仕事がデキる社員ほど頻繁に動かしたほうがいい…人事異動を成功させるための4つのコツ
プレジデントオンライン / 2023年4月21日 10時15分
※本稿は、小山昇『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■組織をつくるときは、はじめに「理想の組織図」を決める
人事異動の基本的な考え方は、次の「4つ」です。
② 職場のナンバーワン、ナンバーツーを動かす(成績の良い人、昇格した人を中心に異動させる)
③ 同じレベルの社員を組み合わせる
④ 社員の特性を踏まえて、人材配置する
①組織に人を貼り付ける
組織をつくるときは、はじめに「理想の組織図」を決めて、あとから人を割り振ります。人を見て組織を変えると中途半端になりやすく、大きな変化をもたらすことができません。
実際の例で考えてみましょう。
部長が3人います。このとき私は、「部長が3人いるから、3つの部にそれぞれ配属しよう」とは考えない。
「5年で売上2倍の組織をつくるには、あるいは、何があっても潰れない会社をつくるには、A部門、B部門、C部門、D部門の4つの部署が必要だ。しかし今、部長は3人しかいない。だとすれば、課長からひとりを部長に昇格させよう。新しい人材を登用すれば、理想に近づける」と考えます。
「理想の組織図」を思い描き、「理想の組織を実現するには、どのような人材が必要か」を考え、人を異動させる(抜擢する)。こうすることで、組織を大きく変えることが可能です。
人に組織を貼り付けるのではなく組織に人を貼り付けるのが、私の組織のつくり方です。
■優秀な人を動かすことで、平均以下の人材が奮起する
②職場のナンバーワン、ナンバーツーを動かす(成績の良い人、昇格した人を中心に異動させる)
仕事ができる人は、その仕事が合っているのだから異動せずに固定することでどんどん成果を上げる、と考えがちです。でもそれは間違いです。
「仕事ができない人」を動かすのではなく、「仕事ができる人」を頻繁に動かします。
仕事ができる人を率先して動かす理由は、「飽きさせないため」という理由のほかに、「若手社員や、伸び悩んでいる社員の成長をうながす」という目的からです。
![【図表】人事異動では、その組織のナンバーワン、またはナンバーツーを積極的に動かす](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/e/1200wm/img_fe16c1a346557e51be3ec330e89c30c4225000.jpg)
武蔵野の人事評価は、グループ内の相対評価です(本部長職は絶対評価です)。相対評価とは、グループに属する社員を比較して、評価結果に順位をつける考え方です。
賞与額、昇給額、昇格・昇進はすべて、相対評価の成績によって決定しています。会社の業績が良くても悪くても、必ず順位がつきます。
人事評価が良い「A評価以上の社員」が全体の「25%」。人事評価が良くない「B評価以下の社員」が全体の「75%」です。
では、「ナンバーワン、ナンバーツー」あるいは、「A評価以上の社員(成績が良い社員)」を動かすと、どうなるか。
答えは、B評価以下の社員が成長して、層の厚い組織になります。
![【図表】「ナンバーワン、ナンバーツー」あるいは、 「A評価以上の社員(成績が良い社員)」を動かすと](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/1200wm/img_75d7c0629cd4183deb4241e9698380be427814.jpg)
組織は、「優秀な2割」「平均的な6割」「貢献度の低い2割」で構成されると考えられています。「2・6・2の法則」です。
この法則では、上位2割がいなくなっても、残りの8割に優劣が生じて、再び2・6・2の割合に分かれるとされています。今までは平均的、あるいは貢献度が低かった社員(B評価以下の社員)は、上位2割が抜けたことで、「上位に上がれる可能性」が生まれます。
上がいなくなれば、「次は自分がA評価を取れるかもしれない」と奮起します。その結果、元の2・6・2の割合に戻り、組織は全体的により強くなるのです。
■組織内に大きな実力差をつくらず、社員の実力を揃える
③同じレベルの社員を組み合わせる
組織を編成するときに、「誰と、誰を組ませるのか」に配慮する必要があります。組ませ方を間違えると、組織の生産性が落ちます。
次の2つの組織を比べた場合、どちらが強い組織だと思いますか?
●組織A……優秀な上司と、それなりの部下からなる組織
●組織B……それなりの上司と、それなりの部下からなる組織
答えは、組織Bです。
多くの社長は、「仕事ができる上司には、仕事ができない部下をつけよう。そうすれば、部下の実力が上がる」と考えます。ですが、この考えは、間違いです。
上司が優秀すぎると、部下はやる気をなくします。「あの上司のようにはできない」「あの上司の指示はレベルが高すぎて、自分には無理」と諦めてしまうからです。自分の実力の低さを痛感し、自信を失います。
同じように、部下の実力が上司より高すぎても、部下のモチベーションは上がりにくい。
実力の劣る上司には、実力の勝る部下をマネジメントできないからです。
上司と部下の実力差がありすぎると、組織は脆弱(ぜいじゃく)になります。組織を強くするには、「同等の力を持っている者同士で組織をつくる」ことです。
わが社は基本的に、
「仕事ができる上司と、仕事ができる部下」
「仕事がそれなりの上司と、仕事がそれなりの部下」
で組織を構成しています。
組織内に大きな実力差をつくらず、社員の実力を揃える。すると、どちらの組織も結果を出します。これが正しい組織のつくり方です。
![ミーティング中のグループ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/1200wm/img_f853e6934d8f5084f2dde821646f4846310473.jpg)
■苦手な仕事を押し付けても成長は望めない
④社員の特性を踏まえて、人材配置する
「一所懸命仕事をしているのに結果が残せない」「同じレベルの社員と競わせているのに、力を発揮できない」としたら、「不得意な仕事をさせている」ことも原因のひとつです。
人には得意・不得意があります。単純な仕事ではA評価が取れないが、複雑な仕事に変えたら取れる社員がいます。
そこでわが社は、社員の思考特性、行動特性、得意・不得意、向き・不向きを客観的に判断するために、さまざまな分析ツールを活用しています。
分析ツールを運用することで、次のような効果が得られます。
●社員の持ち味に配慮した人材配置ができる
●部署ごと、業務ごとに必要な人材配置ができる
●社員のメンタルヘルス(心の健康)を守ることができる
また、わが社は社員280名中、51組(退職者を含めると71組)が社内結婚して一緒に仕事をしていて、この15年間で離婚は2組です。
■人の特性は見た目だけでは判断できない
私は、「会社は、将棋に似ている」と考えています。
将棋には、王将、金将、銀将、桂馬、香車、飛車、角行、歩の8つの駒があります。
「飛車は、縦、横にどこまでも進める」
「角行は、斜めにどこまでも進める」
「金将は、斜め後ろ以外、1マスずつ進める」
など、駒にはそれぞれ特徴(特性、長所)があります。指し手は、駒の特性を活かしながら、戦局を有利に展開していきます。
![将棋盤に並ぶ駒](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/5/1200wm/img_4513cf594c4e021cb6cccd596cb391a4436636.jpg)
会社も将棋に似ています。
「どの社員が、どのような長所を持っているか」
「今、どの社員を、どのように動かせばいいのか」
がわかっていなければ、会社を、組織を、強くすることはできません。
ただし、将棋の駒と違って、人の特性は見た目だけでは判断できない。本音を口にするともかぎらない。
したがって分析ツールによる客観的な分析が必要になります。
■分析ツールで社員の得意・不得意を客観的に判断する
【武蔵野が導入しているおもな分析ツール】
▼エナジャイザー……人と組織の活性化を図る適性検査
社員の業務能力、性格、業務適性、価値観など、目に見えない特性を診断できます。また、上司のパワハラ・セクハラ傾向も把握できるため、未然防止の指導も可能です。
▼エマジェネティックスⓇ……人間の思考特性と行動特性を分析するツール
脳科学の理論と統計学をもとにして、人間の思考と行動のスタイルを測定(プロファイリング)するツールです。診断テストの結果から、プロファイル(分析結果)を作成。その人の特性を「4つの思考特性」と「3つの行動特性」で分析します。
プロファイルの違いは、「考え方」「伝え方」「仕事の進め方」の違いとしてあらわれます。
プロファイルを読み解くと、
●その人がどのような行動を取ることが多いか
●どのような学習方法を好むか
●新しい状況に対して、どのようにアプローチする可能性が高いか
●人からどう見られ、人にどう反応することが多いか
●何を得意とし、何を不得意としているのか
などが明らかになります。
▼MARCO POLO(マルコポーロ)……性格検査、経営人材特性、最適役割特性、ビジネスセンス、基礎能力などの検査ツール
![小山昇『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1200wm/img_0478f7d058f235dd0436e9b5170600a4257104.jpg)
MARCO POLOは、「双方向」の適合性を分析できるアセスメントツールです。社員のパーソナリティだけでなく、個人と組織の「双方向」から活躍可能性を測定します。
ストレス耐性の低さが際立つ社員に対しては、さらに別のツール(HCi-AS)を使って詳細を把握します。
社員の特性を無視して「苦手なことでも、できるようになれ」と仕事を押し付けたところで、成長は望めない。
人事異動をするときは、社員の「得意・不得意」といった特性を踏まえた上で動かすことが大切です。
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武蔵野 社長
1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティングを展開。全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に『人材戦略がすべてを解決する』『新版 経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』(以上、KADOKAWA)、『4万人の社長・幹部がベンチマークした すごい会社の裏側(バックヤード)!』(あさ出版)、『儲かる会社のコミュニケーションの鉄則』(朝日新聞出版)などがある。
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(武蔵野 社長 小山 昇)
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