頭の回転が速くて早口…「明石家さんま」のような人に絶対にやってはいけない"聞き方"の大間違い
プレジデントオンライン / 2023年3月31日 19時15分
※本稿は、藤本梨恵子『なぜか感じがいい人の聞き方 100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■引き寄せるのではなく、寄り添う
相手と意思疎通を図る方法に、「ペース&リード」というものがあります。
ペース(ペーシング)は相手に合わせることで、リード(リーディング)は相手を導くことです。
たとえば、教室の前で子どもたちが騒いでいたとして、「授業始まっているよ! 早く教室へ入りなさい!」と突然リードをしても、子どもたちは騒ぎ続けてなかなか教室に入りません。
しかし、ペーシングで、「なんか、楽しそうだね?」と子どもたちと一緒の目線で言ってから、「でも、もう授業が始まる時間だから、教室に入ろうね!」と言うと、子どもたちは素直に教室に入ります。
このように、先にペーシングで相手を安心させ、次にリーディング=導いていくのが「ペース&リード」の基本です。
徹底した相手目線がなければ、人は心を開きません。強引にこちらに引き寄せるのではなく、相手の立場に寄り添うのです。
話の聞き方も同様です。悩んで、元気なく話している相手に、「何? 元気ないじゃん! 大丈夫⁉」とハイテンションで話を聞くのはディスペーシング(=反同調行動)です。これでは、安心感は生まれません。
最終的に励まし、勇気づけるつもりでも、まずはペーシングで相手に心模様も仕草や雰囲気も合わせることが大切なのです。相手が心を開いていなければ、導くことができないからです。
元気のない相手には最初は「大丈夫? 話を聞くことぐらいしかできないけど、何でも話して」と落ち着いた雰囲気でペーシングします。
話を聞きながらラポール(=信頼関係)が十分できた、相手に少し元気が出てきたと感じたら、相手の表情を見ながら自分が少しずつ笑顔を増やしたり、声にハリを持たせるなど、リードしていくことが大切です。
いつも、ペーシングで相手の気持ちに寄り添って聞くことが先でなければ、こちらが何を伝えても相手に響かないのです。
■相手の利き感覚に合わせる
あなたの利き手は右手でしょうか? 左手でしょうか?
利き手があるように私たちには、利き足もあります。利き足は、普段、最初に踏み出す方、後ろから押されてとっさに前に出る方の足だと言われています。
では、なぜ私たちは手や足、目も2つあるのに、よく使うのは一方に偏っているのでしょうか?
それは、意識と無意識に関係しています。意識と無意識の割合は諸説ありますが、1:9などで無意識が優位です。
意識はいつも1つのことしか捉えることができません。だから、この本を読むという行動をとっていると、空調の音や座っている椅子の感覚を得ることができません。
では耳やお尻の感覚が麻痺していたかといえば、そうではありません。意識が文字を読むという1つのことに集中しているとき、他の五感で感じていることはすべて無意識に落ちていきます。
パソコンでできることはかなりたくさんありますが、エクセルで入力作業をしていると、裏でブラウザやワードを立ち上げることはできても、エクセルとワードの入力作業を同時にできないのと同じです。
だから、手や足が2つあっても、意識がどちらか1つしか捉えることができないので、偏った使い方になり、利き手、利き足、利き目が生まれるのです。
私たちは世界を、五感を使って理解しています。脳で理解していると考えがちですが、脳は五感がなければ機能しません。
たとえば映画館でも、映画がスクリーンに投影されなければ真っ暗なままであるように、脳も目を開けることで様々な視覚情報を得ることができるのです。
NLP心理学では五感を視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、身体感覚(Kinesthetic)の3つに分類し、代表システム(VAKモデル)と呼んでいます。
利き手があるように、人には使い慣れた利き感覚があります。その感覚を使って、外部情報を認識し、他者とコミュニケーションを取っているのです。
会話をする際に、意思疎通がスムーズに行われるかどうかは、どれぐらい相手の利き感覚に合わせているか(=ペーシングしているか)が影響します。
■自分の利き感覚を知る
先ほどご紹介したVAKモデルでは次の4つを観察することで、相手がどのような方法で脳内の情報にアクセスしているか知ることができます。
あなたの利き感覚は視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、身体感覚(Kinesthetic)の3つのうちどれにあてはまるでしょうか? ここで1つワークとして、VAKモデルの図で利き感覚のファーストチェックをしてみましょう。
目を閉じて「海」という言葉を聞くと、どんな五感が刺激されますか?
![海の美しい日の出](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/1200wm/img_a2d6af0210a41910cd1e1fa7410107ef478778.jpg)
② カモメの声や波の音など……聴覚Aタイプ
③ 海の水の冷たさや、日差しの強さなど……身体感覚Kタイプ
右利きでも、左手がまったく使えないわけではないように、最終的には視覚・聴覚・身体感覚すべての五感を使って海をイメージするのですが、一番に浮かんできたものや、強く感じたものが優位感覚である可能性が高いです。
自分の利き感覚をチェックしよう!
■早口で話が飛ぶ「視覚Vタイプ」
VAKモデルで視覚(Visual)が優位なVタイプは、頭の中で物事を映像で処理します。だから頭に思い浮かべる大量の視覚情報を相手に一気に伝えようと早口で話します。
私の分析では、タレントの明石家さんまさんはVタイプです。早口で視線が上向き、上体が反りぎみになり、高めの声で話します。頭の回転が速く、何かを考えるときは、視線が上の方を向いています。
Vタイプの人は、本でもパワーポイントでも文字だけのものより、イラストや写真、図などビジュアルがあるものを好みます。
レストランのメニューも、美味しそうな写真が決め手となり注文します。服などを買うときもデザインを重視することが多く、デザイン重視で買ったサンダルが、足に合わなくて履けないなんてこともあります。
Vタイプは早口なので、Vタイプの人の話を聞くときは相槌をテンポ良く打つこと、「この問題をどう見てますか?」などビジュアルをイメージさせる言葉を使うと、会話が盛り上がります。
頭の中の映像が次々に切り替わるために話が飛びやすいので、不明点は「こんな感じですか?」と自分のイメージと相違がないか確認すると良いでしょう。
また、何かを説明するときは、図や写真を見せながら説明するのが効果的です。文字ばかりで説明するより素早く理解してもらうことができます。
見晴らしが良い空間で話すと、Vタイプの人の気分が良くなり会話が弾みます。反対に、薄汚れたお店に誘うとテンションが下がってしまうので注意しましょう。
逆に、Vタイプの人が他のタイプの話を聞く際は、相槌が早くなりがちです。Kタイプなどの沈黙が長かったり、ゆっくり話すタイプには、ゆっくりと話したり、相槌を打つ工夫が必要です。
また、頭の回転が速いのも特徴ですが、相手の話を少し聞いただけで「はい、はい、こういうことね」とわかったつもりになってしまわないようにしましょう。
■雑音が苦手な「聴覚Aタイプ」
VAKモデルで、聴覚(Audicory)が優位なタイプは、物事を図形や感覚ではなく、言葉で論理的に考えます。
音を聞く耳の周りに意識が行きやすく、明瞭な声で、滑らかに話します。
私の分析では、タレントのタモリ(森田一義)さんはAタイプ。落ち着いた声で論理的にお話しされます。
Aタイプは、相手が話した言葉をそのまま繰り返すことが容易で、音楽を聴くことを好みます。30年以上続いた冠番組「笑っていいとも!」でも、タモリさんはゲストや共演者の言葉を正確に覚えておられました。また、ジャズをこよなく愛していることでも知られています。
Aタイプの人は言葉を大切にし、自問自答したり、独り言を言ったりします。講演会などで目を閉じて耳だけ傾けて聞く人はこのタイプです。オーディオ学習にも向いています。
Aタイプの知人には、セミナーに参加すると講師の話を逐語記録のようにすべて正確にメモする人もいます。レストランのメニューも説明書きをよく読んで決め、説明書きがないときは店員さんに「今日のおすすめは?」と聞いたりします。
![メニューについて、ウェイターに尋ねる客](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/1200wm/img_d1613f20cd309b2ef981c42abd6d74f4376514.jpg)
カフェなど人の話し声がうるさいところでは集中できないので、Aタイプの人と会話をする際は静かな環境を選びましょう。話を聞くときは、「この問題について説明してください」などと聴覚につながる言葉を使って聞くと理解してもらいやすくなります。
Aタイプの人は、論理的に言葉で物事を把握するので、質問する際は5W2Hなどを意識して聞きます。
また、Aタイプの人は、相手を理詰めで追い詰める聞き方をしてしまいがちなので、注意が必要です。
Kタイプなど、考えを言葉にするのが苦手な人やVタイプのようにイメージをどんどん伝えるために理路整然と話すのが苦手な人もいるということを知り、相手を追い詰めてしまわないように気をつけましょう。
話を聞く際には、相手をあまり見ずに真顔でメモを取る傾向があるので、アイコンタクトと笑顔を忘れないことも大切です。
考えすぎて、理屈っぽく、ノリが悪い印象を与えることがあるので、時には考えるよりも感じることを意識すると、コミュニケーションの幅が広がります。
■沈黙が必要な「身体感覚Kタイプ」
VAKモデルで身体感覚(Kinesthetic)が優位なKタイプは、物事を頭ではなく身体で感じ、比較的低めの声でゆっくり話します。
私の分析では、お笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃんは、Kタイプです。
目を下に向けゆっくり話されることが多いです。のちにボクシングを始められたのも、身体を動かして技術を習得するのが得意なタイプだからではと感じました。
Kタイプは質問しても、答えるまで長めの沈黙があることが多いのが特徴です。
では、なぜ答えるのに時間がかかるのでしょうか?
私はよく、セミナーで参加者に「砂糖の甘さを砂糖がない国の人に説明するならどう伝えますか?」と質問します。すると皆さんは、考え込んだ後「フルーツやハチミツなど、その国にある甘いものに似ていると説明する」と答えてくれます。
このように甘さなど身体で感じていることを言葉にするのは難しいのです。砂糖の甘さを理解するためには、実際に砂糖を舐めて味わうしかありません。
このように体で感じていること言葉にするのは難しいので、Kタイプは思ったことをすぐに言葉にできず、即答が苦手なのです。
以前の職場で、上司がKタイプの人の部下に矢継ぎ早に質問し、相手がすぐに答えないと、説明が足りないと思って、さらに話し続けるということをしていました。
しかし、Kタイプは、早口で多くのことを話されると情報処理が追いつかないので、言葉が出てくるまで待つことが重要です。
Kタイプにはゆっくりとしたペースの相槌や言葉がけが大切です。
![藤本梨恵子『なぜか感じがいい人の聞き方 100の習慣』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/1200wm/img_b05b811705ed451a26ac72133232845b123835.jpg)
また、沈黙も待ってあげることで相手の理解が進みます。さらにビジネスなら試食や試乗など、触ったり感覚として体験できるような提案が有効です。
Kタイプの人が話を聞く際には、早口の人に合わせて早く相槌などを打つと、相手が何を話しているかわからなくなることが多いです。
無理にスピードを相手に合わせるのではなく、相手が一番言いたいことは何かということに意識を合わせて、じっくり聞いていく方が、結果的に相手から好印象を持ってもらえます。
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ファイン・メンタルカラー研究所代表
NLP心理学を中心にコーチング、カウンセリング、マインドフル瞑想などの手法を習得し統合。その手法を生かし、キャリアカウンセラー・講師として独立。各企業・大学・公共機関の講演の登壇数は2000回を超え、婚活から就活まで相談者数は1万人を超えている。コーチング、パーソナルカラー、カラーセラピスト、骨格診断ファッションアナリスト等のプロ養成講座の卒業生は500人を超え、個人診断においては1000人を超える。著書に『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)などがある。
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(ファイン・メンタルカラー研究所代表 藤本 梨恵子)
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