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不満を我慢すると「怒りの感情」になる…心理コンサルが"言わないで我慢"は絶対NGという理由

プレジデントオンライン / 2023年3月31日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yanguolin

身近な人に不満を感じたとき、どう対応するのがいいか。心理コンサルタントの林恭弘さんは「言わないで我慢しても『怒りの感情』になりストレスは蓄積されていく。『非難』ではなく『期待』を込めて伝えることだ」という――。

※本稿は、林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■価値観も信念も毎日リセットする「当たり前」は人によって違う

私たちは人間関係のトラブルや悩みにおいて、「価値観の違い」を大きな問題として考えています。

しかし、そもそも、「価値観」とは何なのでしょうか。そして「価値観の違い」は、越えがたい大きな壁なのでしょうか。

価値観とは、「これが当たり前」という観念であり、物事の軽重を測る物差しであり、私たちが生きていくうえで重要な判断を下す基準のようなものです。

たとえば、どのくらいの収入があればよしとするのか。あるいは、どのくらいの預貯金があれば十分とするのか、という「金銭」にまつわる価値観。または、どの学校に入学し、学士・修士・博士まで目指すのか、という「学歴」「教育」にまつわる価値観。

仕事を食べていくための手段と捉えるのか、それだけではなく人生における大切な役割として向き合っていくのか、という「仕事」にまつわる価値観などです。

そのほかにも、「時間」「家族関係」「友人関係」「食」「宗教」など、日々の生活をしていくうえで、判断や決定をするための基準としているさまざまな価値観があります。

これらの価値観が違っているために、対立や争いなどの人間関係におけるトラブルが発生しています。

離婚の原因は「価値観の違い」が常に上位です。親子関係がうまくいかないのも、「価値観の違い」でしょう。部下や上司との関係における悩みは、「世代間における価値観の違い」が多いものです。

■人間はすぐ支配されてしまう

では「価値観」が、どのようにつくられていくのかを考えてみましょう。

破壊的なカルト宗教団体では、メンバーの意思統一を図るために“マインド・コントロール”を行います。

マインド・コントロールというと、催眠にかけるようなものだと勘違いしている人が多いようですが、そうではありません。実は“情報操作”なのです。

オウム真理教の事件で知られるようになりましたが、信者と言われた人たちは教団施設で修行をし、見事なまでにマインド・コントロールされ、意思と情報が統一されていたのです。

彼らは施設内の教団員としか話せません。家族や友人が面会に来ても、一切会うことができません。そしてテレビ・ラジオ・新聞などのメディアにも、一切触れられないのです。そのうえで、教団にとって都合のいい情報だけは、どんどん与えられていくわけです。

この手法で、少なくとも2週間も経てば、教団を完全に信じ込み、1カ月経てば見事にマインド・コントロールされて、自分の意志では脱出することが不可能になります。情報が偏ることで、私たち人間の考え方や価値観、意思などは簡単に揺らいでしまうのです。

■自分の価値観が正しいと思わない一緒にハッピーになる

価値観が正しいか間違っているかは、短い時間で判断できるものではありません。

今は非常識なことでも、5年経てば常識になることなんていくらでもあります。個人も人間的に成長することで、自然に価値観は変化していきます。

大切なことは「自分の価値観は正しい」と思わないことです。自分の持っている価値観や信念は、毎朝リセットして生活をスタートするのです。

たまには自分の価値観や状況を俯瞰してみてください。

自我の囚われからちょっと抜け出て、自分にメリットがなくても友人が心から楽しんでくれることは何だろうと考えてみる。

自分の立場を守ることよりも、チームにとって今必要なことは何だろうと考えてみる。

自分の意見を押し付けるよりも、家族が幸せになるために、今大切なことは何だろうと考えてみる。

このような意識から出てきた価値観や意見を他人に伝えることができれば、多くの人が納得し、協力も惜しまないでしょう。

「嫌われないように」という意識で起こす行動と、「人に喜んでもらい、自分も一緒にハッピーになりたい」という意識で起こす行動は違います。

前者は、自我に囚われることで自分を犠牲にし、他人目線で人に尽くす言動が自分自身を苦しめている状態です。

後者は、他人の表面的な言動に振り回されず、自分の意思で人が本当に喜ぶことを考えている状態なのです。

そして、後者の視点にたどりついたとき、人づきあいで疲れない自分となり、心から自分の幸せを実感できるのです。

■まず「楽しむ方法」を考える

この世の中には、「どうしようもない」ことがたくさんあります。「どうしようもない」というのは、「自分の希望や期待通りにならない」という意味です。

雨が降ってほしくないと思っても、自然は平気で雨を降らします。年老いたくないと願っても、髪が抜けるわ、シワはよるわ、シミだらけになるわ……。

そして、これらのどうしようもないことを、「どうにかしよう」というところから悩みが生まれるのです。

この世の出来事は、あなたに意地悪をしてやろうとか、特別に苦しめてやろう、などという意識を持って起きているわけではなく、ただ現象をもたらしているにすぎません。

なんとかしようなどと思わずに、ありのままを受け入れ、そのことをいかに楽しむかを考えることで、人間が抱えるたいていの悩みは解決します。

しかしながら、この自然界で唯一、特異な存在があります。

それは人間の持つ“自我”です。この自我だけは、ありのままに放置して、好き勝手にやらせると暴走するのです。

そこで、教育が必要になるわけです。教育という「しつけ」を通じて、していいこと、悪いことを身につけ、暴走しないようにするのです。

道徳や倫理を通して、目先の利益を追うだけではなく、他人を助ける喜びや大きなレベルにおいて自分の幸福が広がることを学んでいくのです。

しかし、学んでも、学んでも、そう簡単には自我の囚われから脱することはできません。自分のことを一番に考え、自分の利益を企て、思うままに物事を押し通そうとし、保身に走ります。それが、人間という未熟で未完成な存在です。

自分も含めて「未熟な存在」同士が関わることで人生はつくられ、また彩られていくのです。

■今すぐに解決したいと思わない

あなたがこの本を手にとった理由は、周囲の人と関わっていく中で、あなた自身があるがままではいけないと思ったからでしょう。

自分が変わり、相手を変え、成長することで現状を乗り越えていきたいと思ったからでしょう。

しかしながら、このような本や、さらにすぐれた書籍を読んだとしても、たちどころに問題が解決するわけではありません。人間の成長とは、ゆるやかなものです。

輝く砂のガラス砂時計
写真=iStock.com/Zffoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zffoto

目に見えて確認できるようなものでもありません。そして、学ぼうとするあなたよりずっと後に、苦手な相手の変化や成長はついてくるものです。

「時間薬」という言葉があります。

これは、「時間が経てば、傷(病)はよくなる」という解釈もできれば、「今すぐにできることはなく、ただ待つ以外にはない」という意味もあるのだと思います。

人間関係のもつれやトラブル、悩みなどは「すぐに解決したい」と願うほどつらいものです。

何とか早く、自分が変わり相手との化学反応を変えたくなるでしょう。

しかし、その化学反応は、物質の変化ほど早くはありません。こちらがジワジワ変わることで、相手も遅れてジワジワ変化し、時間をかけて反応自体が変化するのです。

それまでは、急いでもどうしようもないのです。焦っても仕方がないのです。それはそんなもので、しゃあないのですから。それは、そんなものだと、「あきらかにみとめる」しかないのです。

■気がつくと自分は変わっている

「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」という、仏教によって伝えられた言葉があります。

たとえ人間関係においてつらくても、苦しくても、イライラ・ムカムカしても、「相手を何とか変えよう」とすれば、相手は自我の暴走により思わぬ変化を起こし、あなたとの関係はより深刻なものになります。

あなたを疲れさせる苦手な相手や関係性がすぐ変わらなくても、しゃあないのです。

あなた自身が少しずつでも、どれだけ時間がかかっても、自らが変化・成長していこうとする姿勢と行動が、相手との化学反応に確実に影響を及ぼすのです。

■我慢する人の心理

身近な人に不満を感じることは、あると思います。

たとえば、

・職場で同僚や後輩がテキパキと仕事をしないのでイライラする。
・恋人がいつも約束の時間に遅れてくる。
・趣味のサークルの仲間が何かと面倒なことを押し付けてくる。

このように相手の言葉や行動に不満を感じたとき、あなたは不満を伝えますか?

それとも我慢しますか?

不満の内容にもよりますが、たいていの人は、「言わないで我慢する」ようです。

不満をすぐに伝えない人には、2つのタイプがあります。

1つは、最終的に攻撃的な言葉で怒りを爆発させてしまうタイプと、もう1つが、イライラを募らせ相手を見切ってしまうタイプです。

まず、「最終的に攻撃的な言葉で怒りを爆発させてしまうタイプ」です。

不満をすぐに伝えない理由は、「不満だ! なんて言うと関係がギクシャクする」

「言うと相手に嫌われてしまうかもしれない」と考えるからです。

つまり人間関係がうまくいかなくなることを心配しているのです。

しかし、不満を「我慢」しても、「消えてなくなる」わけではありません。いつまでたってもスッキリしませんし、ストレスがたまります。

カウンセリングの世界では、人が相手に不満を伝えるということは、「最後通告(最後の要求をし、相手が受け入れなければ、平和的な交渉を打ち切る宣言)」に近いと言われています。

不満を我慢して、我慢して、それでもまだ我慢して……、ついに限界が来たときにぶちまけるので、「怒りの感情」として、一気に相手へ飛んでいきます。溜めに溜めた不満ですから、そのときの不満だけでなく、過去のうっぷんも一気に出てきます。

「それを言っちゃおしまいよ」という「最後通告」とは、このことです。

表面的には穏やかで、何事もないように見えるのですが、我慢して抑え込むたびに、心の中で相手に対する怒りや攻撃性が蓄積されていくのです(受動的攻撃性)。

次に、「イライラを募らせ相手を見切ってしまうタイプ」です。

親子や夫婦、恋人などの、より甘えられる人間関係では、他の人に対してよりも不満を言いやすいかもしれません。すると、いつも「売り言葉に買い言葉」となり、相手との「勝負」になりがちです。

言えば言うほど嫌な感情を抱え、疲れ果ててしまうでしょう。

そして、「もう、言ってもムダ!」とレッテルを貼り、あきらめる人が多いのです。

でも、完全にあきらめきれるわけはなく、いつもイライラしています(現実からの逃避)。これでは、当面のストレスから逃げているだけなので、完全に満たされることはありません。

いかがでしょうか?

あなたはこのどちらかに当てはまりませんか?

■相手をやっつけてしまう人の心理不満は伝染していく

不満を感じると、その不満を相手に伝える人がいます。

不満の気持ちは、伝えれば伝えるほど、相手との関係がギクシャクしてしまいます(先ほどの「イライラを募らせ相手を見切ってしまうタイプ」と重複するところもあります)。

外のカフェで日本の10代の少女。
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

こういう事例を紹介しましょう。

男性が部屋で本を読んでいます。

この本は、友人がずいぶん前に貸してくれたものです。

明日、その友人と会う約束をしたことで、本を借りていたことを思い出したのです。

「今日中にこの本を読んで、明日会ったときに返そう。せめて感想ぐらい言えないと、せっかく貸してくれた友だちに悪いしなぁ」

しかし、同じ部屋で男性の弟が大きなボリュームで音楽を聴いているため、気持ちよく読書ができません。

男性はしばらく我慢していたのですが、ついイライラして、次のように言ってしまいました。

さあ、あなたならこの不満をどう相手に伝えますか?

「うるさい!」
「消せよ!」
「ボリュームを下げろよ」
「あっちで聴けよ」
「ヘッドホンぐらいつけろよ」

いかがですか?

あなたは不満を感じたとき、どのように相手に伝えますか?

これらの言い方のどれかに当てはまりますか?

それとも、自分が部屋から出ていきますか?

「自分が部屋から出ていく」のも1つの方法ですが、「仕方なしに自分が動く」のでは我慢していることと同じになり、解決にはなりません。

■やっつけられてしまった人の心理

先ほどの例の男性は、弟を「非難する」ような言い方をしました。

こういった場合、相手はどんな反応をして、どんな感情を持つでしょうか?

筑波大学で行われた実験結果では、ほとんどの場合、言われた相手は「嫌な感じがした」「自分勝手だ」「腹が立った」という感想とともに「反発心」を持ち、不愉快になることがわかりました。

では、相手がなぜ不愉快になったのか、その理由を考えてみましょう。

理由①男性が「本を読みたい」のと同じように、弟も「音楽を聴きたい」。

理由②「困っている」のは男性だけで、弟は困っていない。

理由③弟は男性を「困らせよう」とわざとやっているわけではなく、男性が困っていることすら「知らずに」音楽を聴いている。

理由④男性は、ほぼ一方的に、責めるような言い方をしている。

理由⑤男性はどうして音楽を消してほしいのか、あるいはボリュームを下げてほしいのか理由を話してもいない。

これら5つの理由を合わせて考えてみると、弟は、男性が「伝えた言葉(内容)」に「納得」していないことがわかります。

人は納得すれば快く動けるものですが、納得しないまま「動かされる」と、反発します。

どうでしょうか? これらの言い方では、弟は納得しそうにありませんね。

もちろん、男性の言い分もわかります。

「そのくらい、いちいち言わなくても、わかって当然だ!」という気持ちでしょう。

しかし、男性の考え方のベースとなっているのは、またもや「わたしは正しい。相手は間違っている」ではないでしょうか?

男性と同じように、弟にも「やりたいことがある」のです。

■非難の言葉を浴びせてしまう人の心理

「わたしは、自分の意見を素直に伝えます」という人たちの話をよく聴いてみると、たいていは、弟に強く言ってしまった男性のような、相手を非難する言い方なのです。つまり、自分の事情は何1つ伝えず、「相手のこと」だけ指摘しています。

その言葉の裏に隠れている意味は、次のようなことでしょう。

「あなたが悪い」
「あなたはわかっていない」
「あなたは迷惑な人」
「あなたのやり方は間違っている」
「あなたは変わるべきだ」

このように「相手を非難する」メッセージを伝えると、周囲の人は心を閉ざしてしまいます。

不満を相手に伝えると、「人間関係がギクシャクするかもしれない」「嫌われてしまうかもしれない」と心配する人は、「不満を相手に伝える」=「相手を非難する」ことだと思っているからではないでしょうか?

■素直な人は相手への期待を伝えている

人は一人一人が違う存在です。感じ方が違う、考え方が違う、やりたいことも違うのです。ですから、人が人に対して不満を持つのは当然です。人は「思い通りにいかない」ときに不満を持ちます。これ自体は悪いことではありません。

実業家ミーティングには、金融地区の建物
写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

誰かに不満を感じるときには、必ず、その相手に対する「期待」があります。

期待をしていない人には、不満を感じないものですから。

「わかってくれるはず」と思っていたのに、わかってくれないから「不満」を感じます。

「やってくれるはず」と思っていたのに、やってくれなかったから「不満」を感じるのです。「優しくしてほしい」という期待があるから、優しさを感じられなかったときに「不満」を感じます。

先日、とある駅の構内を歩いていると、カップルの会話が耳に飛び込んできました。デートの待ち合わせに、彼が遅れてきたようでした。

林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)
林恭弘『「落ち込みグセ」をなおす練習』(総合法令出版)

彼女が、

「もう! どうして時間ぐらい守れないの? よくそれで仕事ができるわね!」と声をあげました。痛烈に相手を非難するセリフです。彼女は、かなりの不満を感じていたようです。

おそらく彼女が彼に抱いていた「期待」は、「二人の時間を大切にしてほしい」、「わたしのことを大切にしてほしい」ということでしょう。

自分が抱いている期待をそのまま素直に言葉にして伝えられたら、相手も素直に聞いてくれるでしょう。ただ、人はどうしてもそのときの状況や気持ちのまま感情的になってしまいます。その感情に任せて「期待」ではなく「不満」を言ってしまうのです。

期待を素直に伝えられたら、ストレスも少なく、気持ちのいい人間関係がつくれるのです。

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林 恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング代表取締役
日本ビジネス心理学会参与。心理コンサルタント。日本メンタルヘルス協会特別講師。幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントの分野まで講演・研修会、セミナー、著作などにて幅広く活動。「活力ある社会と、優しい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに使える心理学を紹介する。

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(ビジネス心理コンサルティング代表取締役 林 恭弘)

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