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「いまの成績では来期の君の居場所はない」そう言われたときに傷つかずに切り返す"秀逸すぎるフレーズ"

プレジデントオンライン / 2023年3月30日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

感情的な人に上手く対応するにはどうすればいいか。心理コンサルタントの林恭弘さんは「『いまの成績では来期の君の居場所はない』と相手に自分本位の感情的な言葉をぶつけられても落ち込む必要はない。あなたも相手も傷つけないコミュニケーションは可能だ」という――。

※本稿は、林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■尊敬も信頼も得られない上司や先輩が放っている「悪臭」

素直でなければ、人間関係はうまくいきません。では、素直とはいったいどのような気持ちや状態なのでしょうか。

まず、そのことがわからない人のほうが多いはずです。

たとえば、あなたから見てまだ知識・技術ともに未熟な後輩がいるとします。彼に仕事を依頼しましたが、案の定あなたが期待をした結果は出ませんでした。彼は同じような内容の仕事を、今までに幾度か経験しているはずです。

イライラしたあなたは、「何度やったらできるようになるんだ! やる気はあるのか!」と思わず叫んでしまいます。

後輩は黙ってうつむいたままです。あなたに叱られたことにショックを受けているのか、反省しているのか、受け流しているだけなのか、固まったまま動きません。

その様子にあなたはさらに苛立ち、「ボーっとするな! わかってんのかよ!」と声を荒げてしまいました。そのあとは何とも言えない空気が職場に漂い、他のメンバーとあなた自身の間に後味の悪い思いが残ってしまいました。

さて、このときのあなたの素直な気持ちは何だったのでしょう。

①自分の思うように仕事ができない後輩がムカツク
②成果を上げないと、自分の評価が下がるかもしれないという不安
③くり返し指導をする時間的・精神的余裕がない焦り
④他のメンバーに迷惑がかかるかもしれないという心配
⑤いいチームワークで高い成果を出せる職場にするという、理想に近づかないことに対する焦り

もしかすると、①~⑤までの全部が、あなたの正直な気持ちかもしれませんね。

①の気持ちは、イライラした感情を後輩にぶつけ、攻撃することによって、憂さ晴らしをしています。

②の気持ちは、あなたの保身です。そんなとき、あなたのために「がんばろう」という人はまずいません。

もしこれら、①②の気持ちがあなたの腹の底にあるのなら、ただちに直したほうがいいでしょう。いくら素直な気持ちだからと言って、①や②の気持ちをそのまま伝えても、相手と関係がよくなることはありません。

これは職場の人間関係だけではなく、家族との関係や、それ以外のプライベートの関係もすべて含めて言えることです。

「感情の憂さ晴らし」「保身(メンツのため)」などが腹の底にあるとしたなら、必ずそれはあなたから漏れ出し、悪臭を放つことでしょう。

その悪臭は当然、相手の鼻をつくことになります。尊敬も信頼も得ることができない上司や先輩は、悪臭を放っています。「イヤーな臭い」がするのです。

■目的と目標がわかる「相手本位」の伝え方にする

③④⑤は素直な気持ちの中でも、個人的な感情の発散でもなければ、保身でもありません。

職場や他のメンバーに対する影響にまつわる、「相手本位」「仕事本位」の本音です。

次のように相手をフォローするのであれば、誰でも理解できて納得も得られます。

③「くり返し教えてあげられる余裕がなくて、申し訳なかったね。今回のことを活かして、ぜひ次回からはこの仕事を完璧に終わらせてね」

④「知っての通り、少人数で目標達成しなければならない状況だから、君にも大きな戦力になってほしい。他のメンバーの負担を少しでも減らして、みんなが活躍できるようにしたいんだ」

⑤「いいチームワークで最高の仕事をつくっていきたいんだ。まだまだ不慣れかもしれないけれど、もちろん君もその大切なメンバーのひとりだ。期待しているから、頼んだよ」

そして、こういうフォローも考えられるでしょう。

⑥「わからなければいつでも質問してね。そうじゃないと、君が困ることになるからね。そのかわりメモをしっかりとって、一回でマスターしてね」

少し照れくさくて、こそばゆい感じがしますか。

でもこの、③~⑥があなたの正直な気持ちであれば伝えるべきでしょう。

あなたが、

・何を感じているのか
・何を心配しているのか
・何を目指そうとしているのか
・相手をどのように見ているのか

これらを伝えない限りは、どれだけ怒鳴りつけても何の変化も期待できないでしょう。

しかもその内容は、仕事本位で公平で、相手を尊重していなければ納得は得られません。

しかし、このような会話をしたからといって、完全に問題が解決するわけではなく、そのあとも、何度でも話さなければならないこともあります。

“人育ての達人”と言われた、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助は、こんなことを言っています。

「ええか、何回も何回も同じことを言うんやで。何回も何回もやで。何回も何回も同じことを言うんや……」

相手のDNAに刻み込むような気持ちを持って伝えるのです。

■自分が傷つかずに「感情的な人」と接する方法

さて、次に問題になるのが、相手があなたに自分本位の感情的な言葉をぶつけてきたときにはどう対処するのかということです。

たとえば、

①「おい、いつまで1つの仕事にかかってるんだよ! ダラダラ仕事をするな」
②「このままの成績では、来期の君の居場所がここにはなくなるかもしれないと心配しているんだよ」

など、明らかにイライラの感情の発散や、「君のため」と言いながらも自己保身から発せられる言葉への対処方法を考えてみましょう。

このような攻撃や自己保身から出てくる言葉をまともに受けると誰でも傷つきます。

しかし、ここで腹を立てたり、落ち込んだりしてしまうと、「やっぱり自分はダメなんだ」という、私はOKではないというスタンスに陥ってしまいます。あるいは「あの人は自分本位なずるい人だ」という、相手はOKではないスタンスを固めてしまいます。

これらのOKではないというスタンスは、落ち込みと苛立ちという、いずれにしてもあなたを苦しめる結果になります。

そこで、こんな返事をしてみてはどうでしょうか。

①「テクニカルなトラブルで時間を要してしまいました。予定より遅れて申し訳ありません。最短で仕上げるように努力します」
②「ご心配いただきありがとうございます。来期の成果を達成できるように精一杯努めます。そこでなのですが、成果を上げられるようなトレーニングを受けさせていただけないでしょうか」

というように、詫びながらも言いたいことを主張するのです。あるいは、相手に感謝し自分の非を認めつつ、自分が成長するための援助を正当にお願いしてみることです。

これらの言動には、あなたと相手に対して「OKである」あるいは、「OKになるために」というスタンスが背景にありますから、落ち込みや苛立ちの感情からあなた自身を守ることができます。

それでも、「自分本位の言葉」をぶつけてくる人は後を絶ちませんが、「私はOKである」というスタンスを保ち言動することによって、相手に謝るにしても、感謝するにしても、また提案や自己主張をするにしても、あなたも相手も傷つけないコミュニケーションが可能になります。

■観察すると心を開くキー・ポイントが見える

コミュニケーションの意識を自分本位から相手本位に切り替えると、「丁寧に伝え」「慎重に聴き」「確認をとる」ことになり、お互いの関係が大きく改善されます。

相手を観察する機会が大幅に増え、今までは見えなかった、相手の心を開くキー・ポイントが見えてくるようになるのです。

鍵で心の扉を開く女性のシュールな瞬間
写真=iStock.com/fcscafeine
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcscafeine

相手本位という意識ですから、

・いつ話しかけると、一番集中して聞いてくれるか
・どのような表情やしぐさで聞けば、相手が話しやすいか
・どんなことを言われたら嫌がるのか
・どんなことを言われたら喜ぶのか

ということもわかるようになってきます。

■自分の常識は他人に通用しない

私たちは、コミュニケーションを自分本位に捉えがちです。

「言ったじゃないか!」「そんなことは聞いていません」というやりとりが象徴しています。あなたもこのように言われたことがあるのではないでしょうか。あるいは、あなたも使う言葉かもしれません。

「言ったじゃないか!」という言葉の裏には「自分の言ったことは絶対に相手が聞いていて、理解し納得しているはずだ」という気持ちがあるかもしれません。これはまったくの自分本位です。

「そんなことは聞いていません」というのは「聞いていないんだから、こちらに責任なんてない。どうせ言ったつもりでいるだけで、言い忘れたのだろう」と伝えたいのでしょう。これもやはり自分本位です。

自分本位の人たちのコミュニケーションは不安定で、人間関係のトラブルを起こしやすいものです。コミュニケーションは、相手本位でなければ気持ちのいい人間関係を築くことはできません。

トラブルが起こったときは、相手のせいにして責任をなすりつけるのではなく、「自分の言ったことを、彼が(彼女が)理解できていたか」という視点が不可欠です。

「そんなこと聞いていません」と、責任逃れするのではなく、「相手が言ったことを、うわの空で聞けていなかったのかもしれない」という視点です。

そんなときは感情的になって反発するのではなく、「では、もう一度聞かせてください」と素直に言えばいいのです。

■本音で付き合える「いい空気」のつくり方

あなたが疲れない人間関係をつくっていくためには、相手が今どのような状態で、どのような心境なのかということを考えながら対応することもポイントとなります。これをすることで、コミュニケーションがうまくいき自分も楽になります。

たとえば、せっかちな人やいつも忙しく動き回っている人であれば、同じことをくり返し説明したくないはずですから、

・メモをとりながら話を聞く
・重要と感じたポイントは、相手の言った言葉を一部くり返して確認をとる

など、相手が安心し心地よく感じるであろう対応をとることです。これらはすなわち、相手に安心感を与えるということです。

相手本位の目で見て、よく観察していくと、不思議なことに、呼吸の速さ(リズム)が同調してきます。そして、話す速度、声のトーン、姿勢、仕草なども同調してきます。これらは、心理カウンセラーがカウンセリングで意識的に使う「ペーシング」という手法です。

人間は「同じもの、似たものに安心感を持ち、心を開く」という性質を持っています。短い時間で、安心感と信頼感をつくるには大変効果的な手法です。

相手本位の目で、相手や周囲を見てみると、違う世界が見えてくるかもしれません。そしてそれは苦手な相手の心を開くキー・ポイントでもあるのです。

■攻撃的な人や苦手な人にこそ「あなたは優秀」というメッセージ

私たち人間は、誰でも本質的には「自尊心」を持った動物です。それは前に触れた自我と密接な関係があります。どんなに幼い子どもでもお年寄りでも、生きている限り自分のことが大切なのです。

自己嫌悪に陥り、「自分のことなんて大きらい!」と感じている人も、自分のことが大切なのです。「自分のことなんてどうでもいい」と思っているなら、自己嫌悪になりはしないからです。

また、自尊心を満たしてくれる人には好意的に接するものです。これを心理学で返報性の法則といい、好意を受けると、同じように返したくなるのです。

ですから、攻撃的な人や苦手な人にこそ「あなたが優秀で、すばらしいところを持っていることを私は知っていますよ」というメッセージをさりげなく伝えてみることです。感情的な人でも、自分のよさを認め尊重してくれる人には否定的な態度をとらないものです。

オフィスで手をたたくアジアのビジネスグループ
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

この、「自分は尊い存在である」という感覚が持てるからこそ、より一層成長しようという気持ちも生まれます。

これらのことは上司から部下、大人から子どもといった、上から下へのコミュニケーションだけではなく、下から上へのコミュニケーションにおいても大切です。

部下が上司の優れているところ、感謝しているところを伝える。子どもが親に対して感謝の気持ちを伝えるような場面です。

「そんな、ゴマをするようなことはできない」と思いますか?

「ゴマをする」とは、うまく接することによって自分にメリットのある人だけによく思われるような態度をとることです。年齢や立場に関係なく、誰にでも尊重する態度をとれば「ゴマをする」ことにはならないものです。

■最高のほめ言葉を言える人は強い

余談になりますが、映画監督の山田洋次氏がインタビューに答えていた言葉が印象的でした。彼は演技に関して大変こだわりを持ち、出演者に対してとても厳しい要求を出すことで有名な監督です。

彼は「どんなことを大切に考えながら、演技指導をするのですか?」という問いに対して、

「どこでほめようか、いつも考えています」

と答えているのです。この言葉には、雷に打たれたようなインパクトがありました。

厳しい要求を出す中でも、彼は「この俳優はどこがすばらしいのか」「あの女優は、どの表情が一番きれいに映るのか」「どのように自分が関われば、さらにすばらしさを引き出すことができるのか」を、常に考えているわけです。

もちろん、監督は、そう易々とはほめません。おそらくは、一本の映画を撮る膨大な行程の中で、たった一度か二度ほどなのでしょう。

林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)
林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)

しかし、その瞬間のひと言は、心の込もったひと言であり、俳優が最も自信を持てる表現で伝えられるのだと思います。

簡単にペラペラとほめろとは言いません。ほめるにしても、叱るにしても、その相手に対して尊重と愛情、未来への期待がなければ、どのような言葉をかけようが無意味なのです。

「どこでほめようか、いつも考える」ことは、尊重と愛情、未来への期待の表れです。

そのため、叱ったときにもその真意が相手には伝わります。

そして、ほめるのは1年に1回になったとしても、それでいいのです。その瞬間は、一番その相手が輝く言葉で、最高のタイミングで紡ぎだされる「ひと言」になるはずです。

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林 恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング代表取締役
日本ビジネス心理学会参与。心理コンサルタント。日本メンタルヘルス協会特別講師。幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントの分野まで講演・研修会、セミナー、著作などにて幅広く活動。「活力ある社会と、優しい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに使える心理学を紹介する。

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(ビジネス心理コンサルティング代表取締役 林 恭弘)

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