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"毒親"が騒がれる今、こんな神対応の親が実在するのか…学校トラブルで担任教員が驚愕のミラクル保護者3事例

プレジデントオンライン / 2023年4月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

2023年度の新学期がスタートした。児童・生徒の成長には、学校・教員だけでなく、保護者の適切なケアが欠かせないが、世の中には「毒親」や「モンスターペアレント」などと揶揄される過干渉な保護者も存在する。小学校教員歴20年以上「担任」として預かった児童は累計600人以上に達する松尾英明さんが、これまでに出会った、毒親の正反対に位置する「奇跡の保護者」3人を紹介する――。

■モンスターペアレントや毒親の対極の存在

「わが子への愛情が深く、常に守ろうとする親」

これを聞いて「いい親だ」と考える人は多いでしょう。しかしながらこの愛情深さはかえって子供の自立を妨げるケースもあります。愛情をただかければいいわけではありません。小学校教員の私は拙著『不親切教師のススメ』で、家庭教育についてそのような視点でも言及をしています。

近年、「毒親」という言葉がすっかり定着した感があります。その影響でしょうか、「自分は毒親じゃないよね?」と戦々恐々としている方もいます。この造語により、自らの子育てに対する行動が誤っていないか冷静に省みるようになったとすれば、よかったのかもしれません。多くの保護者は毒親にならないような言動を心がけていますが、そんな意識がなくても子供を自立へと導く立派な方もいます。

教員歴20年以上の私が「担任」として預かってきた児童は累計600人以上に達します。同時にその保護者とも接点を持つわけですが、心から頭が下がる方がいるのです。そんな“毒親の真逆”の存在の事例を3つ紹介しましょう。

■ベテラン教員も驚いたミラクル保護者の実例1

▼事例1 わが子(娘)が下校中、一緒にいた子供がふざけていたため、押されて転んでケガをした

この場面で、読者のみなさんは学校や担任教員にどう対応するでしょうか。

A 学校に電話をして事実を伝え、相手の子供を指導してくれるよう依頼する
B 相手の子供の保護者にも謝罪をさせるよう求める
C 学校の監督責任を追及し、具体的行動の決定を求める

このケースは「いたずらしすぎてうっかりケガをさせてしまった」という子供間ではよくあるトラブルです。多いのはAだと思われます。常識の範囲ですし、学校も迅速に対応するでしょう。

一方、Bは学校としても苦慮します。おいそれと承諾できないのです。なぜなら、親御さん同士でうまく話し合いができない場合、双方が怒り出して大炎上することがあるからです。

Cは、言いたくなる気持ちはわかるのですが、何せ子供のすることなので指導しても完全に制御することは不可能です。また、厳格に対応するとなると下校中ずっと教員が付き添って歩くことが考えられますが、実現は難しそうですし、根本的な解決になりません。

この事例では、担任は翌朝登校してきた子供が顔にすり傷を負っていることに気付き、本人に聞いたことで事実を認識しました。関係の子供たちにも事実確認をして、すぐにケガをした子供の保護者に電話をしました。

膝に絆創膏を貼った少女は腰を掛けて休んでいる
写真=iStock.com/kool99
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kool99

とはいえ、ケガをさせられた側にとっては「ふざけて娘の顔にすり傷をつけられた」状態です。しかも(下校時のことで)担任より保護者が先に事態を把握しています。場合によっては、担任や学校の対応に怒り出す可能性さえ十分にあります。

ところが、当該の保護者は次のように担任に話したのです。

「先生にご対応していただき、大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。娘に事情を聞きました。本人は転んで痛かったしその時は悔しかったようですが、よくよく話を聞いたら落ち着き、ケガ自体は平気と言っておりました。また、転んだのは自分もよそ見をしていたせいでもあると申しております。娘とはよく話し合い、次から登下校の歩行の際には特に気を付けようということになっております。お相手のお子さんも親御さんも、気にされるといけませんので、どうかお気になさらぬよう、これからも変わらず仲良くしてくださいとお伝え願えれば幸いです」

ここで最も大切なポイントは、帰宅して状況を話した子供に対して親は、子供が痛かったことや恐らく悔しかったであろう気持ちをしっかり受け止めているという点です。

また、この子どもは『不親切教師のススメ』で書いているように、「なるべくケガをしないように、自分が気を付ける」という担任の指導を素直に受け止め、普段から相手を責めないという選択をとっていることも重要なポイントです。

そのため、子供も冷静になれて、友達ばかりの責任ではなく「自分事」として考えられています。

この子供と保護者の対応には全く頭が下がる思いでした。正直に言って感動しました。大ごとにならずに済み、押してしまった側の子供の行動もその後すっかり改善されたことも付け加えておきます。

■ベテラン教員も驚いたミラクル保護者の実例2

▼事例2 毎年わが子の所属学級が崩壊している状況での、新年度の担任の家庭訪問(※わが子が学級を荒らしている原因にはなっていない)

この場面において、新しいわが子の担任に何を伝えますか。

A 今度こそ学級崩壊させないよう学級の子供をきちんとしつけてほしい
B どんなことがあっても、どうかわが子を守ってほしい
C 学級経営や教育についてのアドバイスをする

担任側は崩壊の事実を知っているだけに、家庭訪問の際にも緊張感があります。迎える保護者としては自分の子供は特に問題ないのに、何年間も学級崩壊しているという、到底受け入れがたい状況です。学校に対する不信感や文句が山ほどあって当然です。

AやBの選択肢はもちろんあるでしょうし、教育への関心が高い親であれば、Cも不自然なことではありません。

しかしここで、私が訪問した家庭の対応は、予想とは180度に異なるものでした。あいさつを済ませると、保護者はなんと深々と頭を下げて、このように仰いました。

「家庭の方針として、学校でのことは、先生を信頼し一切をお任せすると決めております。一年間、どうぞよろしくお願いいたします。」

言われたこちらがどう思ったか、想像がつくことと思います。ここまでの経緯があってもなお、全幅の信頼を置くと宣言していただいているのです。「もう、とにかく全力でやるしか道はない」とやる気が腹の底から湧き上がってきたことは言うまでもありません。

この事例の場合、AやBのようにわが子を直接守ろう、というのが普通の対応です。ところが、この保護者は、「担任を信頼する」という選択肢をとりました。こんな反応を誰が予想するでしょうか。

教室で仲良し3人組がカメラに向かってピースマーク
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

想像するに、こうした保護者の元で育つ子供の心は安定し、確実に自立に向けて成長していくと確信できます。家に帰れば親は温かく受け入れてくれ、学校では先生を頼りにしなさいと諭す。そうなれば子供も先生の言うことを素直に聞き、どんどん伸びていきます。

実際この子供は、学業成績は言うに及ばず、習い事でも全国大会上位の成績を収め、文武両道の素晴らしい成果を上げていきました。

この言葉を言われた担任としても、何とかその思いに報いたいと前向きになります。そうなると、学級のいいところが見えるようになります。結果として、その年度の学級はとても落ち着き、無事に一年間を終えることができました。

■ベテラン教員も驚いたミラクル保護者の実例3

▼事例3 学級通信上で、わが子がよく褒められている

これはトラブルではありませんが、この状況において親はどう反応するでしょうか。

A うれしいと感じるが特に何も伝えない
B 「いつも褒めていただきありがとうございます」とお礼の気持ちを伝える
C もっと褒めてほしいとお願いする

これは、普通に考えると、うれしいことです。ただ皆さん、仕事や家事などで忙しいので、Aが最も多く、Bはまれです。しかし、今回の事例は少し事情が違います。

これは私が教員としての経験年数の浅い、20代の頃の話です。子供のタイプは快活で、素直で真っすぐ、ストイックな努力家タイプです。褒めるところはたくさんあります。

こちらの親御さんからは、次のように言われました。

「先生。うちの子供をたくさん褒めてくださるのはうれしいです。ありがとうございます。ただ、できれば今度、まだ学級通信で褒められていない子供たちの良い面も知れたらうれしいです」

聞いた私は、大変びっくりしました。まさか、他の子供の良い面も教えてほしいと言われるとは思わなかったのです。「今後、紹介していきます」と約束し、実際に行動に移したことは言うまでもありません。

この親御さんは子供の成長を大局的に見ています。わが子がよりよく育つためにも、周りも一緒に育たねばならないという教育観をもたれていたのだと思います。

ノートパソコンに向かって、みんな笑顔のグループ
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

想像してみてください。

わが子が褒められているというのに、わざわざ自分が「クレーマー」だと思われる可能性のあることを、他の子供のためにするでしょうか。

かなりの勇気のいる行為です。普通に考えて、言うのは相当面倒です。私は、この方が労力をかけてしてくださった指摘は間違いないことだと心服し、その後の自分の子供への見方や在り方を全面的に改めるよう努めるきっかけとなりました。

今回紹介した3人の保護者に共通している点があります。

一つ目は、どの保護者もわが子に深い愛情を抱き、まずはその痛みや苦しみをいったん受け止めてその愛情を思い切り注いでいるという点です。

二つ目は、他のお子さんに対してもわが子のように考え、真剣に対応しているところです。

三つ目は、子供の成長と自立を信じているという点です。

これらが結果的にわが子だけでなく、周りの子供、そして担任をもよりよい方向に導いています。

もちろん、今回の対応はどの学校・教員・保護者にとっての「正解」ではありません。子供は一人ひとりが個性的で全く違い、同様に保護者もそれぞれ異なる個性や背景をもった全く違う人間ですが、家庭教育と学校とはどうあるべきかというヒントにするべく、このような保護者も実在することを知っておくといいかもしれません。

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松尾 英明(まつお・ひであき)
公立小学校教員
「自治的学級づくり」を中心テーマに千葉大附属小等を経て研究し、現職。単行本や雑誌の執筆の他、全国で教員や保護者に向けたセミナーや研修会講師、講話等を行っている。学級づくり修養会「HOPE」主宰。『プレジデントオンライン』『みんなの教育技術』『こどもまなびラボ』等でも執筆。メルマガ「二十代で身に付けたい!教育観と仕事術」は「2014まぐまぐ大賞」教育部門大賞受賞。2021年まで部門連続受賞。ブログ「教師の寺子屋」主催。

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(公立小学校教員 松尾 英明)

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