「和食は好きですか」日本に23年住む元グーグルの経営コンサルを萎えさせた"仕事のできない人"の愚かな質問
プレジデントオンライン / 2023年4月19日 19時30分
※本稿は、ピョートル・フェリクス・グジバチ『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■欧米の一流は周到な「準備」をして雑談に臨む
欧米の一流のビジネスマンは、しっかりと事前準備をして雑談に臨んでいます。
IRレポートなどを読み込んで相手先の会社の経営状態や業績の実績、今後の見通しを知っておくことは当然ですが、SNSで近況を検索したり、同僚や友人、知人を通じて、「相手はどんな人なのか?」という情報を徹底的に調べた上で対峙(たいじ)しています。
事前に「武器」を準備して、雑談のストーリーを描いているのです。
例えば、自社のプロダクト(商品)を相手先にプレゼンテーションする場合を考えてみましょう。
欧米の一流ビジネスマンは、スライドやパワーポイントで作成したプレゼン資料を準備するだけでなく、相手企業に関する業界ニュースなどに目を通して現状を把握するのはもちろん、担当者の仕事との向き合い方や考え方、家族構成、趣味・趣向などを徹底的に調べ上げて事前準備を整えます。
その担当者にピンポイントで照準を合わせて、武器(雑談)を用意するのです。
・どんな情報を求めているのか?
・何を知りたがっているのか?
・何を心配して、何を不安に思っているのか?
・どんなプロセスでプレゼンすれば納得するのか?
・相手はどのタイミングで意思決定をするのか?
・最終決定は誰がするのか?
こうした視点から総合的に判断して、適切な雑談をスタートさせます。
「ご長男の太郎さんは来年には中学生になられるそうですが、受験はされるんですか? 最近の中学受験はこんなことがポイントになっているようですね。そのための準備としては……」
相手が最も関心を寄せている話題について、有益な情報を提供することで、「信頼」「信用」「尊敬」を得るための第一歩を踏み出しているのです。
僕が大切にしている英語の名言に「I'd like to finish my work before I start it」というものがあります。
「仕事を始める前に、それを終わらせるのが好き」という意味ですが、世界で活躍するビジネスマンは確実に成果を得るために、周到な準備を整えて相手と向き合い、本題に入る前に仕事を終えてしまう……くらいの覚悟を持って雑談をしているのです。
■日本のビジネスマンの50%は「事前準備」をしていない
正確な統計データがあるわけではなく、あくまで個人的な印象ですが、日本のビジネスマンの半数くらいは何の準備もせずに雑談をしているように思います。
ほとんどの人は、必要最低限の事前準備はしているものの「細切れ」の情報を投げかけることが多いため、ラポールを作れる状況には、あまりならないように感じています。
僕の会社を訪ねてくるビジネスマンの多くは、僕を説得して協力を頼みたいとか、何らかの目的があるはずですが、予備知識を持ってやってくる人というのは、それほど多くないようです。
僕の著書を読む時間がなかったとしても、事前に5分くらいネット検索をすれば、いろいろな情報を得ることができます。
最低限のことだけでも知っておいてもらえると助かるのですが、開口一番「お国はどちらですか?」と聞かれたり、「和食は好きですか?」と尋ねられるのでは、こちらのモチベーションにも影響します。
「和食が嫌いなら、23年も日本にいませんよ!」と無愛想に言いたくなるのを我慢するのが大変なくらいです。
![伝統的な和朝食](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/1200wm/img_17d095b873482d2884d029282b8698e3398533.jpg)
日本のビジネスマンでも、仕事ができる人は事前に情報を集めて、鋭い質問を投げかけてきます。
「この本にはこう書かれていたのですが、私はまったく違う見方をしています」
こんな話が飛び出せば、僕としては、思わず身を乗り出して真剣に話に耳を傾けます。
「なるほど、それは面白い考え方ですね」
こうして雑談が始まれば、短時間のうちに「この人は仕事ができそうだな」とか、「信頼できそうな人だな」と思えるようになり、お互いがリラックスして本題に入ることができるのです。
人によっては、面談の前に電話やメールで連絡をしてくることもあります。
「明日、1時間いただくことになっていますが、その前にひとつだけ確認しておきたいことがあります」
事前に疑問点を明らかにして、適切な情報を整えようとしているのです。
こうした工夫ができる人は、例外なくいい仕事をしています。
できる人ほど、前もっていろいろ調べて、有益な情報をもたらしてくれます。
■「何のために相手に会うのか?」を見つめ直す
雑談を苦手と感じたり、どうも上手くいかないと思っている人の多くは、その意図や目的を見失っているため、本質的な会話ができていないように思います。
雑談で何を話すかを考える前に、「何のために相手に会うのか?」という根本的なテーマを改めて確認する必要があります。
・今日、相手に会う目的は何か?
・お互いに何が知りたいのか?
・どんな関係性を作りたいのか?
・その関係性は短期か長期なのか?
・相手は何を理解すれば納得するのか?
テーマの整理ができれば、俯瞰(ふかん)して考えてみたり、長期的な取り組み方を考えるなど、相手との接し方を工夫することができます。
そこがわかれば、雑談の準備も方向性が見えてきます。
その日の「本題」ばかりが気になって、こうした視点を見落としているケースが意外と多いように思います。
■「出たとこ勝負」の雑談をしても勝ち目はない
事前の準備が大切なことは、1対1の面談だけではなく、複数の人たちが顔を合わせる会議の場であっても同じことです。
世界のビジネスマンは、会議のアジェンダに関する資料だけでなく、参加者個々のデータを収集して会議に臨んでいます。
・会議の参加者はどんなメンバーなのか?
・それぞれがどんな意見を持ち、どんな見方をしているのか?
・この会議でどんなことを聞きたいのか?
・何を肯定材料と考え、何が否定材料になるのか?
![ピョートル・フェリクス・グジバチ『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/1200wm/img_fbd65596d4598139d1d44adb0da7b2a8275087.jpg)
日本のビジネスマンは、「根回し」に悪いイメージを持つ人も少なくないようですが、会議の目的は「相手を説得して結果を出す」ことですから、事前にできる限りの情報を集めて準備を整えるのは当然のことです。
相手がどんな状況で会議に臨んでいて、何を知りたがっているのか?
あらゆる状況を想定して、その突破口を雑談レベルで切り開いてから、本題に入ることは、ごく当たり前の手法となっています。
「出たとこ勝負」の雑談をしても、勝ち目はありません。
彼らは「目的につながらない雑談は意味がない」と考えているのです。
■相手の表情やその日の様子を確認しない人が多い
新入社員や仕事ができないビジネスマンには、名刺交換を終えると名刺ばかりに注目して、相手の表情やその日の様子をまったく確認しない人が少なくありません。
相手が誰であっても同じような対応しかできず、口を開けば、「いやぁ、今日は暑いですね」という紋切り型の雑談を始めますから、これでは人間関係の構築は難しいと思います。
世界のビジネスマンは、相手の表情や佇(たたず)まい、服装、仕草などを冷静に観察して、その場で確認の言葉を投げかけます。
準備していた質問や雑談を筋書き通りに話すのではなく、相手の状況に応じて、臨機応変に対応を変えているのです。
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プロノイア・グループ代表
TimeLeap取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、グーグルでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。『ニューエリート』(大和書房)ほか、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『PLAYWORK』(PHP研究所)など著書多数。
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(プロノイア・グループ代表 ピョートル・フェリクス・グジバチ)
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