 低収入はFIREできない?

「FIREには○○円必要だ」
「FIREにはその後の目標や展望が必要だ」
「FIREは高収入でないとできない」

この手の話題をよく見かけます。

しかしFIREの実現性や必要資産額は、人によってさまざまです。3000万円で幸せに暮らす人もいれば、3億円ないと不安で仕方ない人もいます。

そもそもFIREを考えるにあたって、お金は精神的な保険や後ろ盾でしかありません。

不動産投資でも株式投資でも、たとえば戦争や疫病等の想定外の事象で価値が崩れる可能性もあります。現行資本主義が崩壊すれば、瞬時に無価値化する可能性もあります。投資や市場というものは、数々の前提条件のうえに成り立つ砂上の楼閣でしかありません。

FIRE達成後、社会的なつながりを持てず後悔する人もいれば、新しい目標を立てたり、趣味を追求したり、新たな事業や興味ある活動(一般的に「仕事」と呼ばれること)をはじめて充実を感じる人もいます。年収が低くても、必死に本で知識を得て不動産投資で成功し、FIREを達成した知人もいます。

年収が低くてもFIREした人が実際にいると知れば、「FIREは高収入でないとできない」といった言説に惑わされることはなくなります。

人は自分が知っている世界のなかでしか、可能性を見いだせません。常識や定説、一般的な意見にまどわされず、自分の信じる道を突き進むこともときに必要です。

■就活、結婚、出産、子育て…人生のイベントにかかる予算を疑う

FIREの実現性を考えるにあたり、人生にかかる大きな費用を考えてみます。人生の大きなイベントにかかる一般的な費用は日本FP協会によれば次の通り示されています。これらがいわゆる「常識が示す数値」ということです。

・就職活動費:約10万円

リクルートスーツ代・交通費・宿泊費など(出所:株式会社ディスコ キャリタス就活2021学生モニター調査結果)

・結婚費用:約469万円

結納・婚約~新婚旅行までにかかった総額(出所:ゼクシィ 結婚トレンド調査2020)

・出産費用:約52万円

出産費用の総額(入院料・室料差額・分娩料・検査・薬剤料・処置など)

(出所:第136回社会保障審議会医療保険部会の資料より出産費用の状況「令和元年度(速報値)」)

・教育資金:約1002万円

子ども1人当たりの総額(幼稚園から高校まで公立、大学のみ私立の場合)(出所:文部科学省「子供の学習費調査(平成30年度)」、「私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」)

・住宅購入費:約3494万円

(出所:住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」)

■平均はあくまで平均にすぎず、自分とは関係ない

ではそれぞれの費用について私ならどう見積もるか、記していきます。就活や出産費用は額が大きくないので割愛します。

大前提として、このように調査された平均額は、私は片っ端から疑ってかかります。これらはあくまで「平均値」であり「情報の出所によっては、情報発信者に都合のよい前提や数字になっている可能性があり、金額の妥当性に疑問が生じる」からです。

平均はあくまで平均、自分とはあまり関係ないと解釈します。人生の大きなイベントにかかる費用は、自分や家族の価値観次第でいかようにもできるものだからです。

■「そもそもなんのために結婚式をするんだっけ?」

・結婚費用:約469万円

出所がブライダル情報誌という結婚をビジネスとする業界である以上、高めの結婚費用が算出されている可能性があります。

「他人がどうしているか」が気になる国民性の日本ではとくに、「みんなこれぐらいお金をかけているなら、私もこれぐらいかけよう」という心理が刺激され、結婚費用の上乗せが期待できるからです。

特別な事情がなく、新郎新婦や両家の親類ともに同意するかぎりにおいては、神社で親族のみの結婚式という選択肢もあります。格式にもよるでしょうが、私が知るかぎり、西洋式の結婚式に比べ、費用が抑えられるケースが多く認められました。

ここでこんなフレーズを唱えます。

「そもそもなんのために結婚式をするんだっけ?」

見栄を張りたいから? 披露宴をしたいから? 人生一度きりの記念だから? 両親への感謝を示したいから? 「結婚式は、かけた金額で測るものではない」という共通認識が家族にあれば、約469万円という平均値は、あまり関係のない数字になります。神社で挙式のみならば、10万円のプランさえあります。もちろんパートナーや親族との価値観の一致やすり合わせ、尊重が必要ですね。あくまで価値観次第です。

リゾートウェディング 手をつなぐカップルの手
写真=iStock.com/imacoconut
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imacoconut

■費用をかけたところで子供の学力が上がるとは限らない

・教育資金:約1002万円

前提:子ども1人当たりの総額(幼稚園から高校まで公立、大学のみ私立の場合)

教育資金は、たとえば次の項目で大きく変わります。

・娯楽をどう解釈するか
・どこに住んでいるか
・子どもが自分の家庭を裕福だと思っているか

「娯楽=金銭の対価としてたのしむもの」と無意識に刷り込まれていると、遊園地やキッズパークが娯楽になります。お金はかかります。

逆に「娯楽=自然という資源とともにたのしむもの」という価値観であれば、山遊びや川遊び、海水浴に田んぼ遊びが娯楽になります。お金はかかりません。

また、たとえば東京で「お受験」をすれば、塾通いなどで費用は必要です。一方で、田舎に住んでいれば、中学や高校が近くになく、下宿費用が必要な場合もあります。

日本で今後フリースクールが一般的になる可能性もあります。仮にそうなれば、費用はさらに千差万別となるでしょう。

私が同級生を見ていて思ったのは、塾に通わずとも成績がよい人もいれば、逆もしかりです。結局は、本人の目的意識や意欲によるところが大きく、費用をかけたからといって、学力が上がるとはかぎりません。

私も高校のとき塾通いしていましたが、まったく勉強意欲がなかったので、好きな科目以外はさぼってばかりいました。友人とワイワイ夕飯を食べることがたのしみで、夕飯後に友人は塾に行き、私は帰宅してテレビの前で放心という始末。お金がかかっているのに親不孝なことをしました。

■塾通いも習い事も、結局は子供の意欲次第

結局、本人の意欲次第であり、かけた費用の多寡は本質的ではないということです。子どもは親の思ったとおりに育つものではありませんね。

一方、習い事は金銭をかけてでもやる価値があると個人的には思います。私は子どもの頃に「ピアノ・お習字・そろばん・スキー・水泳」と、多くの習い事をさせてもらっていました。

決して裕福な家庭とは言えない経済環境でしたが、「習い事は、亡くなった父さんが、国内外を旅して、外国語を1つ、楽器を1つ、スポーツを1つ得意にすれば、世界のどこに行ってもたのしくだれとでも友達になれる、と言っていたから」との母の判断でした。その判断は極めて有難いものであったと感じます。

ピアノを習っていたことで音楽に親しみ、留学・駐在時は中国語で流行歌を熱唱し、異国の仲間と盛り上がったものです。水泳は、駐在時に同じマンションに住む年配の男性たちと泳ぐきっかけとなり、ジャグジーでよく話し込みました。スキーは、インストラクターのアルバイトを通じて、修学旅行生と知り合う貴重な経験になりました。

■「うちは金持ちだ」と子供が認識するのは良いことではない

ちなみに、子どもが「うちの家庭は裕福だ」と認識を持つのは、悪いことはあってもよいことはあまりないと思います。いろんな人を見てきてそう感じました。

家にお金があり余っていると、お金は空気のように「あって当たり前」です。すると、「あって当たり前」の空気を意識しないのと同様に、お金を意識する必要がなく、お金について考えなくなります。渇望という言葉がありますが、渇く(欠乏する)からこそ、大切に感じ、望むのです。

私が、中学生から資産形成に対して興味を持ち、探究できたのは、家にお金が多くないと感じたことが大きな要因の1つだと思います。もし裕福な家庭なら、お金に対して深く考えず、無頓着だったでしょう。

なにかが満ち足りていないことは、決して悪いこととはかぎらないのです。「足りないと感じる状況なら、なぜ足りなくて、どうやったら手に入れられるのかを深く考えられるチャンス」と思います。

■「家を買うなら5000~8000万円程度」本当にその額が必要か

・住宅購入費:約3494万円

ライフイベント費用としては一番大きいでしょう。住む場所で金額は一変します。旅行先では、よく不動産の相場をチェックします。たとえば都心に住む人は5000万円~8000万円の住宅ローンを組んで購入する人もいます。一方、公営住宅は、はるかに安く済みます。

住宅は一生住むと決まっていないかぎりは、「売りたくなったときに、売れるか」「値下がり具合はどう予想されるか」といった出口戦略を考えたうえで購入しないと、一生その負債が肩にのしかかるリスクもあります。

そして住宅購入費は、個人・時期によって非常に差が出やすい分野です。住宅ローン1つ取っても、住宅ローン減税の有無、固定金利か変動金利、金利がいくらか、といった要素で数百万円変わってきます。

■住環境に何を求めるか、自分の価値観を見つめ直す

日銀の未曽有の大規模金融緩和で近年低金利環境が続いてきました。金融緩和という金融政策は、インフレや通貨価値の下落といった副作用が遅れてやってくることが考えられます。

穂高唯希『#シンFIRE論』(KADOKAWA)
穂高唯希『#シンFIRE論』(KADOKAWA)

株式・為替・債券など、市場を人為的に操作すると、たいてい歪み(バブル)が生じます。歪みはいずれ表面化します。歪んで下げたものはいずれ上がり、歪んで上げたものはいずれ下がるのが市場の常です。

低金利のうちに固定金利でローンを組んでおくのも1つの戦略でしょう。私は以前住宅購入の際に、そうしました。

収入が多くなければ、年収制限つきで「格安市営住宅」が提供されている地域もあります。築年数が浅く、綺麗な物件もあります。私は一時期、北海道をはじめ、現地の役所に足を運んだり、問い合わせたりして、築浅2DKで家賃2万円などよい物件を教えてもらえました。

結局、住宅購入費も千差万別です。自分や家族の価値観をすり合わせ、どのような環境を求め、どこでどんな物件に住むのかを見極めることが大切です。

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穂高 唯希(ほたか・ゆいき)
個人投資家
慶応義塾大学在学中に北京大学留学、経済学を学ぶ。就職後、給与の8割を高配当株・連続増配株へ投資し、金融資産約7000万円、月平均20万円超の配当収入を得る仕組みを形成。30歳で退職しセミリタイア、FIREを達成。

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(個人投資家 穂高 唯希)

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