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「小4からでは入れないらしい」噂を信じてわが子を小1から塾に放り込み、潰してしまう残念な親の行動原理

プレジデントオンライン / 2023年4月20日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中高一貫校の受験率が年々高まる中、小1から進学塾に通うケースが急増している。プロ家庭教師の西村則康さんは「進学塾のカリキュラムは小3の2月(小4)からですが、早めに通塾する子が増え、定員いっぱいで入れないことがある、との噂を鵜呑みにして焦って子供を塾に入れるケースが増えています」という――。

■「人気塾では小4からではもう入れないらしい」という噂

一般に中学受験の勉強は、塾の受験カリキュラムがスタートする小3の2月が幕開けとなる。ところが近頃は、小1から進学塾に通う子が急増している。その一因になっているのが、「人気塾では小4からではもう入れないらしいよ」という噂話だ。

近年、首都圏では中学受験熱が高まり続けている。中学受験をさせたいと思う理由はいろいろあるだろうが、させるからにはできるだけ偏差値の高い学校へ行ってほしいと思うのが、多くの親の本音だろう。

そうなると難関校の指導に長けた進学塾を選択することになるが、小4から塾に入れようと思っても、低学年から塾に通っている子たちがいっぱいいて、入れたくても入れられないと、親たちの間でささやかれているのだ。「だったら、ウチの子も小1から塾に通わせなきゃ」と、ますます低学年から塾に通う子を増やす形となっている。

結論から言ってしまうと、100%とまでは言わないが、たいていは小4からでも十分入れる。考えてみてほしい。塾は勉強を教えるところだけれど、学校とは違って営利を追求する企業だ。生徒数が多ければ多いだけ、売り上げになる。もちろん、進学塾としてある程度のレベルを保っていくには、入塾テストで学力の振り分けは必要になり、そのレベルに達していない子は入塾できないが、そうした子は全体から見ればごくわずか。小4になったらクラスの数を大幅に増やすので、ほとんどの子が入塾できる。塾側が早いうちから優秀な生徒を確保しておきたいためか、はたまた塾側の知らないところで勝手に噂が流れていったのかその真相は分からないが、真実ではないということをまずは知っておいてほしい。

■早期塾通いの弊害は親が成績に一喜一憂してしまうこと

低学年から塾通いをしても、小4以降の成績が保証されるわけではない。どの進学塾でも、中学受験のカリキュラムは小4から設定されている。計算や漢字は先取りができたとしても、頭を使って考える思考力・応用問題は、抽象概念が理解できるようになる小4以降でないと厳しい。

では、低学年コースではどんなことを学ぶのかというと、数や模様の連続性などの法則を見つけたり、迷路やクイズのような問題や簡単な図形問題を解いたりするなど、思考や発想系の学習が中心になる。

こうした頭を使う学習は、中学受験の勉強と直結するわけではないが、「マイナス」になるものでもない。子供が「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤に楽しく取り組めるようなら、勉強系の習い事の一つとして選択するのもアリだろう。要は楽しく取り組めていれば問題はない。

母親とハイタッチする子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ところが、多くの場合、そうはいかない。というのは、進学塾である以上、低学年コースであっても月1回テストが実施され、成績表に得点と順位が出るからだ。わが子の成績が出ると、穏やかな気持ちでいられなくなるのが親というもの。すると、テストでいい点を取るための勉強が始まってしまう。しかし、こうした思考や発想系の問題は対策しようがないし、できたからといって中学受験の合格に直結するわけでもない。

ところが、多くの親は、テストの点や順位といった“数字”に焦りまくり、「もっと勉強をさせなきゃ!」と、低学年のうちからテキストの問題を何度もくり返し解かせようとしてしまう。そうしてドリル漬けの生活にしてしまうのだ。

そうなってしまうと、自由な発想を鍛えようという本来の学習の目的からどんどんズレていってしまう。また、“やらされる勉強”は学習意欲を削ぎ、勉強嫌いな子を生み出す。中学受験の勉強が始まる小4の段階で、すでにタスクを与え続けられる勉強に疲れ、勉強嫌いになっている子は少なくない。

■低学年に必要なのは基礎学力と身体感覚

低学年の学習で大切なのは、基礎学習と身体感覚をともなったさまざまな体験をさせることだ。これをないがしろにして、難しい問題ばかり解かせても意味がないばかりか、その後の伸びを止めてしまう。

低学年のうちは、「読み・書き・計算」をしっかり身に付けること。近年の中学入試の問題文は非常に長く、読解力が要になっている。こうした問題を前にしたとき、「こんな長い文章は読めないよ……」と怖じ気づいてしまう子は、難関中学には合格できない。どんなに長い文章を前にしても「まずは読んでみよう」と前に進めるようになるには、読むことに慣れることが大切だ。また、正しく読むには言葉や漢字を知っていなければならない。

勉強をしている子供
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thai Liang Lim

さらに、近年の思考系・記述問題を解くには、図を書いたり、条件を整理したりといった手を動かしながら解決の糸口を見つけていく「考える型」を身に付けることが重要になっている。書くことに慣れておくこと、書くことを面倒くさがらないことが、その後の成績に直結してくる。そして、言わずもがな算数の基礎となる計算力を盤石なものにしておくこと。この3つさえ押さえておけばいい。

学習の目安としては、学年×国語・算数各10分。1年生なら国語10分、算数10分の計20分、2年生なら国語20分、算数20分の計40分、3年生なら国語30分、算数30分の計1時間机に向かうことができれば十分だ。そうやって、まずは毎日の学習習慣を身に付けるようにしよう。

最も大事なのは、身体を使った学びだ。子供は遊びやお手伝いなど、日常の体験を通じていろいろなことを学んでいく。子供は何かに熱中しているとき、学びのセンサーが大きく動く。

例えば好きな鉄道を調べているときに、「共通点はここ、相違点はここ」と仲間分けをしていたり、砂遊びで砂の山を崩さないようにするにはどうしたらいいか、遊びながら試行錯誤していたりする。また、外に出ればさまざまな自然現象に出会い、料理などのお手伝いの中で物質の変化を知る。そのときは、「なぜそうなるのだろう?」と分からないことも多いかもしれないが、中学受験の勉強が始まってからいろいろなことを学んでいくなかで、「あっ、あのときのアレがこういうことだったんだな」と、自分の体験と新しい知識が結びつく瞬間がある。そのときの「なるほど!」という納得感が勉強を楽しいものにしていく。その数が多ければ多いほど、勉強好きになっていくのだ。

■子供がぼーっとしていると不安になる親たち

あれもこれもやらせて子供の時間を習い事や学習で埋めてしまう親がいる。確かに小さい子供は何にでも関心を持ち、花開いていくか分からないので、たくさんの種まきをしておくことは大切だが、やらせすぎには注意が必要だ。

近頃、子供がぼーっとしている時間に耐えられない親が増えている。まるで、何かをさせていないと遅れてしまうのではという強迫感に追い詰められているように習い事や学習や体験学習で埋め尽くしてしまうのだ。

「わが子のために良かれ」といろいろ与えたくなるその親心も分からなくはないが、子供にはぼーっとする時間も必要だ。ぼーっとしている時も子供の脳は活発に動いている。見聞きした事柄を整理し記憶につなげてくれている。

しかし、毎日の予定がぎっしり詰まっている状態では、それができない。子供が楽しんで取り組んでいるのであればいいが、そうでない場合は、親が良かれと思って用意したスケジュールをこなしていくだけの日々になってしまう。低学年には余白が必要であることをぜひ知っておいてほしい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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