「考えまい」とするほど不安や緊張が押し寄せる…心理学者直伝「心のモヤモヤを吹き飛ばす3つの方法」
プレジデントオンライン / 2023年4月10日 8時15分
※本稿は、内藤誼人『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「一度決めたらもう変えない」と決めてしまおう
読者のみなさんは、いったん決定したことでも、後になってもし気に入らなければ、いつでも変更可能なほうがいいと思っていませんでしょうか。
しかし、それは違うのです。
オランダのアムステルダム大学のロッティ・ブーレンスによると、むしろ、後で決定を変えられないときのほうが、決定に後悔することなく、満足度が高くなるそうです。
いろいろと選択肢があると、私たちは目移りしてしまいます。いったん「これ」と決めてからも、「いや、他のほうがよかったかな?」と悶々とした気持ちがいつまでも尾を引きます。
それくらいなら、最初から他の選択肢などなく、後になって決定を変更できないほうが、私たちはあきらめもつきますし、満足度も高くなるのだ、というのがブーレンスの主張です。
■決定を変えられないほうがしあわせな気持ちになれる
逆説的なことながら、決定を変えられないときのほうが、人はしあわせな気持ちになれるのですよ。
したがって、「背水の陣をしく」というか、一度決めたら、もう二度と迷わない、というルールを自分なりに決めておくといいかもしれません。そのほうが、疲れずにすみます。
昔の人は、いったん企業に就職したら、転職などせずに、そのまま定年まで勤めあげるのが一般的でした。やめたくともやめられない風潮というか、文化があったのです。
では、昔のサラリーマンがみんな不幸だったのかといえば、そんなこともありません。イヤな仕事でも、ずっとやっていれば、それなりに「この仕事って面白いな」と感じるようになり、「天職だ」とさえ思えるようになったはずです。
その点、今の時代では、気に入らなければいくらでも転職できます。しかし、他の会社や業種に目移りして、ちょこちょこと転職している人は、本当にしあわせなのでしょうか。
いつでも転職できる時代になってしまったからこそ、かえって不幸になってしまったような印象を受けます。少なくとも、ブーレンスの説にもとづけば、そういう予想ができるのです。
結婚もそうですね。かつての日本は、いったん結婚すると離婚をしにくい文化がありましたが、それでもけっこうどの夫婦も満足していました。いったん決めたら、変えられないときのほうが満足度は高くなるからです。
一度決めたら、もう変えない。
そういうルールを決めておくのもいいものですよ。
■「考えまい」とするほど嫌な思考から逃れられない
不愉快なことばかりが頭に浮かんでしまうとき、私たちは、「もう、そういうことを考えないようにしなければ」と自分に言い聞かせようとします。
しかし、この作戦は、たいていうまくいきません。
「もう考えまい」とすればするほど、かえってその考えが頭に浮かんでしまうものなのです。
では、どうすればイヤな思考から逃れることができるのかというと、「考えまい」とするのではなく、何かひとつの対象を決めて、じーっとその対象を凝視するようにするのです。
ボールペンの先端でも、部屋の壁にかけてある時計でも、空に浮かぶ雲でも、何でもかまいません。
じーっと凝視をつづけていると、不思議なことに、ネガティブな思考が頭に浮かびにくくなります。何か他のことに集中していると、よけいなことを考えずにすむのですね。
■何か1点を凝視してみるとよい
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のベンジャミン・ベアードは、79名の大学生を集めて、半分のグループには、「別れた恋人のことだけは考えないように」と伝えました。もし別れた恋人のことが少しでも頭に浮かんでしまったら、コンピュータのスペースバーを押すように、と指示しました。
残りの半分にも、「別れた恋人のことだけは考えないように」と伝えたのですが、コンピュータの画面の1点をずっと凝視してください、とも伝えました。1点を凝視しながら、それでも頭に別れた恋人のことが浮かんだら、スペースバーを押すことが求められたのです。
その結果、実験時間中にスペースバーを押した回数は、図表1のようになりました。
「考えない」ようにすると、1点を凝視するグループより、約2倍もたくさん考えてはいけないことが頭に浮かんでしまうことがよくわかるデータですね。
ネガティブな考えが頭に浮かんでしまうことでお悩みなら、何か1点を凝視してみるといいですよ。
禅の世界では、座禅中にいろいろとよけいなことを考えてしまう初学者には、禅師から「呼吸に集中するように」というアドバイスがなされるそうです。呼吸に集中するのも、1点を凝視するのと同じで、どちらも1つに注意を向けるということですから、呼吸に集中するのでもいいかもしれませんね。
■罪悪感は「手洗い」でリフレッシュ
コロナウィルスが世界的なパンデミックを引き起こしたせいでしょうか、手洗いをする人が増えました。感染予防のために、これはいいことです。
ところで、じつは、手洗いには感染予防のほかにも素晴らしい心理効果があることをご存じでしょうか。
それは、心のモヤモヤをきれいに吹き飛ばす、という効果です。
「悪いことしちゃったな」
「言いすぎちゃったかもしれないな」
そういう罪悪感のようなモヤモヤ感があるときには、手を洗うと効果があります。そうすれば、心もリフレッシュするのです。
■セミナーや講演会でドキドキしたらトイレに行けばよい
コロンビア大学のイヤール・カランスロフは、37名の大学生に、自分がしてしまった不道徳なおこないを思い出して、紙に書き出してもらいました。これは罪悪感を高めるための操作です。
次に、半分のグループには、手洗いをしてもらいました。比較のためのコントロール・グループには手洗いをさせませんでした。
それから、「不快さ」「後悔」「罪悪感」「恥」などの得点をつけてもらうと、手を洗うグループほど得点が低くなることがわかりました。
手を洗うと、心もスッキリすることをカランスロフは明らかにしたのです。
このカランスロフの実験では、罪悪感が扱われたわけですが、緊張や不安についても、同じように手洗いをすれば、きれいに消えてくれるかもしれません。
こちらについてはまだ検証されておりませんが、私はセミナーや講演会でドキドキしてしかたがないときには、トイレでしばらく流水に手を浸しています。そうすると心が落ち着いてくることを経験的に学んだのです。
ひょっとすると、手を洗うことはネガティブな感情を吹き飛ばすのに役立つ心理効果があるのかもしれません。
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心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。
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(心理学者 内藤 誼人)
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