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6児のワーママ「5万円払ってでも新幹線通勤したい」勉強が続く人は知っている…ラクに習慣化できる3つの要素

プレジデントオンライン / 2023年4月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/structuresxx

新たに何か取り組むとき、継続するためのコツはあるか。医師の吉田穂波さんは「いつでもどこでも自分の自由な時間に勉強できるという状況は、実際は意外と難しい。新しい何かを成し遂げるためには、『決まった時間』『決まった場所』『共に学ぶ仲間』を揃えることで、大きく加速する」という――。

※本稿は、吉田穂波『「時間がない」から、なんでもできる!』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■自分だけの勉強机で「身体感覚」を高めパフォーマンスアップ

勉強するときや頭を使う仕事をするときには、身体感覚にも気を配る。頭をスッキリさせる、頭の回転のよい時間帯にするなど、頭だけに気を使うのではなく、からだが心地よく感じるものにも配慮することが、勉強や仕事をより充実させるためにはとても大事なことだと思っています。

たとえば、ハーバードの教室や図書館、講堂は、どっしりとした大理石の入り口から重厚な椅子(いす)まで、こちらの気分を高尚なものにしてくれる雰囲気に満ちていました。

ここでは「世界のためにいいことをしよう」「世界で初めての発見をしよう」という方向に気持ちが向きます。

最近のセミナーやワークショップでも、学びの「場」や「環境」が内容と同じくらい重要視されていると聞きます。これはその場で感じる身体感覚にも配慮されるようになった、ともいえるでしょう。

私も勉強や頭を使う仕事をするときには、身体感覚が大事だと思っています。そのひとつのこだわりは、自分専用の机です。

学生時代は自分専用の机をもっていても、社会人になってから、あるいは結婚を機に手放してしまったという人は多いかもしれませんが、私はずっと自分専用の机をもち続けています。これは夫も同様なので、我が家には常に夫と私の机がふたつあります。

今はマンションの一部屋を夫婦の書斎にしてそこに机を置いていますが、部屋数が少ないマンションに住んでいたときには、リビングの一角にふたつの机を並べていました。

毎朝、午前3時に起きて顔を洗うと、私は自分の机に向かいます。窓の外はまだ真っ暗で、静寂に包まれています。

椅子に座り、机のライトをカチャリとつけて背筋を伸ばします。家事や育児など勉強以外のことに追われているときでも、ここに座ると気持ちがキリッと切り替わり、からだのスイッチが勉強モードになる感覚があります。

「やる気」だけに頼るのは心もとないものです。机などの場をはじめ、習慣のなかにいくつかの切り替えスイッチをもっていると、やりたいことに対して自然なかたちで心とからだを向かわせることができます。

私の机は、心とからだのスイッチをオンにするきっかけのひとつ、といえそうです。

■机は「自分の心の居場所」

ところで、私には思い出の机があります。それは、中学校に入学したときのお祝いに両親がプレゼントしてくれたものでした。

どっしりとした木製の机で、両手を広げたくらいの幅がある大きな机でした。顔を近づけるとふわっと木の香りが鼻を覆います。椅子も木製で、クッションのところには深い緑色のビロード生地が張られていました。

いかにも学習机といった風でなく、そこに向かうと自分の世界観が広がるような、想像力をかき立てられるような、「器」の大きさを感じさせる机でした。

中学生への贈り物としては豪華な代物。ふと気になって、なぜあのときあんな立派な机をプレゼントしてくれたのかを母に聞いてみたことがありました。

すると母は、当時を思い出しながらこう話してくれました。

「机は自分の居場所。勉強ばかりではなく日記を書いたり手紙を書いたり、大切なものをしまったりと、自分を形成する場所。自分の心を育む場所。だからよいものが必要だと思ったの。そう考えると、あの木の香りのするどっしりとした机は最適だな、と思ったのよ」という返事が返ってきました。

勉強はやろうと思えばどこでもできます。リビングのテーブルでもいいし、こたつでも床でもいい。けれど、母は「場」に配慮してくれた。机に向かったときの私の身体感覚や気持ちがどうであるかを気遣ってくれた。

いつでもどっしり迎えてくれて、木の香りがして、やわらかいビロード生地がお尻を支えてくれる。そういう感覚に包まれて勉強したり、日記や手紙を書くのはとても幸せなことだと、母は教えてくれたような気がします。

私にとって机は、自分の世界を生み出す場であり、自分を形成する場所。今でも机に向かうと、ここは自分の世界。自分をどっしりと迎えてくれる港。そんな気持ちになって、さぁここから前へ進もうという勇気をもらえるのです。

自宅のデスク周り
写真=iStock.com/mixetto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mixetto

■机に向かわなくても勉強できる

自分専用の机をもち続けることにはこだわっていますが、「勉強は机の前でするもの」というこだわりはありません。

1日のうちで机に向かえる時間はごくわずか。朝3時から子どもたちが起きてくるまでの約3時間のみでした。これだけでは、とうていハーバード大学院の受験準備は間に合いません。

そこで次に使ったのが通勤時間でした。

当時、私は栃木県宇都宮市に住んでいたので、東京・銀座にある勤務地へは新幹線通勤をしていました。

片道約1時間半。新幹線に乗っている約55分間は、乗客がぎゅうぎゅう詰めになるラッシュもなく、必ず座れるので勉強には最適でした。

通勤時間は、上手に利用すればかなり有効に使える時間です。

私の友人は、急行に乗れば約20分で仕事場の最寄り駅に着く場所に住んでいましたが、あえて各駅停車に乗り、約40分かけて通勤していました。もちろんその分早く家を出なければなりませんが、各駅停車なら必ず座っていけたそうです。

急行列車に乗って立ったたま20分を過ごすよりは、座って40分を過ごしたほうが有意義に使える。読書もより集中できるし、ノートパソコンを開いてメールを打ったり仕事をすることもできる、といっていました。

「新幹線通勤は大変でしょう?」と周囲からよくいわれましたが、私にとっては快適かつ貴重な勉強時間だったのです。

ひと月の定期代は約10万円と高額ではありますが、そのうち勤務先が5万円までは通勤手当として支給してくれるということで、5万円が自己負担。当時の私にとっては勉強時間の確保はお金には換えられないので、喜んで支払うという気持ちでした。

■「ビヨンド・ザ・細切れ時間」を徹底活用

さて、これで朝の3時間と通勤の往復約3時間を勉強にあてられましたが、1日のうちに勉強できる時間はまだありました。

それは通勤途中の徒歩や電車待ちの時間。家から最寄り駅までの約5分、駅で新幹線を待つ間の約3分、東京駅からオフィスまでの約10分、帰りは駅から保育園まで自転車で約10分。トータル約30分の時間がありました。

この時間に、iPodで英語の格言や会話集のCD、英語版『7つの習慣』の付録CDを聴き、リスニング力をつけました。CDの続きが聴きたくて細切れ時間が楽しみになったことさえありました。

さらに、仕事の昼休みの余った時間、仕事の途中でトイレに行くとき、家に帰ってからは洗濯物を干すとき、食卓の食器を片づけるときなど、もはや隙間時間とは呼べない「ビヨンド・ザ・細切れ時間」ともいうべき時間にも、絶え間なく頭を動かし、小論文の内容を考えたり、メールの返事を用意するなどしていました。

隙間時間を使っているとき、私はときどき、昔、父にいわれた言葉を思い出します。

実は、私は子どもの頃から計画を立てるのが大好きでした。

たしか中学1年生の頃、私は机に向かって中間テストに向けた勉強の計画表をコツコツとつくっていました。この日のこの時間は国語、この時間は数学というように。すると父がそばに来ていったのです。

「机に向かってやる以外にも勉強はできるんだよ。机の上でするだけが勉強じゃないんだ」

父は、たとえば歩いている間やお風呂に入っているときなど、問題集や単語帳を見ていないときも、それらを思い出すことで勉強になるといいたかったのでしょう。

当時の私は半分わかったような、わからないような顔をしていたと思います。今なら「うん、うん、本当にそうだよね」と大いに賛同するところなのですが。

■オムツをたたみながら、論文を読んでいた父

そんな父も、子育てで忙しい時期には隙間時間をかなり活用していたようです。

私の両親は共に大学で教員をしていました。共働きのため、私は生後43日から保育園に入りました。当時は布オムツが主流で、その保育園でも布オムツが使われていました。

毎朝登園すると、親の仕事のひとつとして、その日自分の子どもが使う布オムツの布を四つ折りにして棚に入れておく、という作業があったそうです。乳児のオムツですから、十数枚以上あったと想像します。

ずっとあとになって保育園時代からの友人のお母さんが教えてくれたのですが、私の父は、このオムツをたたむ作業をしながら、傍らの床に置いた論文を読んでいたのだそうです。文章を目で追いながら手は絶え間なくオムツをたたんで、というように。

乳幼児のおむつ交換をする父親
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

留学準備の忙しさから解放された今でも、私は仕事場の廊下を歩きながら、あるいは保育園から駅への道をダッシュしながら、論文の内容を考えたり、昼食を食べながら本を読んだりしています。そんなとき、ふと父を思い出すのです。

■「いつでもどこでも自由にやりなさい」は案外むずかしい

さらに、決まった時間、決まった場所、そして仲間。この3つをそろえることができたら、新しい何かを成し遂げるための大きな加速がつきます。

ある時期、子どもたちと一緒にラジオ体操に行っていたときがありました。近所の公園で、朝の6時半からお年寄りのグループがラジオ体操をやっていて、そこに一緒に加わらせてもらっていたのです。

夏の間は、おにぎりやくだものなど簡単な朝食を用意して行き、ラジオ体操が終わったあとにそのまま公園で食べてくることもありました。

からだはスッキリするし、朝の澄んだ空気のなか、木々の緑や花を眺めながら食べる朝食はとてもおいしく、子どもたちも喜んで参加していたのでラジオ体操の習慣は気に入っていました。

ところがあるとき、夫から疑問の声が上がったのです。夫は出勤のために毎朝6時半には家を出ます。夫は慌ただしく出かけていきますが、私はそれ以上に4人の子どもたち(アメリカ留学中に四女が誕生しました)の着替えや朝食の準備などで大わらわ。

ただでさえ朝は忙しいのに、ラジオ体操の時間に間に合わせるために一層「バタバタ」していました。夫はあまりの私のバタバタぶりを見かねたのでしょう。

「どうしてそこまでしてラジオ体操に行くの? どうしても行かなければいけないものなの?」と。

そんなに忙しい思いをしてわざわざ公園まで行かなくても、体操をやるだけなら、ラジオやYouTubeを使って家でやればいいのでは、というのが夫の言い分でした。

夫にいわれてみると、たしかにラジオ体操に行く日の朝の、私の「バタバタっぷり」はすごいものがありました。

結局、ラジオ体操に行かなければその時間でできることが意外に多くあるとわかり、子どもたちが仕事に出かける夫を見送ることもできるので、ラジオ体操に行くのはやめてしまいました。

すると、朝にからだを動かすのはなんて気持ちいいのだろうと思っていたにもかかわらず、家では一切ラジオ体操をやらなくなってしまいました。このとき改めて思いました。何かを続けるには、「時間」「場所」「仲間」が必要なのだな、と。

あのとき、数カ月間でもラジオ体操を続けられたのは、午前6時半スタートという決まりがあり、公園という決まった集合場所があり、たくさんのおじいちゃんやおばあちゃんという仲間に会えたからでした。

時間や場所の制限はなし、いつでもどこでも自分の自由な時間にできる、というのは一見なんでも可能になる気がしますが、実際はむずかしい。

「この時間しかない」「ここだけ」「これを逃すとチャンスはない」という条件は、自分を縛る制約のような顔をしていますが、その実、集中力をアップさせ、加速度的に成果を上げる大きなアドバンテージになるのです。

■「今だけ」「ここだけ」の制約こそ、集中のカギ

これは勉強でも同じだと思います。

たとえば私の場合なら、高校生のときなどは、好きなときに聴くだけでリスニング力がアップするという英語のCDや、好きなときに学習して添削してもらう問題集など、時間や場所の制限のない勉強法に何度もチャレンジし、挫折してきました。

でも、子育てしながら仕事をするようになってからは、「耳が空いている時間」が通勤時間など、ごく限られたものになったので、「ここで聴くしかない」と思いながらiPodで英語のCDを聴くと、かなり効果が上がりました。

吉田穂波『「時間がない」から、なんでもできる!』(サンマーク出版)
吉田穂波『「時間がない」から、なんでもできる!』(サンマーク出版)

勉強を続けるためには、決まった「時間」と「場所」、そして「仲間」の3つがそろうと最強です。

アメリカ留学を終えて日本に戻ってきてからはコーチングの勉強を始めましたが、このコーチングのレッスンは、週に1、2回、1時間、複数の受講生が電話会議のようなシステムでクラスに参加するというスタイルです。

「仕事をしながら幼い子どもたちを育てて、そのうえよくコーチングの勉強ができますね」といわれますが、独学ではなかなか進まなかったでしょう。

これも決まった「時間」「場所」、そして共に学ぶ「仲間」がいるからこそ続いていた、といえるのです。

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吉田 穂波(よしだ・ほなみ)
医師
医学博士、公衆衛生修士。1973年、札幌市生まれ。三重大学医学部卒業後、聖路加国際病院産婦人科で研修医時代を過ごす。2004年名古屋大学大学院にて博士号取得。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、2008年ハーバード公衆衛生大学院入学。2010年に大学院修了後、同大学院のリサーチ・フェローとなり、少子化研究に従事。帰国後、東日本大震災では産婦人科医として妊産婦と乳幼児のケアを支援する活動に従事。2012年4月より国立保健医療科学院生涯健康研究部主任研究官、2017年神奈川県保健福祉局保健医療部健康増進課技幹兼政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室シニアプロジェクトリーダー兼神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部准教授。2019年より神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。2020年以降は厚生労働省や神奈川県にて新型コロナウイルス感染症対策本部に従事。2歳から17歳まで6児の母。

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(医師 吉田 穂波)

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