1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「億り人=高所得者」とは限らない…いつまでも貯金が増えない人が根本的に誤解していること

プレジデントオンライン / 2023年4月17日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

貯金を増やすにはどうすればいいのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「高収入の仕事に就かなくてもお金は簡単に貯められる。低所得者で資産を潤沢に持っている人は『わかっているけどなかなかできないこと』を実践している」という――。

※本稿は、大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■お金を増やすのはそれほど難しくない

第1章の最初に、今の時代、マネー本が大流行だと書きました。なぜなのかについてはこれまで説明をしてきましたが、おそらく今後も、次から次へと「お金の増やし方」というような本はたくさん出てくることでしょう。

でもじつは、お金を増やすのはそれほど難しいことではないのです。

これを言うと、「それはお金を持っているからそんなことが言えるのだ」と思われるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。

私自身、何度か自分の著書に書いてきましたが、家庭の事情があったために、60歳で定年退職した時には貯金はほとんどありませんでした。「老後は2000万円足りない」と話題になりましたが、私は2000万円どころか150万円しか持っていなかったからです。

でも、それについてはまったく不安に思っていませんでした。理由は2つあります。

1つは、定年の時点で将来にわたる収支を自分なりにきちんと把握していたこと、そしてもう1つ、それが「お金を増やすことはそれほど難しくない」と思っていたからです。

本書はお金の増やし方の本ではありませんので、あまり詳しくは述べませんが、この節ぐらいは、「増やし方」についての原理原則を述べてみたいと思います。

■お金を手に入れる5つの方法

お金を手に入れるには、いったいどんな方法があるでしょう。

ちょっと思いつくままに書き並べてみると、たぶん、5つぐらいになると思います。

1.働く
2.貯める
3.増やす
4.騙し取る
5.盗む

いうまでもなく、このうち、4と5は犯罪です。世の中にはそういうことをして財産をこしらえたという人もいるかもしれませんが、悪いことをすればいずれ捕まりますから、この2つはまったくの論外です。

■「働く」よりも「貯める」「増やす」ことが重要

では残りの3つですが、もう少し丁寧に考えてみましょう。

「1.働く」というのは、文字通り、働いて稼ぐ、収入を得るということです。どこかに雇われて働こうが、農業や漁業で働こうが、自営で商売をしようが、いずれにしても何らかの方法で働いて収入を得るということです。

「2.貯める」は、もう少し丁寧にいうと、働いて稼いだお金の中から、一定の金額を貯蓄に回していくということです。

「3.増やす」は、具体的にいえば、2で貯めたお金を運用する、もっと直接的にいえば、投資をするということです。

この中で、最も土台になるのは、いうまでもなく「1」の「働く」です。これは当たり前です。一生遊んで暮らせるほどの財産を親から相続したのでなければ、誰しも働かざるを得ないからです。

そして、順序としても、「1.働く」があるから「2.貯める」ができるわけですし、「2」の結果、貯めたお金を「3.増やす」、すなわち投資に回すことができます。したがって働くことが一番の土台になることに議論の余地はないでしょう。

でもじつは、重要なのは「働く」ことよりも、「貯める」ことと「増やす」ことなのです。そのあたりをもう少し詳しくお話ししていきましょう。

■高収入の仕事に就くことばかり考えている

お金を手に入れるために最も土台になるのは「働く」ことだといいましたが、多くの人は、この部分を誤解しているように思えてなりません。

たしかに働かない限り、収入は入ってきませんから、そういう意味では土台であることは間違いないのですが、とにかく収入を増やすことばかり考えようという人が多いからです。

でも、この部分が最も重要なわけではありません。収入の多寡よりも、むしろどれだけきちんとお金を貯めるようにしているか、そしてそのお金を増やすことを考えているかの方が、より大切だからです。

実際に、年収が300万円ぐらいでも、金融資産を2000万円ぐらい持っている人はざらにいますし、逆に年収1000万円でも、貯蓄がほとんどないという人もいます。したがって、年収を増やすこと以上に大切なのは、収支をコントロールすることなのです。

私は以前、『となりの億り人』という本を書いた時に、いろいろな人に取材をしましたが、金融資産を1億円以上持っている人の中に、年収数千万円というような人は、ほとんどいませんでした。つまり、高所得の人が、必ずしもお金を増やして資産家になっているわけではないのです。

ところが、実際には誰もが高収入の仕事を探そうとしています。そのためにスキルを身に付けようとか、資格を取ろうとか、いわゆる自己投資に熱心になる人は多いようです。

でも、いくらたくさん稼いでも、たくさん使ってしまえば、決してお金は増えません。だから、何も難しい資格を取って高い報酬を得ることができなくても、普通に働いて入ってくるお金をきちんと貯めていけば、お金は自然に増えます。

お金を数えて微笑む女性
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■使う前に貯められればお金は自然と貯まる

お金を貯める場合に一番大切なのは、「“貯める”という行為を、“使う”よりも先に行なうこと」です。稼いだお金をまず使って、残った分を貯めようということではまず不可能です。それではおそらく、永遠にお金は貯まらないでしょう。

でも、給与天引きであれ、銀行口座からの自動引き落としであれ、入った収入の一定割合をあらかじめ先に除いておき、残ったお金で生活するということを続けていけば、自然にお金は貯まります。

前述の『となりの億り人』でも、女性で投資もほとんどせず、給与天引きだけで40代半ばで億り人になったという事例が出てきます。彼女が言ったことでとても印象に残っているのは、「お金はあとから貯められない」ということです。

「本当にそんな単純なことでよいの?」と思われるかもしれませんが、実際、これぐらいシンプルなことをするだけなのです。したがって、こんなものはノウハウでも何でもありません。

でも、「誰でもできる」ということと、「誰でもやっている」ということは違います。わかっていてもなかなかできない人が多いというのも、また事実なのです。

■シンプルに増やしたければ市場全体に投資する

貯めるのはごくシンプルな話だといいましたが、増やすのは貯めるほどシンプルではありません。なぜなら、増やすためには投資をすることが必要ですが、そのやり方は本当にさまざまだからです。「これをすれば絶対に増える」という方法はありません。投資というのは常に先の見えない不確実なものであり、だからこそ増える可能性を秘めているのです。

別の言い方をすれば、「不確実性=リスク」ですから、投資には常にリスクがつきまとい、そのリスクこそが利益の源泉になるということなのです。

でも「貯める」ほどシンプルにはできなくても、やり方によってはある程度、シンプルに「増やす」ことも不可能ではありません。それは、グローバルに分散投資できる投資信託で、積み立てで少しずつ投資を続けることです。

私も10年ぐらい、この方法を続けてきています。投資で考えがちなのは、「どれを買えばいいだろうか?」、そしてそれを「いつ買えばいいだろうか?」ということを、当てようとすることです。

でもそれを当てるのは、非常に難しいことです。だからこそ、市場全体に投資するというやり方が、最も無難な方法なのです。

■「人間の心理」という最大の障壁をなくす

もちろん、投資の途中では価格が変動することもあり、ヒヤリとすることはおおいにあり得ますが、そうした価格の動きに一喜一憂していると、失敗する確率が高くなります。なぜなら、普通の人間の感情としては、投資したものが上がればうれしくなって、さらに買い増しをしたくなりますし、逆に下がると気分は悪くなり、見るのも嫌になります。それどころか、売って投資をやめてしまうということもありがちなことです。

でも本当は、上がれば売り、下がれば買うということでないと儲からないわけですが、実際には人間の心理としてなかなかそういうことはできません。

そこで、売り買いのタイミングや銘柄の選定は考えず、世界の株式市場全体に投資するタイプの投資信託を積み立てで買うというのが、最もシンプルな方法なのです。

■投資に「絶対の正解」はない

ただ、やり方はシンプルですが、実際には値動きを気にせずに積み立てを続けるというのは、心理的にはかなり難しいことです。誰しも価格が上下すると心の中がざわついてくるからです。ですからもし投資を始めるのであれば、失敗することは想定の中に入れ、最初は失敗してもそれほどダメージが大きくならないように、少額から始めるのがよいでしょう。

もちろん、そうした投資信託の積み立てが、必ずしも一番よい方法というわけではありません。投資の方法は千差万別で、「これだけが唯一絶対の正解」というものはないからです。でも、できるだけ“シンプルに増やしたい”ということであれば、この方法が一番よいと思います。

私は定年の時にほとんど蓄えはなかったと言いましたが、定年後もずっと働き続け、毎月定額を自動引き落としにして積み立て、そのお金でグローバルに分散する投資信託を購入し続けています。仕事が忙しい自分にとっては、この方法が最も楽だからです。

■シンプルだが実行は難しい

大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)
大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)

最初の話に戻りますと、「お金を増やすこと」はそれほど難しいことではないのです。普通に働いて、計画的にお金を貯めて、できる範囲内でシンプルに投資を続けていく、という単純なことをしていれば、自然にお金は増えます。

一番大きな問題は、このシンプルなことを頭で理解するのは簡単で誰にでもできますが、実行するのが難しいということです。でも、本当に「お金を増やしたい」と思っているのであれば、その最も簡単な方法は、ここで述べた1から3までの流れをルーティン化し、続けることでしょう。

一番大切なことは続けること。それができれば、お金を増やすことはそんなに難しいことではないのです。

----------

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

----------

(経済コラムニスト 大江 英樹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください