1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

普通の上司はついやってしまいがちだが…「1on1ミーティング」で絶対に話題にしてはいけないこと

プレジデントオンライン / 2023年3月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

上司と部下の一対一のミーティングの場はどう使えば有意義な場になるか。組織人事コンサルタントの小倉広さんは「一対多ではない濃密なコミュニケーションの場は進捗管理に使ってはいけない。中長期的なキャリアや悩み相談など『深イイ話』に絞るべきだ」という――。

※本稿は、小倉広『常勝チームの鬼100則』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■オンライン会議の「カメラ・オフ」が相手に疲労感を与える

コロナ禍を期に、広く普及したオンライン会議。今ではビジネスに欠かせないツールになっています。しかし、顧客とのミーティングではカメラをオンにして顔を出す人でも、社内の会議になった途端、カメラを切り、音声だけにしている人が多いようです。

しかし、このカメラ・オフ。あなたが思っている以上に、コミュニケーションに大きな危険をもたらしているのです。

オンライン会議に関する各種調査で課題として真っ先に挙げられるのが「相手が何を考えているかわからない」「上司(もしくは部下)から仕事を怠けているのではないかと疑われるのが怖い」という項目です。

つまり、オンライン会議がコミュニケーションの主流となった昨今、チームリーダーもメンバーも共に相手からどのように見られているのか、という不安を抱えているのです。

カリフォルニア大学のアルバート・メラビアン教授による「メラビアンの法則」によれば、人は、言葉を通じてコミュニケーションをとるのはわずか7%であり、視覚的に得る情報が55%である、との有名な調査結果が分析されています。それはオンライン会議においても同じこと。

私たちは、言葉の内容が正しいかどうか、そして、言葉が発せられないときに相手が同意しているのか拒絶しているのかを表情を通じて知ろうとするようにプログラミングされています。

しかし、その肝心な視覚情報が得られないとき、私たちは、なんとか視覚情報以外の音声情報、たとえば声色や声の大きさ、話すスピードなどから読み取ろうとしたり、相手の言葉の内容を過剰に解釈をして補おうと、無意識のうちに消耗し、多大な疲労を感じるのです。

それはあたかも電波が飛んでいない山林などで携帯電話が電波を探し過剰に電池を消耗するようなもの。いわゆるZoom疲れと言われる疲労の原因です。

対顧客のみならず社内の会議でも、カメラ・オンで顔出しを。

チームのルールにしたいものです。

■子どもとペット…在宅勤務で現れた微笑ましい来客を歓迎

私は、年間300回登壇する企業研修講師ですが、昨今増えてきたのは、お子さんを膝に乗せながら、もしくはペットを抱きながら研修を受講される方です。

また、意図的ではないにせよ、研修受講中に突然部屋のドアが開き、小さなお子さんが受講者さん(お父さん、お母さん)の膝の上に乗ってくる、という場面にもよく出くわします。

会社により反応は様々ですが、他の受講者さんはおおむね微笑ましくそれを見ている方が多いように思います。また、講師である私もまったくといっていいほど否定的な気持ちにはなりません。

むしろ、それにより、多くの人が受講されるきっかけになればいいな、と肯定的に感じます。

オンラインによる在宅勤務が増えた現在、このような微笑ましい来客を排除する必要はないように思います。もちろん、会社によっては、それをよしとせず、ルールで禁止するところもあるようですが、私はむしろ肯定した方がいいと思っています。

理由の1つは先に述べた通り、それによりオンラインの研修や会議に参加される利用者が増えることであり、2つ目には前項に掲げた「オンライン会議ではカメラ・オンにしよう」を推進する大きなフックになると思うからです。

仮にオンライン会議や研修の場面だけ、お子さんやペットの入室を禁止にしたとしても、勤務時間の大半を占める事務的な業務時間にそれを阻止することは不可能ですし、非生産的です。

それよりはむしろ積極的に歓迎して、それによるプラス面を享受した方がいいように思うのは私だけでしょうか。

机から顔だけを出している興味津々の猫
写真=iStock.com/101cats
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/101cats

これはオンライン時代の働き方全般にいえることですが、執務スタイルを監視し、縛ることは不可能ですし、害悪の方がはるかに大きいのです。

こんな時代だからこそ、業務で求められる成果を測定可能な指標化し、成果を中心とする評価制度を確立するタイミングにすればいいのです。プロセスで縛るのは自発性、自律を促す動きとは正反対のマネジメントスタイルだからです。

■疑心暗鬼の状況から気分や感情を共有する

オンライン会議の問題点の1つとして挙げられるのは「上司が部下の、部下が上司の気持ちがわからない」というものです。

フィジカルな空間を共有することのないオンライン会議では、空気や雰囲気が把握できません。

また、中にはカメラをオフにして表情を見せてくれないメンバーもいれば、それに加えて会話中にマイクをミュートにすることで、雑談や議題に派生した別の話題などが発生しづらくなっているからです。

これらの要因が複合的に絡み合い、リーダーはメンバーへ対し、メンバーはリーダーへ対し、互いに疑心暗鬼になっているのです。

それを予防もしくは解消するための1つの手段として、オンライン会議において気分や感情を共有することをお勧めします。

コミュニケーションのコンテンツは大きく分けて3つあります。1つ目は事実と出来事。2つ目は思考。3つ目が気分と感情です。

オンライン会議により、とばっちりを受けているのは3つ目の気分や感情です。それを補完するためにお勧めなのは、研修などでよく行われるチェックインを社内会議にも導入することです。

たとえば、会議の冒頭で開催者が参加者ひとりひとりを指名し、簡単に「今の気分は?」「今日の調子は?」などと話をさせるのです。またさらに盛り上げたいなら「今の気分をお天気で表現し、『そのココロは』で補足してください」などと促すのもいいでしょう。

すると「今の気分は晴れのち曇りです。そのココロは夕方から重たいミーティングが入っているからです」「今の気分は台風一過、爽やかな秋晴れです。不安だったプレゼンが大成功に終わり、ようやく一息つけそうな状態だからです」などと、気分や感情を含んだ近況報告が共有されるからです。

ポイントは、やはり気分や感情を話すこと。そうでなくては、ただの進捗(しんちょく)報告となってしまい、互いの気持ちを理解するどころか、逆に冷たい空気が流れてしまうから。

日ごろ口にすることのない互いの本音が聞けることで、疑心暗鬼に陥りがちな空気が軽やかになること請け合いです。

■進捗管理とは異なる1on1ミーティングを定例化する

インテル社中興の祖と呼ばれるアンドリュー・グローブが経営の最重要事項と位置づけ始めたといわれる1on1ミーティング。今から10年前に日本でもIT業界を中心に導入され始め、今では業界を問わず大手企業の多くで導入されているマネジメント技法です。

1on1ミーティングの定義は「上司と部下による週1回〜隔週1回程度の定期的な一対一の対話」です。

この短い定義の中に1on1の要諦がいくつも含まれています。

まずは上司と部下という組織の大黒柱に特化したコミュニケーション技法であること。

同時に一対一の濃密なコミュニケーションであり、一対多とは異なる雰囲気、内容になることです。

さらには、定期的であることも大切であり、用がなくても必ず実施することです。頻度としては、熱心にやっている企業の多くは毎週行っており、最近始めたばかりの大手企業では月1回など少ない頻度が多く、ばらつきが大きいのも特徴です。

私は自身がコンサルタント会社を経営していた際にこの1on1を毎週欠かさず実施していた経験から週1回の頻度をお勧めしています。

組織は毎週のように様々な出来事が起こり、メンバーのモチベーションも週1回程度の短いサイクルで上下動するからです。

そして、1on1で最も大切な点は、それを進捗管理に使わないことです。

1on1のコミュニケーションは会話ではなく対話です。対話とは結論を出すディスカッションではなく、相互理解をゴールと置くことにあります。

そして対話のもう1つの定義は「他者の出来事」を話すのではなく「自己の内面」を伝え合う本音のコミュニケーションにあります。

その意味でも、日常業務の進捗確認に1on1を使うのではなく、日頃なかなか話せない悩みの相談や、中長期的なキャリア相談。部署のコミュニケーションや業務プロセス、商品サービスの改善、経営方針に対する意見の交換など、「深イイ話」に絞っていただきたいのです。

これらのポイントを理解し継続できれば、1on1ミーティングはコミュニケーション向上の欠かせないツールとなることでしょう。

■それでも、たまには飲み会を

その名を聞けば誰もが知っているメガベンチャーのA社では、オンライン全盛時代の今でも「飲み会」を会社として推奨しています。

そして推奨のみならず、新卒中途の新入社員が入るたびにチームでの「歓迎飲み会」開催費用を全額会社負担にしている、というのです。

私が語るまでもなく、飲み会はチームビルディングに大きな効果をもたらします。

最大の効果は互いに話しかけやすくなること、です。

私たちは誰一人として、1人で仕事をすることはできません。誰かに仕事をお願いしたり、質問や相談をすることで、困難な仕事が前に進みます。

しかし、互いに話しかけやすさという素地がない場合、えてして私たちは話しかけることをためらい、そして容易にあきらめます。

ましてや、それが上司や先輩社員だったとしたら。それが自分のチーム以外の他部署の人だったとしたら。話しかけにくさは一気に倍増してしまうのではないでしょうか。

飲み会を行うことで、仕事上の役割を超えた人間と人間としての関係が築かれ、仕事のお願いや相談のハードルが下がることが起きます。ほんの少し話しかけやすくなるだけで、仕事上のコミュニケーションに大きな変化が起きることも珍しくないのです。

小倉広『常勝チームの鬼100則』(明日香出版社)
小倉広『常勝チームの鬼100則』(明日香出版社)

もちろん、コロナ禍から続く職場コミュニケーションの変化により、飲み会自体が激減した職場が多くあります。そして、その傾向はコロナ禍が落ち着いた後も続くことでしょう。

もう、以前のように頻繁に飲み会を開くことで職場コミュニケーションをオープンにすることは難しくなったといえるかもしれません。

だからこそ。

それでも、たまには飲み会を開きたいものです。

飲みニケーションだけに依存するのではなく。1on1やオンラインミーティングを工夫しつつも、それを補完する役割や仮面を脱いだ関係づくりに役立つのではないでしょうか。

----------

小倉 広(おぐら・ひろし)
組織人事コンサルタント/心理カウンセラー
1965年新潟県生まれ。88年青山学院大学経済学部卒業。リクルート勤務を経て、2003年より独立。『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『もし、アドラーが上司だったら』(プレジデント社)、『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』(日経BP社)、『任せる技術』(日本経済新聞出版社)など著作多数。http://ogurahiroshi.net

----------

(組織人事コンサルタント/心理カウンセラー 小倉 広)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください