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店舗によってイスやテーブルがバラバラでもOK…ゴーゴーカレーが「居抜き物件」をそのまま使うワケ

プレジデントオンライン / 2023年4月25日 14時15分

写真提供=ゴーゴーカレー

2003年に創業したカレーチェーン「ゴーゴーカレー」は、業界の異端児として急成長し、現在の店舗数は業界2位になっている。いかにして店舗を増やしたのか。創業者の宮森宏和さんの著書『カレーは世界を元気にします』(光文社)より紹介する――。

■飲食業界に来る大学生は決して優秀ではない

ヤル気のある社員をどうやって集めるか。パンデミックの前から、スカウティングは飲食業界の大きな課題となっています。勤務時間が長い、仕事がキツい、さらには給料が安いといったイメージが強いこともあって、なかなか人が集まらなくなっているのです。

たとえば成績優秀な大学生は、飲食業界にはほとんど興味を示してくれません。一流企業からいくつも内定をもらい、夏休みに入る前には就活が終わっている。そして海外旅行に出かけたり、研究に没頭したりと好きなことをして最後の学生生活を満喫する。もちろん、飲食業界に就職する大学生はいます。

しかし、就活で苦戦して夏休み以降も内定先を決められなかった人が流れてきて、飲食業界の門を叩くケースが多いのです。

こうした現実があるので、ゴーゴーカレーでは大卒というブランドをほとんど重視していません。日本はまだ大卒信仰が根強いところがありますが、そもそも大学に進学する若者は、昔と違って珍しくありません。その中で優秀な学生に来てもらえないことを考えたら、大卒にこだわる意味はほとんどないわけです。

■ゴーゴーカレーに人事部はない

学歴よりもヤル気と元気を重視するゴーゴーカレーには、日本の会社には珍しく人事部がありません。その話をすると、多くの人から「では、誰が採用を行うのですか?」と訊ねられます。

昨今は採用を外部に委託する会社も少なくないようですが、ゴーゴーでは、社員やスタッフみんながスカウトマンとなり、「この人と一緒に働きたい」「この人なら絶対に活躍できる」という人に声かけしているのです。

こうなると必然的に、ヤル気も元気もある前向きな人が集まるようになります。人事部が採用を担当しても、入社する人たちが人事部の人たちと一緒に働くわけではありません。そこがまず大きなポイント。

そして、面接では限られた時間でしかその人を見ることができませんが、ウチのシステムでは社員が友人や知人を推薦するため、長くその人と付き合っていることで人柄などを見誤ることが少ないのです。

そもそも、いい加減な人を採用すると、苦労するのは自分たちなのです。だから、「これは!」という人だけに声をかけることになる。実際に社員やスタッフが連れてきてくれた人の多くが、早く職場になじみ、長く働いてくれています。

人事部にお任せではなく、1人1人が当事者となって一緒に働く仲間をつくる。ゴーゴーカレーではそうやってチームづくりをしているのです。

■大卒より高卒のほうが頼りになる

「一緒に働く仲間は自分たちで決める」というスカウティングの中で重視しているのが価値観です。といっても、けっして難しいことではありません。

働く意欲があって、ゴーゴーカレーを通じて「世界に元気を届けたい」という思いがある人なら誰でもいいと考えていますが、そうした中で頼りになるのが地方出身の高卒の若者たち。4年間をなんとなく過ごしてしまうことが少なくない大学生と比べて、早くから自立して働くことへの覚悟が生まれているからです。

彼らはゴーゴーでどんな部署に配属されても、ガンガン働いてくれます。働く意欲が旺盛で飲み込みも早いので、日に日に成長し、昇進していきます。

地方出身の高卒の若者と並んで、頼りになるのが外国の方々です。専門学校や添乗員の時代から外国の方々と接してきていたので、もともと起業時からグローバル化を目指していて、外国籍の方をたくさん仲間にしたいと考えていました。

少子高齢化で若者が減っている日本は、外国の方がいなければ多くの産業が回らない大変な状況になっています。飲食業界も例外ではありません。外国の方、特にアジア系やアフリカ系の人に嫌悪感を示したり、見下したりする人も少なくないようですが、とんでもないことだと思います。

外国人にも当然いろんな人がいるわけですが、日本に来て働いている人々はバイタリティがあって、少なくとも2カ国語は話せるわけですし、とても優秀な人が多い。

首都圏のコンビニエンスストアでは、もう20年以上も前から外国人スタッフを当たり前のように見かけます。彼らは流暢に日本語を話し、レジ打ちから品出し、コピー機やコーヒーメーカーのメンテナンスなど多岐にわたる仕事をテキパキとこなしていて、素直に頭が下がります。

コンビニエンスストアでバーコードをスキャン
写真=iStock.com/TAGSTOCK1
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TAGSTOCK1

■一緒に働く仲間は自分たちで選ぶ

外国の方に支えられているのは、ゴーゴーカレーも同じです。思い出すのは、西新宿に出した1号店でのこと。オープンから連日の大行列で、猫の手も借りたい状態になったことは先述のとおり。

そのとき、これはまずいと思って店先に「アルバイト急募」の貼り紙をしたところ、さっそく翌日に応募してくれたのが、陳さんという中国・上海出身の女性でした。この方、日本語はたどたどしいのですが、皿洗いがものすごく早くて本当に助けられました。直後に加わった韓国人のソノンさんという女性とともに大活躍してくれました。

陳さんはスカウティングでもいい働きを見せてくれました。オーダーに対してキャベツの千切りが追いつかない状況を見て、彼女は言いました。「私ね、キャベツ切るのすごく早い人知ってるよ!」「おお! じゃあ、明日にでも連れて来てくださいよ!」それで駆けつけてくれたのが元板前の日本人男性・馬島さん。

彼は、われわれが2人でやっていたことを1人でやってのけるほどのすさまじいスピードでキャベツの千切りの山を築くなど、本当に助けられました。

連日連夜の大入り満員をさばけたのも、この3人がいたからといっても過言ではありません。いま思えば「一緒に働く仲間は自分たちで選ぶ」を、創業時から実践していたわけです。

■外国籍の労働者の時給が安すぎる

そしてあるとき、ソノンさんに「こんなに助けてもらっているから時給を上げないとね」と言ったところ、思わぬ反応が返ってきました。喜んでくれると思いきや、「え⁉ 私が外国人なのに、給料上がっていいんですか⁉」と驚いているのです。

不思議だなと理由を聞けば、こういうことでした。彼女たちはほかのアルバイト先では、「時給が上がるのは日本人だけ」「外国籍の自分たちは昇給ナシの最低賃金で働くことが普通」なのだと思い込んでいたのです。

そういうことがあって、ぼくは初めて日本の経済を下支えしてくれている外国人たちが、その働きには見合わない安い賃金で酷使されている現実を知ったのです。もちろん、いまも当社は多くの外国の方々に支えられていて、中国に加えてベトナムなどアジア圏のスタッフが大活躍してくれています。時給も他社より高い水準です。

また、陳さんがそうだったように、彼らは人手不足になると、コミュニティの仲間を連れて来てくれる。日本でがんばろうと思っている彼らは働く意欲に満ちあふれ、店を盛り上げてくれています。

ときどき彼らと食事会をすることがありますが、彼らの国の飲食店に行くことは、ぼくにとっても異文化に触れるいい学びの場にもなっています。

ちなみに、馬島さんはその後、ニューヨーク店にも行ってもらい、現地のアメリカ人スタッフにゴーゴースピリッツを叩き込んでくれ、ニューヨークではレジェンドスタッフとして語り継がれているのです。

そして76歳を迎えた今でも新宿のお店でがんばってくれていて、非常に助かっています。大事なことはヤル気と元気。地方出身の高卒の若者たちや、主婦やシニア人材に支えられて、ゴーゴーカレーは大きくなってきたのです。

■フランチャイズで最も大事にしていること

ゴーゴーカレーの国内店舗は、本部がキャプテンやスタッフを雇用する直営店を除くと、半数以上が本部と加盟店契約を結ぶフランチャイズ店舗です。

直営店にもフランチャイズにも、メリットとデメリットがあります。本部から見た場合、直営店はマネジメントをしやすいという利点がありますが、出店への投資をすべて負担しなければならず、多店舗展開にはかなりの資金が必要となります。

一方、フランチャイズはパートナーとなる個人や法人の資金を活用するので、本部としては負担を抑えて店舗を増やしていける。ただし、直営店に比べてマネジメントが難しいというデメリットがあります。

「ゴーゴーカレー」創業者の宮森宏和さん
写真提供=ゴーゴーカレー
「ゴーゴーカレー」創業者の宮森宏和さん - 写真提供=ゴーゴーカレー

そんなフランチャイズとの関係をどう構築していくか、そこに会社のカラーが明確に出ると思います。

当社は第一に、フランチャイジー(加盟店)を「世界に元気を届けるパートナー」と考えていますから、マニュアルの遵守はもちろん大事ですが、それ以上に「世界に元気を届ける」というゴーゴーのミッションに賛同していただけることを重視しています。

■居抜き物件でもOK

フランチャイズ加盟店をパートナーと考える当社では、加盟のコストをかなり低く設定しています。あるコーヒーチェーンのフランチャイズになるには、開店コストに1億円かかると聞いたことがあります。壁紙からイス、テーブルと、なにからなにまで統一したものを本部から買い揃えなければならないからです。

宮森宏和『カレーは世界を元気にします』(光文社)
宮森宏和『カレーは世界を元気にします』(光文社)

ブランドのイメージを守るためとはいえ、それではお金がかかりすぎる。脱サラした個人や零細企業、中小企業では、とても負担できる額ではありません。ゴーゴーカレーでも、ある程度の統一感は重視しますが、内装やテーブル、イスには厳しい条件は設定しません。味に影響が出なければ、使えるものは使うというスタンスです。

飲食店をやめた物件を内装ごと引き継いで始める「居抜き」物件についても、サステナビリティの観点からも推奨しています。加盟のコストを低くするいちばんの理由、それはなによりもヤル気と元気がある人を応援したいからです。

世界に元気を届けるゴーゴーとしては、お金がなくてもそれがあればウェルカム。がんばる人たちの背中を強く押したいのです。

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宮森 宏和(みやもり・ひろかず)
「ゴーゴーカレー」創業者
1973年、石川県金沢市で農家の長男として生まれる。高校を卒業後、専門学校を経て、地元の旅行会社に勤務。添乗員だった29歳のときに、同郷同世代の松井秀喜選手が、ニューヨークのヤンキースタジアム開幕戦で打った満塁ホームランに感銘を受け、脱サラを決意し、身一つで上京。2004年の新宿1号店オープンを皮切りに日本全国にチェーン店を広げ、金沢カレーブームを巻き起こす。創業3年でニューヨークにも出店し、その後は世界各地にもフランチャイズ展開。現在、国内外で100店舗達成。

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(「ゴーゴーカレー」創業者 宮森 宏和)

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