あなたはメールの送受信の仕組みを説明できるか…大学入学共通テストの新科目「情報I」で問われること
プレジデントオンライン / 2023年4月5日 17時15分
※本稿は、藤原進之介『学校で習っていなくても読んで理解できる 藤原進之介のゼロから始める情報I』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■2025年から東大受験で「情報I」が必須科目に
大学入試においてセンター試験が「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)に変わったことを知っている方は多いでしょう。
さらに2025年1月に実施される共通テストでは、新しく「情報I」という科目が追加されます。しかも、ただ追加されるだけでなく、東京大学をはじめとするほぼすべての国公立大学が「情報I」を共通テストの入試科目に課すことを発表しています。
つまり、2025年以降に入学する大学生の多くが「情報I」という科目を、大学に合格するために徹底的に勉強するというわけです(※)。
そして、4年後には彼らが新卒社会人として社会に出てきます。新卒社会人を受け入れる側の我々としては、2029年以降の新卒社会人が従来の英国数理社という5教科に加えて「情報I」を、学校で習っただけでなく大学入試の受験科目として徹底的に勉強しているということを認識しておく必要があるでしょう。
(※)「情報I」の前身の科目として「社会と情報」と「情報の科学」があって、2024年以前に入学した大学生はこの2科目のうち少なくとも1科目は高等学校で履修しますが、この2科目が大学入試で課されることはありませんでした。
■「情報I」=「プログラミングを学ぶ科目」ではない
小学校から「プログラミング教育」が行われていることはご存じでしょうか。「プログラミング教育」とは、コンピュータが情報を処理するためのプログラムを設計し、論理的な思考力・創造力を身につけることを目的とした教育で、2020年度から小学校、2021年度から中学校、2022年度から高等学校で必修化されています。
このような教育が行われていることもあり、「情報I=プログラミングを学ぶ科目」と認識している人は少なくありません。この認識は間違いではないですが、正解ではありません。
「情報I」は、大きく分けて次の4単元から構成されています。
(1)現代の社会について学ぶ【情報社会】
(2)情報の伝え方の工夫を学ぶ【情報デザイン】
(3)コンピュータ単体について学ぶ【プログラミング】
(4)コンピュータどうしのつながりを学ぶ【ネットワーク】
このように、「情報I」で学習する内容は多岐に渡ります。
繰り返しになりますが、大学受験生がこれらの内容を徹底的に勉強する時代がすぐそこまで来ています。これらの内容が常識となる時代になるのです。
次からはこれらの単元で扱う重要語句をいくつか紹介します。我々が日常的に活用しているものばかりですが、その意味や周辺知識をどの程度理解できているでしょうか。
■「著作権」と「著作隣接権」は何が違うのか学ぶのも学習範囲
我々の身の回りには誰かが発明した発明品や、誰かが創造した芸術作品で溢れていて、これらは我々の日々の生活に快適さや豊かさを与えています。
このような知的創造活動によって生み出されたアイデアや創造物などを「知的財産」といい、これらの知的財産を保護するために「知的財産権」という権利が知的財産を生みだした人に与えられます。
この知的財産権は大きく「産業財産権」と「著作権」、「その他」の3種類に分けられます。
![知的財産権の種類](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/1200wm/img_fa9357f87a3eec5da792c6e6abd95446197230.jpg)
さらに、産業財産権や著作権は次のように細かく分類されます。
![産業財産権や著作権は次のように細かく分類](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/1200wm/img_acda8ecad075b39c7026e096b27f32e0140365.jpg)
「特許権」や「商標権」は見聞きしたことがある方も多いでしょう。
社会活動や個人の活動において、誰かが何かを生むことは珍しくなく、また既にあるものを活用することも多いです。知的財産を保護するための権利を正しく理解することは、情報化社会を生きる現代人に必要なことではないでしょうか。
■「CUI」「GUI」「NUI」…「UI」はどのように進化してきたか
スマホを使うとき、我々はスマホの画面を指でタッチしたりスライドしたりして操作します。これはスマホの画面がタッチパネルになっているからです。
このタッチパネルのような、人間と機械をつなぐ部分を「UI(User Interface)」といいます。パソコンを操作するときにマウスやキーボードを使用しますが、これらもUIです。
![藤原進之介『学校で習っていなくても読んで理解できる 藤原進之介のゼロから始める情報I』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/1200wm/img_09ec15b29c770c734c677455c7974d26240089.jpg)
初期のコンピュータは、電源を入れても真っ黒な画面に文字だけが表示され、すべての操作はキーボードで行う「CUI(Character User Interface)」というUIが主流でした。当時はマウスがなかったので、例えばカーソルはキーボードの上ボタン(↑)や下ボタン(↓)で動かし、入力する場所を調整する、大変面倒なつくりでした。
そして、現代ではマウスを使って直感的に誰もが操作できるようなUIが利用できるようになりました。このようなUIを「GUI(Graphical User Interface)」といいます。
現代ではさらに、タッチパネルを指でスライドさせて画面を動かし、人間が普段行っている動作のような身振り手振りによるUIが利用できるようになりました。このようなUIを「NUI(Natural User Interface)」といいます。NUIはテレビゲームなどにも利用され、直感的に操作できるように工夫されています。
このようにUIは日々進化をしています。
機器の使いやすさはUIに大きく影響を受けます。今後も人間の特性を考えた適切なUIを検討し続けていく必要があります。
■日々使っているインターネットの仕組みを説明できるか
パソコンやスマホの普及により、遠く離れた人に手軽かつ短時間に手紙(電子メールやメッセージ)が送れるようになりました。
では、電子メールがどのような仕組みで送受信されているか、説明できるでしょうか。
その前に、そもそもコンピュータどうしがどのようにしてデータのやり取りをしているかを説明します。
コンピュータAがコンピュータBにデータを送信するとき、データの送信者と受信者の間で事前に「どういう内容」を「どういう手段」で送信するかという決まりごと・約束ごとを作っています。この決まりごと・約束ごとを「プロトコル」といいます。共通のプロトコルを使うことで、異なる機器どうしでも、互いに通信することができます。
例えば、インターネットを閲覧するとき「http://www.kadokawa.co.jp」といった「URL(Uniform Resource Locator)」を利用します。URLの先頭の「http」がWebページでデータをやり取りするプロトコル「HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)」です。URL「http://www.kadokawa.co.jp」の意味は「HTTPというプロトコルを使って、www.kadokawa.co.jpというサイトにアクセスせよ!」です。
![HTTP プロトコルの仕組み](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/c/1200wm/img_fcbeb9dd5dc4a34e44e6b611497fca51127702.jpg)
人間はこのようにしてコンピュータに命令を与え、コンピュータはそれに従い動いているということを改めて認識していただきたいです。
■「高校生の勉強」と思って敬遠するのはもったいない
では、電子メールがどのような仕組みで送受信されているかの説明にうつります。
電子メールの送受信を取り扱う「メールサーバ」があって、インターネットを通じて届けられた電子メールはこのメールサーバに保存されます。
メールを送信するときはメールをメールサーバへ転送する「SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)」を使い、メールを受信するときはメールサーバからメールをダウンロードする「POP(Post Office Protocol)」や、メールサーバにあるメールを読みにいく「IMAP(Internet Message Access Protocol)」を使います。
![電子メールの仕組み](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/1200wm/img_441202f84008b13cb902a3e78a54c079219264.jpg)
これらは「情報I」で扱われている内容のほんの一部です。
「情報I」は、一つのテーマを深堀するのではなく、情報リテラシーを高める内容を広く浅く扱っている科目です。高校生向けの内容だからといって敬遠することなく、大人もぜひ学んでみましょう。
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東進ハイスクール・東進衛星予備校情報科講師、数強塾代表取締役
20歳で学習塾を立ち上げる。現在はオンライン情報I・情報II 専門塾「情報ラボ」、および数学が苦手な生徒を対象としたオンライン数学専門塾「数強塾」を運営。
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(東進ハイスクール・東進衛星予備校情報科講師、数強塾代表取締役 藤原 進之介)
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