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ヨソから来た高給待遇の転職者がガンガン出世…"30代前半で1000万円超もザラ"で生え抜き社員の顔面蒼白

プレジデントオンライン / 2023年3月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/frema

活況を呈している転職者市場。転職者の待遇面に異変が起きている。ジャーナリストの溝上憲文さんは「受け入れる企業はこれまでは既存社員との給与を調整するため、同世代社員の平均的給与か『中の下』からスタートするのが一般的だった。ところが近年は、既存社員より破格の待遇で転職する人が増えている」という――。

■企業が中途採用に積極だが3分の2は給与が上がらない

転職市場が活況を呈している。

DODAの「転職求人倍率レポート」によると、2023年1月の求人倍率は2.34倍。求人数は2020年9月から29カ月連続で増加し、過去最高値を更新している。転職希望者数も2021年12月以降、増加基調にあり、転職意欲も高まっている。

企業の中途採用意欲も高い。日立製作所の2024年度の中途採用は、大卒・大学院生の新卒600人と同数の採用を計画していると報じられている。これは前年の中途採用数を100人上回る。

大手食品業の人事部長も「中途を積極的に採用している。10年前は生え抜きの社員が圧倒的に多かったが、今では中途採用者が2~3割を占めるようになっている。しかも若手に限らず、35歳以上、40歳前後のミドルもけっこう採用している」と語る。

昔は大企業から中小企業に転職する人が多かったが、今では大企業から大企業への転職もごく普通の光景になっている。

実際にミドルの転職も増加している。日本人材紹介事業協会の「人材紹介大手3社転職紹介実績の集計結果」によると、全年齢に占める41歳以上の割合は2009年度6%にすぎなかったが、22年度上半期は15%にまで上昇している。

ミドル・シニア世代も含めて年齢に関係なく転職できるようになったことは喜ばしいことだが、必ずしも前職よりも年収が上がるわけではない。厚生労働省の2021年「雇用動向調査結果」によると、賃金が増加した人は34.6%にすぎない。むしろ下がった人は35.2%、変わらない人も29.0%もいる。多くの人が、下がるか現状維持にとどまっている。

また、転職者を受け入れる企業は既存の社員との給与を調整する必要があり、同世代社員の平均的給与ないしは「中の下」あたりからスタートするのが一般的だ。

しかし、近年は既存社員より破格の待遇で転職する人が徐々に増えている。大手建設業の人事担当者がこう明かす。

「社内の人間が持っていないスキル、あるいは持っている社員が少ないスキルの持ち主を特別枠で募集している。一般の求人広告や転職サイトでも募集しているが、その多くは建築や営業などの補充要員だ。特別枠の募集職種の典型はDX人材で、スキルレベルで給与を決めているが、場合によっては同世代の年収を大きく超えることもある。特にIT人材はそれほど経験がなくても1000万円以上を要求してくることもある」

■30代で課長クラスの年収1000万円超の待遇も

実際に30代でも1000万円超の年収を払い、迎え入れているケースもあるという。しかし、年収1000万円は同社の課長クラスの年収に相当する。

既存社員との整合性はどう図っているのかと聞くと、「当社の給与規程の中に入れるのではなく、入社1年目は年俸制社員として1000万円超を支払う。また、1年間働いてもらい、2年目で期待する成果を発揮しているかを評価し、課長になってもらうことを事前に内諾を得て入社してもらう」(人事担当者)と言う。

とはいっても30代半ばで年収1200万円というのは在籍社員の年収を大きく上回る。既存の社員の嫉妬や妬みなど社員間でハレーションは発生しないのか。

この大手建設会社の人事担当者は「新規のプロジェクトの部署に配置するなど、既存の部署で働くことはないのでハレーションが起こることはない」と語る。

転職者を好待遇で迎えるのは同社だけではない。前出の食品業の人事部長は「従来の年功賃金を廃止し、いわゆるジョブ型の賃金に変えたので、当社にいないスキルを持っていれば年齢に関係なく高い給与で処遇することができるようになった。例えばDX人材は課長や部長並みの給与で迎え入れている」と語る。

複数の1万円札
写真=iStock.com/fatido
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fatido

実際に破格の待遇で迎え入れている企業は多いのか。人材紹介業大手ジェイエイシーリクルートメントの黒澤敏浩プリンシパルアナリストに聞くと……。

「他の社員と違う支払い方をしている特別採用枠を設けている企業はそれほど多くはないが、現行の給与制度の枠内で高い等級の給与を出すところもあれば、給与の高い役職で迎え入れるケースはよくある。あるいは外資系企業のようにジョブ型の仕組みを導入している企業は特別枠を設けなくても、高いスキルを持っていれば、高いポジションに位置づけて多く支払っているケースもある」

それでも普通のメーカーで30代前半に年収1000万円を出すとなると、うらやむ社員も出てくるかもしれない。黒澤氏は「工夫の一つとして会社や職場を分けているところもある。新規事業や戦略的な子会社をつくり、高い給与の社員を集める。あるいは社内に別の部署をつくり、お互いに顔を合わせない場所で仕事をするようにしている企業もよくある」と語る。

では好待遇で迎え入れる社員はどんなスキルの持ち主なのか。代表格はIT・デジタル人材だ。

■営業マンもITに強い人材は高給与で迎えられる

「普通の人は400万~1500万円、高い人は2000万~2500万円。普通の人というのは特にマネジメントを行っているわけでもなく、著しく希少な人材というわけでもない人で、けっこうな額で転職していくことがこの業界の転職市場の特徴です。あるいは大規模なシステム開発のプロジェクトマネージャーができる人は2000万円台でも全然珍しくない」(黒澤氏)

一般的な大手メーカーの場合、35歳の非管理職だと年収600万円程度が相場だ。また、課長で800万~900万円、部長で1000万円超になる。まさに部長並みの待遇で転職することになる。

IT系やデジタル人材以外の職種はどうなのか。

たとえば営業職では、旧来型の個人向けの営業職は「経験者が多く、手数料が発生する人材紹介会社経由での採用は多くはない。雇っても実際に売れるのかわからないところもあり、一人ひとりにお金をかけるより、とりあえず採用して売れる人を残そうという発想が大きいのではないか」(黒澤氏)という。

ただし、同じ営業系でもメールやWeb会議ツールを使って非対面の営業を行うインサイドセールス、ネット上で商品を販売するデジタルマーケティング、クラウド上のソフトをネット経由で利用するSaaSの営業は別格だ。

タブレット端末に入力中の手元
写真=iStock.com/miniseries
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miniseries

年収相場は以下の通りだ。

・インサイドセールス 400万~900万円
・デジタルマーケティング 600万~1200万円、高い人は1500万~2000万円
・SaaSの営業 800万~1500万円

「インサイドセールスができる人は、これまで待遇が良くなかった人が転職すると、若手でも年収が一気に200万円アップしたという話をよく聞く。デジタルマーケティングの経験者になぜ高い金額を払えるかといえば、従来は紙媒体など昔ながらの広告を出稿しても売り上げとの関係は間接的にしか把握できなかった。デジタルマーケティングは、クリック数がどれだけあり、売り上げなどの成果が明確にわかる。成果が明確であれば高い金額を払っても見合う」(黒澤氏)

もちろん営業系に限らない。大手エネルギー企業の元人事部長は「新エネルギーの開発に着手しており、風力発電や太陽光発電の経験者を積極的に採用している。転職者をいきなり、課長や部長に抜擢するケースもある」と言う。

以前は転職しても生え抜きのプロパー社員と比べて昇進・昇格するのは不利と言われたので、時代は確実に変化していることがわかる。

前出の建設業の人事担当者は「一般の求人募集で非管理職の担当者レベルで中途採用された人は、プロパーの社員と出世競争をすることになるが、著しい成果を出すなど、よほどのパワーがないと出世をするのは難しいのが現実だ。それに対して今の会社にとって希少価値のスキルを持つ人は、同じ年代でも最初から“課長含み”でくるので出世も早い」と語る。

前出の食品業の人事部長も「中途採用者の2割は高い処遇と役職が約束されて入ってくる。40歳で“部長含み”で来た人もいるが、将来は役員も夢ではない」と語る。

同じ転職者でも冒頭に述べたように給与が下がる人もいる反面、高い報酬と役職も約束される人もいる。転職の二極化傾向が拡大している。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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