「5000円で50種の投信を買えば"世界の箱庭"を作れる」証券会社社長が開成中学生に教えた"斬新すぎる投資法"
プレジデントオンライン / 2023年4月7日 11時30分
※本稿は、『プレジデントFamily2023春号』の一部を再編集したものです。
松本大さんの講演内容(前編)はこちら。
■質問1:仲間の信頼を得るために必要なことは?
Q:今日は講演いただきありがとうございます。好奇心を持つこと、チーム力で解決していくことが大切なんだと、よく理解できました。ただ、僕はいま、学校内の活動でリーダーをつとめていますが、仲間に信頼してもらうというのは本当に難しいなと悩んでいます。どうすれば仲間に信頼してもらえるようになるのか、教えてくださ(岩渕道浩くん)。
■マネックスグループCEO松本大さんの回答
A:一緒に行動してみよう!
たとえば僕があなたに「僕を信用してください」と100万回言ったとして、あなたは僕を信用しますか? しませんよね。
そもそもあなたを信用するかしないかは、相手が決めることで、そのためにあなたにできることは、「自分はこういう人間です。こういう場合にはこう行動します」という情報を提供することです。胸襟を開いて、素の自分をさらけ出して、相手に伝えるしかないんです。
そして、その人と一緒にいろいろとやってみることですね。一緒に行動することで、「ああ、この人はこういう状況のときには、こう行動するんだ。それなら信用してみよう」とか、「こういう行動をする人間は信用できない」とか、判断する具体的な材料を相手に与えることができると思います。
■質問2:投資方法を教えてください。
Q:投資に興味があるんですが、初心者におすすめな投資方法はありますか?(阿久津豊くん)
■マネックスグループCEO松本大さんの回答
A:5000円で「世界の箱庭」をつくってみて。
いまは、投資がすごく簡単にできるようになっています。投資信託を100円から買える証券会社もあります。ということは、5000円あれば50種類の投信が手に入ります。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/1200wm/img_6c1eca6423b7559d6d1947665044466f115137.jpg)
そこで、5000円で、米国や中国、ヨーロッパなどさまざまな国の、ハイテクや金融、機械、電気やガスといった公共サービスなどさまざまなジャンルの投信を買ってみてください。するとね、5000円でミニ世界というか、「世界の箱庭」がつくれちゃうんです。
この箱庭を眺めていると、毎日値が変わる。当然それには理由があります。どこかで戦争が起きたからとか、こういう経済指標が発表されたからとか、ある企業が技術革新に成功してそれが発表されたからとか、政治情勢が動いたからとか。
そういうものに興味を持って、自分でも調べて、考えているうちに、だんだん世界全体が見えてきます。占い師が持っている水晶玉よりももっとクリアに、この箱庭を通して世界の動きが見えてくるようになります。
ただ新聞を読んでいるだけでは「ふーん」で終わってしまうけど、世界の箱庭をつくって、その値動きを見ながら、なぜこうなったかを検証するようになると、世界で起きていることの意味がよくわかるようになります。
まずはそういうことをやってみると面白いと思います。そしてだんだん、自分はこのあたりに詳しくなってきたなとか、ここに興味があるなとか、わかってきます。まさに好奇心を高く持って勉強できるようになりますよ。
■質問3:リーダーシップを身につけたいのですが。
Q:仲間を引っぱっていくリーダーシップとか行動力がほしいと思うのですが、どうすれば身につきますか。大人になれば自然と身につくものではないと思うのです。心がけなど教えてください(橘高(きつたか)壮平くん)。
■マネックスグループCEO松本大さんの回答
A:やってみるしかありません!
この答えは簡単で、やってみるしかないんです。世の中には本で勉強して身につくことと、自分でやってみなければ身につかないことがあります。英会話やスポーツなんかは後者ですよね。
いくら本で理論を勉強しても、実際に使わなければ会話はうまくならないし、練習しなければスポーツも上達しない。リーダーシップも同じです。何度もやっているうちに、だんだんと身についてくる。
なかなかうまくいかないこともあると思います。でもやらないで考えているだけより、失敗してもいいからやってみたほうが学びは絶対にある。自分の経験からしか学べないんです。
開成には運動会とかいろいろな活動があるので、そういう場面で自分が率先して何かを行う経験を積んでいくのがいいと思いますよ。
■質問4:今後、買いの株を教えてください。
Q:僕は松本さんの『今日から始める! 米国株投資超入門』を読んだのですが、これからは米国株が買いだと書かれていました。ウクライナでの戦争などもあり、また状況が変わってきていると思いますが、今後は何を買えばいいのでしょうか?(中村颯斗(はやと)くん)
■マネックスグループCEO松本大さんの回答
A:株主になって企業に働きかけてみて!
米国株は今後こうだとか、日本株はどうだとか、あのセクターが伸びるとか、そういうことを考えるのももちろん大事だとは思いますが、自分が持っている株の値打ちを上げるには別の方法もあるんです。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/1200wm/img_8ed291c449cd14065e32ea666db75b94471905.jpg)
企業というのは経営者や社員が日々努力して企業価値を上げようとしている。で、みんながそれを見ていて「いいね」と思えば株価が上がる。だったら、「こういういいことをしたらどうですか?」と企業に直接働きかけて、企業価値を高めるという方法もあるんです。エンゲージメント投資というんですが。
たとえばあなたが、どこかの企業の株を買う。株を持てば株主だから、株主総会にも出られるし、質問もできます。年齢制限はないので、中学生でも大丈夫です。
![『プレジデントFamily2023年春号』(プレジデント社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/1200wm/img_2571b866c52e356a08b20fa7f80927f0355506.jpg)
あなたが、ある飲料メーカーの株主になり、総会で「いま、ペットボトルが川や海を汚しているので、自分たちはそれを拾い集めるボランティアをしています。あなたたちも企業の責任においてペットボトルを回収すべきなのではないでしょうか?」と質問したとします。
中学生がこんな質問をすれば話題になるし、企業も真剣に受け止めるはずです。そして、その会社がよりよいペットボトルの回収方法を考えたり、環境にやさしいペットボトルの開発に成功したりすれば、株価は上がるでしょう。
いろいろな情報を分析したり、専門家の話を聞いて判断したりするだけでなく、自分から作用して、自分の持っている株の価値を高めるということが重要だと思います。
■松本CEOの話を聞いて…開成生の感想
▼5000円でいまの世界の縮図がつくれるというのがすごく面白かったです。こういうことを積み重ねていけば、自分自身の好奇心とか行動力につながっていくと思いました。
いま学校で、4人の仲間と一緒に“推し活”をやっています。自分の好きなこととか趣味について発表しあうという活動なんですが、「みんなで同じ方向を向くとすごい力になる」という話も、興味深かったです。(質問3:橘高壮平くん)
▼やっぱり5000円で世界の箱庭がつくれるという話が面白かったです。自分でつくった世界のミニチュアを見て、考えることができるというのはすごく新鮮でした。そのぐらいの額ならお年玉とかを元手に、自分もやってみようと思いました。(質問2:阿久津 豊くん)
▼いま、文化祭の活動をやっていて、自分がまとめ役なんですが、仲間を信じるとか、仲間たちに自分を信じてもらうということがすごく難しいと感じていて、悩んでいます。なので、今日はそのことを質問させていただきました。
信頼関係を築くには、自分をさらけ出し、まずは自分から相手を信頼することが大事なのだということがわかったので、実際にやってみようと思いました。(質問1:岩渕道浩くん)
▼松本さんのお話の中で一番感銘を受けたのは、もともと人が持っている能力というのはそれほど変わらないけど、好奇心とかやる気で、可能性や結果が何倍も変わってくるということです。
「この人すごいな」と思う人がいても、それはもともとの能力の差ではなくて、好奇心ややる気、努力次第でいくらでも高みを目指せることがわかりました。
株にも興味を持っています。まだ、実践はしていませんが、本やネットで勉強しています。
今日のお話の中で、もう一つ面白いなと思ったのは、ただ株を持つだけでなく、自分から企業に働きかけて、それによってその会社が新しい活動を始めるということです。そういう形で企業に自分の思いを伝えることができることを初めて知ったので、ぜひ自分もやってみたいと思います。(質問4:中村颯斗くん)
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マネックスグループ代表執行役CEO
1963年生まれ。開成中学校高等学校卒業。東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズ入社。早朝出勤してニューヨーク市場の値動きやニュースを分析しグラフ化したものを先輩社員に配るなど、上司の指示待ちではなく、自分で仕事をつくる。90年、ゴールドマン・サックスに転職。94年には当時最年少の30歳でゼネラルパートナー(共同経営者)に就任。インターネット時代が到来する直前、個人向けにオンラインで証券取引ができるサービスを会社に提案したが実現せず。だったら自分でつくろうと、99年、マネックス証券を設立。
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(マネックスグループ代表執行役CEO 松本 大 構成=田中義厚 撮影=岡村智明)
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