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「ゆるふわ男子」を演じるなら現役日本最強…水ト麻美アナと結婚した俳優・中村倫也に唯一心配すること

プレジデントオンライン / 2023年4月8日 10時15分

アマゾンプライムのドラマ「No Activity/本日も異常なし」配信記念イベントに出席した中村倫也さん=2021年12月17日、東京都新宿区の明治神宮外苑軟式球場 - 写真=時事通信フォト

3月25日、俳優の中村倫也(36)が日本テレビ・水ト麻美アナウンサー(35)との結婚を発表した。ライターの吉田潮さんは「女装役から犯罪者までなんでもこなす、型にはまらない俳優だ。実力は日本の俳優の中ではトップクラスといえる。国民的アナウンサーを射止めたのも肯ける」という――。

■国民的アナウンサーを射止めたのはどんな俳優か

朝のニュース番組や情報番組をほとんど観ないせいか、アナウンサーの名前を言われてもピンとこない。それでも日テレの水卜麻美アナウンサーは知っている。ミトちゃんと呼ばれ、人気者で好感度が高いことも知っている。そんな国民的愛されキャラのミトちゃんを射止めたのが俳優・中村倫也と聞いて、「でかした、倫也! やることやっとる!」と心の底から祝福した。

ドラマをあまり観ない人にとっては、中村倫也はおそらく「ビビりでふがいない男」の印象が強いのではないだろうか。

ダイワハウスのCMで、サボテンを持ち歩く変な男が倫也だ。同じ職場の勝気で仕事がすこぶるできる女・上野樹里にプロポーズ。結婚後は、海外旅行中の妻にわざわざ電話をかけ、風呂場で後ろに気配を感じて怖くなったから「早く帰ってきてください」と懇願。妻を守りたいと言っても、腕力も度胸も妻以下。でもセキュリティが完璧な賃貸住宅なら安心、というCMなのだ。

私の友人は強い男が好きなので、あのCMが大嫌いと言っていたが、私は好きだ。上野も倫也も適役だし、CMの訴求ポイントが完璧だなと思ったから。

それはさておき、中村倫也がどんな俳優であるか、超個人的な好みをベースに、3つのキーワードで解説していこうと思う。

■女装ではなく女性になれる

①女装の妙技 子犬顔の小悪魔

上背があるわけでもなく、こじんまりとした顔だちの倫也は、女装してもなんの違和感もない。可愛いというだけでなく、自然体で「オンナ」を演じることができる。

女装というと、過剰なオンナ演技で笑いをとる俳優も多いが、倫也は「あるがままの女」、ホルモン総とっかえレベルの女装ができる。

女装役が多いのは、舞台で何度か女性役も演じてきたからだろうか。私が観た舞台は「八犬伝」(2013年)。キャストは二階堂ふみと内田慈以外ほぼ男性なのだが、倫也が演じたのは犬坂毛野という女性の田楽師。しなやかで美しく、強い女を見事に演じて、拍手喝采を浴びていたと記憶している。

■神かがった女装が見られる作品

ハイクオリティな女装でネットを沸かせたのは「お義父さんと呼ばせて」(2016年・フジ)だ。このドラマは、ヒロインの娘(蓮佛美沙子)が父(渡部篤郎)と同い年の彼氏(遠藤憲一)と付き合うことで巻き起こる騒動を描いたラブコメディ。

『お義父さんと呼ばせて-フジテレビ』HPより
『お義父さんと呼ばせて-フジテレビ』HPより

倫也が演じたのは蓮佛の兄。父のコネで入社した割に、口だけはいっちょ前。実は女装でストレスを解消する「男の娘(おとこのこ)」なのだが、家族には隠している。女装してヒョイと顔を出したときの可愛らしさったら! たぶん今でも画像検索すれば出てくる。

そのせいで、この作品で覚えているのが倫也の神がかった女装と、山崎育三郎&伊藤修子のアナザーラブストーリーになってしまった。

また、映画「影裏」(2020年)では、主役の綾野剛の元恋人・副島和哉役。

地方に行ったきりの綾野を心配し、いつか戻ってくると信じている。性別適合手術を受けた設定で、しぐさも言葉もしっとり。ホテルの部屋にやんわり誘うも、綾野はハグだけして去る。まあ、なんて色っぽい、大人の別れのお作法。倫也の女優魂が凝縮されたシーンだった。

売れっ子になり、主演作も増えたせいか、女装役や女性役からちょっと遠ざかっている気もするが、そのポテンシャルの高さは胸に刻んでおきたい。

■意外にも胸糞悪いキャラクターが光る

②狂気の人 サイコパスからストーカーまで

柔和な微笑みを湛えながら凶行におよぶサイコパスに、ちょいクズ風味のストーカーまで、アングラ倫也も見逃せない。

最も鳥肌モノだったのは、「闇金ウシジマくんSeason3」(2016年・MBS)の神堂大道役だ。ヒロイン(光宗薫)の一家をまるっと支配し、乗っ取る手口が凄かった。家族全員の弱みを握り、信頼を得てからは暴力で支配。「え、あの子犬顔で?」と思うかもしれないが、逆に子犬顔だからこそ非情な振る舞いと胸糞悪さがより強調されて見える。

最後は主人公のウシジマくん(山田孝之)が成敗してくれるのだが、ボッコボコにされて警察に逮捕された倫也にちょっと胸がすいた。倫也が悪役の務めをきっちりはたした作品だった。

また悲しきストーカーというか、固執と支配の裏側に一抹の寂しさを匂わせたのが「ホリデイラブ」(2018年・テレ朝)だ。

倫也が演じた夫はとんでもないモラハラ男。妻(松本まりか)は浮気して狂気の沙汰へと突っ走るのだが、倫也は妻の浮気相手の夫婦(仲里依紗・塚本高史)に憎悪を向ける。

笑顔を一切封印した役だったが、最終回では妻への感謝の意も表し、妻が凶行に及んだのは自分の責任だと認めた。妻は衝撃の結末を迎えたが、夫には人として改善の余地と希望があった。

鼻もちならないエリート臭を漂わせることもできれば、マウンティング男子も得意中の得意。

「100万円の女たち」(2017年・テレ東)では、父親が死刑囚の主人公(野田洋次郎)に、嫉妬&マウントしまくるイケメン人気作家・花木ゆずを演じた。コム・デ・ギャルソンとか着て、オシャレなわけさ。いかにも人気商売にあぐらかいてる感じでね。

でも、野田と同居する女たちから小馬鹿にされる小気味よさ。このドラマは予測不能かつ衝撃の展開があって、“感じ悪い”倫也はもちろんのこと、5人の女たちの来し方行く末には相当痺れるので、おすすめしたい。

■まさにカメレオン俳優

ちなみに、倫也は制作陣から絶大な信頼をされているんだなとも思う。ひとつの作品の中で異なる顔を見せる役が意外と多いからだ。

倫也の「ストーカーバージョン」と「いい人バージョン」を1作品で味わえるのが「伊藤くんAtoE」(2017年・MBS・TBS)だ。

とてもトリッキーな設定で、倫也は2役。主人公の脚本家(木村文乃)の脳内シーンでは、クズでストーカーのボンボン・伊藤くんを、現実では文乃の後輩脚本家・久住健太郎を演じている。

また、「珈琲いかがでしょう」(2021年・テレ東)では、前半では穏やかで紳士的な癒し系移動珈琲店の店主なのだが、その過去は触るもの皆傷つける勢いの一匹狼的なヤクザだ。

さらに、まったく異なる倫也をさらに多く観たい人には、映画「水曜日が消えた」(2020年)を。曜日で人格が入れ替わる、つまり7人の人格を演じているのだ。几帳面な倫也、やさぐれた倫也などをいっぺんに堪能できる。

■倫也が最もハマる役柄

③ゆるふわ自由人 世間体より感性で生きる

奇天烈な倫也もいいが、最もしっくりハマるのは、ふわっとゆるっと生きる自由人や遊び人役だ。むしろこっちのほうの役が数としては多い。

脚光を浴びた朝ドラ「半分、青い。」(2018年)の朝井正人役の記憶も新しい。

『連続テレビ小説「半分、青い。」NHKドラマ』HPより
『連続テレビ小説「半分、青い。」NHKドラマ』HPより

女をとっかえひっかえの遊び人・マアくんは、佐藤健が演じた律、間宮祥太朗が演じた涼ちゃんとともに、女性が注目したキャラクターだった。マアくんを演じた後は、主演作も増えた。時代が倫也に追いついた、そんな印象もある。

そういえば、倫也が所属する事務所・トップコートの社長、渡邊万由美が「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演(2019年)。密着取材を受けていたとき、なかなか売れなかった倫也を励まし続けたというエピソードがあった。

同じ事務所の松坂桃李や菅田将暉が売れっ子人気俳優になっていく中、焦りも大きかったという。

■ここ10年の俳優に共通する特徴

ふと、この約10年を振り返ってみると、一気にブレイクした印象のある俳優は、

綾野剛(「カーネーション」2012年・NHK)
斎藤工(「昼顔」2014年・フジ)
西島秀俊(「ダブルフェイス」2012年、「MOZU」2014年、TBS&WOWOW)
菅田将暉・高橋一生(「民王」2015年・テレ朝)
町田啓太(「美女と男子」2015年・NHK)
田中圭(「おっさんずラブ」2016・2018年、テレ朝)

キャリアはそれなりに長く、売れっ子になるまでに時間がかかったのは倫也も同じだ。

倫也の系統は上記の俳優陣とは異なるが、ジェンダーレスにSDGs、配慮の時代でもある令和にブレイクしたのは、非常に納得がいく。

実は、かなり前だが「ハリ系」という主演作がある(2007年)。

ハリネズミが進化した人間だからハリ系。驚いたり、感情の発露があると、ハリが出ちゃうし、命の危険を感じると自己防衛で丸くなってしまう。要は、臆病で自分に自信がない男子の役だ。

サル系女子(村川絵梨)に恋をするも、自分のハリで傷つけてしまうことを恐れ、なかなか前に進めない。物語の終盤では、ヤマアラシ由来のウイルス感染が広まり、ハリ系の人間が迫害され始める。時代を先取りする内容だったと思うし、ビビリで気弱で心優しいハリ系男子は、今の倫也の土台になったとも言える。

■ゆるふわ男子ここにあり

ということで、再びゆるふわ倫也の話に戻る。ゆるふわの権化とも言える名作がある。

イベントオーガナイザーで人たらし、周囲からは“メンヘラ製造機”と呼ばれる男・安良城ゴンを演じたのが「凪のお暇」(2019年・TBS)である。

ヒロイン(黒木華)と元彼(高橋一生)の間にうっかり入って、飄々とマイペースにかき乱す間男的存在を好演。床上手である点も妙に説得力があった。

また、映画「台風家族」(2019年)では、遺産争いを繰り広げる4人きょうだいの末っ子を演じた。

草彅剛、新井浩文、MEGUMIという濃くて業の深いきょうだいたちの中で、ひとりだけゆるふわのフリーター。遺産を巡るみっともないきょうだい喧嘩を勝手に生配信して、YouTuberになろうと目論んでいる。

殺伐の中にほっこり。そういえば三男が出てこないなと思ったら倫也が登場したので膝を打った。

■「型」にはめられないことを願う

人気&主演枠に入ると逆に、検事とか探偵とか社長とか弁護士とか、演じる役の職業が急に狭められてしまうのが日本のテレビドラマの宿命。

ゆるふわもアングラも変幻自在の倫也が「型」にはめられてしまうと、ちょっともったいないなとは思う。

また、実生活で結婚すると、急に父親役をやらされそうな懸念もあるが、いつまでも型にはまらず、ふわっふわと浮遊するタンポポの綿毛のような俳優でいてほしい(本人がそう言っていたので)。

怖い都市伝説を思い出して眠れなくなり、シャワーを浴びられなくなるビビリでいてほしい(本人がそう言っていたので)。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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