人前でしゃべれないほどシャイな人が8週間で社交的に…スタンフォードの実験で出された"自信がつく宿題"
プレジデントオンライン / 2023年4月25日 11時15分
※本稿は、内藤誼人『自信をつける習慣 よけいな迷いが消えていく58のヒント』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■あやしげなパワーストーンにも効果はある?
雑誌を見ていると、後ろのほうに、なんだかあやしげな商品の広告が載せられていることがありますよね。幸運をもたらしてくれるパワーストーンですとか、女性にモテモテになってしまうブレスレットですとか、「本当にそんな効果があるのかな?」と思わずにはいられない商品がずらり。
おそらく、大半の読者はそういう商品には効果などはまったくないと疑っていると思います。
けれども、心理学的には、本当にまったく効果がないとも言い切れないのです。本人がその商品を「本当に効く!」と信じていれば、それなりに効果も出るだろうと思うのです。「鰯の頭も信心から」と言われますが、信じていると本当にそういう効果が出るのです。
■ウソでも、ラベル通りの力が高まった
ワシントン大学のアンソニー・グリーンワルドは、ポスターや新聞広告で実験参加者を募集し、5週間、市販のサブリミナル・テープを聞いてもらいました。
あるグループの人には、「自信がつく」テープを、別のグループの人には「記憶力を高める」テープを聞いてもらいました。そして5週間後、「どれくらい効果がありましたか?」と聞いてみると、なんと50%の人が「効き目があった」と答えたのです。
ところが、じつは、グリーンワルドが手渡したテープは、ラベルが変えられていました。つまり、自信がつくテープの中身が本当は記憶力を高めるテープで、記憶力を高めるというラベルの貼られたテープは、本当は自信がつくテープだったのです。
実験参加者は、まったく関係のないテープを聞かされていたわけですが、ラベル通りの力が高まったと感じたのです。
こういう理由によって、私は、あやしげな商品でも通信販売で買ってみるのも、ひとつの方法かな、と思うのです。本人がその効果を信じれば、本当にその効果が見られるかもしれませんので。
たとえば、女性にモテモテになるというブレスレットを購入したとします。そして、そのブレスレットには本当にご利益があると信じ切っている人がいるとしましょう。
すると、その人は女性に対して自信を持ち、堂々と臆せずに話しかけたりすることができるかもしれません。その結果として、女性と知り合いになれたり、お付き合いができたりすることもあるでしょう。
ブレスレット自体には何の効果がなくとも、本人の期待によって行動が変われば、本当に女性にモテるようになるのです。
あやしげな商品だからといって、「こんなのは詐欺だ」と切り捨ててしまうのもどうなのでしょうか。
ときには、上手にだまされてみて、「よし、これで僕の自信もアップするはずだ!」と思い込むのも、けっして悪くはないと思いますよ。
■変えるべきは意識ではなく、行動
自信がない人は、自分の思い込みを変えようとします。「もっと前向きになろう」「もっと積極的になろう」「もっと自信を持とう」と。
しかし、思い込みはそんなに簡単に変わるものではありません。そういう努力はすべてムダとは言いませんが、思い込みを変えようとしても変わらないと思います。
それよりも大切なのは、まず行動を変えること。
行動を変えれば、思い込みのほうも、行動に合わせて変わってくるものです。思い込みを変えるから行動も変わるのではなくて、行動を変えるから思い込みも変わるのです。
![白いチョークでHOME WORKと書かれた黒板](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/1200wm/img_5caff8b3bbf634ea606b722f6ab462f1262954.jpg)
■行動を変えれば自信がつく
スタンフォード大学のマイケル・ニューマンは、人前でしゃべれないとか、パーティに参加できないとか、公共の場所で食事をするのが苦手、といった症状を示す社交不安障害と診断された36名に実験参加を求めました。
普通、カウンセリングやセラピーでは、悩みの相談を聞きながら、本人の思い込みを変えていこうとするものですが、ニューマンは違いました。純粋に行動だけを変えるように指示したのです。
ニューマンは、毎回のセッションで、まず本人に「これならなんとかできる」という行動を決めてもらいました。参加者は、それを宿題とし、翌週のセッションまでにやってくるのです。うまく宿題をクリアできたら、翌週にはまた別の行動的な宿題を出す、ということをニューマンはくり返しました。
たとえば、「1日に3人の人に挨拶をする」とか、「道に迷ったふりをして、知らない人に道を尋ねてみる」といった宿題を決めて、それを実行するのです。
ニューマンは8週間のセッションをおこなったのですが、行動を変えるようにすると、参加者たちの思い込みも変わってくることがわかりました。「自分はシャイだ」と思い込んでいた人も、積極的に人に話しかける宿題をこなすうちに、「けっこう社交的になれるものだな」と気づき、本人の思い込みも変わってきたのです。
読者のみなさんも、思い込みを変えようとするのをやめましょう。
それよりも行動を変えたほうが、絶対に自信はつきます。そして、行動を変えれば、しみついた思い込みも変わってくるものです。
「こうすれば自信がつきそう」と思うような宿題を、自分なりに決めてください。その際には、行動として、実践できるような形で決めなければなりません。「勇気を出す」といった抽象的な宿題にしてしまうと、いったい何を、どうすればいいのかわかりませんので、もっと具体的に決めなければなりません。「知らない町の駅で降りて探検してみる」「電車の隣に座った人に、『こんにちは』とだけ声をかける」のように、具体的に取り組めるものにしましょう。
毎週、必ず宿題を決めて行動するようにすれば、だいたい2カ月ほどで自信もついてくるでしょう。
■ポジティブな言葉かけは逆効果
自己啓発本を読むと、自分自身にポジティブな言葉かけをしましょう、といったことが書かれています。
「私なら、絶対にうまくいく」
「私は、だれからも愛される」
こんな感じのことを、自分に言い聞かせるといいよ、というのですね。
けれども、こういうポジティブな言葉かけは、自信のない人はやらないほうがいいのです。なぜなら、もっと落ち込んでしまうから。
自信のない人は、「私なら、うまくいく」と思い込もうとしても、すぐに「でも、次もやっぱりダメなんだろうな……」と否定してしまいます。
ようするに、ポジティブになろうとすると、かえってネガティブになってしまうのです。
カナダにあるウォータールー大学のジョアン・ウッドは、249名の大学生に自尊心を測定するテストを受けてもらい、さらにポジティブな言葉かけについて、「役に立つと思いますか?」「気分がよくなるというより、逆に悪くなることもありますか?」と聞いてみました。
すると、図表1のような結果になりました。
![【図表1】ポジティブな言葉かけの効果](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/1/1200wm/img_6177aa09721bfb8a300561c7fc26b74c64234.jpg)
データを見ればわかる通り、ポジティブな言葉かけは、「自信のある人」には効果的なのですよ。けれども、自信のない人には逆効果なのです。
自信のある人は、すでに自信があるわけですから、ポジティブな言葉かけなど、本当は必要としていません。ポジティブな言葉かけが必要なのは、むしろ自信のない人でしょう。ところが、自信のない人は、ポジティブな言葉かけをしようとすると、どうも裏目に出るようです。
![頭を抱える男性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/1200wm/img_f440473b28463478f7ad798a0fec3cb7104401.jpg)
![内藤誼人『自信をつける習慣 よけいな迷いが消えていく58のヒント』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/1200wm/img_d34deda18c7daed23139fdf2dbfd39bd121682.jpg)
読者のみなさんも、もし自分自身にポジティブな言葉かけをやってみて、かえって気分が落ち込んでしまうようなら、ポジティブな言葉かけをやめたほうがいいですよ。自己啓発本にはポジティブな言葉かけがいいと書かれているかもしれませんが、やらないほうがいい人もいるのです。
何回かポジティブな言葉かけをやってみて、「自分には向かないな」と思ったら、別のやり方で自信をつけるようにしてください。
自信をつける方法は、いくらでもありますから、ポジティブな言葉かけにこだわらなくても大丈夫なのです。
----------
心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。
----------
(心理学者 内藤 誼人)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「コンビニの募金箱」にお金を入れると健康になる…「情けは人のためならず」が科学的にも妥当である理由
プレジデントオンライン / 2024年7月15日 16時15分
-
「赤い車」と「白い車」ではクラクション率が2倍以上違う…あおり運転から身を守る「科学的に正しい」方法
プレジデントオンライン / 2024年7月12日 16時15分
-
だから仕事がうまくいき、異性に異様にモテる…心理学者「成功者にサイコパスが多い」納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年7月10日 15時15分
-
恐怖を感じる脳の「扁桃体」が普通の人よりも小さい…サイコパスが「出世しやすく政治家に多い」理由
プレジデントオンライン / 2024年7月9日 15時15分
-
これで素人でも相手の異常性を見抜ける…サイコパスが好んで口にする"食材の特徴"と使用頻度の高い言葉
プレジデントオンライン / 2024年7月8日 15時15分
ランキング
-
1大谷翔平&真美子さんのレッドカーペット中継に… 人気アイドルが「思いっきり映ってる」と話題
Sirabee / 2024年7月18日 15時40分
-
2山手線で妊娠中に気づいた“妊婦キーホルダー”の現実「席を譲ってくれる人は“ほぼ皆無”」
日刊SPA! / 2024年7月20日 15時52分
-
3Q. ノートパソコンが濡れてしまいました。すぐに拭けば、使い続けても大丈夫ですか?
オールアバウト / 2024年7月20日 21時15分
-
4「通知表を付けなおして!」怒り狂う母親との地獄の面談で、その場を収めたの“息子の一言”
女子SPA! / 2024年7月20日 8時47分
-
5もうメンタルが崩壊しそう…最高月収60万円だった「65歳・元大手金融のサラリーマン」、定年後のハローワークで受けた屈辱
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月15日 7時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)