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だれでも20万字の「伝わる文章」が必ず書ける…”激バズ”連発ライターが「魔法の文章術」メソッドを公開する

プレジデントオンライン / 2023年4月20日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zorica Nastasic

「伝わる文章」を書くためにはどうしたらいいか。ルポライターの安田峰俊さんは「『伝わる文章』とは、情報を伝達するときに生じる『抵抗』が少ない文章のことだ。文章力に自信がない人は、自動翻訳ツールなどを使って、正確な外国語に翻訳できる文章を書く訓練をするといい。書きたいことの見取り図を作り、150~300字程度の部品をつなぎ合わせれば、理論的には誰でも伝わる20万字の文章を書けるようになる」という――。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(4月14日号)に掲載された「実践!「文章が書けない」病の克服法」の一部を大幅に加筆したものです。

■電流と同じように「抵抗」の低い文章を目指す

① そもそも伝わる文章ってなんですか?

私が定義するなら「義務教育を終了した令和の日本人の大部分が誤読しない」「何度も読み返さなくても、書いてある内容を一発で理解できる」のが、伝わる文章です。

もっとも、文章が一定以上の長さを超えると、たとえプロの書き手でも、自分が本来伝えたい内容を100%漏れなく読者に理解してもらうことはなかなかできません。それでも、元の情報を可能な限り取りこぼさずに読者に伝えられる文章を目指す必要があります。

中学校の理科の時間に、電流の流れを阻む「抵抗」について習ったのを覚えていますか? 「伝わる文章」とは、情報を伝達するときに生じる「抵抗」の数値(Ω)が低い文章のことです。逆に言えば、文法的におかしかったり表現が難解すぎたり、伝え方が遠回しだったり言葉足らずだったりする悪文ほど「抵抗」は上がり、本来伝えたい情報が5%や10%しか読者に伝わらないという惨憺(さんたん)たる事態になります。

「抵抗」が最も低い文章の実例を挙げておきましょう。それは、AIの「ChatGPT」に正確な指示が出せる文章、自動翻訳ツールの「DeepL」で正確な外国語に翻訳できる文章です。自分の文章がどうしても伝わりにくいことに悩んでいる人は、これらを使って訓練するのをオススメします。AIに確実に伝わる文章は、人間に最も誤読されにくい「伝わる文章」でもあります。

■「見取り図」をもとに「部品」を作っていく

② 文章を書くとき、何から書いたらいいかわからない

先に見取り図を作り、まずは個々の「部品」を完成させてから、それらを組み合わせて完成形を作るという工業的な手法を採用してみましょう。こうすれば初心者でも長い文章を書くことができます。具体的な手順は以下の通りです。

一.書きたい内容を、ある程度まで詳細に箇条書きします。この個々の箇条書きが「部品」に相当します。
二.箇条書きした各項目(「部品」)を並べなおして、完成形のおおまかなイメージを作ります。
三.各項目の文字数を決定します。自分が難なく書ける長さまで、個々の「部品」を細分化してください。
四.項目ごとに文字数を埋め、短い作文をたくさん作ります。「部品」をひとつひとつ完成させるイメージです。
五.それらをつなげれば長い文章が完成します。

箇条書きを並べなおす段階(「二.」)では、読者を最後まで惹きつけるにはどうするか、どこで話を盛り上げるかをじっくり考えてほしい……。と、言いたいところですが、文章を書き馴れていない人が、センスのいい構成を考えることは難しいはずです。ここは無理をせず、優先順位の高い情報から順に並べましょう。これでとりあえず大丈夫です。

輝いて浮かんでいるキューブが手のひらの上にある
写真=iStock.com/gremlin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gremlin

箇条書きした各項目の文字数は、自分が難なく書ける長さにします。たとえばTwitterの文字数の140字、もしくは約2倍の300字くらいならば書ける人が多いでしょう。仮にひとつの話題についての内容でも、客観的な事実と自分の主観的な見解は明確に分けます。それぞれ別の「部品」に分けてもいいでしょう。

■書くのが遅い人はどうすればいいか

③ 長文を書こうとすると、手が止まってしまう

上記の「見取り図」を数段重ねで作成します。

一.書きたい内容を非常に大まかに箇条書きして、それを順番に並べます(章)。
二.章のそれぞれの内部において、書くべき内容を再び箇条書きして、それを並べ直します(節)。
三.節のそれぞれの内部で、書きたい内容を箇条書きにして並べ直します。

……といった作業を繰り返し、自分が難なく書ける長さまで、各項目の文章の分量を縮めます。あとは、こうして細分化した「部品」をひとつひとつ完成させ、最後にそれらを組み合わせるだけです。たとえ20万字の長文でも、この手法を使えば理論上は必ず完成させることが可能になります(途中で投げ出さない限り)。

④文章を書くのがとにかく遅い

事前の「見取り図」の作成作業を念入りにおこないます。準備なしにいきなり書きはじめるよりも、結果的に所要時間が短くなるはずです。

また、スマホの音声入力機能を使う、ネットで雛形にできそうな文例を探す、自分が書きたい内容をChatGPTに打ち込んで叩き台となる文章を作成させるなどして文字入力のハードルを下げることも、ビジネス目的の文書作成であれば、立派な手段のひとつです。

■要約できない場合は「口頭で説明」が効果的

⑤要約ができず文章がまとまらない

要約ができない最大の理由は、あなたがその対象をよく理解していないためです。まずは理解しましょう。その後、要約したい内容について家族や友人に口頭で説明してみてください(難しい場合はスマホに自分の音声を録音して聞いてみてください)。

喋った内容のなかで、意味がわかりにくい部分や内容が飛躍した部分があれば、あなたはまだその箇所について、まだよく理解できていません。再度おさらいします。口頭で要約して説明できるようになったら、その内容を文章にすればOKです。スマホの音声入力機能を使い、言葉をそのまま文字に変えてしまっても構いません。

⑥文章が硬くなり、論文みたいになってしまう

「中学生の自分」に理解できるように書いてみてください。他の読者をイメージすることは難しくても、高校受験(中学受験)当時の過去の自分であれば想像しやすいでしょう。簡単な表現でアウトプットをする方法がおのずから見えてくるはずです。

他に具体的な技術としては、改行を増やす、漢語を和語になおしてひらがなを増やす、外来語を日本語に書き換える、語尾を「ですます」体に変えるなどの方法を試すだけで、文章の印象はかなり柔らかくなります。

■手書きで書けない漢字はすべて意味を調べたほうがいい

⑦推敲ってしたほうがいいの? どうやってやるの?

必ずおこなってください。たとえプロのライターでも、自分が書いた文章を読み返して修正するべき点がまったく見つからないことは稀です。

推敲(すいこう)にあたっては、まずは誤字脱字、重複する表現、文法の誤りをチェック。また、慣用句や専門用語・外来語の誤用も注意してください。口頭で意味を正確に説明できなかったり、「手書き」で漢字を書けなかったりする言葉は、すべて一度は検索にかけて用例を調べることを勧めます。もっとシンプルな言い回しはできないか、別の言葉はないかも、常によく考えてください。

辞書の上に拡大鏡
写真=iStock.com/gremlin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gremlin

推敲をおこなうときは、フォントを変える、縦書きと横書きを変更する、スマホ画面で表示したり紙にプリントアウトしたりする……など、文章の視覚効果を変更してみましょう。違和感のある部分に気が付きやすくなります。1時間ほど別の作業をおこない、それから自分の文章を読み返してみるのもいい方法です。

■仕事がデキる人は相手の時間を奪わない

⑧仕事がデキる人のメールの文章ってどんなの?

ビジネスの場においては、相手に文意を理解するための余計な作業を発生させない、相手の時間を奪わないのが「デキる人の文章」です。これは以下のようなポイントを踏まえている必要があります。

・要件を先に書いている。
・5W1Hが明らかである。
・客観的事実と個人的な意見を分けて書いている。
・自分が相手におこなってほしいことを明確に伝えている。
・文法の誤りや誤字脱字がない(特に相手の氏名やキーとなる商品名などを間違えていない)。

他に「相手をイラッとさせない」ことも重要です。イラッとさせると、そのぶん相手の時間を奪うことになるからです。

多数のメールが行き交うイメージ
写真=iStock.com/anyaberkut
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

■突然の“自分語り”は相手をイラつかせるだけ

⑨じゃあ、相手をイラッとさせるメールの文章って?

一言で言えば「相手との距離感がおかしい文章」です。一例としては、なかなか本題に入らずに「自分語りや個人的な主張の開示」をおこなう文章が挙げられます。

たとえば、私の本業は中国報道に携わるライターなのですが、仕事やインタビューの依頼をおこなうための初回の連絡なのに、冒頭から「自分が30年前に中国に旅行した時のエピソード」や「自分が考える中国の本質」といった内容をやたらに語るメールを送ってくる人がいます。これは新聞社や出版社のような「文章のプロ」とされる業界で働く人でも、年配者を中心にみられることがあります

しかし、ベテランの外交官の経験談や研究者の精緻な分析ならともかく、一般人が大学時代に一人旅をしたエピソードは、(ご本人には大切な思い出だと思いますが)通常は情報としての価値はありません。こちらは「さっさと本題に入ってくれよ」とイライラするだけです。ほかにも、聞かれてもいないのにビジネスの場で自分の過去の話や家庭の話を延々と述べるようなメールは、多くの場合は相手に嫌がられます。

ほか、「●●をやっといてください」「××じゃないですか?」といった、“バイト敬語“的な表現は、通常は相手にぞんざいな印象を与えてしまいます。年下の相手を「君付け」「ちゃん付け」で呼ぶのも論外でしょう(信じられない話ですが、たまにそういうメールを受け取ります)。たとえ相手と面識があって、かなり仲が良い関係であるつもりでも、相手の許可がない限りは避けてください。いずれも、相手との距離感を間違えているわけです。

もっとも、すでに何度も面識があり対等の関係である相手に、慇懃無礼だったりビジネスライクすぎたりする言葉づかいをすると、かえって不快感を持たれることもあります。このあたりのさじ加減は、他者に自分の文面を見せ、指摘してもらいながら学ぶしかないでしょう(ただし、情報漏洩はしないように……)。

余談ながら、あまり関係を深めたくない人に向けてメールを送る場合、相手の名前を意図的に誤記したり「ぞんざいな文体」を故意に使ったりすることで不快感を与え、自分と距離を置いてもらうという、京都の老舗さながらの意地の悪いテクニックもあります。

■個性が必要なのは「文体」ではなく「内容」

⑩オリジナリティのある文章を書くには

オリジナリティのある文章は、大きく2種類に分かれます。すなわち、文体が個性的な文章と、内容が個性的な文章です。

『プレジデント』(2023年4月14日号)
『プレジデント』(2023年4月14日号)

前者については、極論、語尾をすべて「ぽんぽこ」にするだけでもかなり個性的な文体が出来上がります。しかし、それが読者から好まれるかは別問題ぽんぽこ。相当なセンスが無いと、文体だけで人を惹きつけることはできないぽんぽこ。プロでも無理だぽんぽこ。(←どうでしょうか? オリジナリティはあるものの非常に見苦しいでしょう)。

「伝わる文章」を書くうえで、読者が見慣れない個性的な文体はスムーズな情報伝達を阻害する要因になりがちです。よほどセンスのある人以外は、言葉づかいで自分の個性を表現しようとは考えないほうがいいでしょう。

いい文章を成立させる必要条件は、文体や言葉選びのテクニックではなく、書かれている情報そのものです。文体はまともで中身が個性的な「伝わる文章」を目指したいところです。

この記事を執筆した安田峰俊氏の著書『みんなのユニバーサル文章術』(星海社新書)も好評発売中です。

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安田 峰俊(やすだ・みねとし)
ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員
1982年生まれ、滋賀県出身。広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了。著書『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』が第5回城山三郎賞と第50回大宅壮一ノンフィクション賞、『「低度」外国人材』(KADOKAWA)が第5回及川眠子賞をそれぞれ受賞。他の著作に『現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史』(中公新書ラクレ)、『八九六四 完全版』(角川新書)、『みんなのユニバーサル文章術』(星海社新書)など。

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(ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員 安田 峰俊)

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