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だから18歳から夜の銀座で生き残れた…銀座ママが大先輩から教わった「朝9時にやっておくべきこと」

プレジデントオンライン / 2023年4月12日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wirestock

銀座の高級クラブ「クラブ由美」のオーナー・伊藤由美さんは、18歳のときに夜の銀座で働きはじめ、23歳で独立した。伊藤さんは「私が45年間、夜の銀座で生き残ることができたのは、恩師である『くらぶ宮田』の大沢汎子ママの教えのおかげだと思う」という――。(第3回)

※本稿は、伊藤由美『銀座のママに「ビジネス哲学」を聞いてみたら』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

■「どうしてもあの子が欲しい」と声をかけてくれた汎子ママ

みなさんには、仕事や人生において「自分の目標にできる人」がいますか。

夢の実現や目標の達成を目指すときに、自分が思い描く成功を現実的に経験している「目標となる人、憧れの人=ロールモデル」がいると、チャレンジへのモチベーションも格段にアップするものです。私にも目標としてきた人がいました。

その人は名門クラブ『くらぶ宮田』の大沢汎子(ひろこ)ママ、私の銀座人生の恩師です。18歳で単身銀座に出た私は、当初は『紅い花』で働いていたのですが、3カ月ほどで同じビルにある『くらぶ宮田』に移ることになりました。そのときに私を引き抜いてくださったのがチーママをしていた汎子ママだったのです。

当時、入店したばかりの『紅い花』で奮闘していた私は、お客さまから少しずつご指名をいただき、ご贔屓いただけるようになっていました。そんな私の姿を目にした汎子ママが、「どうしてもウチの店にあの子が欲しい」と言ってくださったのです。

ただ、夜のクラブも義理や仁義の世界。他店からホステスを引き抜くのには果たさなければいけない“筋”があります。そのため当時、私の引き抜きを巡っては、両方のお店同士でちょっとした騒動になってしまいました。最終的に、汎子ママが独立して『くらぶ宮田』を離れて自分の店を持ち、私はそこについていくという形で筋を通して決着しました。

■毎朝9時に起きてお客様に電話をかける

汎子ママは、業界の事情もよく理解していなかった私にずっと目をかけてくださり、名門クラブを離れてまで私を引き抜いてくださったのです。粗削りだけれど、この子は磨けばもっと輝ける原石。私が手元に置いて、銀座のクラブのママとして一人前に育てたい――口にこそ出しませんでしたが、汎子ママはそう考えてくださっていたのだと思います。

独立した汎子ママのお店で働くことになった私は、クラブのママという仕事の厳しさや喜び、銀座のクラブで働くことの誇りや矜持などを、徹底的に教えられました。「ああしなさい」「こうしなさい」と言葉で言われることもありましたが、それ以上に汎子ママ自身の仕事に対する姿勢から多くのことを学んだのです。

例えば早起き。私は毎日、朝早く起きてブログの更新をしています。「銀座のママが早起きとは珍しい」とよく言われるのですが、これも汎子ママ譲りです。汎子ママも朝が早い人でした。毎朝9時前には起きて、お客さまに電話をすることを日課にしていたのです。「クラブのような夜遅い仕事をしている人から朝一番で電話がかかってくると、みんな驚いて出てくれるのよ」と汎子ママ。

当時は、スマホはおろか携帯電話もメールもない時代。当然、自宅になど電話できませんから、営業の電話は会社にかけることになります。それでも、なかなか電話に出てもらえない。でも、ほかのお店の子たちみんなが電話をするような夕方の時間帯では、お客さまが外出してしまうことも多い上、話せたとしても大勢のなかのひとりになって埋もれてしまいます。

ならば、「朝一番」というインパクトのある時間にかけて覚えていただこう――。そう考えての行動だったと思うのです。

固定電話で呼ぶビジネスウーマンの手のクローズアップ
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

■「華やかなイメージ」だけでは生き残れない

毎晩、時間もお酒も深くなる仕事ですから、朝、眠くないはずがないし、体もきついでしょう。でも汎子ママは雨の日も風の日も雪の日も、必ず朝一番の電話を欠かしませんでした。

「銀座にはクラブも多いし、ママやホステスも大勢いるでしょ。だから、よほどお客さまの印象に残らなければ覚えていただけない。一度ご来店いただけても、『どこのユミちゃんか、どの店のヒロコちゃんか覚えていない』では次に続かないのよ。でもそこで、お客さまの印象や記憶に残るような“何か”があれば、その他大勢から『あの店の○○ちゃん』になれるの」

汎子ママから朝の電話を欠かさない理由を聞いたときには、「華やかなイメージの裏側で、コツコツと地道な努力を続けてこそ、この仕事は成り立つんだ。自分のお店を守ることができるんだ」「ただ色気を売るだけではない、堅実な営業努力と経営意識を持つことが大事なんだ」と、深く感銘を受けたものです。

■「目標とする人が理想としたこと」を目指すべき

8カ月という短い間でしたが、汎子ママから“クラブのママのあるべき姿”を学んだ後、諸事情あって『くらぶ宮田』に戻った私は、19歳で名門クラブの“ナンバーワン”のホステスになれ、4年後の23歳のときに『クラブ由美』を開いてオーナーママになりました。そしてそこから40年間、汎子ママの教えを胸に、全力で自分の店を守ってきました。

今でもときどき思うことがあります。私は汎子ママの背中に追いつけたのだろうか。その背中を超えられたのだろうか、と。ママこそ天職――私がそう考えるに至った背景にはやはり、クラブのママとしての矜持を厳しくやさしく教えてくださった汎子ママの存在があるのです。

最近、お店に入った「由美ママに憧れて、由美ママのような銀座のママになりたい」という20歳の女の子がいます。まだまだホステスとしても未熟なのですが、夢への強い思いは昔の私を見ているようでもあります。汎子ママの背中から学んだ私が、今度は自分の仕事への姿勢で若い子に学びを与える番になっている。今はその嬉しさと、責任の重さとを同時に感じているのです。

俳人の松尾芭蕉が門人に贈った「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」という言葉があります。「偉大な先人のやり方を真似るだけではなく、その先人が何を理想としていたのか、何を目指していたのかを理解し、見極め、そこに向かう努力をしなさい」という意味だそうです。

みなさんも仕事や人生で「目標とする憧れの人」をぜひ見つけてください。そしてその人のスキルやテクニックだけでなく、仕事に対する姿勢や意識などもを大いに学んでください。その学びはきっと成功を後押ししてくれるはずです。

■たかが10分、されど10分

待ち合わせに必ず遅れてくる人、みなさんの周りにいませんか。もちろん、やむを得ない理由や情状酌量の余地がある事情の場合なら仕方ありません。でも世の中には「遅れることがクセになっている」「遅れてもかまわない」、さらに「遅れて登場したほうがカッコいい」など、社会人としての資質を疑うような人もいるので困ってしまいます。

約束の時間を守る。時間どおりに来る。むしろ約束の時間よりも早めに到着している。そうした行動は仕事の成功とか夢の実現以前に、社会人として当たり前のことです。「たかだか5分や10分、いいじゃないか」――彼らはそう言うかもしれません。確かに10分くらい遅れたところで命まで取られるなどということはほぼないはず。待たされた側もその程度なら声高に責めることもしないでしょう。

オフィスでコーヒーブレイクをしながら腕時計を見ているビジネスウーマンのクローズアップ。
写真=iStock.com/Drazen Zigic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Drazen Zigic

でも、事の本質はそこではありません。なぜなら時間は有限だからです。どんな境遇であろうとどんな環境にいようと、すべての人にとって1日は24時間しかありません。こればかりはどれだけお金があろうと、自分の都合で増やしたり減らしたりすることができません。

■遅刻すれば相手は「待つこと」を強いられてしまう

約束の時間に遅れるのは、待っている人の限られた時間を奪っているのと同じこと。相手の時間を「待つこと」だけに消費させることになるのです。

自分が誰かを待たせている間に、その人たちは“別の有意義なこと”ができていたかもしれません。でも、その時間はもう戻ってこないのです。「遅刻はしない。約束の時間は守る。それは信用に関わるだけでなく、相手の時間を大切に考えるということでもあるんだよ」――これは経営者として大きな成功をおさめているお客さまの言葉です。

スマホやSNSが身近になった現代は、いつでもどこでも、事故で止まった電車の中からでも連絡が取れる時代です。持ち合わせに遅れそうになっても、「5分遅れる」「あと10分で着くから」と状況をリアルタイムに伝えられるため、「約束の時間に遅れること」自体、あまり気にしなくなっているようにも思えます。

でも、「連絡がつくから遅刻しても平気」ということではないと思うのです。遅れそうになったら連絡を入れるのは当たり前のこと。どんなに便利になろうが、やはり「遅れない」という意識が大前提にあるべきです。すぐに連絡がつく便利さが「遅刻してもいい」という免罪符にはならないのです。

ビジネスマンや目覚まし時計
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■「遅刻に怒る人は能力が低い」という意見もあるが…

「5分や10分待たせてもいいや」と考える人は、スマホがあろうが連絡がつこうが、いつも遅れてきます。「時間どおりに行かなきゃ」「待たせたら申し訳ない」と考える人はどんな待ち合わせでも時間どおりに来ます。結局、時間を守る人のほうが、いつだって待たされることになる。こんな“理不尽”はありませんよね。

「遅刻に怒るような人は能力値が低い」――ある実業家の発言がネット上で話題になり、物議を醸しました。遅れの取り戻し方を考えるべきで怒ってもしょうがない、優秀な人は忙しいから遅刻やリスケ(リスケジュール)は当たり前、なのだそうです。

考え方は人それぞれでいいのですが、私などはやはり違和感を覚えてしまいます。少々の遅刻なんて大した迷惑じゃない――そうかもしれません。でも時間に遅れることは、結果として「迷惑をかけたかどうか」ではなく、「時間を奪っている」という行為そのものに問題があると考えるべきでしょう。もっと言えば、いつも時間に遅れるのは「あの人なら待たせてもいい」「あの人の時間なら犠牲にしても平気」という相手を軽んじる非常に失礼な行為だと思うのです。

■時間を守ることが成功への近道

優秀な人、仕事がデキる人は、ビジネスの現場での遅刻が自分の首を絞めるということを知っています。

伊藤由美『銀座のママに「ビジネス哲学」を聞いてみたら』(ワニブックスPLUS新書)
伊藤由美『銀座のママに「ビジネス哲学」を聞いてみたら』(ワニブックスPLUS新書)

例えば、商談の時間に遅刻して先方を待たせてしまったとしましょう。するとその商談は、遅れた側の「お待たせしてすみませんでした」という謝罪から始まることになります。もうこの段階で、先方が優位な状況での商談になってしまう。のっけから対等ではない交渉になってしまうでしょう。

「何を大げさな。5分や10分の遅刻で仕事に影響なんてない」――時間の長さだけを見れば、そうかもしれません。でもビジネスにおいて重視されるのは利益やメリットだけではありません。それ以前に、「安心して取引できるかどうか」という信用が重要になります。大事な集まりの場に遅刻するようでは、ハンディキャップどころか最初からビジネスへの参加権を失ってしまうこともあるのです。

時間を守る人は、有限である時間の大切さを知っている人です。だから自分の時間も、相手の時間も、同じように大事にできます。時間を守る人は、相手への敬意を忘れない人です。だから相手の貴重な時間を粗末に扱うような行為を決してしません。いつも時間に正確な人といつも時間に遅れてくる人。どちらが成功に近くて、どちらが成功から遠ざかるか、考えてみてください。

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伊藤 由美(いとう・ゆみ)
銀座「クラブ由美」オーナー
東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来、“銀座の超一流クラブ”として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。本業の傍ら、「公益社団法人動物環境・福祉協会Eva」の理事として動物愛護活動を続ける。

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(銀座「クラブ由美」オーナー 伊藤 由美)

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