1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「好きなもの」より「苦手なもの」が一致する人を選ぶほうがいい…最新研究でわかった"相性の良さ"の秘密

プレジデントオンライン / 2023年4月6日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hachiware

長い時間を一緒に過ごすパートナーをどのように選べばいいのか。慶應義塾大学理工学部教授の満倉靖恵さんは「好きなもの・楽しいことの共通点が多い人のほうが付き合いやすいと多くの人は考えますが、脳波の実験結果から苦手なもの・嫌いなものが共通しているかどうかが重要な視点だとわかった」という――。

※本稿は、満倉靖恵『「フキハラ」の正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■「嫌い」なものが共通している人がベストパートナー

【フキハラとは】
「不機嫌ハラスメント」の略。
不機嫌な態度をとることで、相手に不快な思いをさせたり、過剰に気を遣わせたり、精神的な苦痛を与えること。
本人が意図している/いないに関わらず起こりうる。

他人の「不機嫌」を敏感にキャッチし、それに同調してしまう脳をもっている私たち人間は、他人の不機嫌まで抱え込んでしまう生き物だということもできます。

「好きなもの」「楽しいこと」の共通点が多い人のほうが付き合いやすいと多くの人は考えますが、長い時間を一緒に過ごす相手の場合は、「苦手なもの」「嫌いなもの」が共通しているかどうか、というのも重要な視点なのです。

例えば、あなたは犬が苦手で、パートナーは猫が苦手だとしましょう。

苦手な犬を見るたびにあなたのストレス度は上がる。これは当たり前のことです。でも実はそのとき、あなたのそばにいるパートナーのストレス度も上がっているのです。もちろんこれはあなたの発する「不機嫌ノーラ」(※)のせいです。

※編集部註:本書では、脳が伝える「不機嫌」な感情の電気信号を、「不機嫌な脳のオーラ」、略して「不機嫌ノーラ」と呼ぶ

つまり、あなたのパートナーは犬が苦手なわけでもないのに、犬がきっかけで「嫌な気分」になってしまうのです。

次に猫が現れれば、今度は逆のことが起こります。

あなた自身は猫が苦手なわけではないのに、なぜか「嫌な気分」になります。これもまた、猫を見たパートナーが発する「不機嫌ノーラ」のせいであることは言うまでもありません。つまり、あなたとあなたのパートナーは、犬を見たときも、猫を見たときも、結果として共に「嫌な気分」になるわけです。こんなことが起こるのは、二人の「苦手」が分かれているからです。もしも、二人の苦手が「猫」で一致していれば、二人が不機嫌になるのは「猫」を見たときだけなのです。

「苦手なもの」「嫌なもの」に共通点が多いほど、二人を不機嫌にする原因は少なくてすみます。

■「苦手・嫌なもの」の共通点の多さが相性測る重要基準

例えばそれぞれに5つずつ「苦手なもの」「嫌なもの」があったとして、そのすべてが共通しているのなら、不機嫌の原因は5つです。

ところが、すべてがバラバラだと、相手のぶんまでもが「原因」として加算されてしまうので、不機嫌の原因は5+5=10になります。

満倉靖恵『「フキハラ」の正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
満倉靖恵『「フキハラ」の正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

不機嫌の原因になるものが多ければ、一緒にいる時間のほとんどを共に不機嫌な気分で過ごすことになります。共に「不機嫌」なので、「不機嫌」が増幅する可能性も高いでしょう。そんな二人の関係が長続きするとは思えません。だからこそ、「苦手なもの」「嫌なもの」に共通点が多いかどうかは、相性を測る上でもかなり重要なのです。

一方、「ポジティブな感情」のほうは同調しにくいという特徴があります。だからパートナーのほうだけが「好きなもの」「楽しいこと」を、無意識のうちに好きになったり、不思議と楽しめたりするということはあまりありません。

つまり、本当に相性がいい人というのは、「ネガティブな刺激」に対する脳波の波長が合う人、と言ってもいいのではないでしょうか。

「好きな人と一緒に過ごすと、悲しみは半分になり、喜びは2倍になる」などと言ったりしますが、悲しみをストレスと置き換えるなら、「ネガティブに対する脳波の波長」が合わない人と一緒にいる場合には半分どころか、2倍になってしまいます。「喜び」に関しては誰と一緒にいようが、あまり変わらないと思います。

身もふたもないことを言うようですが、これが私たちの感情の現実なのです。

■「嫌」は最強のモチベーションにもなる!?

さて、「フキハラ」の原因にもなりうる決して喜ばしくはない「ネガティブな感情」を、何かポジティブなことに利用することはできないのでしょうか。

データ22 怒りが集中力を持続させる
出典=『「フキハラ」の正体』より

そのヒントになりそうなのが、データ22です。この実験の目的は、脳波から「嫌」と「集中力」との関係を調べることでした。被験者には、「ミスをするほど、報酬を下げる」という逆インセンティブを与え、第1章のデータ5を測定した際と同様の作業(一般的なオフィス環境におけるパソコンでの数値入力)を行ってもらいました。

しかも近くでわざと雑談したりして作業の邪魔をしています。作業は全部で15分で、作業開始の5分後から10分後までの5分間の感情を示す脳波を測定しました。

「実験に協力しているのにミスで報酬を減らされる」ことへの怒りと邪魔をされることへの怒りのどちらが大きかったのかはわかりませんが、こちらの思惑どおり、「嫌度」を示す脳波がかなり強く出ています。

そして驚くべきは、「集中度」を示す脳波のほうもかなり強く出ていることです。

「ミスが少ないほど、報酬が上がる」というポジティブなインセンティブを与えて測定したデータ5と比較してすれば、その違いは明らかでしょう。

データ5 「集中力」はあらゆることに乱される
出典=『「フキハラ」の正体』より

なぜこんなことが起こるのか、そのメカニズムは定かではありませんが、「嫌」が「集中力」を維持させるという現象は実際に起きているのです。もちろん、「嫌」があまりにも大きすぎれば、「集中力」はかえって下がる可能性のほうが高いことと思います。

でも、例えば、ライバルがいるとかミスを横から指摘されるといった「ちょっとイラッとする状況」には、集中力を高める効果はありそうです。だとすれば、「不機嫌ノーラ」を有効に活用する方法として、「集中力への転用」というのはありなのかもしれません。これについてはさらに研究を進めていきたいと思います。

----------

満倉 靖恵(ミツクラ・ヤスエ)
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授
慶應義塾大学医学部精神神経科学教室兼担教授、電通サイエンスジャム取締役CTO、イーライフ取締役CTO、博士(工学)/博士(医学)。 生体信号処理、脳波解析などをキーワードに、脳神経メカニズム・感情・睡眠・うつ病・認知症などに関する研究に従事。特に医工連携型研究に注力。電通サイエンスジャムと共同で、世界初の脳波によるリアルタイム感情認識ツール「感性アナライザ」を開発。リサーチ、商品開発など世界中で活用されている。心拍のみを用いた自律神経の動きに注目した睡眠の5段階解析、非侵襲ホルモン解析などの専門家。

----------

(慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授 満倉 靖恵)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください