「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ
プレジデントオンライン / 2023年3月31日 18時15分
※本稿は、和田秀樹『70代からの元気力』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■70代になったら「かくあるべし思考」を捨てなさい
70歳を過ぎたら、「好きなことだけをする」という選択もあります。
「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。
ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。
そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。
心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです。
まず捨てたいのは「かくあるべし思考」。
たとえば、会社勤めの間は、とにかく「定年までは働くべきだ」いう気持ちがあったはずです。この「かくあるべし思考」があったからこそ、仕事で嫌なことや、苦しいことがあっても、我慢して働いていたわけです。
また、仕事に対する責任感とか義務感といったものも、考えてみれば、「かくあるべし思考」が根本にあります。
「どんな仕事であれ、逃げ出したり、放り出したりせずに取り組むべきだ」と思うからこそ、責任感、義務感が生まれるわけです。
■「70歳になる」とは「自由になる」ということ
ただ、仕事がうまくいっているうちはいいのですが、うまくいかなくなると、その責任感や義務感に追いつめられることになります。それに耐えられる人もいるでしょうが、心が病んでしまう人もいます。
そんなときは「かくあるべし思考」を捨ててもらうと、ラクになることが少なくありません。実際、職場でうつに苦しむ人は、医者の診断書をもらって休職が認められただけで、ずいぶんラクになるものです。
実際の治療に入らなくても、医者の診断書をもらったことで、「かくあるべし思考」からいったん解放されるので、それまでの苦しさが消えてしまうことがあるのです。
「定年を迎えた」ということは、仕事に対する最大最強の「かくあるべし思考」から完全に解放されるということです。
人によっては「あと5年は働かないといけない」といった拘束があるかもしれませんが、定年前ほどの縛りは消えています。「かくあるべし思考」から解放されているので、「いざとなれば、我慢して働く必要もない」という意識が、どこかにあるからでしょう。
それでいいのです。
仕事だけではありません。
子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。
70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです。
「70歳になるということは、自由になること」なのかもしれません。
そう考えれば、こんなに楽しく嬉しいこともないはずです。
■「何ごとも遊び半分」が、脳を老化させないコツ
70代は「自由の時代」――と考えていいでしょう。
そう考えれば、何ごとも、いままでのような拘束力はありません。
地域の活動だって、ボランティアだって、自分がやりたいと思ったらやればいいし、時間がもったいない、ムダなことだと思ったらやめたほうがいいのです。
趣味も、つき合いも、すべて同じ。
「つまらないな」と思ったら、やめていいのです。
と言うより、「つまらないな」と思ったら、やめたほうがいいのです。
「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。
そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます。
昔であれば、そのような態度は、「遊び半分」と思われて、否定的に考えられたものです。嫌悪感を抱く人さえいました。
とくに、団塊の世代は、真面目な努力家が多いので、その傾向があるように思います。
実際、会社員時代、仕事が中途半端に終わってしまったときなど、「まるで遊び半分じゃないか!」と、反省していた人もいるのではないでしょうか。
でもこれからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです。
■責任感や義務感を押しつける人とは距離を置く
それに地域の活動やボランティアをやめたところで、周りはそれほど気にしないもの。「つまらないな」と思っていたわけですから、周りもそれとなく気がついているものです。
「和田さん、最近姿が見えないね」と地域活動やボランティアの仲間が言ったとしても、「まあ、そんな予感はしてましたよ」「まあ、当てにしないで待ってましょう」くらいで終わってしまいます。
もちろん、どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。
70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。
放っておけばいいのです。
70代は、そういう気ままさが許される世代なのです。
それに「何ごとも遊び半分」とばかりに、最初から何ごとにも深入りしないと決めておけば、それが自然と自分のキャラクターになってきます。
周りの反応など、気にすることもなくなります。
![コーヒーを持ってポーズをとっている陽気な大男](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/2/1200wm/img_b2fbc397510b9c194229cde3efa7b615390752.jpg)
■「胸を張って、無責任に生きる」は、70代の特権
齢をとると、何を始めるにしても、おっくうに感じるもの。
それには理由があります。
65歳を過ぎても、60歳までの価値観、人生観を引きずっている人が多いので、何かを始めるとき、どうしても不安や懸念を感じてしまうのです。
「始めても、だんだん辛くなるかもしれない」「ひょっとしたら、自分に向いてないかもしれない」などなど、ついつい不安を感じてしまうわけです。
さらには「長続きしなかったら、みっともない」「やるからには、中途半端なことはできない」と、見栄から生まれる懸念もあります。
このような価値観、人生観は、長い会社勤めや、組織の人間関係の中で身についたもの。それをそのまま、65歳からの人生に当てはめても、意味がありません。
どんな世界でも、いざ飛び込んでみると「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」といったことはいくらでも起こり得ます。
前項でお話ししたように、「何ごとも遊び半分」という気持ちで始めれば、気分もラクなもの。「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」と思ったら、のんびりマイペースに持ち込んでしまえばいいだけの話。
65歳を過ぎたら、ラクなことだけやる。
誰からも文句は言われないはずです。
また、ラクだと思っていても、「やっぱり、自分に向いてない」ということもあるでしょう。それなら、「やーめた!」と放り出せばいいのです。
65歳からは、万事がこんな調子のほうが、うまくいくと考えてください。
団塊の世代なら、クレージーキャッツの植木等さん主演の映画『無責任』シリーズを覚えていると思います。その映画の中で「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」というとても痛快なセリフがありました。
70歳からは、まさに「無責任一代男」「無責任一代女」でいいのです。
「やっぱり、自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います。
70代は、何十年もの間、ひたすら責任だけを果たしてきた世代なのですから。
■「外に出て町を歩く」だけでも、必ず若返ります
外に出て町を歩くだけで、気分が華やいでくるときがあります。
70代になったら、このような気分から生まれてくる高揚感を大事にしたいものです。
と言うのも、このような高揚感は、老化の防止にとてもいいのです。
晴れの日はもちろんのこと、曇りの日でも雨の日でも、外を歩いて風を感じたり、人とすれ違ったり、店先を眺めたりする。また、気が向いたら、しばらくご無沙汰の飲食店や居酒屋に顔を出したりする。
それだけでも、「こういう気分もいいな」と思うときがきっとあります。
それが脳にとって、とてもいい刺激なのです。
また、町には同世代の男性や女性たちがいます。快活で楽しそうな同世代がいれば、いやがうえにも刺激になります。
ファッションにも目が行くでしょう。「ああいうチェックの柄のジャケットなら、私も欲しい」と思ったりします。「派手な色だけど、あの歳でも案外、様になるんだな」と気がついたりします。
あるいは逆の場合もあります。
「同じくらいの歳だと思うけど、地味な服のせいか、年寄りくさく見える」
「不機嫌そうな表情をしているな。あれじゃ家の雰囲気も悪いだろう」
といった具合です。
![和田秀樹『70代からの元気力』(三笠書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/1200wm/img_554b55dfe385b689121861973e93807c227607.jpg)
町を歩くと、つい同世代に目が行ってしまうのはいくつであっても同じだと思います。そのたびに、いろいろな刺激を受けるのです。
「あのようなジャケットが欲しい」「あのような表情はよくない」などと、勝手な刺激を受けているうちに、不思議な元気が出てきます。何をどうするというのでもなく、前向きな気分になってくるものです。
それだけでも出かけた甲斐があります。
目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。
それだけでも若返りの刺激を受けるのです。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)
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