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「1割増を40年続ければ1は45になる」開成中2年生が目を丸くしたネット証券社長の"名スピーチ"

プレジデントオンライン / 2023年4月7日 11時15分

撮影=プレジデントオンライン編集部

これからの時代を生き抜くためには何が必要で、どのようにパフォーマンスを高めればいいのか。マネックスグループCEOの松本大さんは母校の開成中学2年生に向けた講演の中で「地頭×好奇心=自分の出力量です。地頭は実はそれほど変わらない。大事なのは好奇心=頭の回転数(考えること)。毎年1割増の好奇心を40年間持ち続けると出力は45倍に大きくなります」と語った――。

■「地頭×好奇心=君の出力」をいかに高めるか

僕は昭和38(1963)年生まれで、開成に入学したのは昭和51(1976)年。ずいぶん昔のことですね。その当時と比べるといろんなことが変わりました。校舎も変わりました。いま話しているこの視聴覚教室のあたり、昔はグラウンドだったんですよ。

授業の内容も変わったと思います。歴史にしても物理にしても生物にしても、僕が開成で学んでいたときとは、理論そのものが変わってしまっているものもたくさんあります。宇宙の成り立ちとか、生命の起源とか。

当然のことながら、これから先、未来においても変わっていきます。いま先生たちが教えていることが、僕がここで話していることもですが、この先ずっと正しいという保証はありません。だから、君たちが未来に向けて歩んでいく際に大事になってくるのは、“教わること”“覚えること”ではなく“自分で考えること”なのです。

■翌年は今の自分=1の1割増「1.1」…40年継続で「45」

自分でものを考えていくうえで重要なのが“好奇心”です。車のエンジンを例にとってみましょう。エンジンの出力は「トルク(回転する力の強さ)×回転数」で決まります。僕はこの公式は人間にも当てはまると思っています。

トルクに当たるのが、人間の場合は地頭というか、持って生まれた能力のこと。みなさんは開成に合格したわけですから、平均的な中学生よりもこのトルク値は高いはず……ですね?(笑)

では、どのくらい高いか。ちなみに人間とゴリラのIQはせいぜい20ぐらいしか変わらないそうです。となると同じ人間同士で比較した場合、その差はほんのわずかなものでしかない。他人の5割増しの地頭を持って生まれるというのは不可能だと僕は思います。

つまり人間というエンジンの出力の差は、ほとんどが回転数の差だということになります。この回転数に相当するのが好奇心なのです。

松本大氏
撮影=岡村智明
マネックスグループ代表執行役CEO 松本大氏 - 撮影=岡村智明

好奇心の強さというのは人によって大きな差があります。平均的な人の70%しか持っていない人もいれば、140%の人もいる。この両者を比較すれば、持って生まれたトルク値は変わらなくても、出力は倍になりますね。

しかも、君たちの人生はまだまだ先が長い。何十年もあります。人より1割好奇心を余計に持つだけで、10年後にはその10乗、数十年後には数十乗となって、一生を通してみればほかの人よりもはるかに大きな出力を発揮できるわけです。

ちなみに、1割増しの40乗って何倍になると思う? ちょっと計算してみようか。(スマホに向かって)1.1の40乗は? 45倍だって。すごい差になりますね。大事なのは「人より優秀であること」ではなく、好奇心を起爆剤として「自分の力を使い切ること」だと僕は思っています。

■宗教問題を解決するのは君かもしれない

僕たちが住むこの世界には、常に課題が生まれてきます。ウクライナでの戦争もそうですし、気候変動の問題もあります。気候変動によって洪水などが起きれば貧困層には危機が迫る可能性がありますし、あるいは宗教の違いなどによる対立がいま以上に激化するかもしれません。もちろん、現在は存在しない課題も、どんどん出てくるでしょう。新型コロナウイルスの問題なんて、4年前には誰も想像していなかった。

松本大氏
マネックスグループ代表執行役CEO 松本大氏(撮影=岡村智明)

人類はこれまでの歴史の中で、さまざまな課題を解決し、生き延びてきました。それはテクノロジーによる技術革新だったり、思想や哲学などものの見方を変えることだったりします。少し前まではLGBTへの差別って確かにあったけれど、いまは多様性を認め合おうよという考え方になりましたよね。

そしてこれから先も、どんどん新しい課題は現れてきますが、それを解決するのは人類です。これはゴリラにはできない。人類、つまりみなさんです。この「課題を解決する」ということこそ、「未来を創る」ということであり、その担い手はまさにみなさんなのです。

21世紀になっても宗教間の問題は解決されていませんが、将来、誰かがこれを解決する新しい考え方を発見してくれるかもしれない。それは音楽や絵などのアートの力によって気持ちを変えるという方法かもしれない。それを発見するのは君かもしれない。

すでにあるものを学び、活用することも大事ですが、みなさんが今後直面する新しい課題に対しては、みなさん自身が新しい技術なり思想なりを、考え出し、つくり出していかなければなりません。

そのために必要な膨大な出力を生み出すものこそ、先ほど述べた「回転数=好奇心」です。

■中学・高校時代は仲間とコミュ力を高め合って

課題を解決していくうえでもう一つ大事なものが「チーム力」です。人が一人でできることには限界があります。でも、チーム全体が一つの方向を向くことができれば、ベクトルの原理と一緒でものすごく大きな力になる。

かつてネアンデルタール人と我々ホモ・サピエンスは同じ時代に共存していました。ネアンデルタール人は現生人類よりも脳が大きく、体も頑丈でしたが、結局絶滅し、現生人類が生き残りました。

なぜだと思いますか。

『プレジデントFamily2023年春号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023年春号』(プレジデント社)

現生人類には言葉があり、仲間と分業、協業しながらチームで狩りをしたり戦うことができたりしたのに対して、ネアンデルタール人は言語を持たなかったからだといわれています。

これは現代社会においてもまったく同じで、会社経営でもチームスポーツでも、コミュニケーション能力は本当に大事です。すごく優秀だけど他人とうまくやれない独善主義なワンマン経営者よりも、凡人であってもチームを上手に動かせる経営者のほうが成功します。

みなさんは開成の生徒であり、エリートでもあるわけですが、それだけでなく優秀な仲間たちと一緒に学べる素晴らしい環境にいる、ということを忘れないでください。

僕も開成時代の仲間とは、いまもしょっちゅう会っています。でも実は、在学中は仲間とそこまでの信頼関係は築けませんでした。

僕には仲の良かった兄がいたのですが、僕が小学校5年生のときに病気で亡くなったんです。その寂しさもあって、開成に通っていたときは、どこか心の底から信頼できないというか、どうせ自分のことなんか理解してもらえないだろうという気持ちを持っていたんですね。

ところがあるときに友達と話していて、「ああ、こいつは僕以上に僕を理解してくれているんだ」と実感できた瞬間があったんです。

僕は兄が死んだことすら打ち明けられなかったのに、友達は僕を理解し、信じてくれていた。兄はいなくなったけど、僕には家族同然に信じられる友達がいたんだと気づけたのです。このことは僕にとっては大事件でした。

中学・高校時代というのは、利害とか損得ではなく、人と人との関係性を学んだり、ネットワークをつくったりできる貴重な時期だと思います。信頼できる仲間をつくるというのは、もちろん簡単なことではありませんが、みなさんにもぜひ、そんな素晴らしい仲間をつくってもらいたいと思います。

さて、最近ではAI(人工知能)の技術がすごい勢いで進化して、「ChatGPT」のように人と会話できるAIも誕生してきています。「◯◯って何?」と質問すれば、答えをAIが瞬時に出してくれます。この「ChatGPT」に英語で弁護士試験を受けさせると、ほぼ合格するレベルなのだそうで、正しい答えだけが必要ならば、もはや人間はいらないということになりつつある。

つまり、これからの人間にとって大事なことは、正しい答えを覚えることではなくて、新しい課題を見つけて、それについて考えて考えて考え抜くことなんです。自分で考えて答えを導き出せるようにしておけば、条件が変わっても応用できるんです。

みなさんはまだ若いから、人生はまだまだ続くと思っていると思います。

でも、人生は有限です。その限られた時間の中で、どれだけ好奇心を持ち、頭を回転させ続けるか。そして、同じように高回転で走り続けている仲間たちと力を合わせ、みんなで世界の課題を解決できるか。

これがみなさんにとっての「未来を創る力」だと、僕は信じています。

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松本 大(まつもと・おおき)
マネックスグループ代表執行役CEO
1963年生まれ。開成中学校高等学校卒業。東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズ入社。早朝出勤してニューヨーク市場の値動きやニュースを分析しグラフ化したものを先輩社員に配るなど、上司の指示待ちではなく、自分で仕事をつくる。90年、ゴールドマン・サックスに転職。94年には当時最年少の30歳でゼネラルパートナー(共同経営者)に就任。インターネット時代が到来する直前、個人向けにオンラインで証券取引ができるサービスを会社に提案したが実現せず。だったら自分でつくろうと、99年、マネックス証券を設立。

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(マネックスグループ代表執行役CEO 松本 大 構成=田中義厚 撮影=岡村智明)

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