「4タイプ分析」男を出世させる妻、ダメにする妻
プレジデントオンライン / 2012年8月6日 8時0分
■「放任」望むセレブ夫尽くしたい「婚活組」
NHKのドラマ「ゲゲゲの女房」が好調だ。10年7月以降の視聴率は常に20%前後を記録(関東地区、ビデオリサーチ調べ、雑誌掲載当時)。「朝ドラ」としては珍しく、20~30代の女性に人気が高いという。
現代の婚活中の女性たちを見ていると、同作で松下奈緒さんが演じる村井布美枝のような「尽くす妻」への憧れの高まりを感じる。彼女たちの悩みは、こういったものだ。
「夫の出世を妻として支えてあげたいのに、それに値する男性に出会えないんです」
今回、「出世させる妻かどうか」を2軸から4タイプにわけた。このうち、拙著『セレブ妻になれる人、なれない人』の取材では、40代以上のほとんどが「ゲゲゲの女房」型だった。仕事で多忙な「セレブ夫」は、妻に対し「稼ぎ」や「管理」よりも「放任」を求める。家庭での雑事に関しては妻に一切まかせっきり。子供は勝手にすくすくと育ち、何時に帰っても文句を言われないので、思い切り仕事ができる。経済は自分が握って、妻には「家計費」を決まった額だけ渡す――。「放任」が出世の背景にあるのだろう。
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「プロデューサー」型/夫の才能を妻が見出し、成功に向けてバックアップ。夫の仕事にも積極的に口出しをする。クリエイターや政治家では事例豊富だが、日本のサラリーマンでは難しいか。
「同類婚」型/高収入同士のカップル。性別役割分業の意識が薄い。稼ぐ妻が夫の留学費用を捻出することもある。夫の出世と子育てのためにキャリアを捨てられる人は「セレブ妻」化。
「昭和妻」型/家計は妻が管理し、夫には小遣いだけ渡す。収入減でも生活レベルは落とさず、自らが働くこともない。夫を「長男扱い」するため夫婦間は没交渉。夫の出世意欲も減退していく。
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女性たちは、ドラマのように夫の仕事内容を深く理解したうえで、献身的な支援をしたいと望む。しかし、夫は「放任」してほしいのだ。現実に、多くの「できる男」は自己中心的で、自我を殺せる空気のような妻を求めている。だから、「今日の仕事はどうだったの?」などと聞かず、「子供が熱を出したから早く帰って」といったメールは打たない妻が、「夫を出世させる妻」の一類型といえる。
「ゲゲゲの女房」型の正反対が、「管理」の強い「プロデューサー」型である。米国では、地位のある男性は挨拶のときに、「今の自分があるのは彼女のおかげ」とパートナーである妻をほめたたえる風習がある。これは「おべっか」ではない。ビル・クリントン元大統領の妻ヒラリー・クリントンやバラク・オバマ大統領の妻ミシェル・オバマは、いずれも弁護士資格を持つキャリアウーマンで、ある時期から夫の政治活動を猛烈に支えるようになった。
日本でも菅直人元首相の妻菅伸子さんは舌鋒鋭い「姉さん女房」として知られる。また、お笑い芸人の太田光氏の妻で所属事務所社長の太田光代さんや、デザイナーの佐藤可士和氏の妻でマネジャーの佐藤悦子さんも同類型だろう。
しかし日本ではまだ希有な例にすぎない。政治家やクリエイターといった職種ならば夫婦での協働は活きやすいが、組織のなかで仕事をする場合には、日本では職場と会社の距離が遠い。それなのに「早く課長になれ」「もっと英語やったら?」と尻をたたかれても、かえって男性はくじけてしまう。「最強」の味方である「プロデューサー」型の妻と結婚すると、一見心強いようだが、もし応えられなかったら……。そう思って委縮してしまうリスクもあるのだ。
起業家男性を対象に「婚活」に励む35歳・総合職のNさんは、「今まで企業で働いて得たノウハウで、彼の会社を成功させる手助けができると思うんです」と言う。残念ながら、これはキャリア女性の陥りがちな罠だ。取材する限りでは、妻に自分のテリトリーである会社で「思い切り手腕を振るってほしい」と考えている男性はいない。
実際、取材した「セレブ妻」たちは、「能ある鷹は爪を隠す」タイプが多く、「やればできるけれど、夫に望まれない限り仕事には口を出さない」というスタンスを貫く人が多かった。キャリアを活かすことよりも、「いつ彼が帰ってもいいように、15分で食事を出せる支度が常にしてある」というスキルが求められるようだった。
それでは高学歴高収入キャリアカップルの「同類婚」型はどうだろうか。国立大学を卒業し、テレビ局に就職した30歳のHさんは、老舗企業の3代目社長と結婚後、しばらくして退職した。その理由を次のように話す。
「2人とも仕事をしているときはストレスでケンカばかり。家庭内に社会的責任の大きな仕事をしている人が一人いたら、一人はバックアップに回らないと」
高いキャリアを持つ男女の「同類婚」型では、どちらかが折れなければうまくいかない。特に忙しすぎる2人に子供ができると、夫婦仲には緊張感が伴うようになる。「妻が自分より出世したら」という重圧に苛まれ、実際に妻の稼ぎが増えてセックスレスになったというケースもあった。
■「結婚維持活動」が「昭和妻」化を防ぐ
しかしキャリア妻をうまく利用して出世に活かすタイプの男性もいる。男の沽券にこだわらず、「MBAで留学したいからお金かして!」とさらり言える性格の男性なら、妻の経済的バックアップを享受できる。どうやら35歳以下になると、「男の沽券」にこだわらない男性が増えてくるので、「同類婚」カップルもうまくいくようだ。
京都大学を卒業し、大手商社に勤めている32歳のTさんは、同じ京大卒の夫が、会社を辞めてMBA取得を目指すと言っても、止めなかった。2人の子供を持つ彼女は、「今は私が一家の大黒柱ですが、いずれ回収できますから」と頼もしい。仕事を一時中断してもキャリアアップを考える男性にとっては、稼ぐ力のあるキャリア女性が「出世させる妻」になりうるのである。「同類婚」型は比較的、最近の風潮だ。40代以上では「ゲゲゲの女房」型が、最も「出世させる妻」の可能性が高い。ただし、「ダメにする妻」であるリスクもある。
むしろ、稼ぎのない「ゲゲゲの女房」型は、「同類婚」型に比べてリスクが高い。なぜなら、結婚後、とくに第一子出産後に「昭和妻」となる場合が少なくないからだ。
「昭和妻」とは、バブル期の負の遺産である。休暇はハワイ、子供は私立、自分はブランド物……。一方、夫には「なけなしのお小遣い」しか渡さない。収入減を理由に復職などを求めても、「あなたが養ってくれるって言ったでしょう?」と拒否し、生活レベルは絶対に下げない。なかには、「稼がない昭和妻」が家計破綻を招いたケースさえあった。
いくら稼いでも小遣いは上がらないから、仕事へのモチベーションは高まらない。ある心療内科の医師は「男を去勢する妻」と呼んでいた。こうした家庭では「夫は長男扱い」になるので、当然「親子間」はセックスレスになる。妻子を養うためだけに必死で働き続ける夫は、女にもモテず、出世もできない。
実は、妻を「昭和妻」に変えないための方法がある。それは「愛情メンテナンス」だ。
昭和妻たちも、最初から夫を「給料運搬人」と見なしているわけではない。まず第一子誕生時に、「子育てを手伝ってくれなかった」という理由から関係が悪化。「ありがとう」や「おいしいね」という言葉も交わされなくなり、会話や食事、セックスなどの回数が減る。第二子誕生後には、もう「あきらめ」が入り、一見、平穏だが、もう夫は「何も期待できない給料運搬人」と見なされている――。
子供ができた後、欧米の育児書では夫婦としての新しい関係の構築にページを割くが、日本の育児書には子育ての方法しか書いていない。結局のところ、結婚後の「結婚維持活動」を怠れば、どんなに控えめで尽くし型だった妻も「モンスターワイフ」となる。取材した「セレブ夫」たちは「セレブ妻」に愛されていた。
「愛される夫」になることこそ、妻を「最強の味方」にする唯一の方法なのだろう。
※すべて雑誌掲載当時
(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授 白河 桃子)
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