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何にでも文句をつけるバカが目の前に現れた…そんな憂鬱な出来事をいい結果に転ばせるための"すごい態度"

プレジデントオンライン / 2023年3月31日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

不快に感じる相手と出会ったらどうすればいいか。フランスの哲学者のマクシム・ロヴェールさんは「バカとは人生で挑むべき課題である。あなたの知性と機転を見せる大チャンスと捉えられるとその出来事は好転する。対面しても理性を保ち、焦らず、粗暴なふるまいをするのではなく、自分から折れて平和に解決することを心がけるべきだ」という――。

※本稿は、マクシム・ロヴェール(著)、稲松三千野(訳)『フランス人哲学教授に学ぶ 知れば疲れないバカの上手なかわし方』(文響社)の一部を再編集したものです。

■人に対していくらでも不満がある人への対応

不満がたまると他の人に吐きだし、何にでも文句をつけるバカがいます。

そういうバカは、あなたにさんざん人の悪口を聞かせてくることがあります。あらゆる悪口が大好きで、人の悪口ならいくらでも言えるので、嬉々として悪口を言いつづけます。

あなたが黙って口を挟まずにいれば、それだけであなたのことを本当に素晴らしい人だと思ってくれます。

でも、そういうバカは、後でまた怒りがたまってきたら、別の話し相手を見つけて、また果てしなく悪口をぶちまけます。

人に対していくらでも不満があるので、今度はその新しい話し相手に、あなたのことで不満を言いかねません。

あなたに対して、どんなふうに、どうして、どのくらいがっかりしているかを、延々と語るわけです。

本稿の内容
・バカに目撃者はいない。いるのは共犯者だけである。

・否応なしに巻きこまれてしまうからこそ、わたしたちはバカに関心をもち、行動して状況を変えたいと考える。

■あなたはバカより優位な立場にいる

バカはもれなく劣った人間ですが、だからといって、全人類に絶望するほどの理由にはなりません。みなさんもそう思いますよね(ただし、ここまで読んできたけれどもさっぱりわからなかった、という場合は別です)。

みなさんは、バカのせいでパニックになったのも、もう収まりましたね。それなら、おわかりいただけると思いますが、バカに出会うと、こちらの身には一度にいろいろなことが起きます。

① モラルのギャップを感じる(バカのほうが低い)。
② 挑むべき課題が生じる(バカのモラルが低いせいで起こる事態に備えなければならない)。
③ 相手はバカなので、必然的にこちらが一歩リードし優位に立つ。

まだ自分のほうが優位な立場にいると思えませんか? ①と③をよく読んでください。向こうはモラルの低いバカです。

■バカは「課題」である

さて、神の恩寵は必ずあると信じている人や、道徳的にふるまう力は自分の意志で出せると考えている人には申し訳ないのですが、自分がもっている以上の力を出そうとする必要はありません。むしろ、そのとき自分がもっている力でなんとかしなければなりません。

少しご説明します。バカは絶対的な「悪」ではなく、相対的な「悪」であることはすでにおわかりでしょう。だから、一口にバカと言っても、程度はいろいろで、ひどいバカであればあるほど、即対処しなければならないこともおわかりになるでしょう。

バカが害を及ぼしそうなとき、あなたや他の人は、それを阻止するのに最適な対応を、その場ですぐにするよう求められます。

立派な人間になろうとする人の努力をあざ笑うようなバカの態度など、もはや気にしないことです。もうわたしたちにはわかっています。今、まさにこのバカに課題を出されているのは、完全にあなたです。立派な人間になりたいと思っているあなたが試されているのです。

そうやって、バカは課題だと考えると、この本のこれまでの内容を新しい視点で見なおすことができます。それに、無理に道徳心をふりしぼらなくても、蟻地獄から抜けだして二度と落ちないようにすることもできます。

バカは課題だと考えると、バカは絶対的な「悪」ではないと認識でき、バカとの相乗効果のネガティヴな部分(相手のバカさ)から、注意をそらすこともできます。

相手のバカさは、あなたがぼう然として冷静な判断力をなくしてしまうと、心の中で増幅し、拒絶の環が始まって、あなたまでバカになってしまいます。

バカに出会ったら、まずは、ただひとつの大切なものに注意を戻すだけでいいのです。何も変える必要はありません。その出来事が、あなたの人間性に対して投げかけてきている「課題」に注意を向けてください(出来事自体はどのようなものであってもかまいません)。

■あなただけの課題

わたしが課題だと言うのは、バカはいわばあなたに声をかけているわけですが、その声がけには、手紙で言えば親展のような個人的な性質があることを強調するためです。

つまり、バカとの出会いは、偶然あなたに訪れた行動のチャンスであると同時に、人を相手にする出来事でもあります。それがたとえ、初めて会った知らない人で、この先二度と会うこともない人だとしても、その人は今、あなただけに話しかけています。

もうおわかりだと思いますが、バカに出会ったらまず、ふたつのことをしっかり意識しましょう。ひとつは、そのバカ自身が蟻地獄にはまっている最中だということです(どんな蟻地獄かは気にしなくていいです)。

もうひとつは、そうした状況では、あなたが、いわば唯一の希望だということです。わたしたちがみんなで一緒に向上して立派な人間になれるかどうかは、あなたにかかっているのです。

あなたまで蟻地獄に落ちないようにするために、しっかり覚えておかなければならないことがあります。それは、バカは、あなたの思う「立派な人間」という概念に当てはまらない人間がいるということの表れだということです。

その概念を守るべき人は、あなたしかいません。ですから、平和と融和を取りもどす役割は、あなただけが担っています。当然です。相手はバカなのですから、そんなことは期待できません。

したがって、相手がバカであればあるほど、あなたが賢くならなければなりません。あなたが事態の理解に努め、事態を好転させなければならないのです。

先の記事で書いたように道徳心に火をつける場合、ありあまるほど豊かな愛情が必要です。相手のしていることに愛情をもって対応しなければなりません。

でも実は、そうした愛情は、壮大な主義主張(神の愛、世界の調和、理性主義、プラグマティズム、精神主義など)の中にしか見当たらないものでもあります。

課題にしてしまえば、人はひとりで取りくむもののように思い、自分ひとりに課されたものだととらえて、すぐに行動できます――そう、バカはまるで封書のようです。あなた宛の、封をした手紙で、あなただけが開けるべきもの、というわけです。

■バカに目撃者はいない

バカという親展をあなたに送ってきたのは、運命だという人もいれば、神だという人もいるでしょう。あなたが受取人というこの状況は、わたしに言わせると、やはり、バカに目撃者はいない、ということになります。

どういうことかというと、バカが現れたとき、あなたは外側から観察しているわけではありません。そのため、あなたが「自分は目撃者だ」と言っても、実際はそうではないということです。あなたは、その人がバカなことと自分は無関係だと言うでしょう。

そうしたらわたしは、その人をバカだと認識したのはあなたなので、あなたにも何らかの関係があると答えます。そういう意味では、こう言われると嫌かもしれませんが、バカとあなたは同じチームの仲間なのです。

あなたはバカを前にしたときに、自分が仲間だと認めたくなくて、頭の中で帰納という危険な間違いをしました(わたしに苦痛を与えるバカは絶対的な「悪」である)。つまり、状況の単一性を消して一般化したのです。

みなさんは、まだキツネにつままれたような状態でしょうか。では、今からとどめを刺すような感じでとてもショッキングなことを書きますが、これを読んで目を覚まして我に返ってください。「バカに目撃者がいないのは、共犯者しかいないから」です。

■自分の役目に意識を向ける

つまり、自分もバカの共犯者だということ。これは実に不愉快な考えですよね。わたしもそう思ったことがあるのでわかります。

でも、わたしたちは、自分の体に深々と刺さっているとげを抜かなければなりません。そろそろ痛みの原因を取り除いて、バカのいる状況での自分の役目に、意識を向けなければなりません。

というのも、あなたがすごく怒っていて、その怒りが無駄に強くなっているのは、責任の所在について考えているからです。それを考えることで、バカがバカであることから自分を免罪してほしいのです。

器用にバランスを取り、うまく回していっている人
写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk

あなたは、この衝突を生んだのは自分ではないから、解決するのは自分の役目ではないと思っています。

あなたはこんなふうに思いを巡らせているのではないでしょうか。

《率先して平和を目指すのがわたしの役目だということ? だとしたら、暗にこう言われているわけだ。相手がバカなのはわたしのせいでもある、こんなことになった責任の一端がわたしにもあると。ことを収めるためにこちらが折れて出たら、それを認めることになってしまう。》

いいでしょう。あなたが抵抗するのも当然です。バカがバカであることの道義的責任は、間違いなく向こうにあります。それはわたしも同感です。それに、衝突の原因は常に向こうにありますし、バカなのは確実に向こうです。

でも、そこを重要視するのは間違いです。このバカはもうあなたの人生に出現してしまったのですから、もはや嘆いている場合ではありません。あなたが、向こうが悪いということにこだわるのなら、それはそうかもしれませんが、この人生はあなたのものです。

ですから、自分に関係がある現状にのみひたすら注意を向けるべきです。そして、どんな選択が可能かを見極めて、一番効果的な戦略を選ぶのです。おわかりいただけたでしょうか? あなたの人生に降って湧いてきたその出来事は、今、あなたに対応を迫っています。

確かに、あなたの人としてのあり方に関わる大きな課題が、そんなふうに気取ったバカ女やバカ野郎の姿と声をまとって現れるなんて、控えめに言ってもびっくりですよね(それに残念だし笑えます)。頭の中がバカへの軽蔑心でいっぱいだとしても、理解できます。

でも、ご存じないでしょうか? ヒーローはどんなときでも悪臭を放つ怪物を倒さなければなりません。「こんなのおかしい!」と叫んで、何かの間違いだと思いこもうとするのはやめましょう。自分の人生にこのバカの入る余地はないという考えは捨てましょう。

なぜなら、実際はその正反対だからです。バカはあなたに話しかけています。完全にあなたに話しかけています。そして今、能力を発揮すべき人はあなたです。

■目的はバカが害を及ぼすのを阻止すること

これであなたの立ち位置は変わりました。今度は、どんな選択が可能か、あらためて考えてみましょう。なぜなら、あなたにとって、バカを滅ぼすことはもはや重要ではないからです。

そのバカは、あなたと出会う前から存在していて、この先も、おそらくどこか別の場所で人生を続けていくことでしょう。それならば、あなたの目的は、バカが害を及ぼすのを阻止することに絞られます。

それがすなわち、その人をあなたの人生から物理的に排除することを意味する場合もありますが、必ずしもそれができるとは限りません。時には、害を及ぼすのを完全には防ぎきれないことさえあります。

でも、これからはあなたが、いわばゲーム盤のサイズをきっちりと決めるのだということはおわかりいただけるでしょう。ゲームの駒は、あなたが好きなように置きなおしていいのです。誰を巻きこみ、誰を味方につけるか、自分で決めていいのです。

たとえば、相手が上司だとか目上の人だとか、ヒエラルキー上の理由で直接批判できない場合も、同様です。うまく周りに味方を置きましょう。

■バカはあなたが真価を発揮する絶好のチャンス

したがって、確かにバカは、場の雰囲気を悪くし、あなたが大切に思っているものを踏みにじっているのですが、そうすることであなたが真価を発揮する絶好のチャンスを与えてくれてもいるのです。

だから、粗暴なふるまいをしてはいけません。理性を保ち、焦らないでください。今こそあなたの知性と機転を見せるチャンスです。そうした長所が唯一役立つのが、こんなときなのです。

気付きを得た人
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

知性や機転は「バカといるときに、バカのおかげで」意味をもちます。せっかくの、人として優れた資質も、それを使わざるをえないような不幸な出会いがたまにはないと、意味がないのではないでしょうか。

マクシム・ロヴェール(著)、 稲松三千野(訳)『フランス人哲学教授に学ぶ 知れば疲れないバカの上手なかわし方』(文響社
マクシム・ロヴェール(著)、稲松三千野(訳)『フランス人哲学教授に学ぶ 知れば疲れないバカの上手なかわし方』(文響社

どんな出来事も、いい結果に転ぶこともあれば悪い結果に転ぶこともあり、主体(観察する側)と客体(観察される側)もコロコロと入れ替わるものです。

物事は考え方次第ですから、他の人たちがバカであることは、あなたの道徳心を育てるためには、好ましく、また必要なことだと考えましょう。バカは、ちょうどいいところに降って湧いたチャンスなのだと、ぜひ、すぐにでも理解していただきたいと思います。

それにこのチャンスは、他の誰でもない、あなたのためにあつらえたかのようなチャンスです。その場にあなたが居合わせたということは、そういうことなのです。そういう意味で、今、わたしは、バカは紛れもなくチャンスだと結論づけ、何度でもこう言いたいと思います。

本稿のポイント
自分から折れて平和に解決しよう。

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マクシム・ロヴェール 作家 哲学者
1977年生まれ。フランスの作家、哲学者、翻訳家。高等師範学校でベルナール・ポートラに師事。2015年から教皇庁立リオデジャネイロカトリック大学(ブラジル)で哲学を教える。本書は本国フランスはじめ、世界10カ国以上で注目を集める話題作となる。ジョルジョ・アガンベン、チャールズ・ダーウィン、ヴァージニア・ウルフ、ルイス・キャロル、ジョゼフ・コンラッド、ジェームス・マシュー・バリーなど哲学書、文学書の翻訳も手がける。

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(作家 哲学者 マクシム・ロヴェール)

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