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「親の学歴や年収より影響が大きい」子供の成績がぐんぐん上がる家庭にたくさん置いてある"あるもの"【2022下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2023年4月3日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CreativaImages

2022年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。教育・子育て部門の第3位は――。(初公開日:2022年7月14日)
子供の学力を上げるためにはどうすればいいのか。心理学博士の榎本博明さんは「文部科学省の調査によると、蔵書数の多い家庭ほど子供の学力は高い。子供の学力は親の年収や学歴が影響していると思われがちだが、研究によると読書習慣や博物館などの文化施設に連れて行くことのほうが重要なようだ」という――。

※本稿は、榎本博明『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■遺伝的な要因だけで決まるわけではない

子どもが親に似ていると、「やっぱり血は争えない」などといって遺伝のせいにしがちです。学力についても、わが子の成績が悪いと、「私の血をひいているんだから仕方ない」などと自嘲気味に言う人もいます。

でも、よく考えてみてください。子どもが親に似るのは、すべて遺伝の力によるものなのでしょうか。

たとえば、日本語を話す家庭に生まれ育てば日本語を話すようになり、英語を話す家庭に生まれ育てば英語を話すようになります。日本人の遺伝子をもっていても、英語圏の英語を話す家庭に生まれ育てば、当然ながら英語を話すようになります。このように、どんな言語を話すようになるかは、遺伝によって決まるのではなく、環境によって決まります。親が話す言葉が環境要因となって、子どもが話す言葉を規定していくのです。

親がいつも本を読んでいる家庭で育つ子が本をよく読む子になり、親がほとんど本を読むことのない家庭で育つ子が本を読まない子になったとしても、それは親の行動を日常的に見ているためであり、親の行動が環境要因となって子どもの読書姿勢を規定していると言ってよいでしょう。

このような事例をみれば、子どもが親に似ているからといって、それは必ずしも遺伝の力によるものではないということがわかるでしょう。

■遺伝だけではなく環境要因の影響も大きい

言語能力については、世代間伝達ということがよく言われますが、その場合も家庭という環境要因の影響を見逃してはなりません。

心理学者の猪原敬介は、言語能力の発達に関する諸研究を踏まえて、早期の言語能力が高いほど、その後も言語能力を伸ばしていける傾向があり、その早期の言語能力を規定する重要な要因は、養育者から子どもに伝達される有形無形の資本であると言います。

そして、養育者から子どもに伝達される有形無形の資本として、知能、家庭教育、親の社会経済的地位、親の学歴などをあげています。この中の知能、親の社会経済的地位、親の学歴などは遺伝要因とみなされがちですが、じつは、そこには遺伝要因と環境要因が絡み合っているのです。

遺伝子の模型で遊ぶ幼児
写真=iStock.com/brightstars
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/brightstars

知能には遺伝が強く関係しており、親の知能が子どもの知能に遺伝的に影響するわけですが、親とのやりとりを通して親の知能レベルの影響を子どもが受けるという意味では、親の知能は環境要因にもなっているのです。

親の社会経済的地位や学歴は、家庭の蔵書数(家にある本の冊数)にも影響するでしょうし、知的好奇心を刺激する文化的施設に子どもを連れて行くかどうかにも影響するでしょうし、読書や勉強に対する親の取り組み姿勢を自然に真似るという形でも影響するでしょう。

それらは、まさに家庭環境という意味での環境要因と言えます。

■蔵書数が多いほど子供の学力が高い

世代間伝達というと、遺伝の力を思い浮かべて、どうにもできないことのように思いがちですが、このような環境要因に目を向ければ、やりようによっては子どもの言語能力の向上をいくらでも促すことができるとわかり、工夫や努力の方向性も見えてくるでしょう。たとえ親自身の社会経済的地位や学歴にハンディがあっても、そこをうまく補って、子どもにとっての好ましい環境要因を整えていくことができるはずです。

家庭の蔵書数が多いほど子どもの学力が高いというのは、さまざまな調査研究によって示されています。

たとえば、2017年に文部科学省によって実施された全国学力・学習状況調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書があります。それをもとに家庭の蔵書数と子どもの学力の関係について考えてみましょう。

その調査報告書では、家庭の蔵書数と子どもの学力との間にも、興味深い関係が見出されています。蔵書数の多い家庭の子どもほど、学力が高いのです。

■「結局、親の学歴や年収が重要」というわけではない

たとえば、小学6年生のデータをみると、蔵書数が0~10冊の家庭の子どもよりも、11~25冊の家庭の子どもの方が学力が高くなっています。それよりも、26~100冊の家庭の子どもの方が学力が高くなっています。当然、101~200冊の家庭の子どもの学力は、さらに高くなっています。そして、201~500冊の家庭の子どもはそれ以上に学力が高く、501冊以上の家庭の子どもの学力が最も高くなっていました。

ただし、裕福な家庭ほど蔵書数が多いだろうし、蔵書数は親の社会経済的背景と関係しているのではないかというのは、だれもが思うことでしょう。

実際、データを確認すると、そうした関係は明らかにみられます。社会経済的地位の高い親の家庭ほど、つまり学歴や収入が高い親の家庭ほど、蔵書数が多くなっていました。

そうなると、家庭の蔵書数の多いことが子どもの学力を高めているわけではなく、親の学歴や収入の高さが蔵書数の多さや子どもの学力の高さをもたらしているだけではないかと考えがちです。

しかし、さらにデータを詳細に検討してみると、どうもそういうわけではないことがわかってきます。社会経済的背景を統制しても、家庭の蔵書数と子どもの学力は関係していたのです。つまり、学歴や収入の低い層でも、高い層でも、それぞれの層の中では蔵書数が多い家庭の子どもほど学力が高いという傾向がみられたのです。

こうしてみると、家庭の蔵書数が多いほど、子どもの学力が高まると言ってよさそうです。これは、子どもの学力に影響する家庭の文化的環境の好例と言えるでしょう。

■経済的に豊かなことが子供の学力向上に影響しているわけではない

なお、参考のために2021年に実施された全国学力・学習状況調査のデータを示すと、小学6年生の家庭の蔵書数は、0~10冊11.0%、11~25冊18.8%、26~100冊33.6%、101~200冊19.3%、201~500冊12.2%、501冊以上5.0%となっています。

子どもの知的発達に影響する家庭環境として、蔵書数の他に、文化的施設に子どもと一緒によく行くかどうかということもあります。

心理学者の内田伸子たちは、学力の格差は幼児期から始まるのかどうか調べるための調査を行っています。その結果、よく言われるように学力格差は親の経済格差と関係していましたが、それは見かけ上の関係に過ぎないと言います。

美術館で絵画鑑賞をする子供
写真=iStock.com/SeventyFour
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeventyFour

つまり、親が経済的に豊かだから子どもの学力が高いというわけではなく、高所得の家庭では蔵書数も多く、美術館や博物館に出かけることも多く、そうした文化的刺激が、子どもの学力の高さにつながっているのだとみなしています。

単に経済的に豊かなことが、子どもの学力向上につながるわけではないということです。

■美術館や博物館に連れて行くことも子供の学力に影響している

2017年に文部科学省によって実施された全国学力・学習状況調査の結果のうち、蔵書に関する部分を前項で紹介しましたが、この調査結果と調査対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書でも、知的刺激が満ちている場に子どもと一緒に出かける親の行動が、子どもの学力と関係していることが示されています。

具体的には、「子どもと一緒に美術館や劇場に行く」「子どもと一緒に博物館や科学館に行く」「子どもと一緒に図書館に行く」といった行動を親が取っている家庭ほど、子どもの学力が高いことがわかったのです。

このような関連は、他の調査研究でも示されています。

そうしたデータからは、小さい頃から親に連れられて図書館に通うことで、子どもたちは書物に親しみ、また美術館、博物館、科学館などの文化施設に出かけることで、子どもたちは知的好奇心を刺激され、そうした経験の積み重ねが、その後の言語能力の発達や学習意欲につながっていることが読み取れます。

■徐々に増えてきた子供の読書数

全国学校図書館協議会が毎年実施している学校読書調査というものがありますが、2021年に実施された第66回学校読書調査の結果をもとに、小学生(4~6年生)の読書傾向についてみてみましょう。

図書館で本を選ぶ子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

その調査は、毎年6月に行われますが、回答の正確さを期すために、記憶に新しい5月の読書傾向について答えるようになっています。集計結果をみると、2021年の小学生は、5月1カ月の間に平均12.7冊の本を読んでいました。これはかなり多いと言ってよいのではないでしょうか。

過去のデータと比べてみると、2005年までは6~8冊の間を推移していましたが、2006年に9.7冊と急増し、ここ10年ほどはおよそ10~12冊となっています。

それには、学校教育関係者の動きが影響していると思われます。子どもたちが本を読まなくなっていることが教育界で深刻な問題と受け止められるようになり、2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布され、翌2002年に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定されました。

それを機に、学校では子どもたちの読書を推進するために、さまざまな工夫がなされるようになったのです。2006年頃から小学生の読書冊数が増えてきたのは、そうした教育者たちの努力の成果と言ってよいでしょう。

■読書習慣が身につくかどうかは家庭環境が大きく影響する

ただし、いくら学校側が読書を推進するための方策を試みても、本を読まない子がいなくなるわけではありません。2021年の不読率は5.5%となっています。不読率というのは、1冊も本を読まない子どもの比率です。

榎本博明『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』(幻冬舎新書)
榎本博明『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』(幻冬舎新書)

不読率は、2002年に10%を割り、2005年に5.9%になって以来、ほぼ同じような水準で推移しています。これは比率としては低いものの、全国の小学生の数からして、その実数はかなりのものになります。

そこで思い返してほしいのは、読書習慣が身につくかどうかには、幼い頃からの親の読み聞かせや家庭の蔵書数、親の読書姿勢などの家庭環境が影響するということです。いくら学校が読書を推進するような工夫をしても効果がない場合は、家庭環境による支援が必要ということかもしれません。

また、家庭環境が読書を促進するものであれば、学校環境との相乗効果が見込めます。

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榎本 博明(えのもと・ ひろあき)
心理学博士
МP人間科学研究所代表。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)『50歳からのむなしさの心理学』(朝日新書)『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)など著書多数。

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(心理学博士 榎本 博明)

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