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バレなければ不倫してもいいのか…神奈川県知事選での「12年前の不倫を暴露」という文春砲は正しいか

プレジデントオンライン / 2023年4月14日 9時15分

神奈川県知事選で当選確実となり、支援者らに頭を下げる黒岩祐治氏=2023年4月9日、横浜市内 - 写真=時事通信フォト

■黒岩知事と11年間不倫していた女性の告白

選挙期間中にメディアが候補者のスキャンダルを報じることは許されるのか?

結論からいえば、一定の条件さえクリアできていれば、報道することに問題はない。

4月9日(日曜日)に神奈川県知事選の投開票が行われ、4選を果たした黒岩祐治氏(68)だが、選挙の終盤、 週刊文春(4月6日発売の4月13日号)が、黒岩氏が11年間不倫していた女性が彼との男女関係を赤裸々に告白した、と報じたのである。

その内容を見てみよう。

黒岩氏と11年間「不倫関係」だったと告白したのは都内在住で黒岩氏とは一回り近く下のA子さん。出会いは黒岩氏がキャスターとして活躍していた2000年7月だという。

彼女は都内の企業で働くキャリアウーマンだった。

共通の友人が主催する会合に出席すると、黒岩氏から話しかけてきた。2次会でバーに行った後、帰りの方向が一緒だったため、「送っていくよ」と赤いアルファロメオで送ってもらう途中、いい雰囲気になりキスをしたという。そのとき黒岩氏は、

「僕はバレなければ不倫してもいいと思う」

といったそうだ。

翌日、再会を楽しみにしているというメールが来た。

2カ月後、西麻布の焼肉屋でディナーを共にした。その時は店の個室でキスをしたりしたが、そのまま別れたそうだ。

■一度関係を持つと、お決まりのコースになり…

肉体関係を持ったのはこの年の秋ごろ。黒岩氏から、

「メールで『今度はホテルで会いましょう』と。ただ『僕は絶対ラブホテルはダメ! ちゃんとしたシティホテルを予約してね』とも書いてあった。それで新宿駅近くのシティホテルを押さえました」(A子さん)

一度関係を持つと、それがお決まりのコースになった。逢瀬は週2回の時もあれば、月1回の時もあったという。

黒岩氏はどんなホテルに泊まっても2万円しか出さず、足が出た分は彼女が払っていたそうだ。

だが、こうした逢瀬は、2004年ごろから中断する。彼女が結婚したのだ。

「でも上手くいかなかった。私がマンションで一人暮らしを始めると、そちらに来るようになりました」(同)

彼女の家を「クラブ」と呼び、「今日は食事いる。ビールもよろしく」と連絡がきた。

そんな関係が綻び始めるのは、2008年に番組がリニューアルされることになり、黒岩氏はコメンテーターの一人に降格されてしまったあたりからだという。

「いつでも辞めてやる」などと不満を漏らすようになり、2009年にフジテレビを退社して国際医療福祉大大学院の教授に就任する。そして2011年3月4日には、神奈川県知事選挙に出馬することを決め、彼女にいきなり、一方的にこう告げたそうだ。

■「遊びだったんだよ!」

「四月の知事選に出馬するつもりだ。今後は忙しくなるから、逢えなくなる」

自分の都合しか考えない身勝手ないい分だが、彼女は「分かった」と頷くしかなかったという。

黒岩氏は、その年の4月10日に初当選を果たすのだが、知事になってからは豹変(ひょうへん)したそうだ。

「知事になって以降の黒岩さんの態度は本当に冷たいものでした。電話しても『バカヤロウ』と怒鳴り散らす。それでも八月六日、久しぶりに黒岩さんと逢って、私の家で関係を持ちました」(同)

だが、コトが終わるとさっさと帰ったそうだ。

その後の8月26日。黒岩氏から別れようといってきたという。

「遊びだったんだよ!」

そう電話でまくしたてた。A子さんは、「なんて卑劣な男だと愕然とした」という。そして、「関係を奥さんに伝える」といってしまったそうだ。

驚いた黒岩氏は、「会って話そう」といい、六本木のカラオケボックスで話し合ったという。

黒岩氏は、「関係を続けよう」といったそうだが、「私を性のはけ口として弄んでいただけだった」と思い断った。

「その数カ月後、メールをプリントアウトして黒岩さんの自宅に郵送しました。『家内が自殺してしまう』と電話がありましたが、私も自殺したくなるほど苦しんだ。あぁ、私は本当に捨てられたんだなと思いました……。この日が黒岩さんとの最後の会話です」(同)

■文春の報道は選挙妨害に当たらないのだろうか

文春は黒岩氏を直撃する。A子さんと不倫関係だったのではという質問に、「思い出せませんね」と否定した。

だが、逃げ切れないと思ったのだろう、黒岩氏の事務所から、A子さんと男女関係にあったことは事実、12年前に知事選に出馬することになり、公職に就く以上身を正さなくてはならないと考え、A子さんに説明し、男女関係を断った。

だが、その後私の妻に手紙を送ってこられ、妻は大変傷つき、私は妻に心から謝罪しましたと、A子さんの話が事実であることを認めた。

A子さんは、

「今となっては、私もバカだったなと思います。ただ、ここまでお話ししてきたことが、十二年にわたって県知事を務めてきた黒岩さんという男の実像なんです」

と話している。

なぜ、12年以上たってから告白したのかという疑問はあるが、黒岩氏の生身の姿を有権者に知らせ、投票する判断材料の一つにしてもらうという目的は達したと思う。

今回、4選が決まった黒岩氏は選挙公約に、「パパママ目線を踏まえた保育環境の充実」「生活困難女性支援の強化」などを謳っていた。

県政記者によれば、

「私生活では妻と二人の息子がいます。元々出馬に反対だった妻には『頭が上がらない』と公言。地元紙の取材に『休日は妻とミュージカルや映画を楽しみ、エネルギーを充電する』と明かすなど、家族を大事にする姿勢もアピールしてきました」

12年以上前の男女関係を、当人が選挙戦の真っ最中なのにメディアが報道することは許されるのだろうか。選挙妨害には当たらないのだろうか。当然出てくる疑問であろう。

■いま話題のAIチャットにたずねてみると…

私は、最近話題のAIチャットの一つであるMicrosoft Bingにこのことを聞いてみた。

するとこんな答えが返ってきた。

「選挙中にメディアが候補者のスキャンダルを報じることは、憲法で保障された表現の自由や報道の自由に基づいて許されると考えられます。

ただし、メディアは公正かつ中立な報道を行う責任がありますので、スキャンダルの内容や根拠が事実に基づいているかどうか、候補者に対して反論や訂正の機会を与えているかどうかなど、報道倫理に則っているかどうかを検証する必要があります。

また、有権者もメディアが報じるスキャンダルに惑わされず、自分の目で候補者の情報を確認し、自分の判断で投票することが大切だと思います」

わずかな時間でこれほど簡潔に要点をまとめられるのは、熟練した記者でもなかなかできないのではないか。

そのほかにも、その醜聞が公共の関心事であるのか、メディアが自らの偏見や利害に基づいたものでないか、その報道の背景に政治的な意図や圧力がないかがチェックされなくてはいけないと送信してきた。

選挙演説中の候補者
写真=iStock.com/tsuyoshi_kinjyo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tsuyoshi_kinjyo

■選挙中は報じないという「慣例」はなぜ破られたのか

選挙中は、候補者たちの口あたりのいい公約は何度も聞かされるが、その候補者の生身の人間性を知ることはほとんどできない。

新聞、テレビは選挙中はもちろんのこと、立候補が決まった時点から、中立公正報道を振りかざし、候補者個々の人間性について報じるという思考をストップさせてしまう。

だが、有権者の多くは、その候補の人間的な生身の部分も知り、誰に投票するかの判断材料にしたいと考えているに違いない。

ましてや、黒岩氏は4期16年という長きにわたって知事を務めることになる。

私が週刊誌の現場にいた頃は、立候補予定者のスキャンダルを掴んだとしても、それを報じるのは公示の直前か、選挙が終わった後で、選挙中に候補者のスキャンダルを報じたという記憶は私にはない。

それは、選挙期間中では報じたことがまともに議論されないで「怪文書」扱いされてしまうのではないか。新聞、テレビは「中立公正」を旗印にしているから、後追いしないで無視されてしまうという危惧があったと思う。

その「慣例」を破ったのは、2016年の東京都知事選の時の週刊文春報道だったと記憶している。

■公共の関心事ならば、躊躇することはない

このとき週刊文春(7月21日発売の7月28日号)は、「鳥越俊太郎都知事候補 『女子大生淫行』疑惑 被害女性の夫が怒りの告白!」と報じたのである。

小池百合子候補が優勢だといわれている中で、民進党、日本共産党、社会民主党、生活の党と山本太郎となかまたちの推薦を受けた鳥越氏は、元人気キャスターということもあって、有力な対抗馬として注目を集めていた。

鳥越氏はこの報道が事実無根だとして、選挙中に東京地方検察庁に対し刑法第230条名誉毀損(きそん)罪などで提訴したが、会見は開かなかった。

スキャンダルの影響もあってか、小池候補に100万票以上の差をつけられ、鳥越氏は落選したのである。

翌年の3月、鳥越氏が刑事告訴していた週刊文春と週刊新潮の編集長に対して、東京地検特捜部は「嫌疑不十分」だとして不起訴処分にした。

この判決が、選挙中でも、しっかりした事実の裏付けがあり、公共の関心事ならば、報道することに躊躇することはないと、週刊誌を勇気づけたことは間違いない。

だが、今回は、黒岩氏がすぐに会見を開いて、「『県民の皆さんに大変な不快感を与えてしまった。がっかりさせてしまった』と頭を下げた」(日刊スポーツ4月6日11時42分)と謝罪したことが、鳥越氏の時と違った。

それに、失礼ないい方になるが、有力な対抗馬がいない実質無風選挙だったこともあり、黒岩氏の優位は動かなかった。

■だが、「悪評」はどこまでもついて回る

事実、4月9日に投開票された神奈川知事選は、2位に130万票近くの大差をつけて黒岩氏が当選した。投票率も40.35%と、前回、前々回とほぼ同じであった。

だが、白票、無効票が前回より12万票増え21万票もあったことが、県民の“怒り”を表していた。

事務所に来た黒岩氏に笑顔はなく、万歳三唱もなかった。黒岩氏は、「神奈川のプライドを傷つけてしまった」「これからゼロからのスタートではなくてマイナスになった」「正直今の私の心境としては万歳と言って喜ぶ心境ではない」と語った(以上はスポーツニッポン4月10日付より)。

自民党関係者は「もう少し早く不倫報道が出ていれば結果は分からなかった。ほかの候補者の知名度が低くて救われただけ。有権者は苦渋の選択を迫られた」(同)といっている。

しかし、これからの4年間は茨の道になるだろう。妻を騙(だま)して長年不倫関係を続け、知事選に出るとなったら彼女を冷たく捨て去った男という「悪評」はどこまでもついて回る。

黒岩知事が、「県民目線の県政」「やさしい社会の実現」といくらいっても、もはや県民の胸に響くことはないだろう。

私は、黒岩知事は任期半ばで自ら降りるのではないか、そんな気がしている。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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