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「将来の夢は電車の運転士」はもう諦めたほうがいい…スーツ交通が考える鉄道業界の未来予想図

プレジデントオンライン / 2023年4月12日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lkunl

鉄道の未来はどうなるのか。交通系YouTuberのスーツさんは「列車の自動運転の研究が進んでおり、いずれ無人での運行が普通になるだろう。駅係員もチャットボットに置き換わり、人員削減が進みそうだ」という――。

※本稿は、スーツ『未来の乗り物図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■約90年で鉄道の最高時速は6.5倍に進化した

未来というのは、過去を紐解いていくことである程度は予想がつきます。

例えば、日本ではじめて鉄道が開通したのは、今からおよそ150年前の明治5年(1872年)のこと。東京の新橋と神奈川の横浜を結ぶ29km間を蒸気機関車が走ったのですが、平均時速はたったの32kmで、原付バイクほどのスピードしかありませんでした。

そこからおよそ90年後の1964年には東海道新幹線が開業するのですが、そのころの新幹線の最高時速は210kmです。蒸気機関車のスピードをくらべると、その差はおよそ6.5倍にも進化を遂げています。

より速く、より便利なものへ――、そんな人々の欲望が時代の流れとともに乗り物の性能をアップさせていることをふまえれば、未来の乗り物の姿が浮かび上がってきます。今よりもずっと速く、ずっと快適なものになっているだろう、と。

■自動運転技術は毎日の通勤を趣味の時間に変える

1番の革新的な進化として、やはり注目すべきは「自動運転技術」ではないでしょうか。今後、自動運転技術が進歩すると、鉄道もバスもクルマも人間が運転する必要はなくなります。飛行機もパイロットが必要なくなるかもしれません。

例えば自動運転のクルマに乗った場合、自分は運転する必要がないので当然ながら時間が余ります。その間、ゲームをしたり映画を観たりして移動時間を有意義なものにするエンターテインメントも発達するでしょう。

私は乗り物自体の魅力を体験することや、移り変わる景色を眺めることも含めて乗り物の魅力だと思っていますから、わざわざ移動中にもそれらをする必要性をあまり感じません。もちろん、通勤や通学で自動運転のクルマに乗るのなら、景色は代わり映えのない見慣れたものでしょうし、それであれば趣味や勉強の時間に割いたほうが有意義ということもありますが……。

ただ一つ言えることは、自動運転技術すなわち「AI化の波」は間もなく私たちのもとに訪れるということ。乗り物の魅力を伝える交通系YouTuberの私としては、どんなに便利な乗り物であっても、人間の感受性を大切にしたいと思っています。

『未来の乗り物図鑑』より
『未来の乗り物図鑑』より

■スマホをポケットに入れたまま改札を通れるようになる

電車などの鉄道は運転士が運転しますが、一部の路線ではすでに自動運転の技術が取り入れられています。東京のゆりかもめ、神戸のポートアイランド線などが、無人で運行されているのです。

そのほかにも、さまざまな最先端技術を取り入れる形で自動運転の研究が進められています。その最先端技術の一つが「5G」です。

5Gの正式名称は「第5世代移動通信システム」で、スマートフォンなどで使われている新しい通信技術です。今よりももっとたくさんのデータをもっと速く届けられるようになります。

鉄道業界での5Gの導入には色々な可能性があります。列車内での通信が便利になるのはもちろん、スマートフォンが切符代わりになり、カバンやポケットの中に入れたまま改札を通れるようになるでしょう。

さらに、5Gになることで自動運転も可能になると考えられています。5Gの高速通信とAI(人工知能)やIoT(Internet of Thingsの略で建物や乗り物、家電などをインターネットに接続すること)を組み合わせることで、運転士が乗っていなくてもその列車をコントロールできるのです。運行本数が多い複雑な首都圏の列車の自動運転も、5Gによって未来では当たり前になっているでしょう。

2018年からは東京の山手線で、ATO(自動列車運転装置)の開発のための実験も少しずつ進められています。

今よりも安全な輸送を実現するには、人間よりもミスをしない、機械に自動で運転してもらうのが最適な方法でしょう。一方、運転士になりたいという方は夢を諦めて、別の道を考えるのが良いかもしれません。

『未来の乗り物図鑑』(KADOKAWA)より
『未来の乗り物図鑑』より

■自動列車運転装置は赤字路線への救済措置になるか

利用者が少なくなった鉄道は、赤字路線(鉄道を運行するために使うお金のほうが、運賃などで入ってくるお金より多い状態の路線のこと)になります。経営が難しくなった場合には、鉄道会社は赤字路線の廃線を決断することもあります。

こうした赤字路線は、地方にたくさん存在しています。利用者が少なくなっても、毎日の通勤や通学などでその路線を使う人がいるので、廃線になった場合は利用者にとっては大問題です。

「赤字で苦しむ地方路線を救ってくれるかもしれない」と期待されているのが、列車の自動運転です。自動運転だと運転士が必要ないので人件費(給料など、会社が従業員に支払うお金)をおさえることができて、赤字を減らすことができます。

■人間の運転と自動運転で乗り心地はもはや変わらない

JR九州は、2019年に福岡市の近郊でATO(自動列車運転装置)の走行試験を行ないました。ATOとは列車の加速、減速、停止を自動的に行なえるシステムのことです。この走行試験では、運転士が乗った状態でATOによる運転時間や乗り心地がどういうものかを確認しました。その結果、人間の運転と変わらないATOの安全性が分かったのです。

日本は人口が減っているので、ますます地方路線の利用客は少なくなり、赤字路線が増えると予想されています。

そうした地方路線を廃線にせず、持続させるためにも、鉄道会社は自動運転の早期実現を目指しているのです。

ただ、赤字路線には線路や車両の保守整備の費用の問題もあり、自動運転だけでは万事解決ということにはならないかもしれません。無人運転化で節約できる費用は、全体で見ればごく一部。そのため、不採算路線の廃止を検討することは今後も重要です。

『未来の乗り物図鑑』より
『未来の乗り物図鑑』より

■駅の案内係も生身の人間からAIに取って代わられる

チャットボットとは、文章での会話を自動的に行なうプログラムのことです。最近ですと、米国OpenAI社のChatGPTの精度が高いと全世界で話題になっていますね。例えば、商品の値段を知りたい利用者が質問を入力すると、チャットボットは商品の値段を自動的に返答するようにプログラムされています。

チャットボットを導入することで、人間のスタッフは別の仕事に集中できるようになります。チャットボットはすでに鉄道業界でも使われています。一部の駅では、駅員の代わりにチャットボットが利用客からの質問に答えているのです。切符の買い方や乗換駅がわからない利用客に対し、チャットボットが助けています。

チャットボットを導入することで駅員の負担が減りますし、ほかにもいいことがあります。それはさまざまな外国語の質問にも対応できるという点です。観光などで色々な国の人が日本を訪れますが、そうした人が困ったときもチャットボットがサポートします。

また、チャットボットを開発したオムロンソーシアルソリューションズ株式会社は、駅構内の見回りや清掃を行なうロボットも開発しています。プログラムやロボットなどの高度なテクノロジーを使って利用客にサービスするのが、未来の駅の姿なのかもしれません。

今後は生身の駅係員よりチャットボットの方が、正確で効率的な案内ができる時代になっていくはずです。自動改札機の導入で駅員の削減が行なわれたように、チャットボットの導入でも人員削減が進むでしょう。

『未来の乗り物図鑑』より
『未来の乗り物図鑑』より

■イーロン・マスクが取り組む未来の列車

アメリカの実業家でエンジニアのイーロン・マスク氏が、2013年に「真空ハイパーループ」という交通システムの構想を発表しました。

スーツ『未来の乗り物図鑑』(KADOKAWA)
スーツ『未来の乗り物図鑑』(KADOKAWA)

マスク氏は電気自動車メーカーのテスラの共同創設者で、世界的に有名な大富豪です。

宇宙への輸送のためのロケットを製造開発するスペースXという会社を起業するなど、新しいことにチャレンジし続けているマスク氏が開発を進めているのが真空ハイパーループなのです。

真空ハイパーループとは簡単に言えば、チューブの中をカプセル状の車両が移動するというものです。

チューブはサンフランシスコとロサンゼルスの間を結びます。カプセルは空気圧を利用して移動しますが、そのスピードはなんと最高時速1287km。サンフランシスコとロサンゼルスの間は約600kmで、これは日本で言えば東京から姫路ぐらいまでの距離です。その距離をおよそ30分で移動できるのです。

マスク氏以外の会社でも、真空ハイパーループの技術に取り組んでいる会社は多いので、SF映画のような真空ハイパーループの光景が本当に見られるようになるのかもしれません。ただし、車両が管の中を走る関係で景色は期待できないので、今のように移動を楽しむ旅行は減ってしまいそうです。

『未来の乗り物図鑑』より
『未来の乗り物図鑑』より

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スーツ 交通系YouTuber
本名は藤田裕人。1997年12月、東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。幼少期より鉄道に目覚め、鉄道高校として名高い岩倉高等学校に進学。鉄道員を目指し就職試験に臨むも不採用となり大学進学。在学中の2017年、交通系YouTuberとしてYouTube配信を開始。現在、メインCH「スーツ交通」は登録者数100万人を突破。

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(交通系YouTuber スーツ)

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